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遠目にも、”彼女”のしぐさや表情が、普通ではないことが分かる。
「欄干が高くて邪魔なので、もう少し高い場所へ移動してもらえませんか?」
川を挟んだ対岸から、そう呼びかけた僕の声に従い、
十分に顔が見える場所に立った”彼女”の顔に照準を合わせ、
僕は一枚、シャッターを切った。
「満開の緋寒桜(ひかんざくら)」で知られる那覇市の与儀公園へ
それを撮りに出掛けた、ある日のこと。
陽も西へ傾き、もう帰ろうとした夕間暮れの頃、
一筋の川の両岸に咲き乱れる対岸の桜の中から、「○○さ〜ん」と
僕の名を呼ぶ声が聴こえ、その方を見ると、知り合いの老練なヘルパーの女性が
紫っぽい色の服を着た小さな女の子の手を引きながら、こちらへ笑顔を向けていた。
その様子に、思わず、「お孫さんですか〜?」と問うと、
「仕事よ、し・ご・と。」と、彼女から返答が来て、僕は“意味”を了解した。
つまり、彼女は、心と体に何らかの障がいを抱える女の子の「外出介助」の最中だった。
そして、「女の子と桜」のツーショットを撮ってくれないかと、僕は彼女に頼まれたのだった。
ファインダーを除くと、伊達のような眼鏡をかけた屈託のない少女の
つるりとした童顔の後ろに、パチパチ爆ぜた桜のつぼみが、あまりにも健全に過ぎ、
“ある対比”が、痛々しくも目に染みる。
その”対比”と、“少女の屈託のなさ”に、居たたまれなくなった僕は、
「もっと笑顔で、ピース、ピース!」と、できるだけ平静を装いながら呼び掛けると、
ただ声の意味に呼応するように、少女の頬がわずかに緩む。
心が弾んでいるというよりも、カメラを前にした時、人がふつうに作る反射的な笑顔…
ファインダーに添えた僕の効き目である左目には、そう見えた。
それでも邪気や屈折はなく、桜吹雪にとろけて行きそうな恍惚と放心の端境(はざかい)が、
あどけない笑みの中に、危うくもまだ、埋め込まれていた。
ふいに、ショートカットのおかっぱの黒髪を、少し早い春風が、ふうわり撫ぜた。
西よりの風に乗った桜の花びらの幾枚かが、一瞬、上空へ舞い上がり、
音もなく川面に舞い降りていった。
認め引き受けねばならぬ、彼女じしんと、彼女に関わる人たちのこれから先のさだめを、
落花するひとひらの小さな花弁じしんが、その落ちゆくさまに優しく映しながらも、
いずれ必ず、咲き誇り舞い上がる瞬間が、人にも等しく訪れることを告げるかのように。
作り物ではない、ホンモノの笑顔咲く美しい季節が。
魂に、多くを受傷した者だけが知りうる、密やかなギヤマン・ビードロの輝きが。
連続する不確かな虚しさの刹那に垣間見える、何やら分からぬそれでも確かな、
いとおしさのようなものが。
まだ冬の気配を残す冷たい川面に散った花びらは、
幸せそうな人波で溢れる、かつてじしんが居た華やかな場所を静かに離れて行き、
豊漁の季節の気配を孕む、泊埠頭(とまりふとう)の方へ向かった。
川面から桜並木に目を移すと、
流れ散り去った桜の花の、すぐ傍らのふところ枝で、
薄紅色の新たな命が一つ、パラリと爆ぜた。
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ロビンソン
詞/曲:草野正宗
唄:スピッツ
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新しい季節は なぜかせつない日々で
河原の道を 自転車で 走る君を追いかけた
思い出のレコードと 大げさなエピソードを
疲れた肩にぶらさげて しかめつら まぶしそうに
同じセリフ 同じ時 思わず口にするような
ありふれたこの魔法で
つくり上げたよ
誰も触われない
二人だけの国
君の手を離さぬように
大きな力で
空に浮かべたら
ルララ
宇宙の風に乗る…
片隅に捨てられて 呼吸をやめない猫も
どこか似ている 抱き上げて
無理やりに頬よせるよ
いつもの交差点で 見上げた丸い窓は
うす汚れてる ぎりぎりの
三日月も僕を見てた
待ちぶせた夢のほとり 驚いた君の瞳
そして僕ら 今ここで
生まれ変わるよ
誰も触われない
二人だけの国
終わらない歌
ばらまいて
大きな力で
空に浮かべたら
ルララ
宇宙の風に乗る
大きな力で
空に浮かべたら
ルララ
宇宙の風に乗る
ルララ
宇宙の風に乗る…
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