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落葉松
北原白秋
からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。
からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。
からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨(きりさめ)のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。
からまつの林の道は
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。
からまつの林を過ぎて、
ゆゑ知らず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。
からまつの林を出でて、
浅間嶺(あさまね)にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつのぬるるのみなる。
世の中よ、あはれなりけり。
常なけどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。
☆ ☆ ☆ ☆
昨晩、軽井沢を訪ねた折に「からまつ」の詩碑を手でなぞって
きたが、この詩は若いころからよく口ずさんできた。
小諸市石峠に住んでおられた詩人・龍野咲人先生は、白秋先生
の直弟子だったからお訪ねするたびに白秋先生のことを聞かせ
て頂いた。
今思えば、幸せなひと時であった。
作家の落合恵子さんがお若い頃、白秋先生の詩の朗読をされて
いるテープを時々聞いているが「からまつ」の詩は格別にいい。
柳川の方言もあり落合さんの声がまた、なんともいいのである。
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この「からまつ」の詩は白秋の名作ですね。「からまつ」の言葉のリズムと「さみしかりけり」のリズムがとても合いますね。「からまつ」は確かに情緒を誘う木で、絵心も誘いますね。昔、清里のカラマツ林でスケッチした事を思い出しました。
2010/3/9(火) 午前 8:33 [ kabanotakara ]
こんばんは。
こちらは猛吹雪です。この冬でも初めて位の勢いで雪が舞っています。3月というのにおかしいですね。
家の前の林は、30メートルもありそうなからまつが伸びています。芽吹きの新緑と金色の紅葉は見事です。雪化粧のからまつもいいものですが・・・。
おっしゃるようにこの詩はリズムがいいですね。
最後の四行は、もうたまりませんね。
2010/3/9(火) 午後 10:11 [ hounoki508 ]
からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨(きりさめ)のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。
ここがとても好きです。
2010/9/27(月) 午前 10:32 [ - ]
シャーンティさん、こんばんは。
先日の9月23日、岐阜から知人が軽井沢へ遊びに来たので久しぶりに「からまつ」の詩碑の近くまで行ってみました。
肌寒い日でしたので、この詩が一層こころに響いてきました。
からまつはさびしかりけり
たびゆくはさびしかりけり
私の好きなフレーズです。
シャーンティさんの好きな箇所もいいですね。霧に包まれた軽井沢、初秋の今もいいですよ。
2010/9/27(月) 午後 10:35 [ hounoki508 ]