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一年以上も前のこと、スーパーの買物袋を提げての帰り道、交番の前に差しかかったところで、「ちょっと」と呼び止められた。どきっとしたけれど、声をかけたのは自転車に乗ったおばさんだった。おまわりさんは無表情に立っていた。
「このへんに、おいしい肉まんの店があるって聞いたのだけど、知ってる?」
四、五軒引き返したところに肉まん屋があるのは知っていた。有名らしいと、誰かに聞いたような記憶が、おぼろげながらある。いつも店の前に客がひとりふたりいて、それなりに流行っているのだろう。
「少し行ったところに、肉まん売ってる店があるけど、そこのことかな」
指さして説明しているのに、おばさんは示す方向には目もくれず、こっちの顔を眺めているのだ。親しげな表情はいいとしても、そのままの口調で、こんなことを言うのである。
「食べたの? 食べたこと、あるの?」
軽く咎めている響きさえある。いい加減に薦めないでよ、みたいな。誰が薦めるものか。いっぺんに不機嫌になってしまった。おまわりさんに拳銃を借りて、自転車のタイヤをぶち抜きたいぐらいの気持だった。
「ない」
おまわりさんは相変らず無表情に立っていた。
ひょっとするとあれは売込みだったのかと、そんな想像もして、それ以来店の前を通りがかるたび中を覗いた。あのおばさんの姿を店の中に見つけようとしたのだが、いつの間にか顔も忘れた。こんなかんじの顔だったと、思い出そうとすれば、そんなかんじの顔のおばさんは、いたるところにいた。
その肉まん屋は、間口の割には大きな店なのか、職人は何人もいるようだった。三人、四人と路地に出て、通りを眺めながら煙草を吸っているのをよく見かける。そうすると六、七人はいるのかと思うのだが、この計算はまるで当てにならない。
「青木さやかの青すじ肉まん」なんて手書きのポスターが貼ってあったりして、今のところ食ってみようという気にはならない。それに高いのである。肉まん一個が、チョコパイの徳用袋よりまだ高いのだ。
それでも、有名な店なのだそうだ。職人も大勢いて、店の前も常に客がいて賑わっているのである。きっと、今まで食っていた肉まんはなんだったの! と言うぐらい旨いのだろう。いずれ機会があれば‥‥。
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どうしていつも、おばさまに見つめられてしまうのでしょうね。きっと優しいお顔をしてらっしゃるのでしょうね。ふふふ♡
2006/11/23(木) 午後 11:18
昔、占いで「女難の相」が現れてると言われたことがあります。あれはもっと色っぽいものかと思っていたのですが、そうとは限らないみたいですね。
2006/11/24(金) 午前 0:03 [ tomboro ]
青きさやかなんて、まずいに決まっています。
2006/11/26(日) 午前 8:10 [ - ]
歯も胃もよほど頑丈でないと‥‥。
2006/11/26(日) 午前 9:33 [ tomboro ]