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====ナレーター==== 今日の風太郎は猫になって、東京の下町のアパートにいる。新しい読者のために自己紹介しよう。風太郎は意識そのもの、独立して存在するが姿は無い。何にでもなれるが、今日は猫になって人間界を描写することにした。 言い換えると、ヤドカリのように、猫の意識に潜入したというわけだ。私にも選ぶ権利があるので、漱石が飼っていた猫から20代目の子孫、ミイの頭脳に潜入した。由緒正しいサラブレッド、実に気持ちがいい。 漱石は草枕の冒頭で「・・・兎角に人の世は住みにくい。」と気楽に言っているが、21世紀の今日、そんな生易しいものでは無くなっている。「住みにくい」という程度であれば、我慢せねばなるまい。言い回しが漱石に似てきてしまったが、今日だけはこの文体で許していただくとして、本題に入ることにしよう。 ====30年も勤めた営業マン==== 私の飼い主、良介は下町の乾物の仕入れ問屋の営業マンだ。中学を卒業して10年ぐらいは、いろんな職業を点々としたが、30年ほど前からは今の乾物問屋の仕入と販売の中心的存在となった。なじみの顧客も150件ぐらいはあるらしい。今は奥様と仲良くアパートで二人暮らし。二人の子どもは逞しく巣立ってしまった。巣立った子供の代わりに私が飼われたのかも知れぬ。 我がご主人の仕事は、顧客を回って注文を聞き、仕入れをし、お届けするといった毎日だ。会社は有限会社で社長とその息子二人、それに我がご主人良介、社長の奥様が経理をやっている。バブルが崩壊するまでは、その他に数人の若い従業員がいたが、2,3年前までに辞めさせられた。良介だけは一番古くからの従業員ということで首が繋がっていた。 確かに景気は悪い。回復したと言っても勝ち組の話しだ。スーパーに押され、顧客である小売店は次々に姿を消した。 ====来月末ということで=== このところ営業も若干盛り返し、安定していた。しかし、数ヶ月前に社長から一度、良介に対して「辞めてくれないか」との打診があった。その時は即座に断った。その後、何も言われないので一件落着と思っていたが、つい先日、長男から「来月までと言うことで、お願いします。」と言われた。 良介は55歳、ここで辞めてもあてが無く「それは困る」と応じた。数日後。アパートの管理人から「辞めるんですって」と言われ「辞めないよ」と言うと「社長の奥様から『来月末で借り上げ社宅の契約を解除する』と言われてるんだけど」と言われた。 翌日、出社すると、奥様の弟が「良介さん。辞めるんだって。今度、私がやることになったから、しばらく一緒に顧客まわりと仕入れを教えてください。」と挨拶してきた。良介は「俺は辞めないよ」と言うと、「話が違うんだ」と困った様子だった。 ・この続き(第23話の2)は右をクリック→http://blogs.yahoo.co.jp/huchisokun/32150300.html
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退職強要、執拗な退職勧奨
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