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はじめに
労働局の「あっせん」はどのような制度か
前回の記事「個々の労働者が利用できる労働局の「助言・指導」とはどんな制度」でも書きましたが、労働基準監督署の指導できる事柄の範囲は意外と狭く、賃金不払いと解雇予告手当不払いの申告案件で95%ぐらいになってしまいます。解雇自体が不当だとの指導はできません。イジメや嫌がらせで辞めざるを得なくても指導はできません。賃金を不当に下げられても不当な退職強要でも、セクハラやパワハラでも、強力な指導は望めません。
そのかわり、不当な配転やパワハラなどでは労働局の「助言・指導」ができることは、既に書いたとおりです。監督署が指導できない労働紛争の中で「助言・指導」はパワハラを止めさせて欲しい」とか「不当な解雇を撤回させて欲しい等、今後ともその職場で働き続ける意思が強い場合に利用されることが多いと思われます。
例外はありますが、損害賠償や慰謝料を要求する等、金銭解決の場合に利用されることが多くなっています。「あっせん」で解決しなければ最終的には、裁判や労働審判で争うことになりますが、無料で利用できる労働局の「あっせん」をまず利用して解決しなければ裁判所を利用するケースが多いようです。
「あっせん」を申請すると労働局は仲に公益委員を入れて話合いのテーブルを用意します。話し合いと言ってもあっせん委員の先生が間に入り、相手と顔を合わせることはありません。 「あっせん」は、示談と同じで任意参加です。会社が出席しなければ「あっせん」は成立しません。参加率は60%前後と聞いています。裁判所を利用できるような、証拠の揃った事件であれば、裁判所の利用は会社も時間とお金がかかりますので参加してくる確率が増します。会社側があっせんに応じてあっせんが開始された場合の6割ぐらいが解決しているようです。
賃金不払いなど労基法に罰則規定がある事案は労基署が強力な行政指導をして賃金の是正勧告を行いますので、その方が確実ですから「あっせん」の対象外と考えてください。但し、証拠も少なく労基署を利用したけれど解決しなかったような場合には、残業代相当額を損害賠償に加えて「あっせん」を利用する方法は可能です。もう一つ、育児休業法関連や均等法に関する事案は別の制度が利用できるので「あっせん」の利用はできません。 「あっせん」の解決率は労働審判ほど高くはありません。労働局によってマチマチですが、3割から4割程度と言われています。 最後に「あっせん」の長所短所を書きます。
1.「あっせん」は無料で利用できる。
2.裁判や労働審判ではことの善し悪しが審理されるが「あっせん」ではことの善し悪しは審理されず棚上げされ金銭解決だけが図られる。(裁判や労働審判でも大半が和解や調停で解決することが多いが・・・和解や調停でもことの善し悪しの審理結果が反映されるのは間違いない)
3.裁判所では証拠が無ければ正しい方でも負ける可能性が高いが、「あっせん」では証拠を必要としないし(主張だけでよい)、証拠が無くても双方の歩み寄りによって解決することがある。
4.訴訟や労働審判では相手が欠席しても裁判や審判が進行するが、「あっせん」では相手が出席を拒めばそこで終了し未解決のままとなる。
5.労働審判の解決率は8割程度と言われているが、「あっせん」の解決率は3〜4割と言われている。(労働審判は勝てる見込みで証拠がそろっている事件がほとんどだが「あっせん」では裁判では負けるものでも利用がされているので解決率を比較する意味はない。)
6.労働審判や訴訟では相手側や相手側の弁護士と同席し、傷つけられるような酷い発言を聴くことになり、うつ病などの場合には病気を悪化させる危険がある。「あっせん」は相手側と同席する方法はとらない。ことの善し悪しは審理の対象ではないので比較的和やかに行われ傷つくことは少ない。
7.「あっせん」は申請から解決まで東京労働局では平均して1.5カ月ほど労働審判では70日〜80日と言われています。
8.労働審判の最大のリスクは審判(判決のようなもの)が下っても相手側の異議申立てによって通常訴訟に移行してしまうこと(通常訴訟では平均しても1年かかり、弁護士費用も高額となる)7割ぐらいが和解に相当する調停によって解決し2割ぐらいが判決に相当する審判となり、その内の半分(申立ての1割)が通常訴訟に移行。
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