夜蓮
池のほとりのあかりに凭れて
花の脈にいろ染め忍ばせる
今ここで抱く君の心
花の影よ水面に墜ちるな
凛としてそのままに咲けばいい
遠くに見える街の灯りが
君の花を貶めようとする
しばしまて
何処に咲いても君は変わらず
hukatadashi
令和元年八月七日
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あなたに問う
詩作の時は幻想曲をかけて
繰り返しめぐりくる言葉
ピアノの音にこころふるわせて
浄化される想いの調べに添うて
詩をあなたにおくりたい
何処にいて何をしているか
ながれる幻想曲に託して
あなたに問うことを許せよ
あなたを知ることを許せよ
阜可 忠
令和元年八月三日
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憧憬
夏の夜の徘徊
海を目指してはしる
チマチマした街を離れて
東へ東へと走る
木々が薄明に目覚める頃
道端に腰を下して海を見る
刻々とかわるひかりの加減
深い藍から薄い赤紫へと
蒼空も波も僕を染めている
早起き舟が糸を曳く
昨日と何ら変わらない朝の海
人の心の在りようのままに
朝の海は僕の指の先にとまる
阜可 忠
令和元年八月三日
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花しおり
夏の永い暑い夜
うすずみ色の花は咲く
幾ら重ねても向こうに透けて
涼しげに揺れている
手折ろうとすれば闇に紛れ
哀しげに睫毛を濡らしていく
読みかけて閉じたページに
挿んだままの花しおり
静寂に舞い降りて それは
うすずみ色の花となる
のこりいろ偲ぶ花となる
阜可 忠
令和元年八月朔日
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墨糸
覚悟の無いままに
ひとを恋ゆる身のあわれ
ひたすらに求めながら
暗夜の海に漕ぎ出すような
星を結ぶ見えない糸を頼りとして
愛される保証などないままに
あなたに想いを告げる夜
絹糸に墨を含ませて弾く
線を引くあなたのこころに
hukatadashi
令和元年七月三十一日
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