労働組合が無いのに結束して交渉
残念ながら、ほとんどの企業で労働者はバラバラな状態にあり、結束して交渉する力を持っていないので事業主のやりたい放題になっている。だから、労働者が数名でも一緒に相談に来ること自体めずらしい。
今日は、その珍しいことがあった。介護の現場で働く数名の女性が訪ねてきたのである。話によると、残業は結構あるが、残業代は払われたことが無い。賃金は、年俸制でそれを16等分して12月と6月にボーナスが2カ月ずつ払われている。ボーナスについては、業績によっては変動があり、出ない場合もあることになっているが、昨年まではでていた。
事件の発端は、ある労働者が辞める際、労基署に残業手当不払いを申告したことにより事業主に対して賃金の是正勧告が行われたことである。
当該労働者に対しる賃金是正は行われたようであるが、他の労働者は放置された。その後、企業側は顧問弁護士や社会保険労務士と相談したようである。
突然、全社員宛てに2通の書面が配布された。1通が各社員共通の書面で「社員各位」で始まっている。2通目は各個人宛で各人の4月以降の賃金の金額が記載されていた。
1通目の全社員共通の書面の内容はおおよそ次のような趣旨である。
就業規則に付随する賃金規定が変更されたので通知する。
新賃金規定は、4月分の賃金から適用となる。
4月分賃金から基本給、職務給、固定時間外手当を支給することとなる。(従来の賃金は基本給と職務給だけである。この書面だけを見ると、今後は時間外手当も支払われるように思える。)
私はAさん宛ての2通目の書面を見せて頂いた。
基本給140,000円、職務給20,000円、固定時間外手当68,000円、合計228,000円
従来はどうだったかと言うと基本給が208,000円、職務手当が20,000円、合計228,000円である。
要するに今までの基本給の額を減らして減らした金額を時間外手当としただけだった。しかも時間外手当は60時間分が含まれるとなっている。皆、口には出さなかったけれど残業代が払われないことに疑問は持っていた。そこへ60時間の残業代が払われているとされたものだから、騒然となった。皆で相談して、総務部長との話し合いとなった。
会社は、「今までと何も変わらない。残業代が含まれる賃金であることは、みんな承知のはずだ。今までの実態を賃金規定上ハッキリさせただけだ。」と主張したそうである。
Aさんたちは「今までは残業代の不払いであり、これからは不払い残業の隠ぺいではないのか。」と主張したそうである。「60時間もの残業をしなければならないのか。」と追及したところ「それは無い。一応、通常考えられる程度の残業代が含まれるという意味で、60時間の残業をしなければならないと言う意味では無い。」と答えたそうである。
Aさんたちは、過去にさかのぼって残業代を払うよう要求した。これには会社側はそうとう慌てたようだった。
労働組合でもないのに素晴らしい交渉力だと感心した。話し合いは継続中だそうである。会社が組合でもない労働者の集団と交渉に応じることは少ないが、彼女たちは仕事上でもリーダー的な立場にあり、会社も無視することができなかったようである。
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