朴思堂だより

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つづり方兄妹

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一冊の本を抱いて

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ふうちゃんのふるさと枚方の香里小学校と交野(かたの)にあるお墓


   一冊の本を抱いて
               

 五月の連休を利用して大阪枚方市まで旅に出た。新緑がまぶしい
木曽谷を抜け、岐阜に入るともう田植えがあちこちで始まっていた。
 持ってきた一冊の本は「つづり方兄妹(きょうだい)」。

 太平洋戦争後間もない頃の、貧しい一家の三兄弟の作品集である。原作をもとに映画が製作され、小学校の講堂で全校生徒で見た。
 貧しくも、のびのびと育つ一番下の弟ふうちゃんに、自分自身を
重ね喜んだり悲しんだりの物語であった。映画の最後の方で、ふう
ちゃんが病気で亡くなってしまうシーンがあり、先生も生徒もみん
なで泣いた。

 小学生時代、巡回映画としていくつかの作品を見たが、あれから
半世紀を過ぎた今でもこの映画は特に強烈な印象で残っている。
 原作の「つづり方兄妹」を編集した理論社の小宮山量平さんは、
先月十三日黄泉に旅立たれた。九十五年のご生涯を創作児童文学に
捧げられた小宮山さんは、講演の中でたびたびふうちゃんの詩を朗
読されることがあった。時に声を詰まらせながら、子どもの心に育
つ楽天的な精神を確かめるように。
 佐久で「つづり方兄妹」の映画会と小宮山さんのお話の会をした
のは二十年程前だった。
それ以来、いつの日かふうちゃんのふるさと巡りをしたいと思って
いた。

 枚方市香里は丘陵地帯で、今は建物がたくさん建ち昔の面影はないが、ふうちゃんの遊んだ道路や通った香里小学校に映画の中の情景を追った。交野市(かたのし)のHさんに思いがけず出合い、私市(きさべ)の墓地を案内していただいた。
 大きな楠の木の下でお父さんお母さんと一緒に眠るふうちゃん。抱いてきた「つづり方兄妹」の古い本と、小宮山量平さんの写真を墓前に捧げお線香をあげた。遠くにふうちゃんの好きだった生駒山が見えていた。 


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