朴思堂だより

打てば響く世界を朴の木の下で思う

八木重吉さん

[ リスト ]

  処女詩集「秋の瞳」
 
     序
 
私は友が無くては、耐えられぬのです。
しかし、私にはありません。この貧しい詩を、これを読んでくださる方の胸へ捧げます。
そして、私を、あなたの友にしてください。
 
 
   ふるさとの川
 
ふるさとの川よ
ふるさとの川よ
よい音をたててながれているだろう
(母上のしろい足をひたすこともあるだろう)
 
 
   ふるさと
 
ふるさとをおもえど
柿の実のいろのみおもいだされて
ちちうえもははうえも
あまりにかそけきさぶしさよ
 
 
   ゆうぐれの
 
ゆうぐれの陽のなかを
三人の児が
ななめの畑をのぼっていく
みていれば なきたい
 
 
   咲く心
 
うれしきは
こころ咲きいずる日なり
秋 山にむかいて うれいあれば
わがこころ 花と咲くなり
 
 
   秋
 
こころがたかぶってくると
わたしが花のそばへいって咲けといえば
花がひらくとおもわれてくる
 
 
   障子
 
あかるい秋がやってきた
しずかな障子のそばへすりよって
おとなしい子供のように
じっとあたりのけはいをたのしんでいたい
 
 
   果物
 
秋になると
果物はなにもかも忘れて
うっとり実ってゆくらしい
 
 
   素朴な琴
 
この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美しさに耐えかねて
琴はしずかに鳴りいだすだろう
 
 
   雲
 
くものある日
くもはかなしい
 
くものない日
そらは さびしい
 
 
   こころよ
 
ほのかにも いろづいてゆく こころ
われながら あいらしいこころよ
ながれゆくものよ
さあ それならば ゆくがいい
「役立たぬもの」にあくがれて はてしなく
まぼろしを 追うて かぎりなく
こころときめいて かけりゆけよ
 
 
 
☆ 〜 ☆ 〜☆ 〜
 
10月26日は重吉さんの命日(茶の花忌)
 
平日なので今年も参列できないが、町田市相原の重吉さんのふるさとには、多くの方が重吉さんを慕って集まることだろう。
重吉さんの詩集に出会ったのは19の時。詩集を持って信越線で上越・直江津の海に向かった。
海辺に座り、日本海の波の音を聞きながら一日中重吉さんの世界に浸った。
一人ぼっちで、孤独に打ちのめされていた時、重吉さんの詩集に会ったのだ。そして、重吉さんをこころの友と呼んだ。
 
とおい、とおい日の懐かしい思い出である。
 
 
 
 
   

閉じる コメント(1)

顔アイコン

はじめまして、山の家からの小人です。

重吉さんの詩、小人は今日初めて拝見いたしました。
詩っていいですね^^なんか心が安らぎます。

19歳で素敵な詩と出会えたhounoki508さんは幸せ者ですね^^

2012/10/24(水) 午前 9:19 だんと


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事