朴思堂だより

打てば響く世界を朴の木の下で思う

一期一会

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ある出会いから

   ある出会いから
               

仕事中、SBC信越放送を聞く機会が多い。
月曜から金曜までの平日、文化放送の「氷川きよし節」を聞いているが、きよしさんとアナウンサーの寺島尚正さんとの語りが楽しい。 歌あり、昔話、俳句、寸劇ありで、十分間が短く感じられる。
 きよしさんの「満天の瞳(ほし)」がなんともいい歌で、聞き惚れている。今まで「虹色のバイヨン」が大好きでよく聞いていたが、「満天の瞳」も長く聞きたい歌だ。歌詞の「愛されるよりも愛さなきゃ」ここがなんともいい表現!
 もう十年位前になるだろうか。氷川きよしさんのことで忘れられない思い出がある。
 東京駅で四国、高松までの夜行バスを待っている時、七十代後半と思われるご夫婦と話をする機会があった。
 お二人、リュックサックを背負い長椅子に座っていた。なんとなく親しみを感じたので、近くにいた奥さんに声をかけた。
 「高松へは旅行ですか?」
 「いえ、帰るんです」
 「そうですか、東京へは観光ですか?」
 その時、旦那さんが横からひと言
 「ライブですよ、ライブ。わたしは家内の付き添い!」

高松弁で表現できないのが残念であるが、
ちょっとぶっきらぼうな言い方だった。
 「ええー!高松から、すごいですねぇ。どなたのライブですか?」
 「あんた、誰のライブか分かりますか?」
 奥さんが、宿題を出す先生のように「ニヤリ」と、笑いながら聞いてきた。
 突然の質問に首をひねっていると
 「分かるわけないねー 」
 と、いたずらっぽい目でこっちを見てる。
 

ええーい、当てずっぽうに言おう

「ひかわきよしさん!ですか?」
「あれー、あんた、どうして分かったんかい。びっくりしたあー」
それから、バスの出発時間ぎりぎりまで、

まさに奥さんの「氷川きよし節」オンパレードだった。
 「この歳になっても、心ときめかせる歌手がいるって幸せだぁ〜」
 忘れられない一言である。
 高松発の夜行バスで昨日の朝、東京へ着き、昼間、西武球場での「氷川きよしコンサート」を聞き、ほんとうは今晩の日本武道館でのコンサートも聞きたかったそうである。

明日、高松で用事があるので今晩の夜行バスに乗らねばならない無念さを語られた。
 旦那さんは「もう、病気ですな!」と私に向かって言いながら、ご自身も氷川さんのファンであることを喜んでいるようであった。
 すごいなあ、氷川きよしさん。このような熟年のファンがおられるとは。氷川さんの歌も、歌声ももちろん素敵だけれど、氷川さんの惹きつける人間性そのものの表れなのだ。
 およそ十時間の高松までのバスの旅。お二人は仲良く並んで語り合っている。

きっと氷川きよしさんのライブの余韻に浸っておられるのだろう。「お二人いい夢を見られますように」祈るような思いで私も眠りについた。
 翌朝、七時少し前に高松駅前に着いた。バスから降りた後、短いお別れの挨拶をした。 リュックを背負ったご夫妻は並んで、高松の街の中に消えていった。

「いつか、氷川さんのライブで会えるといいですね」
 そう後ろ姿に呼びかけていた。
 
一人、小豆島へ向かうフェリーの中で「俄か氷川きよしファン」になっている自分が、なんだかとても嬉しかった。
 

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