労働相談奮闘記

労働者の悲痛な叫びを伝えたくて、そして解決に役立てて頂く為に

派遣のトラブル(その他)

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優れた派遣先の担当者

【消え入るような声の電話】
電話の声は、消え入るようで弱々しかった。明らかに精神障害を患っている。風太郎が受ける電話の1割2割がうつ病やPTSDのような精神障害を患っている労働者からのものだ。従って、電話の最初の声で分かるようになった。

彼女は、大手メーカーのソフトウエア部門に派遣されている女性労働者と分かった。仕事は、システムエンジニア、その企業へ派遣されて1年半になる。派遣元は、大手の派遣会社である。3か月毎の更新を繰り返している。1か月前に同じ派遣先の別の部署に異動になった。今回の契約は3月末までである。問題は、この異動先で起こった。

【うつ病で転落】
彼女は、うつ病を繰り返している。以前働いていた会社でも、会社の人間関係が原因でうつ病になり辞めた。その時は、正社員だったが、今は登録型の派遣社員である。自己責任の国・アメリカでは病気をすると奈落の底に転落するが、日本もその道を歩み始めた。病気によって、正社員から派遣社員へ転落したのである。

【昔の職場と今の職場】
彼女は、システムエンジニアの仕事が大好きである。今の若者をとりまく職場環境は風太郎が過ごした時代とは雲泥の差がある。悪くなっているのである。昔は、うつ病のことをノイローゼと呼んでいた。ノイローゼの患者は私の部下にもいたが、そんなに多くは無かった。

【大企業での対策も対処療法】
今は、多発している。正常でいられる方が異常ではないかと思われるような過酷な職場環境である。大きな企業では、職場のいじめや嫌がらせが生産性に与える影響が無視できないと対策に乗り出しているが、多くの企業では放置されている。対策と言っても成果主義を止めるなどの根本治療では無く、いじめに対する処罰やカウンセリングの導入などの対処療法である。

【引き継ぎがされない】
話を元に戻します。
彼女は、システムエンジニアとしては、有能なベテランである。しかし、ベテランであるからと言って、企業ごと部署ごとにやっている仕事の内容は違うのでキチッとした教育や引き継ぎがないと能力を発揮できないのは言うまでもない。

彼女は、1月のはじめから新しい部署で別の仕事をすることになり、異動した。そこで、何らかの事情で辞めるプロパー社員から引き継ぎを受けることになった。部長や課長に挨拶し、引き継ぎをしてくれる女性社員にも挨拶をした。

挨拶をしても返事がなかった。無視されたのである。大企業なので職場は広い。良い環境である。しかし、広いフロアの中には人はまばらである。引き継ぎをすべき女性と二人で、周りには人が少ない。

【無実の罪】
口をきいてもらえずに1週間が過ぎた。たまりかねて派遣先の課長や部長を探したが、会議の連続のようで話すことができない。10日経って、派遣元に相談した。派遣元に担当者はすぐに動いてくれた。

派遣元の要請で派遣先での業務打ち合わせが行われた。出席したのは、彼女の他には引き継ぎをする女性、業務上関係する社員、それに派遣先の上司である課長、全部で7名だった。

課長が、引き継ぎの状況を辞める社員に尋ねた。そこで彼女は自分の耳を疑った。「引き継ぎは終了しました。」と言ったのである。しかも、渡されていない資料を示し、渡したとウソをついたのである。他の社員たちも、その社員の発言を信じたようである。
打ち合わせは、私に対する尋問の場となってしまった。

その日の午後、耐えられず、体調が悪いと言って帰宅した。そして、病院に行ったのである。風太郎への電話は、その翌日だった。

【風太郎の判断】
こういう場合の風太郎の判断は、争うことよりも休ませることである。うつ病が酷くなった場合、自殺もありうる。だから、まずは保護する必要がある。多分、診断書がでると思うので休みなさい。」とアドバイスした。

風太郎は、休みは長期化するだろうと感じた。彼女の派遣期間は3月末までである。同じ派遣先での業務を続けることは困難だと感じた。聞いてみるとご両親と一緒に生活しているとのことだった。「ご両親に話しなさい。風太郎からそう言われたと言って話なしなさい。」とアドバイスした。「力になってくれるはずです。」と付け加えた。こういう場合、生活の不安を取り除くことが重要だからである。今まで、ご両親にはうつ病のことは隠していたとのことだった。

そして、今後の仕事については、同じ派遣先で働くことは難しいだろうと説明した。派遣元の担当者は、よく動いてくれる人のようだから、よく相談しなさいとアドバイスした。

【派遣元が適切な対応】
ラッキーだったのは、派遣元の担当者が派遣社員の立場に立って動いたことである。派遣先の上司に状況の説明をし、今後の職場についても協力をしてもらうことにしたのである。彼女は、今、傷病手当金の受給を受けている。派遣先の担当者からは、「治ったら同じ派遣先の別の部署で働けるようにしましょう。」と言ってくれたそうである。早く、快方に向かうことを願っている。

こんな場合、同じ派遣先で働けると言うのは珍しいことだと思う。

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風太郎
風太郎
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