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悪用される専門型裁量労働制
【専門業務型裁量労働制とは】
専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、それを進める方法を大幅に従業者の裁量にゆだねる必要があるため、その業務を進める手段や時間配分などの具体的な指示をすることが困難な業務(現在、労働省令で19業務が対象業務となっている)について、労使協定(脚注1参照)であらかじめ労働時間を、例えば『9時間とする』などと定め、労働者をその業務に就かせた場合、その日の実際の労働時間に関わらず、その決められた労働時間労働したものと看做す制度です。 当然、9時間と看做すと定めた場合には36協定(脚注2参照)の届出と1時間の残業手当が支払われなければなりません。キチッと法令の趣旨に基づいて看做し時間を協定している事業所がある一方で、かなり多くの事業所で「8時間と看做す」と決め、事実上残業代をケチるために悪用されているのもまた事実です。悪用した場合、事業主にとっては実に美味しい制度となります。
【事実上時間管理しているのに裁量労働?】
既に説明したとおり専門型裁量労働制は「専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、それを進める方法を大幅に従業者の裁量にゆだねる必要があるため、その業務を進める手段や時間配分などの具体的な指示をすることが困難な業務」について認められている。従って、労働者が出勤時間退社時間を自分で決めることになる。仕事の進捗状況で判断する。労働組合がしっかりしているところでは裁量労働制への移行に際して平均的残業時間分の手当てを支給した上で8時間と看做すとしているところもある。しかし、労働組合が無かったり、名ばかりの労働組合しかない場合、労働時間の管理をしっかりやっているのに裁量労働制を採用しているところが有る。遅刻をしたら注意されるなど制度上ありえないが残念ながら、そのような違法な裁量労働制がまかり通っている。 「専門業務型裁量労働制」の根拠になる法律は労基法38条の2である。労基法38条の2の一部を紹介しよう。曰く「・・・当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し当該業務に従事する労働者に対し具体的な指示をしないこと・・・」と書かれている。
「専門業務型裁量労働制」では、上司は、労働時間に関して具体的な指示をしてはいけないのである。就業時間を一応決めるのはよしとしても、夜遅くまで仕事をしたときには、労働者が翌日については午後から出勤してもよしとしなければならない。それが、裁量労働制である。
しかし、現実は労働時間が労働者の裁量には任されず、賃金だけが8時間分とされているのでは無いだろうか。
【労働者の過半数代表者の誤魔化し】
「専門業務型裁量労働制」を導入するためには、労働者の過半数代表者との協定が必要となる。労働者の過半数を超える労働者で組織する労働組合があれば良いが、労働組合の組織率は年々下がり、18%前後となっている。過半数労働組合でさえ会社とキチッと交渉できるところは少ないのが現状である。 労働基準法では、過半数組合が無い場合には、労働者の過半数を代表する者を民主的に選出することを求めている。少数組合でも組合があれば、組合の役員が過半数代表者として立候補することができる。しかし、組合が無ければ、社長から“お前が社員の代表者だ”と言い含められてサインさせられているのではないだろうか。
【深夜労働や休日労働は裁量労働制の対象外なのに・・・】
みなしの労働時間が適用できるのは、時間外労働だけであり、裁量労働制であっても深夜労働は深夜労働の割増賃金を支払わねばならないことになっている。また、休日労働も別枠である。しかし、私のところに相談に来る労働者からの情報では裁量労働制だからとの理由で深夜労働も休日労働もすべてインクルーズとしている悪質な事業主が多い。 ● 脚注1:「労使協定」:労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労働組合、無い場合には、労働者の過半数を代表する者との書面による協定
●脚注2:「36協定」:労基法の36条のこと・・・労基法32条は、使用者は労働者に1週40時間を超えて、1日8時間を超えて労働させてはならないと規定しているが、同法36条には、過半数組合の代表者または労働者の過半数代表者との書面による協定があれば、8時間(週40時間)を超えて労働させることができるとしている。そのための労使協定を36協定という。
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悪用される“みなし労働制”
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