たいまつ

体調不調により、ブログをお休みします。

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さよならの夏




 
僕が、訪問介護の仕事で、
「入浴介助」と「家事援助」を担当している利用者さんの一人に、
以前にも記事にした、右足の膝から下が無く、ヘルパーや訪問看護師さんの
顔や訪問日さえ覚えられないほどの、重度の認知症を患いながらも、
小さなマンションの一室で、一人暮らしをされている男性の方がいる。
 
この利用者さんのケアマネージャー(要介護の人たちの介護プランを立てる人)が、
難じるに値する酷い人物で、例えば、僕たち介護士や訪問看護師さんからの報告により、
この方に、毎日のように「失禁」があるのを承知していながら、一切、何の対策も取らず、
およそ半年間、彼の家の中を“尿だまり状態”に放置し続けて、
それらの処理は、現場に丸投げしたり…
 
そして、先日はついに、こんな出来事があった。
このケアマネと利用者さんの二人で、検査のため病院受診に行った時、
車椅子に乗った利用者さんが、道端の段差を乗り越えようとした際、
車椅子ごと後部へ転倒し、頭を強打して意識を失い、救急車で病院へ搬送されたそう。
 
つまり、ケアマネは、傍に付いていながら、段差を越える時でさえ車椅子を押さず、
すなわち、彼には手を貸さず、付き添っている間、利用者さんの行動に、
全く注意を怠っていたということ。
大した怪我には至らなかったのが、不幸中の幸いだったけど、後から聞いた話では、
このケアマネは、全く悪びれる様子もなく、利用者さんへは勿論、
どこへも誰にも、詫び一つ入れなかったという。
 
そして、ついには、「一人で外出させるのは危険だから」という、このケアマネの独断で、
この利用者さんの「足」代わりであった、松葉杖と四足の歩行器さえ取り上げてしまい、
以来、片足のない彼は、一歩たりとも部屋から外へ出ることができなくなったばかりか、
家の中で、居室から廊下を隔て少し離れた場所にあるトイレに行く時でさえ、
四つん這いになり、文字通り、地を這うように移動せざるを得なくなった。
 
だが、ここでは、このケアマネをめぐるその後の処置や状況については、ひとまず置く。
彼を難じることを主題にはしたくないので。
 
 
彼の「足代わり」になる介護用具を奪われて以来、
80㎏前後の体重を擁する彼の身体を抱えての“移動”が、危険かつ困難になり、
僕たちも、浴室での「入浴介助」ができなくなってしまったため、
代わりに、全身を熱い濡れタオルで拭く、「清拭」(せいしき)を行うことになった。
 
顔や頭髪から始め、せめてもと、できるだけ丹念に身体の下部へと拭って行き、
“そこ”へ行き着くと、両足の膝には、四つん這いで移動するために出来たと思われる
大きな擦り傷が、痛々しい。
歯磨きや髭剃りも、フロアの下にタオルを敷いて濡れないように行うのだけど、
とりわけ、髭剃りの最中、どうしても彼と視線が合ってしまう。
 
いや、「視線が合う」という双方の意思ではなく、「彼の目が見えてしまう」と
言った方が正しい。
つまり、彼の目は、何ものをも見てはおらず、
彼の内面は、“悲しみの色”さえ帯びていないほどに、
世界の一切からだけでなく、自らの感情からも断絶されている…
 
 
様々な不運に見舞われながらも、「彼の瞳(ひとみ)が死んではいない」ことを、僕は知っている。
 
例えば、高校時代、インターハイにも出場したことがあると、いつか彼が教えてくれた、
得意の“ボクシング”の話を彼とする時、“当時の雄々しさ”を彷彿させるように、
彼の瞳もまた、みるみると輝きを取り戻す。
例えば、洗濯物を干す作業をしている際、「何かお手伝いしましょうか?」と
僕に声を掛けてくる時の彼の瞳には、他者を気遣う心が穏やかに映り灯っている。
 
そのように、もはや生きることしか残されていないほど人間を剥き出しにされていながらも、なお、
心を失くしていない人が、“髭剃り”の一瞬に垣間見せる、心を失くした目。
 
「瞳」 と 「目」 …どちらが、彼の“真実”なのだろうか…
 

ある日、台所を掃除していた時、明るい陽射しが時折さしこむ正面の窓の傍らに、
適度に水の入った、小さなコップを見つける。
ミクロな小宇宙の中では、一輪の胡蝶蘭が、窓から訪れる柔らかい春の光と爽やかな風を、
花いっぱいに吸い込んで、今ある命を、ひっそりと息衝いていた。

そして、小さな花弁に触れると、“世界にさわっているのだ”という、確かな手触りを感じた。
 見知らぬ誰かのやさしさが、”そこにある”ということを…


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「今度はいつ、おみえになるのですか?」
 
帰り際、その声に振り返ると、そう発した人のかんばせには、
心を失くしていない人の、わずかに輝いている瞳があった。
 











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さよならの夏
 
詞:坂田晃一
曲:万里村ゆき子
唄:BEBE
 
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光る海に かすむ船は
 
さよならの汽笛 のこします

 
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ゆるい坂を おりてゆけば
 
夏色の風に あえるかしら

 
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わたしの愛 それはメロディ
 
たかく ひくく 歌うの

 
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わたしの愛 それはカモメ
 
たかく ひくく 飛ぶの

 
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夕陽のなか 呼んでみたら
 
やさしいあなたに 逢えるかしら…

 
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だれかが弾く ピアノの音
 
海鳴りみたいに きこえます

 
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おそい午後を 往き交うひと
 
夏色の夢を はこぶかしら

 
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わたしの愛 それはダイアリー
 
日々のページ つづるの

 
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わたしの愛 それは小舟
 
空の海を ゆくの

 
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夕陽のなか 降り返れば
 
あなたはわたしを 探すかしら…

 
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散歩道に ゆれる木々は
 
さよならの影を おとします

 
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古いチャペル 風見の鶏
 
夏色の街は みえるかしら

 
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きのうの愛 それは涙
 
やがて かわき 消えるの

 
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あしたの愛 それはルフラン
 
おわりのない言葉

 
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夕陽のなか 
 
めぐり逢えば

 
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あなたは わたしを
 
抱くかしら…

 
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