朴思堂だより

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書評 阿波根昌鴻『米軍と農民』
かけがえのないものへの限りない求め
新城郁夫
 
 阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)(1901−2002)という存在を強く意識し始めたのは、ほんの数年前からのことである。沖縄北部の伊江島で、戦後60年近くもの間、米軍に奪われた土地の奪還を目指す非暴力抵抗運動を持続し、沖縄の反戦平和運動の象徴ともいえる生涯を送った人。そんな阿波根さんは私にとって、畏敬の念をもってはいるもののどこか遠い存在であり、ほとんど偉人伝のなかの存在というような印象であった。
 東京での大学院生活を終え、現在も勤める琉球大学に職を得て宜野湾市にアパートを借りたのは1996年春のことだったから、本当に幸運なことに、阿波根昌鴻という存在に、ぐんと近づけたはずだった。少なくとも阿波根さんが亡くなる2002年3月までのあいだには、伊江島まで行けば、そのお話をじかに聞くことができたはずである。実際、知り合いの何人かは「わびあいの里」でお話に接していた。にもかかわらず、私がそうすることができなかったのは、ただただみずからのなかに巣食っていた心理的な距離感のせいであったと今にして思う。そしてその心理的距離のかなめに、『米軍と農民』(岩波新書、1973年)から受けた初読の印象があったと、後悔のなか思い返されてくるのである。
 では、『米軍と農民』の何にたいして心理的距離を感じていたのか。語弊を恐れずにいえば、当時の私が、この書のなかに沖縄の「今」を感じ取ることができなかったからであったと思う。
 今となっては、何かあるとくり返し読んでは、沖縄で生きることそして沖縄を生きようとすることの意味を確かめる際のもっとも大切なよすがとなっている『米軍と農民』であるが、初めて読んだときに感じたのは、闘いのあり方が古くさくかつ生ぬるいのではないか、といった思いであった。先鋭的な闘いや思想に惹かれていた若い頃の私にとって、この書の中に見出される日常の些細な出来事や雑感の記録が、ともかくも急ぎ獲得しすぐに実現されなければならない(と思っていた)闘いや思想にとって迂遠なものと感じられたのだ。私は『米軍と農民』に込められた「今」を取り逃がしていた。
 そうした「距離感」が融解しはじめ、阿波根さんの一つ一つの言葉が自らの心身にあまりに近しく触れてくるようになったのは、2005年の頃からである。普天間基地を辺野古の「代替基地に移設する」という日米合意が両国政府間で交わされたのをきっかけとして沖縄県内で基地反対運動が盛んになっていく頃で、そうした動きに誘われるようにして私もたまに運動の場に身をおいてみるというようなことを始めたのだった。身をおくとはいってみても、やっていることといったらただ座り込むくらいのことなので、それで新基地建設が阻止されているのかどうか確かめようがない。運動の成果がすぐさま見えてこないという焦りのなかで徒労感がじわじわとわきおこってくる。そんなとき、落ち込んでいこうとする心が決まってたちかえっていくのが、阿波根さんの言葉、そして阿波根さんが書きとめた多くの人たちの言葉のゆきかいなのである。それはかけがえがない。そして、『米軍と農民』のなかにこそ、かけがえのないものへの求めそのものとして運動があることが示されていると感じられるのだ。
 何がかけがえのないものであるかを、ほかならぬ運動こそが人に教える。人と人とが連なる形において具体化する運動の営みの後に、何かが生れるというのではない。たとえば座り込むという営みを人が人と始めるその時に、そこで既にかけがえのないものが生み出されている。その事実を『米軍と農民』は伝えてやまない。
 たとえば、『米軍と農民』のなかに次のような一節がある。そこには、強制接収された土地を耕作する阿波根さんたちに暴行をくわえ尋問する米軍とのやりとりが記録されている。
 
中尉 代替地はあるのになぜ耕さないのか。
収容者 代替地については行政府の調査団がシャープ少佐とともに来られて、どこにもなにもないということを調査団の結論でもはっきりしています。
中尉 農耕することは不可能と思いつつなぜ農耕するのか。農耕地を守る以外に何か要望はないか。
収容者 私たちの宅地に元どおり家を作り、早く土地を返してもらう以外に何の望みもない。 (『米軍と農民』岩波新書、113頁)
 
 占領者はいつでもどこでも同じことを問う。「代替地はあるのになぜ耕さないのか」。「農耕することは不可能と思いつつなぜ農耕をするのか」。その問いに対する答えを、『米軍と農民』のなかに再発見していくことができる。代替地などないのである。
 今の今、辺野古のあの海を埋め立てて耐用年数200年ともいわれる半永久的な巨大軍事基地が造られようとしている。普天間基地を辺野古に「移設」するという日米合同委員会(SACO)合意から20年、沖縄の民意の一貫した新基地建設反対の訴えを踏みにじる日本政府が、沖縄を生きる者に言うのは同じことある。「代替地がある、基地の代替が必要だ」。
 しかし、私たちは阿波根さんたちと共にこう言うことができる。ここは「人間が住んでいる島」なのだ。人が人と共に生きていくいのちのありかたに代替などない。それはかけがえがない。辺野古をはじめとする沖縄におけるあらゆる軍事主義との闘いは、このかけがえのないものへの限りない求めに基づいている。
 こうして私は、阿波根昌鴻さんと阿波根さんが書きとめた人々の言葉のなかにこそ、沖縄の今と未来をみる。「不可能」と思える抵抗だけが、不可能を可能にしてきた。そこに望みがある。もうじき2018年が終ろうとする今の今、私が思っているのはそのことである。
 
◆新城郁夫(しんじょう いくお)
1967年,沖縄宮古島生まれ.琉球大学法文学部・人文社会学部教授.専攻は近現代沖縄文学・日本文学,ポストコロニアル研究,ジェンダー研究.
著書に,『沖縄文学という企て─―葛藤する言語・身体・記憶』『到来する沖縄─―沖縄表象批判論』(ともにインパクト出版会),『沖縄を聞く』(みすず書房),『攪乱する島─―ジェンダー的視点(「沖縄・問いを立てる 3」)』(編著,社会評論社),『まなざしに触れる』(鷹野隆大との共著,水声社),『沖縄の傷という回路』(岩波書店),『対談 沖縄を生きるということ』(鹿野政直との共著,岩波書店)などがある.

志は気の師也

 
   志は気之帥也 気は體(体)之充也
 
                          孟子の教え
 
 
〜   〜   〜
 
私の机の前の壁に
筆字で書いた小さな紙が貼ってある
画家・中川一政さんの著書を読んでいる時に
見つけた言葉である
もう、十数年前のことだろう
 
   志は気の帥(すい)なり
   気は体の充(みつる)なり

志は気の働きに影響を与え
気を奮い立たせてくれる
その 気が体を満たしてくれる
毎日のようにこの言葉を口ずさむ
元気がふつふつと体に満ちてくる
 
言葉は力 
言葉は祈り
言葉は まさに いのち
 

藤本幸邦老師


先日亡くなった、豊田市の二人の女の子のことを思っていると、ふと十数年前の出来事が蘇りました。

長野市篠ノ井に円福寺というお寺があります。円福寺には養護施設「円福寺愛育園」がありまして、長野県下でも戦後一早く養護施設として開園しました。住職兼、愛育園園長として頑張ってこられた藤本幸邦老師は月一度、当地佐久まで法話(サバスクール)に来てくださいました。
幸邦老師が90歳の卒寿を迎えられた時、私は8階建てのホテルの最上階のレストランで、お祝いの会を計画しました。佐久で一番のノッポビルで、ここから見る浅間山が最高にきれいなのです。
当日は快晴でした。大きな北側の窓には額縁に入れたような浅間山が輝いていました。幸邦老師は立ったままじっと浅間山を見ておられました。
私は「ああ、藤本先生、浅間山を見て感動されておられる。卒寿記念をここで開催できて良かった」そう一人喜んでいました。
老師はみなさんと満面の笑みで過ごされ、お祝いの会は終了しました。

それから3か月ほど経った頃でしょうか、ある方から藤本幸邦老師が長野市で講演された時の講演録が送られてきました。薄い本でしたから、すぐ読み始めました。そこには私が全く知らない老師の青春時代のことが書かれてありました。
「え!」読み始めてすぐに私の心は折れそうでした。
藤本幸邦老師15歳の時、2つ年下の妹さんが、仲の良かった女子友達と一緒に浅間山へ投身自殺をされたと、書かれてありました。その時、思春期真っ最中の老師のショックは計り知れません。
気持ちの優しい妹さんが、生きることを悲観していた友達に同情しての死であった・・・と。
親との縁の薄い子供たちの施設「円福寺愛育園」を始められたきっかけには、妹さんの死というものがどこかにあったのかもしれません。
卒寿のお祝いの会の時、浅間山をじっと見つめておられた老師の胸中は、どんなだったでしょう。それを思うと、今でも心が痛みます。
良かれと思ってしたことが、そうでなかったり、人生学校は宿題が大きいですね。

二人の小学6年生の女の子。今さえ生き抜いたらこれからどんなに楽しい日々が待っているのかも知れないのに・・・。
すべての大人たち、子供たちへ、命を懸けてメッセージを遺された2人。
どう受け取とめ、どう応えていけばいいのでしょうか。
一人の大人として、悔しくてそして申し訳なさでいっぱいです。



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