手帳の記録なども裁判での証拠となり得る
「労働基準広報」という雑誌がありますが、その10月21日号にQ&Aというかたちで標題の記事がありました。質問者は事業主側であり、回答者は安西法律事務所の弁護士・梅木佳則氏です。記事は事業主側の立場で書かれていますが、労働者側の立場でも参考になるものでした。
記事のタイトル:「手帳の記載は裁判で証拠となるか」
Q「元従業員から未払い残業の請求が・・・・・」
A「手帳も証拠となり得、一定の残業代の支払いが命じられ得る。
証拠能力として不十分であっても全額ではないが残業代の支払いが命じられる裁判例
本文の中では三つの裁判例を挙げています。注目するのは、これら裁判例で労働者の手帳などの記載について裁判所の結論は“この手帳の記録によって労働時間の証明はできない。”“十分にこれら手帳に信を措けるとまではいいきれない。”“その記載をそのまま採用することはできない。”などと、手帳などの証拠能力を不十分としながらも、全額ではないにしろ、三つの裁判とも残業代の支払いを企業(被告)に命じていることです。
そして、この記事の「まとめ」の部分では「手帳の記載と言うだけでは、直ちにその証明力が認められると言うことにはなりません。貴社が手帳の記載の信用性を争うのであれば、どの部分がいかなる理由で信用できないのかを具体的に反証する必要が有り、反証に有る程度成功してもAさんが時間外労働したことは間違いないということになれば、裁判等において、一定の時間外労働が認められることは十分ありうると思われます。」と結んでいます。
この記事で挙げている裁判例は次の三つです。
日本コンベンションサービス事件(大阪高判 平成12・6・30)
労働者主張の労働時間の2分の1が認められた。
労働者の主張の半分を認めた理由を裁判所は「時間外労働がなされたことが確実であるのにタイムカードが無く、その正確な把握ができないという理由のみから、全面的に割増賃金を否定するのは不公平である。」
フォーシーズンズプレス事件(東京地判 平成20・5・27)
労働者請求の時間外手当額の6割が認容された。
労働者の主張の6割を認めた理由を裁判所は「もともと従業員の勤務時間を管理すべき責任は使用者にあり、使用者がタイムカードによってこれを果していればこのような問題は生じなかった・・使用者が果たすべき義務を果たさなかったためにこのような問題が生じたのであるから、その責任をすべて従業員に帰する結果とするのは相当でない。」
オフィステン事件(大阪地判 平成19・11・29)
労働者が記載した出退勤表の記載から求められる時間外労働の内3分の2程度が認められた。
労働者の主張の3分の2を認めた理由を裁判所は「その記載をそのまま採用することはできない」ものの、「全くのでたらめということはできず、一応、原告の記憶に基づき記載されているもので、時間外労働の算定の資料とすることは可能」
この記事から言えること
裁判のことだから、やってみなければわからない要素はありますが、手帳の記録といった証拠としては不十分なものでも、有る程度有効に争うことができるわけですから、営業日誌や業務日誌に時間をちりばめ、上司の指示を書き込み、会社の公式な記録などとの関連付けを行い、仕事の修了時間の後に明日の予定や一日の反省を書き込むなどしたら完璧な証拠として取り扱われるのではないでしょうか。
いずれにしろ、準備をして争うなら良い結果になるものと思いました。
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最近多くなっている、年俸制の場合に
基本給+見込み残業代+手当ての明確な区分がされて居らず、
見込み残業を超過した分の残業代を支払わない事が多いです。
見込み残業は大体40時間程度の場合が多いですが、
殆どの場合それを超過している。(当然36協定なんてどこ吹く風)
未払い分の時間を計算してを請求しても、
基本給+見込み残業代+手当ての割合を
”調整”することで(基本給を目一杯低くする、手当てを多くする等)
超過分で発生する金額を抑え込むという、手法が蔓延しているようです。
2010/11/1(月) 午後 11:19 [ mikun ]