労働相談奮闘記

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個人情報に絡む紛争

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労働者の健康情報に絡む紛争【その1】

この記事は長くなりますが、個別の紛争解決に役立つものと思います。長文になるので2回に分けて掲載することにします。

最近、労働者の個人情報、その中でも個人の健康情報に絡む紛争があり、紛争解決の為のお手伝いをしました。その過程で労働者の立場でどのような主張ができるか調べましたので記事にすることにしました。

さまざまな健康情報に絡む紛争

うつ病の既往症が発覚し、「それが分かっていれば採用しなかった。」と言われ退職を強要された例。

内定後の健康診断の結果で採用を取消された例。

精神疾患で長期に休むことになり、朝礼で病名を公表し詫びるよう強要された例。

内定が出される前に「既往症を全て申告するように」と言われた例。

内定前に法律に定める採用時健康診断が行われにも関わらず内定を得られなかった例。

面接から採用内定、入社に至る過程でもいろいろな問題があります。各企業は様々な採用時の手続きを定めています。正社員の場合、何回かの面接の後、内定が有り、その後入社に備えて健康診断がある会社。面接の後、内定の連絡は無く健康診断を受けさせ、その後に内定をだす会社。ご丁寧にも入社直前に再度の健康診断を実施する会社と様々です。

そう多くは有りませんが、会社が健康診断料をケチる為か内定後に健康診断を自費で受けさせ提出をさせる会社など本当に様々です。雇い入れ時の健康診断にかかる費用は法律では規定していないものの通達(脚注参照)では雇い入れ企業が負担すべきものとなっていますが、雇われる立場にある労働者に交渉する力がないことは言うまでも有りません。

○脚注:健康診断の費用に関する通達(昭和47年9月17日基発602号)にて「法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること」とされている。

ところで、健康情報はセンシティブな個人情報(個人の信条や国籍、性別、健康情報など慎重に取り扱わねばならない情報)です。健康情報を含め、採用面接時に使用者が応募者の如何なる個人情報をも自由に収集できるのでしょうか。

世の中の趨勢と行政指導は個人情報の入手を制限する方向にある。

私の調べたところ、過去の最高裁の判例(三菱樹脂事件など)では採用する企業の自由度を最大限に認めてきました。有名な三菱樹脂事件の最高裁の判決は「企業には、経済活動の一環として行う契約締結の自由があり、自己の営業のためにどのような者をどのような条件で雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由に行うことができる。」と憲法14条をないがしろにするような内容です。その結果最近まで企業の契約締結の自由は判例法理の如く考えられていました。今でもそのように思っている弁護士も多いようです。

繰り返しになりますが三菱樹脂事件は、最高裁が憲法で認められた思想・良心の自由を踏みにじった戦後最悪の判決の一つでした。

しかし、個人情報保護法ができた昨今は法律や行政指導が強化され、特に個人のセンシティブ情報と言われる情報(個人の信条や国籍、性別、健康情報など)に関して企業の自由ということにはならないとの考え方が主流となってきています。また、行政も個人情報を厳しく管理するよう企業に求めています。

具体的には厚労省が「労働者の個人情報に関する行動指針」を出して、企業が労働者の個人情報の適正な処理に関して、この「行動指針」に基づいて社内規定を整備するよう求めています。また、採用時に関しては「採用選考時の健康診断について」を出して採用に際して不必要な情報やセンシティブ情報の入手を原則としては禁止する指導を行っています。ハローワーク関係では、厚生労働省の職業安定局が『採用のためのチェックポイント』というものをつくり、これに基づいて指導を行っています。

三菱樹脂事件でだされた判例法理の前提条件が崩れている。

企業に最大限の採用時の自由を認めた三菱樹脂事件の判決でも“企業の経済活動の一環としての契約締結の自由は”「法律その他による特別の制限がない限り」という条件が付されていました。従って、その後、個人情報保護法ができ、厚労省が「労働者の個人情報に関する行動指針」などで行政指導を行うようになった昨今は三菱樹脂事件の判決の前提条件が崩れていることになります。

三菱樹脂事件の判決があったのは1978年で既に30年以上が経過しています。判例法理も世の中の趨勢で変わり得るものということを示す好事例ということになります。

この点について説明した信頼できる文章がありましたので以下に紹介しておきます。
○労働政策研究支援情報から→http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/005.htm

厚労省の「労働者の個人情報に関する行動指針」の意義

労働者の個人情報に関する紛争での一番重要な手掛かりは既述の「労働者の個人情報に関する行動指針」です。この内容を理解することが個人情報に絡む紛争解決に役立つと確信します。行動方針の内容については、先に回すとして、企業は採用時にどんな情報を得ることができるのか、厚労省の職業安定局からだされた『採用のためのチェックポイント』の中身を見てみましょう。

採用時は応募者の適正・能力のみを基準とすること

『採用のためのチェックポイント』には、採用時の基本的な考え方として「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力のみを基準として行うこと」の2点を求めています。従って、チェックポイントの一覧表を見ると応募者の家族構成や家族の職業を求めてはいけないとなっています。
これは、採用に当たっては応募者自身の能力や適性だけを判断基準にしなさいとしているからです。

また、応募者から一律に健康診断書を提出させてはいけないとしています。バスの運転手を募集するのに色覚異常を申告するのは仕方がないことと思いますが、そのような特別な必要性が無い健康情報を要求することはできないことを意味しています。

この記事のタイトルは「うつ病などの既往症を申告しなかったことが解雇の理由となるか
」でしたが、回答になったでしょうか。「労働者の個人情報に関する行動指針」の中でももっと明確に健康情報を求めることは原則として禁止としています。

このチェックポイントでは「尊敬する人」や「愛読書」を聞くことも良いことではないとしています。このブログを読む方の中には企業人もおられると思いますが、如何でしょうか。

採用時の健康診断の結果を採否の判断基準にしてはならない。

労働安全規則43条では常時使用する労働者に対して雇い入れ時の健康診断を義務付けています。そのために、その健康診断の結果、不採用になるケースが続出し社会問題となった為、厚労省は「採用選考時の健康診断」などの文書を発し、「採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するために実施するものでもありません。」と趣旨を解説しています。
この点については大阪労働局の説明文書「採用選考時の健康診断について」がわかりやすいのでご覧ください。

これらの行政指導から健康診断の結果で採用を取り消すことは特別の合理的事情が無い限りできないということになります。また、採用時の健康診断をしたということは内定を出したことになると主張できることになると思われます。これらの行政指導文書を再読してみてください。そのような結論になるはずです。

長くて、ブログの文字制限に近づいていますので、本日はここまでにします。
第2回目は「労働者の個人情報に関する行動指針」を中心に書くことにします。

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