労働相談奮闘記

労働者の悲痛な叫びを伝えたくて、そして解決に役立てて頂く為に

推薦図書&書評

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親子の葛藤を描いた優れた小説
子供の自立は、親にとっての最終目標だが、易しい目標ではない

この本を読んだきっかけ
労働相談で気付くことは相談に来る労働者が精神疾患に罹患していることが実に多いことだ。労働環境は昔とは比べようが無いほど厳しい。精神疾患に罹患した労働者はリストラの対象になりかねない。彼らにとって紛争の解決は非常に厳しいと言わざるを得ない。

私は精神科医ではないが、多くの患者労働者の対応をする以上、一定の知識は必要になる。労働法だけでは役に立たない時代になってしまった。精神疾患も多種多様である。先天的な場合もあり、発病はやむを得ない場合もある。また、労災に認定されるような企業に全責任の有る場合もある。また、発病のきっかけが業務にあったとしても、まだ自立していないことに根本的な原因が有る場合もあることは否定できない。

「稲の旋律」を読んだきっかけは妻に薦められたことであるが、仕事上の必要性があってのことである。精神疾患は薬だけで良くなるものではない。家族の人間関係がどれほど大切か教えてくれた小説である。

家族の人間関係が発病や治癒に大きく影響する
大學を良い成績で卒業し、就職した会社で嫌なことがあり出勤できなくなった子供のことで悩む親は多いと思う。この小説は、そんな親御さんには是非読んで欲しい小説である。

精神疾患を患った患者にとって、決定的に重要なのは職場の同僚や家族の接し方である。病状を良好な状態に保ったり、社会復帰ができるようにするために家族との人間関係が重要であることに異論を挟む人はいないだろう。

「稲の旋律」は主人公である千華の発病と闘病生活を扱った小説である。「あらすじ」はウィキペディアで見付けたのでそれを下に紹介する。残念ながら、ウィキペディアの紹介する「あらすじ」では小説のテーマである主人公と父母間の葛藤について触れていない。その点について後で若干触れることにしたい。
○「稲の旋律」のあらすじ(ウィキペディア)→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%B2%E3%81%AE%E6%97%8B%E5%BE%8B

作者自身に長年ひきこもりで苦しんだ経験が有る
「稲の旋律」を読み始めて気付いたことは、対人恐怖症になった主人公・千華の心理状態を見事に表現していることであった。ここまで書けるのはどういう人だろうと考えた。著者は、医者だろうか精神保健福祉士だろうかなどと考えながらネットで調べた結果、そうではなく著者自身に9年間ものひきこもりの経験が有ることがわかった。なるほどと感じた次第である。
○著者・旭爪あかね(ひのつめあかね)さんについて→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%AD%E7%88%AA%E3%81%82%E3%81%8B%E3%81%AD
農家の男性との文通を通じて、親にさえ閉ざしていた心を開いていく
主人公・千華は会社でのちょっとしたミスがきっかけとなり対人恐怖症で出勤できなくなった。会社のある錦糸町駅で下車することができず、電車は都会を離れ田園地帯に入って行く。ある田舎の駅(三喜町)で下車し、良く実った稲の育つ稲田に入り込む。稲田で心は不思議と平穏をとりもどし、パッヘルベルのカノンの音色が聞こえるような気がする。

この稲田で千華は誰に宛てるともない手紙を書き空のペットボトルに入れて稲田に置く。手紙の最後には「このまま父も母も年を取ってしまったら、私も一緒に死ぬしかないのでしょうか。誰か私を助けてください。」と書いた。たまたまこのペットボトルの中の手紙を読んだ農村の独身男性・晋平との文通が始まる。父母との間には無かった心の交流が始まったのである。

千華は、晋平と親しくなり草刈の手伝いなどに来るようになる。農繁期には晋平の家族と一緒に生活し農作業を手伝うことも多くなった。小説は最初から最後まで全て手紙のやり取りで構成されている。晋平との遣り取り、後半には母親とのやり取りが有る。この過程を通して千華は自立していく。

母親の良かれと思って抱いた子供への期待が耐え難い重荷となって・・
母親は貧しい貧農の出身である。母親は、その母親が死ぬ時「おめえは高校さ行け。そうすりゃ、給料取りの嫁になれっから」と言われていた。だから千華が農村の男性と交流し始めたことをこころよく思っていない。しかし、母親は千華の農村での生活が千華に生きる力を与えていることを認めざるを得ない。母親から千華への手紙にこんな一節が有る。

「あなたは書いています。『私はここで、この十年間ではじめてぐらいに、生きていて良かった感じることができた』と。その言葉は私にとって、大変ショックでした。どうしてこの家で私たちと一緒に暮らしていて、あなたはそう感じることができなかったのでしょう。
でも、毎日家で顔を合わせていてもほとんど会話らしい会話をしたことが無かったあなたから、便せん6枚にも及ぶ手紙が届くなんて、考えてみれば夢のようです。いままで神など信じたことはありませんでしたが、先週あなたから始めての手紙を受け取ったとき、私は神様に感謝しました。あなたとの間にある固く閉ざされた何枚もの扉の一枚が、静かにそうっと、そちら側から押し広げられたような気がしたからです。」

母親との手紙のやり取りは続き、母親は千華に話したことのなかった子供のころに貧困生活を話し、何故、千華にピアニストになってもらいたかったかを話す。千華は母親を次第に理解するようになり、母親は自分が子供に託した夢が子供を苦しめていたことを知る。

千華の晋平に対する恋は悲恋に終わるが、千華は失恋をも克服するところで物語は終わっている。

この小説は、親子の関係の難しさを見事に表現している。私の子育ては終了してしまった。決して成功したなどとは言えないが、取敢えずギリギリセーフだったようである。子育て中にこの小説を読んでいたならもう少し首尾よくやっていただろうと思った次第である。


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労働審判問題からの検索でこちらへゆきつきました。非常に参考になりますし、元気ずけられます。私はこれから労働審判で会社と地位確認の戦いをするんですが、短期で終る審判に少し不安を感じている事もまた本音です。復帰を望むなら審判は不向きとも言われておりましたが、風太郎さんの内容を見ると、復帰自体が至難の技だとも理解出来ました。大変なことなんですね。解雇というものは・・・
私の場合、様々理由から懲戒解雇なのでどうしても戦わずに終るなんて考えられないのです。また、お邪魔すると思います。このブログに出会えて感謝しております。

2012/1/19(木) 午後 0:23 [ ferako ]


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