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【店から追い出されて】 二十歳前後の可愛い女性が入ってきた。風太郎は別の女性の労働相談を受けていたので、後ろの座席で待ってもらうことにした。相談員は私しかいないので止むを得ない。別の女性の相談を受けながらも、後ろに座って待つ若い女性が気になって仕方が無かった。 気丈で、しっかりした感じがする反面、自信のなさそうな、明らかに何か非常に困っているといった、相反する感情が同居しているというふうだった。別の女性との相談が終わり、佳代子(仮名)が目の前に座った。 ★風太郎 「まず、幾つか基本的なことをお聞きします。その後は自由にお話ください。」 「どんな仕事をしていますか」 ☆佳代子 「エステです。」 ★風太郎 「正社員ですか。会社に入ってどのくらい経つの」 ☆佳代子 「正社員です。入社して1年半です。」 ★風太郎 「入社してからのことを少し話してくれますか」 ☆佳代子 「最初の3ヶ月はアルバイトでした。初め日焼けサロンに配属され、今の店とは違う店で働いていました。1年前に今の店に異動し3ヶ月間はエステの補助をして、今は担当のお客様を持っています。お客様はキャッチで連れてきます。」 ★風太郎 「分かりました。後は自由にお話ください。」 ☆佳代子 「残業は多いし、残業代は支払われないし、長時間拘束されるので体もきつくて、2ヶ月ぐらい前に『辞めたいと思っている』と先輩に言いました。それが、今度のことの原因になったと思います。」 「この店には店長もいますが、店長からは何でもこの先輩に話すように言われてましたから・・」「先輩から『もう少し考えてみたら』と言われ、私も続ける気になっていました。」「しかし、この日から先輩の態度が変わりました。きつくあたるようになりました。」 「1ヶ月前に『やる気が無いなら辞めな!』と言われました。『ちゃんとやります。』と答えたけれど、お客様担当を外されました。前にやっていたエステ補助に戻されました。まだ、給料をもらっていないので分からないけれど、給料は半額になると思います。」 「私は辞める気は無かったけれど、担当を外されたので辞める気になりました。今週の火曜日に『辞めます。』と先輩に言いました。先輩は『分かった。一月半後、来月末』と言いました。私もすぐ辞めると生活に困るので、来月末の心算だったので、『それで良いです。』と言いました。その後、店長が電話で社長と私の事を何やら話しているのは知っていました。」 「2日後の昨日、先輩に呼ばれ、『辞めていい。もう来なくていい。』と言われました。私は『来月末のはずじゃないですか』と抗議しました。『明日から来なくていい。』『解雇じゃないよ。』と言われました。」「店長は、黙ってこちらをチラチラ見ていました。ニヤニヤしていました。」 【ハローワークで泣いちゃいなさい】 ★風太郎 「先輩に言われても正式じゃ無いから、明日出勤しなさい。」 佳代子は黙ってしまった。風太郎の顔を見ながら、涙がドッと溢れ出してきた。後は下を向いて泣くだけだった。風太郎は無理な要求をしたと知った。彼女はしばらく泣いていた。気丈さは見掛けだけだったのかも知れない。 「分かりました。無理なことを言ったみたいだね。ごめんなさい。」「“怖くて行けない”と言うことか・・・」風太郎は考えた。仮に自分が団体交渉を要求しても、すぐに解決するとは限らない。労働局の助言・指導を申出ても時間がかかる。 社長は労働局に対して「解雇はしていない。」と言うだろう。「現場で、“何か喧嘩があった”とは聞いている。“翌日から来なくなった。”と言うことだ。」と言いわけするのは目に見えている。彼女は当面の生活に困っている。 ★風太郎 「貯えは少しはあるの・・」 ☆佳代子 「ありません。だから、困って・・」 ★風太郎 「雇用保険には入っているの・・」 ☆佳代子 「入っています。」 ★風太郎 「“離職票”(所謂、失業保険受給の為の書類)の話はしたの・・」 ☆佳代子 「先輩には、そんな物は出せない。」と言われました。「こんな形で辞めさせられたのは私だけではありません。」「この1年間で4人、私が5人目です。直ぐに新人が入ってきます。私の場合も、新人が決まったんだと思います。」「社長の指示で動いているのは分かっています。」 ★風太郎 「社長には会ったことはあるの・・」 ☆佳代子 「沢山の店を持ってるので、時々巡回してきます。」 ★風太郎 「『残業代が払われてない』と言ったけど、タイムカードか何かで証明できるかな・・」 ☆佳代子 「私が入社する前に労基署が入り、残業代を払わされたので、その後タイムカードは廃棄されました。だから、会社には何の記録もありません。」「社長は『労基署が来ても、これで大丈夫』と言ったそうです。」 ★風太郎 「悪質だね。」 ☆佳代子 「明日、どうしたら良いですか・・」 ★風太郎 「ハローワークへ行って、事情を説明しなさい。あなたは無理矢理解雇された状態にあるとハローワークが判断すれば、職権で、待期無しで支給を決定する場合もあります。あなたは嘘を言っている分けではない。本当のことを言っているんです。本当のことと理解されれば、大丈夫です。」 「簡単に引き下がっては駄目です。さっきみたいに泣いちゃいなさい。“ハローワークは何もしてくれないんですか”と言って泣いちゃいなさい。」「印鑑と通帳と過去の給与明細全部、資料になりそうなものは全部持って行ってください。」「残業代や損害賠償の問題はその後で考えましょう。」 佳代子はホッとしたらしく、笑顔になって帰っていった。やはり、気丈でしっかりしているのかもしれない。風太郎はハローワークが適切に対処することを祈った。 憲法はずたずたなぼろきれの様になってしまいました。でもまだ旗竿の先で誇り高くたなびいています。今、この旗竿さえ奪い取られようとしています。日本がアメリカ手先となり、戦争をする国になった時、基本的人権など主張できる状態ではなくなります。
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退職強要、執拗な退職勧奨
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初めまして。 解雇相談は私もメールでよく受けます。 使用者(社長)は、解雇権濫用法理をあまりにも知らな過ぎる、とよく痛感します。 私のお気に入りに追加しましたので、参考になる記事を、宜しくお願いします。
2006/7/16(日) 午後 4:44 [ - ]
ファン登録に感謝します。 私もqmmcg738 さんの記事を参考にさせて頂きます。
2006/7/16(日) 午後 4:54 [ 風太郎 ]
身につまされますね。今の労働環境がいかに劣悪になつているかリアルに伝わってきます。ここのは、いつも楽しみであり 為になるエントリーです。
2006/7/17(月) 午後 2:02 [ mr.Q ]
コメント有難うございます。なかなかリアルに表現することはできません。読んで頂ければ励みになります。
2006/7/17(月) 午後 2:21 [ 風太郎 ]