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高いお山は
まだ 白い雪のマントをきていても
千曲川のそばの
小さなお寺に 春がきました
お寺の 子どもたちは
つくしや たんぽぽを つんでいます
お寺の おっしゃんと
お母さんが 育てている 子どもたちです
白いちょうちょうが ひらひら
お空では ひばりが 鳴いていました
その 子どもたちの中に
ヒデ子ちゃんがいました
まだ 字がよめません
自分の名前も 書けません
五つの おかんじょうも わかりません
ヒデ子ちゃんは ほんとうだと
小学校三年生になるはずだったけれど
ようやく 今は 一年生です
けれども ヒデ子ちゃんは
まるい おめめの
お人形さんの お母さんです
おんぶしたり だっこしたり お話したり
夜は そいねをしてやり
ひるまは こうりの中に ねんねさせて
「よい子で おるすしてるのよ」
といって学校にいきました
お台所の おしごとや
おそうじが 上手にできました
長雨のつづく 夜でした
ながしに なめくじが でてきました
おっしゃんが ヒデ子ちゃんに
おしおをかけて
ころしなさいといいました
ヒデ子ちゃんは ころさないで
だいじに かっておきました
それが 夜中に はいだして
へやじゅう なめくじだらけになりました
おっしゃんに しかられて
ヒデ子ちゃんは いいました
「だって なめくじだって 生きているもん
ころせば かわいそうでしょう
かわいがって そだててやりたいの」
おっしゃんも ともだちも
みんな 大わらいです
お母さんも わらいが とまりません
そのとき ヒデ子ちゃんは うずくまって
かなしく かなしく 泣きました
おっしゃんは きゅうに 大ごえで
「わらうのやめろ わらっちゃいけない」
と さけびました そして
「おっしゃんがまちがい ヒデ子ちゃん
ほんと わらって ごめん」
と あやまりました
おっしゃんは ヒデ子ちゃんに
きんぎょを 一ぴき あげました
ヒデ子ちゃんは きんぎょを かわいがって
パンくずを たくさん やりました
ぎゅうにゅうも いれてやったので
きんぎょはすぐに 死にました
ヒデ子ちゃんは 泣きながら
小さな石を ひろってきて
きんぎょの おはかを たてました
ヒデ子ちゃんは お花とおせんこうをあげて
「おきょうを よんでちょうだい」と
おっしゃんは おきょうをよみました
ヒデ子ちゃんは
おててをあわせて おがみました
寒い みぞれの 晩でした
「ヒデ子ちゃんは きたない」と
みんなが いいました
カヨちゃんが おねしょをして
「おふとんが つめたくて ねむれない」
と しくしく 泣いているので
ヒデ子ちゃんは
「わたしの からだは あったかいから
かわかしてあげる」
といって かわりに ねてあげていたのです
おっしゃんは
「ヒデ子ちゃんは きたなくない
きれいな きれいな こころだ」
といって
ヒデ子ちゃんを だきしめました
中学生になったころ
からだが ふるえて かたくなって
きをうしなって ねてしまう
てんかん という びょうきになりました
くすりをのんでも なおらずに
十八歳になりました
ヒデ子ちゃんのおうちは 山の村です
おうちにかえって お母さんと二人で
うさぎを かっていました
夏の朝早く
ヒデ子ちゃんは
大きないろりに 火をたいて
みそしるを ぐつぐつ にていました
そのとき てんかんがおきて
そのまま いろりに ころびおちて
おかおも からだも 大やけどをし
おっしゃんが かけつけたときは
白いほうたいにつつまれて
もう しんでいました
すずしい風の秋がきて
千曲川の すすきに ほがでて
青いお空が 高くなったころ
ヒデ子ちゃんの お母さんが
赤いほおずきを
たくさん もってきてくれました
「ほおずきが 赤くなったら
円福寺の 子どもたちに
もっていって やるんだ」と
ヒデ子ちゃんが
おにわに うえておいたことを
お母さんが 泣いて 話しました
み仏さまの前に
赤いほおずきを おそなえして
みんなで おきょうを あげました
やさしい やさしい ヒデ子ちゃんは
赤いほおずきに なったのです
藤本幸邦老師著「おっしゃん」より
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朴の木さんこんばんは。
ヒデコちゃんのおはなしさっそくアップしていただきありがとうございます。
純粋な心の持ち主のヒデコちゃん
かわいそうなあまりに短い命でしたけれど、よき理解者のおっしゃんによってこうしていまも生きているような気がします。
これからほおずきを見るときっと千曲川の風景とヒデコちゃんのことを思い出すことでしょう♪
素敵なお話を紹介していただいて本当にありがとうございました♪☆☆ぽっち☆☆
2010/2/2(火) 午後 10:17
こんにちは
おっしゃんは講演や法話の時、たびたびヒデ子ちゃんのお話をされました。
「ほおずきになったヒデ子ちゃん」は確か「ほおずき」(?)という題名になって個人の方がワープロで絵本のように仕上げたものがあります。
だいぶ前に藤本老師からいただきました。今どこかにしまい忘れすぐには見つかりませんが、文章になっているものでした。探してみようと思います。
読むたびに涙がこみ上げたこと忘れられません。
2010/2/6(土) 午前 8:44 [ hounoki508 ]