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トノパの北のはずれからネバダの州道376を北上する。 約2時間、両側を高い山脈にはさまれた谷(といっても平らだが)を進む。 途中にはラウンドマウンテン(ROUND MOUNTAIN)という金鉱山が左手にあり、さらに少しいくと、その鉱山で働いている人たちが住むカーバーズ(CARVERS)という大きな集落がある。 この集落の北側には点々と湯気がわきだしており、この谷一帯が温泉群であることを予感させてくれる。 さらに車は不毛な谷を走り続ける。 やがて、国道50号とのT字路が見えてくると右へ戻るようにして伸びる砂利道がある。 今度はこれをとって谷を横切って向こう側の山の方へ向かう。 約5・4マイル。 小さな丘の上の穴からわいた湯が小さな溝を通っていく。 20メートルも流れていくだろうか。 そうしているうちにチンチンだった湯は少しはぬるくなる。 最後の10メートルはプラスチック製のパイプの中を通り、そうして直径3メートル、深さが50ー60センチメートルの金属製の浴槽に流れ込む。 冷水は存在しない。 着いた時(午前9時半)には誰もおらず、しかも、パイプが浴槽からはずされており、浴槽の中はなんと10度前後の冷水だ。 浴槽には栓がなく、どうしようもない。 バケツ、ホースなどの飛び道具もない。 そうなれば、そばのドラム缶の中にころがっているゴミの中から空き缶とびんを選び、これでえっちらおっちらと水をかきだすしかない。 湯が強烈に熱ければいいが、触れることができる程度の熱さなので、この浴槽にたまった水を暖めるには相当の時間が必要だ。 入ってくる湯の量もかきだす量とほぼ同じぐらいであるため、なかなか熱くならない。 周囲は大草砂漠。 雪がまだらに残り、牛のふんがやたらと点在する。 格闘すること1時間余り。 10時半ごろになってとりあえず30度ぐらいになって入れる状態になる。 裸になって中に入ってかくはんしながら温度の上昇を楽しむことにする。 もっと浴槽がちいさきゃいいのにという連れの声もわかるというものだ。 11時過ぎてようやくベストに近づいたころ、一台のピックアップトラックがやってくる。 おじさんが一人だった。 一度、風呂の前まで来て、それからどこかへぐるっといったかと思うと、再び、登場した。 入ってもいいか、と聞くので構わないというと、ドアを開けて降りてくる。 その格好は既に裸。 60歳前後だろうか。 肩から腕にかけてアレルギー性の斑点がすごい。 何でも洗剤にやられたとかで、いたがゆいということだった。 でも、そんな奴と風呂に入っていいのかなと思いつつ、彼は入ってくる。 あとはネバダなまりというのかどうかは知らないが、機関銃のようにやや音のこもった発音でまくしたてる。 そのうえ、こちらの話(発音)はわからないことが多いようで、たびたび「は?」と問う。 たまんないねえ。 彼はこの南にあるラウンドマウンテンの鉱山で働いていて、暮らしているようだ。 子供はリノにおり、奥さんとは何年か前に別れたとか。 そのうち、オートミールがなんだかんだと言っていたかと思うと、トラックへ戻ってマヨネーズのようなびんの中に入った真っ白な液体を持ってくる。 これを背中の届かないところに塗れといっていることがわかった。 初め、おじさんは連れに手渡そうとするので、俺があわてて乗り出す。 背中の赤いできものを連れに触れさせるわけにはいかないよな。 塗っている間はその液体がなんであるかわからなかったが、これがまさにオートミールだったのだ。 妹のアドバイスだという。 まあ、いい加減というかなんというか。 彼はオートミールが乾いたら再び風呂に入る気配を見せている。 たまらず、こちらが退散することにした。 あと30分入っていたかったなあと名残惜しく去ったのだった。 今回は人のためにいい温度にして、しかも苔をかきだしてきれいにするという善行をしたことになる。 (2月15日訪問) (ガイドの解説)
不毛の山々と雪をかぶった高山を眺める丘の上にボランティアが作った風呂が並ぶ。 標高5700フィート。 年中開いている。 自然の温泉がいくつかの湧出場所から122度前後(華氏)でわきだしている。 これを掘った溝の中を流し、ボランティアが掘った穴やいくつかのエナメル製の風呂タブへと流れ込む。 風呂の温度は熱い湯を入れる量のみで調節する。 このかけ離れた場所では水着着用は自由。 人工的に作られたプールもあったが、数年前に事故があり、怪我した人が政府の土地管理公社を訴え、勝訴したため、ただちにブルドーザーで埋め戻されてしまった。 夜通しの駐車も自由。 道案内はUS50とNV376の交差点から南へ100ヤード。 そして分岐点を左へ折れ、砂利道を5・5マイル。 |
ネバダ州
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