米国 天然温泉(野湯)探検

米国には日本に負けず劣らず、たくさんの天然温泉が各地に自然湧出しています。探検記録を紹介します。

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 395号線を南下、ブリッジポートの街を抜け、左から182号を合わせる。
 200メートルもいくと、左に舗装道が伸びる。
 見上げると山の中腹に木々がなく、白い岩が露出した一角がある。
 あそこが温泉だろう。

 100メートルも入っていくと左が広場になっていて、車や廃タイヤなどが積まれている。
 舗装道はゆるく右へカーブしていく。
 その左手に立て札があって、トラバータインとだけ書いてある。
 のぼっていくと、すぐにベンチがあって、ここかなと思って降りてはり紙を見るとウエルカム・シューティングレンジと書いてある。
 射撃場とはどういうことか、と焦り、うろうろしているとワーゲンに乗った男2人組がさらに上へと登っていく。

 いろいろ迷って我々も登ることにする。
 右へ緩くカーブし、高みの奥へ。
 でこぼこ道を頂上へ登りつくと、そこにワーゲンがいた。
 ここは上下に二つあるはずのうちの上の風呂だ。

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 脇になぜか汚いカーペットが敷いてあるのは脱衣のためのものか。
 そして、その脇にモルタル作りの堀りこみ型の風呂がある。
 源泉はその2、3メートル上だ。
 それほど熱くもない。
 これなら風呂は相当ぬるいのではと思う矢先に、連れがぬるいと証言する。

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 ヒゲの2人組(連れは1人を女だと間違えた)は早速入っている。
 こちらに下方を指さし、
 「下にもう一つ風呂がある。ナイスだ」という。
 従っていってみる。
 細い道を行くと広場となり、その向こうにあるようだった。

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 2人組男女が入っていた。
 この広場まで車がかろうじて入れるので、連れを置いて車をとりにいく。
 戻ると、連れは早速入浴体制。
 2人組は出るところといういいタイミングだった。

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 湯は馬の背のようになった高さ2メートルほどの尾根の上に湧いていて、そこから尾根の真上の溝をつたって流れてくる。
 そして最後は崖を滝となって第一浴槽へと入る。
 第一の風呂は長方形で2人入ればいっぱいという代物。
 隣に第二風呂。
 第一風呂からあふれた湯が入ってくる。
 ここには3、4人。さらにあふれた湯は第三、第四へと流れていく。
 段々と浴槽は広くなる。
 いずれもボランティアが風呂型に岩を掘ったのだろう。
 今はまだ冬の温度で、しかも風が強く、入れるのは第一と、せいぜい第2。

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 はじめのカップルは第一を占領していたが、ちょうど出るところでよかった。
 女性の方は横浜にもいたことがあるといっていた。
 湯の流れを指しながら「ゆっくり、はやく」と言えた。
 彼らは出発していく。   

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 ここで我々の天国が始まる。
 すぐにおばさん2人組が現れるが第1の風呂を我々が占拠しているのを見て、撤退。
 その後ももう1カップルが来るが同じ。
 第1風呂に限らず、皆粘土質の岩でそれが細かくなった粘土が風呂の底に敷き詰められており、ヌルヌル。
 といってもドブではないので、さわやかに入れる。

 シエラネバダの山脈が西方に広がる。
 午後7時で日は下がったといっても明るくさわやかだ。
 ブリッジポートの街の左手に広がる大草原。
 雪の山々、右手にはブリッジポートの貯水池が景色のアクセントになっている。

 風呂の回りはリスや野鳥がうろついている。
 ビールとワインクーラーで我々はご満悦。
 夕陽が山なみの向こうに沈むころ、出ることにした。

 この時、男女3人のドリカムカップルが登場。
 ちょうどいい交代だった。
 湯は50度ぐらいだろうか、そのまま湯のにおいをかいでもなにも感じないが、粘土をすくい上げるとわずかに硫黄のにおいがただよった。
 もう少し湯量があったら最高なのだが。
(5月12日訪問)

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 この地域の温泉めぐりの帰り道、もう一度ここによる。
 車で上部の風呂脇へいくと、3人連れが入っている。
 一人は女性だが、真っ黒に焼いていて、しかも黒いサングラスで何者かさえわからない。
 皆、裸だった。

 手を入れると今日もちょうどいい温度だ。
 しかし、連れは3人が醸し出す世界に入りにくいという。
 やむを得ず前回も行った下の風呂をのぞきにいく。
 タイミングよく、今回もちょうど男性2人連れが出るところだった。
 それなら一浴しようと2人で入る。
 いざ入ろうと風呂に近づくとはてなと疑問がわいた。
 湯が流れ込む第1の風呂と第2の風呂がやけにきれいに見えたのだ。

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 こんなに澄んだ湯だったっけ?と連れと話しながら2番目の風呂に足をつけて驚いた。
 熱いのだ。
 すごく。
 おととい来た時はぬるくて物足りなかった第2の湯が今回は熱くて入れそうにない。
 当然、1番目はもっと熱い。
 澄んでいたのは入浴者がいなくて、粘土の粒子がすべて沈澱しているためだったのだ。
 そういえばちょうどいい湯加減の風呂はにごっているのだ。
 源泉の温度が上がったのか、それとも外気の温度や風の影響で前回が冷えていたのかはわからない。
 とにかくいえることはここに風呂が5つある意味がわかったということだ。
 それにしてもここは眺めもよく、最高のロケーションだ。
(5月14日再訪)



(解説)
 標高6700フィート、年中入れる。
 トラバータインの馬の背から湧き出す湯は138度(華氏)。
 そしてこれが一連の並ぶ岩の砂でできた風呂に流れ込む。
 平均温度は118、110、103、96、84度だ。
 トノパの北のはずれからネバダの州道376を北上する。
 約2時間、両側を高い山脈にはさまれた谷(といっても平らだが)を進む。
 途中にはラウンドマウンテン(ROUND MOUNTAIN)という金鉱山が左手にあり、さらに少しいくと、その鉱山で働いている人たちが住むカーバーズ(CARVERS)という大きな集落がある。
 
 この集落の北側には点々と湯気がわきだしており、この谷一帯が温泉群であることを予感させてくれる。
 さらに車は不毛な谷を走り続ける。
 やがて、国道50号とのT字路が見えてくると右へ戻るようにして伸びる砂利道がある。    

 今度はこれをとって谷を横切って向こう側の山の方へ向かう。
 約5・4マイル。
 小さな丘の上の穴からわいた湯が小さな溝を通っていく。
 20メートルも流れていくだろうか。
 そうしているうちにチンチンだった湯は少しはぬるくなる。
 最後の10メートルはプラスチック製のパイプの中を通り、そうして直径3メートル、深さが50ー60センチメートルの金属製の浴槽に流れ込む。
 冷水は存在しない。

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 着いた時(午前9時半)には誰もおらず、しかも、パイプが浴槽からはずされており、浴槽の中はなんと10度前後の冷水だ。
 浴槽には栓がなく、どうしようもない。
 バケツ、ホースなどの飛び道具もない。
 そうなれば、そばのドラム缶の中にころがっているゴミの中から空き缶とびんを選び、これでえっちらおっちらと水をかきだすしかない。
 湯が強烈に熱ければいいが、触れることができる程度の熱さなので、この浴槽にたまった水を暖めるには相当の時間が必要だ。
 入ってくる湯の量もかきだす量とほぼ同じぐらいであるため、なかなか熱くならない。

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 周囲は大草砂漠。
 雪がまだらに残り、牛のふんがやたらと点在する。
 格闘すること1時間余り。
 10時半ごろになってとりあえず30度ぐらいになって入れる状態になる。
 裸になって中に入ってかくはんしながら温度の上昇を楽しむことにする。
 もっと浴槽がちいさきゃいいのにという連れの声もわかるというものだ。

 11時過ぎてようやくベストに近づいたころ、一台のピックアップトラックがやってくる。
 おじさんが一人だった。
 一度、風呂の前まで来て、それからどこかへぐるっといったかと思うと、再び、登場した。
 入ってもいいか、と聞くので構わないというと、ドアを開けて降りてくる。
 その格好は既に裸。
 60歳前後だろうか。
 肩から腕にかけてアレルギー性の斑点がすごい。
 何でも洗剤にやられたとかで、いたがゆいということだった。

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 でも、そんな奴と風呂に入っていいのかなと思いつつ、彼は入ってくる。
 あとはネバダなまりというのかどうかは知らないが、機関銃のようにやや音のこもった発音でまくしたてる。
 そのうえ、こちらの話(発音)はわからないことが多いようで、たびたび「は?」と問う。
 たまんないねえ。

 彼はこの南にあるラウンドマウンテンの鉱山で働いていて、暮らしているようだ。
 子供はリノにおり、奥さんとは何年か前に別れたとか。
 そのうち、オートミールがなんだかんだと言っていたかと思うと、トラックへ戻ってマヨネーズのようなびんの中に入った真っ白な液体を持ってくる。
 これを背中の届かないところに塗れといっていることがわかった。
 初め、おじさんは連れに手渡そうとするので、俺があわてて乗り出す。
 背中の赤いできものを連れに触れさせるわけにはいかないよな。
 
 塗っている間はその液体がなんであるかわからなかったが、これがまさにオートミールだったのだ。
 妹のアドバイスだという。
 まあ、いい加減というかなんというか。
 彼はオートミールが乾いたら再び風呂に入る気配を見せている。
 たまらず、こちらが退散することにした。

 あと30分入っていたかったなあと名残惜しく去ったのだった。
 今回は人のためにいい温度にして、しかも苔をかきだしてきれいにするという善行をしたことになる。
(2月15日訪問)

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(ガイドの解説)
 不毛の山々と雪をかぶった高山を眺める丘の上にボランティアが作った風呂が並ぶ。
 標高5700フィート。
 年中開いている。
 自然の温泉がいくつかの湧出場所から122度前後(華氏)でわきだしている。
 これを掘った溝の中を流し、ボランティアが掘った穴やいくつかのエナメル製の風呂タブへと流れ込む。
 風呂の温度は熱い湯を入れる量のみで調節する。
 このかけ離れた場所では水着着用は自由。
 人工的に作られたプールもあったが、数年前に事故があり、怪我した人が政府の土地管理公社を訴え、勝訴したため、ただちにブルドーザーで埋め戻されてしまった。
 夜通しの駐車も自由。
 道案内はUS50とNV376の交差点から南へ100ヤード。
 そして分岐点を左へ折れ、砂利道を5・5マイル。
 ガイドブックに書いてあるような林道への看板はなく、迷う。 
 しかし、どう考えてもほかには考えられないので、雪が結構あるが、轍がなくなるまでいこうと入り込む。
 指示の通り7マイル程度いくと、到着した。
 温泉の手前には木の柵が出来てその内側にはベンチがしつらえ、ピクニック会場の雰囲気を漂わせている。

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 ピックアップトラックが一台止まっていて、青年がなにか車の回りで仕事をしている。
 温泉は風呂の周囲に高さ30センチほどの囲いができていて、その上に腰をかけたり、脱いだ衣類を置くことができるようになっている。
 風呂は苔が多く、しかも、それが浮き上がっていていささか気持ち悪い。
 それでも、サンダルをはいて入り、しかも、風呂の横壁に触れなければ結構快適だ。

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 僕らが到着してすぐに家族連れが到着したが、すぐに行ってしまった。
 こんな夕方にどこへ行くというのだろうか。
 軽トラックも消えてしまい、連れと二人きりかと喜んだが、まもなくトラックは戻ってきて青年が「入ってもいいか」と聞くので、歓迎の意を示す。
 しばらく、沈黙したものの、すぐに話を始める。
 彼はこのわき道へ入る本道をさらに北へ少し行ったところにある工場で働いているという。
 何の工場かと聞いたら、なんと地熱発電所というではないか。
 そして、この一帯は以前は石油試掘が行われ、その結果としてここの温泉もわきだしたし、発電所も同じだそうだ。
 この周辺にはまだ小さな源泉がいくつかあるという。

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 彼はその発電所に7年勤めており、その前はさらに北にある鉱山にいたこと。
 その鉱山はホウ素を採掘しているという。
 都市よりもこうした田舎が好きで、毎日のようにここに来ている。
 金鉱堀りとオフロード、それに釣りが楽しみだそうだ。
 自然児といえばそうだが、この若さでこんな地の果てに暮らしているのはやっぱり不思議だな。

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 彼と話しているうちに太陽は西の山に隠れ、東の山々はピンク色に燃え出した。
 雪の山を眺めながらの温泉は最高。雪道をきてよかった

(2月14日訪問)

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