朴思堂だより

打てば響く世界を朴の木の下で思う

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夕焼け

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                                             浅間山も
 
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                                        西のアルプスの空も
 
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                             岩村田の街も夕焼に染まり立秋となる
 
 
     夕焼け   吉野 弘
 
   いつものことだが
 
   電車は満員だった。
 
   そして
 
   いつものことだが
 
   若者と娘が腰をおろし
 
   としよりが立っていた。
 
   うつむいていた娘が立って
 
   としよりに席をゆずった。
 
   そそくさととしよりが坐った。
 
   礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
 
   娘は坐った。
 
   別のとしよりが娘の前に
 
   横あいから押されてきた。
 
   娘はうつむいた。
 
   しかし
 
   又立って
 
   席を
 
   そのとしよりにゆずった。
 
   としよりは次の駅で礼を言って降りた。
 
   娘は坐った。
 
   二度あることは と言う通り
 
   別のとしよりが娘の前に
 
   押し出された。
 
   可哀想に。
 
   娘はうつむいて
 
   そして今度は席を立たなかった。
 
   次の駅も
 
   次の駅も
 
   下唇をギュッと噛んで
 
   身体をこわばらせてー。
 
   僕は電車を降りた。
 
   固くなってうつむいて
 
   娘はどこまで行ったろう。
 
   やさしい心の持主は
 
   いつでもどこでも
 
   われにもあらず受難者となる。
 
   何故って
 
   やさしい心の持主は
 
   他人のつらさを自分のつらさのように
 
   感じるから。
 
   やさしい心に責められながら
 
   娘はどこまでゆけるだろう。
 
   下唇を噛んで
 
   つらい気持ちで
 
   美しい夕焼けも見ないで。
 
 
 
  ☆   ☆   ☆
 
夕焼け空を見る度に、吉野弘さんのこの詩が浮かんでくる。
 
 
 
 
 
 
 
           
 
 

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