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			<title>回想録 (生きてきた足跡）</title>
			<description>誰にも過去がある。ふれられたくないこと、思い出したくもないこと、今でも胸に蘇ってくる栄光の日々、すべて生きてきた証である。過去を検証しつつ、残り少ない時間を大切に使いたい。どれだけ続けることが出来るか疑問だが・・・・</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002</link>
			<language>ja</language>
			<copyright>Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.</copyright>
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			<title>回想録 (生きてきた足跡）</title>
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			<description>誰にも過去がある。ふれられたくないこと、思い出したくもないこと、今でも胸に蘇ってくる栄光の日々、すべて生きてきた証である。過去を検証しつつ、残り少ない時間を大切に使いたい。どれだけ続けることが出来るか疑問だが・・・・</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002</link>
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		<item>
			<title>大　学　時　代　そ　の　２５　(愛しのクラウン７)</title>
			<description>　容赦の無い夏の陽を浴びたクラウンの中はまさしく炎熱地獄だ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
窓を目一杯開けてあるが入ってくる外部の風は熱い。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
さほど広くない道路は海水浴客が占領していて、車を通す余地など無い。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
しかも塩の匂いが彼等を誘い、興奮させ、誰もが陽気で、早く海辺に行きたくて&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
周りを注意する者はいない。そんな中をさしたる用も無いのにクラウンを乗り入れた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
初め、４人は一郎の家の前を出発して桜山トンネルをくぐり田越橋を左に入る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
田越川に沿って下り、富士見橋を渡りなぎさホテルの前を海岸中央入り口まで進む。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
裏道なのだが結構込んでいる。この道の周りは別荘や大きな会社の寮が並んでいて壮観である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は右にハンドルを切った。予想していたがものすごい混雑である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この道は京浜急行逗子駅と逗子海岸中央入り口を直線でつなぎ、途中国道１３４号線と交差している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
また国鉄逗子駅から海岸に行く最短距離でもある。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
四人は出来もしないのに｢海辺に行って女の子を引っ掛けよう｣とか&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢４人も乗っているんだ、たとえひっ掛ったとしても乗れねえぞ。どうするんだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢じゃあ、田川は降りるんだな｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢おい、何を言うか、絶対にいやだ｣などと言い交わし、４人のテンションはいやでも盛り上がる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ぼろ車だけど俺たちの車だ。みんな見てみろ。すごいだろう」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎の心の中も他の３人の心の中も特権階級にでもなったというような驕りがあったことは否めない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だが世間はどう見ただろうか。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「不良大学生風情が何を言うか、親の脛かじっているくせにいい気になって遊んでいるんじゃない、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
勉強をしっかりやれ」と言っているのに違いない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だが４人にはそんな世間の風評に耳を傾ける余裕が無いばかりでなく、反発することに快感を感じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢大丈夫か？俺が運転変わろうか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野が見かねて一郎に声を掛けた。吉野は乗っていて気が気でなかったのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢なあに、どうってこたねえさ。まかせとけ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
高揚感にとらわれた一郎は強がりを言ったがその実かなりあせっていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
クラクションを鳴らすと一時的に前が開くのだが、その先はすぐ埋まってしまう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
子供づれが多いので危なくてスピードが出せない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「海水浴客たちは｢この車は何でこんなところにいるんだ？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
とばかりに威勢の良いお兄さんがにらみつける。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は運転に気を取られてただ黙々とアクセルとブレーキを踏み変えハンドルを握っているだけだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎には前しか見えずサイドミラーもバックミラーも無用のようだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
心臓が飛び出すかと思うほど脈を打っている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
緊張の極に達し、全身に汗をかき、額の汗が目に入ってくる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
助手席の田川が｢危ないですよ、道を空けてください｣などと怒鳴っているが効き目は無い。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は吉野に代わってもらうかと弱気になった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢その車、何でこんなに込み合う道を走っているんだ？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
海水浴客の中の誰かが怒鳴っている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
中にはボンネットを叩いていくやつもいるし、タイヤを蹴飛ばす輩もいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢すみません、なるたけ早く抜けますから道を空けてください｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
などと後ろの席に座っている吉野と山完が交互に怒鳴っている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「冗談じゃない、お前らが道を塞いでいるんじゃないか」と一郎は思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そう思うと怒りがふつふつと湧いてくる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
思わずクラクションを鳴らしてエンジンを空ぶかしし海水客を脅した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
すると少し空間が出来たのですばやく前に進む。ようやく郵便局横の交差点まで行く。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は左にハンドルを切った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「おいおいどこへ行くんだ？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野はようやく危機を脱して安堵したのに、一郎がよりによって逗子の繁華街の&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
方向に向かうのを見てあわてて大きな声を出した。ハンドルを右に切ると葉山方面に行くことになる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
なのに左に切った一郎はその時完全に冷静さを欠いていた。１３４号線も混雑している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
池田通りと銀座通りに別れる三叉路を右に切り銀座通りに入いる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ここも両側の歩道は海水浴客で混雑していて車道にまであふれている。まるで歩行者天国のようだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はクラクションを鳴らしながら慎重に車を運転した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢駅前に交番があるぞ、停められて無免許が分かるとやばいから俺と交代しよう｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野が真剣になって運転を交代するよう一郎の肩をゆする。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はそのときになって運転しているのが怖くなった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
あわてなくても良いのに急いでクラッチとブレーキを交互に踏んだものだから&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
車はノッキングして止まった。一郎はギーッと音がするドアーを開けて外に出た。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
汗がどっと出てきて着ていたポロシャツがびしょびしょに濡れ、背中に張り付いた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
パンツも濡れて肌に張り付いているようで気持ちが悪い。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だが同時に一郎はその時溜まっていたストレスから開放されていく自分を感じていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
すかさず吉野が後部座席から降りて運転を一郎と変わった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
運転免許を持っているからといって、吉野はベテランではない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この混雑する中を無事に抜けるのは自信が無かったと後になって打ち明けている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一郎がとった一連の行動は道交法違反である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もし何らかの事故にあった場合どう責任を取るのだろうか。後になって思い出すとぞっとする。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
若さとは危険と冒険心が背中合わせでせめぎあい、些細な事件あるいは重大事件を引き起こし、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
あたら若者の前途に汚点を残すことになる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は大学生であるから常識や事の良し悪しは十分承知している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だが、あえて法を曲げるような行動をとりたがるのも若さのなせるわざであり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
後に後悔の念に取り付かれるか心の中で快哉を叫ぶかどちらかであろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　このクラウンにまつわる話はこればかりでない。まだ一郎たちに苦難を与えるようだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/62635324.html</link>
			<pubDate>Wed, 25 Nov 2009 16:15:44 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>大　学　時　代　そ　の　２４　(愛しのクラウン６)</title>
			<description>　ハワイアンバンドは順調だった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
曲目は個人個人で好き嫌いがあっても演奏する楽しさが勝り練習にのめりこんだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎の家から俊夫の家の離れまで歩いていくと３０分以上かかる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
車が来るまでは歩いて通ったがクラウンが一郎の家の前にあるときは一郎が練習を兼ねて運転した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もちろん無免許である。昼間でさえ交通量が少ないのに日が暮れるとほとんど無人になる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
外灯などなく真っ暗な中、田川を載せて恐る恐る運転した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
乗っている田川は一郎より恐ろしい思いをしたにちがいない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
俊夫の家のすぐ近くにある小さな公園が駐車場だ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
今時のノークラでなくブレーキとアクセルにクラッチが付いている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一度も車を運転したことのない一郎にとっては車を発進させるのでさえ、難しいのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
何度発進させようとしてもクラッチがガリガリと不快な音をたてながら車はノッキングして&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
エンジンが切れてしまう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だが、吉野の指導を受けているうちにようやく発進することが出来るようになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
クラウンは後に演奏があるとき楽器の運搬に使われ便利であったが、運転手は一郎である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一郎は車の運転を熱心に練習した。昼間一郎の家と俊夫の家の近くにある遊園地の間を往復した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
とにかく交通量の少ないのが幸いして、事故など一度も犯さなかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
運転していて驚いたことはウインカーが短剣の格好をしていることで、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
本来灯りが点くはずなのに点いたり点かなかったりという代物だった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ウインカーを出す時パタパタと音を立てるし、スムーズに出たためしがない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もっとも、運転手が無免許なので曲がり角に行ってもウインカーを出し忘れたことにもよる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
事故は起こさなかったが練習中、身の危険を感じたことが何度かあった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　バンドの練習がある日、一郎は吉野の家の前に駐車してあるクラウンを単独で受け取りに行った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野の家まで徒歩３０分の距離である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その日は朝から曇り空で今にも降り出しそうな雲行きだった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野の家の近くまで行った時ぽつぽつと雨が降って来た、と思ったらあたりが急に暗くなり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
今度はざーっと音を立てて降り出した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は預かっていた予備の鍵でドアーを開け運転席に転がり込むと大きく息を吐いた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
どうせ通り雨だからすぐ止むだろうと、しばらく様子を見ることにしてピースに火を点けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ところが雨脚は衰えるどころかますますひどくなり、おまけに稲光とともに雷まで鳴り出した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢うわっ、そりゃないぜ。この雨の中運転して帰るのかよ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
思わず独り言、一郎はまだ雨の降る日に運転したことがない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
とりあえずエンジンを回し、ワイパーのレバーを押した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
助手席側のワイパーは正常に動いた、が肝心な運転席側のワイパーの動きがおかしい。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
やっと動いているようで、まことに頼りない限りだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
雨脚はますます激しく、ボンネットと言わず天井や窓ガラスをたたき、水しぶきを上げている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はそれを見て怯んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もはや歩いて家には帰れないからこの厳しい条件の中、車を運転して帰ることしか方法が無い。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は意を決してアクセルを踏んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ワイパーの動きは頼りなかったが、まだなんとか前を見ることが出来た。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
海岸道路に出る交差点で右のウインカーを出した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
カシャッと音がして赤い短剣のような形をした物がしぶしぶ出てきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
こんなもので後ろの車は認識できるのだろうか、と一瞬思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
幸い前後に車の陰は無くハンドルを右に切り、さらに１０ｍ先の三叉路を右に切った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
広い坂道を真っ直ぐに進み１３５号線とぶつかる三叉路でいったん停止した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
前に２台ほど止まっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そのとき雷とともに頭からバケツの水を掛けられたような激しい雨になった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
おんぼろ車のワイパーでは前が良く見えない上に、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
なんとワイパーは真ん中で止まってしまったのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
前の２台の車は機を見て１３５号線に出て行ったが、クラウンは道路上で立ち往生したままである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は思案の末まだ動いている助手席のワイパーを頼り、体を助手席に倒しながら運転することにした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だが雨脚が激しすぎて通常の動きをしたワイパーでも前方はぼやけ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
はっきりと物を確認することも出来ない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それでも一郎はハンドルを左に切り１３５号線に出て車を逗子方面に進めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そのとき混乱する頭の中で左のウインカーを出さなかったことに気がついた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それでなくてもパニックになっている頭の中はその一事でさらに攪拌され心臓がバクバク鳴り始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その時の血圧は１７０～２００に達していただろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
若かったから気にも留めなかったが心臓は危険水域に差し掛かっていたのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　激しい雨のため左手に在る田中屋がぼやけて見えた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
田中屋は小学生の頃に強風の中を、義父の焼酎を買いに行かされた酒屋である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ここまで来れば後は注意しながら運転していけばいい。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はそう思うと、依然として見えない前方に目を凝らし、ハンドルを握る手に力を入れた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そのとき闇をつんざくように稲妻が走り、雷がどこかに落ちたと思わせるような音がした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は思わず頭を縮めハンドルの上にかがみ込み自然の恐ろしさに震えた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
幸い対向車も無く、後続の車も無く命拾いをしたと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ようやく長柄橋を渡りハンドルを右に切って家の前で車を停め、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
エンジンを切ると冷や汗がどっと出てきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
というのも車の運転を覚えて初めての長い距離に加えて最低の気象条件だったからである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
とりあえず気持ちを静めるためか無意識のうちにピースを咥え火をつけていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は思い切り煙を吸いこんだ。すると何故かタバコを吸い始めた時に感じた、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
頭がくらくらして気持ちが悪くなるのと同じ現象に見舞われた。それほど緊張していたのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
なんにしろ無免許で事故は最悪である。雨のせいもあるが交通量が少なかったのが幸いだった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だが一郎は車を運転することをやめなかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　またこんなこともあった。夏休みの盛り、７月末の日曜日は海水浴客が最も多くやって来る日である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
当時は自家用車を持つ人は少なかったからほとんどの人は電車でやって来る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
横須賀線逗子駅や京浜急行逗子駅、逗子海岸駅を降りて逗子海岸や葉山の海岸に繰り出すのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
逗子海岸へは徒歩である。逗子駅を降りて銀座通りを抜け、郵便局手前を右に折れ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
真っ直ぐ５分ほど歩くと逗子海岸中央口につく。京浜逗子駅からも一直線にこの道に通じている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
またこの道は私立開成高校への通学路でもある。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この日は逗子じゅうが海水客で混雑する。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
逗子銀座通りは言うに及ばずなぎさ通りも池田通りも大混雑，ごったがえすのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
銀座通りは通りの両側に歩道があるのだが、歩道だけでは捌き切れず、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
混雑すると車道にまで出て歩く者がいる。銀座通りは現在一方通行であるが当時は両面通行であった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
いくら車の量が少ないとは言えバス通りでもあるし、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
逗子のメイン通りでもあるからかなりの量の車が行き来する。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　そんな一番混雑する日にもかかわらず、一郎は無謀にもクラウンに吉野、田川、山完を乗せ&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
混雑する逗子通りへ繰り出したのである。　　（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/62494755.html</link>
			<pubDate>Wed, 28 Oct 2009 22:48:44 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>大　学　時　代　そ　の　２３　(愛しのクラウン５)</title>
			<description>　日は西に傾きかけている。冬の日は足が速い、あっという間に暗くなる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
車の中には４人乗っているため人いきれで暖かいはずなのに隙間風でまことに寒い。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
車を運転していた吉野が頓狂な声を上げた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢おかしいなあ、さっきガソリンを入れたばっかりなのに、この燃料ゲージは空になっているぞ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
まだ２０Ｌは入っている筈だ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢この車、ガソリンを余分に食うんじゃないのか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢いや、まだ１０ｋも走ってないぜ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ひげとらちゃんはリッター５ｋ走ると言っていたからそんなことはない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
いくらガソリンを食うと言ってもアメ車じゃないんだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
こりゃきっと壊れているに違いない、ほかのゲージも怪しいかもしれないな｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野は呆れたように首をかしげた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢あっ、距離計は３回り目だぞ。さすがタコあがりだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢ほかのはどうなんだ？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢圧力計がだいぶ上がっているぞ。これも壊れているのか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢いや、そうじゃない。壊れてはいない。ラジエーターの水が漏っているとは聞いている｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢一度止まって点検してみたら｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎が言ったので吉野は車を道端に止めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
車の後ろを見ると僅かではあるが水が漏れた跡が路上に認められる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ボンネットを開けてラジエーターの蓋を回すと熱湯が噴出してきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
危うく吉野が被るところだったが、事前に知識のある吉野は予想していたと見えて、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
すばやく離れて事なきを得た。うっかり近づいて熱湯を被っていたら大変なことになったところだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この当時エンジンは水冷式だったのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢やばいなあ、このあたりに水はあるかな。探さなくっちゃ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢さっきここへ来るとき、少し手前にガソリンスタンドがあったじゃないか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
目ざとい田川が甲高い声を上げた。その声で気が付いたように山完があっと声を上げた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そうそう、あそこにあったのを思い出した。すぐそこだよ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野はすぐさま引き返しガソリンスタンドでラジエーターに水を入れさせてもらった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ラジエーターの水漏れはどうやらたいしたことはなさそうだが、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野は車の下にもぐって簡単な修理をすることにした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢小さな穴があいていて、そこから水が漏っていたんだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
とりあえずハンカチを千切って詰めておいた。水漏れは当分の間止まっているだろう｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野はそういうとボンネットを開けてエンジンから針金のようなものを引き抜いた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「あーあ、真っ黒だ。入れ替えなきゃだめだな」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「そりゃなんだい？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢エンジンを保護する潤滑油だけど、もう何年も取り替えていないようだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢それにしても大変な車を買ったもんだぜ。ひげとらちゃんにうまくやられたな｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「初日からこれでは思いやられるぜ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はがっかりしてテンションが下がっていくのが分かった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
田川も複雑な顔をしているし吉野は責任を一人で背負ったかのように浮かぬ顔をしている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢ま、しょうがないよ。当分の間は騙し騙し乗るほかない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
車は動かないんじゃない、動くんだから良しとするべ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は二人に声をかけた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　すっかり意気消沈した４人は城ヶ島へ行く気をなくして引き返すことにした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
途中にある山完の家の前でとまった。すると山完が「上がって酒でも飲もう」と言いだしたので&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
玄関下の階段の横にある僅かな空き地に車止めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
まん前が八店と言う雑貨屋で、そこは何でも売っている。今のコンビニを小さくしたようなものだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そこでビールとウイスキーのホワイト、それにおつまみを仕入れ、酒盛りを始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
山完の家は高校の卒業式前日に一郎と田川と大嶺と山完の４人が勝手に自分たちの&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
卒業記念飲み会をした所でもあるし、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
山完の恋人さっちんと彼女の友達を呼んでクリスマスパーティーをした所でもある。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そう言えば山完とさっちんの恋はどうしたのだろうか、一郎はその後の成り行きを聞いていない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　今でこそ酒気帯び運転は免許剥奪の憂き目に会うがその頃は比較的うるさくなかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野はあまり酒が強いほうではなく、またすぐ赤くなるたちなのでビールをほんの少し、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
コップに一杯だけ飲んだ。話題はお決まりの車とひげとらちゃんの悪口だ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はビールとウイスキーを飲んですっかり酔ってしまった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ところであの車を普段どこに置いておく？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野が言いだした。考えてみると一郎たちは車を購入することばかりに頭をとられ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その後に起こる諸問題について何も考えていなかったのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ガソリンの負担、駐車場の件、修理代、税金等々をどうするのか。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎と田川は無免許であるため詳しい知識はない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「俺のうちの玄関前に車を停めるくらいのスペースがあるから、普段はそこへ停めて置くとして、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎や田川が使うときはどうするんだい？もっとも免許がないから運転は出来ないか」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「お前が車を使わないとき、俺らは運転の練習をするから俺の家の前の道路に停めておく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
最近警察がうるさいけど交番がすぐそばにあり、その一家とは付き合いがある。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そのため大目に見てくれるのさ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
現在は一方通行だがその頃は両方向に通行できた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もっとも、交通量が少なかったから目の色を変えると言った取り締まり方ではなかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そのほか、ガソリンは乗ったものが入れておく、修理代、税金等は割り勘にしようということになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　その日１０時頃、山完の家を出た後吉野は一郎と田川を家まで送り、そのまま帰っていった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　しかしその後、クラウンはまだ現していない本性をむき出しにして、一郎たちを苦しめるのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/62420303.html</link>
			<pubDate>Wed, 14 Oct 2009 17:21:00 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>大　学　時　代　そ　の　２２　(愛しのクラウン4)</title>
			<description>　一郎たちが演奏するのはスチールギターの教則本に乗っている曲ばかりだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
サイドギターやウクレレは俊夫が弾くスチールギターに合わせるだけで何の疑問も持たず、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
しばらくの間演奏していたが、音楽にはイントロがありエンディングがあることに思いが及ばなかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
どの教則本にもイントロもエンディングものっていない。各バンドが工夫してつけるのが普通だ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ただ、俊夫が引くスチールギターは大学のクラブで教えてもらっているらしく、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だんだん上手くなっていくようだった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢一ちゃん、このスチールギターが8弦なのはクラブの先輩に薦められて買ったんだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この調弦だけど、ちょっと変わった感じがしないか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢うん、変わった調弦だとは気が付いていたさ。だからお前に聞こうと思っていたんだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「なんでもＡ13とか言うコードなんだそうだ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢通常プロの調弦はＡＭかＡＭ７だと聞いているぜ。たとえばバッキー(バッキー白方)はＡＭ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
おっぱち(大橋節夫)はＡＭ７だそうだ。二人とも６弦だ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「このギターはいわゆる世間で一般に言われている｢ハープギター｣の仲間だそうだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だから見てみ、手に持つバーのでかいこと、かなり重いんだぜ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「なるほどでかいな。こりゃあ重いわ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢練習し始めた頃は、長い間弾いていると指がつってくるんだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎が借りて手に取ってみるとずっしりと重かった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
これを人差し指と中指の間に挟み親指を添えるのだが、慣れるまで大変だろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それに引き換えウクレレは小さいし４弦しかない。コードを決められたリズムで引くだけだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢俺は簡単だ。気楽でいいや｣と一郎は思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
バンドは練習を重ねていくに従ってらしさが整えられていくようだった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　３月になるとヒゲトラちゃんが中古の車に飽きて新しい車を買い換えると言い出した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢ついては、相談だがこの車買わないか｣と言われた吉野恒夫が一郎に相談に来た。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野は大学生ながらいち早く免許をとっていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢クラウンの３２～３３年型だそうだが、タコ上がりだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢タコ上がりって何だ？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢ああ、元はタクシーだったってことさ。だから相当痛んではいるけど乗れないことはない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
俺は実際に乗せてもらって運転したけど支障はないようだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野はもう買う気になっている。だが一人じゃ払えないから一郎を誘っているのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢わかった。ひげとらちゃんはいったいいくらで買えと言っているんだ？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢７万円でいいって言うんだけど俺一人じゃ払えないから、共同で買わないか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そら、来たぞと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢無理だよ。よしんば買うとしても二人で７万円なんて、とても払えないぜ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢月賦でもいいって言っているんだけど｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢月賦って言ったって、ひと月に払うのはいくらになるんだ？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そうだな、俺たちが塾から貰うひと月分の報酬、２０００円が限界だろうな｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢と言うことは、塾のバイトは当分の間ただ働きみたいなものか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢別に二人じゃなくて三人でも４人でもいいんだけど。そうだ、田川も誘ってみないか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野は初めから田川も計算していたようだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢あいつならすぐ乗ってくるだろう。だけど俺も田川も運転免許を持ってないぜ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野は真剣だった。免許取立てで運転したくてたまらないのが口ぶりから察せられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そうかあ、それは問題だよな。だけど、いずれはお前達も免許を取るんだろう？練習できるじゃないか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そうだなあ、それもあるし車があれば行動半径も広くなる｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はだんだんその気になってきた。共同とは言え自家用車が持てると思うと、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自分がその車に乗っている姿を想像して、わくわくしてくる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢よし、田川には俺が話してみる。あいつなんて言うかなあ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢頼むよ。俺もひげとらちゃんと交渉して、もう少し安くしてもらうつもりだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
正直あの車で７万円は高い。下取りも無く、おそらく廃車になるのだろう。それほどの車だ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
翌日、田川を捕まえて吉野の提案を話すと１も２も無く乗ってきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢すげえじゃんか。俺たち自家用車持ちになるんだぜ、たとえおんぼろだろうとクラウンはクラウンだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
田川はもうその時が来たように目を輝かせた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は二人とも免許を持っていないくせになにが車だ、と思うとおかしかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　結局三人で買うことにした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ひげとらちゃんも教え子に７万円ではちと阿漕かなと反省して５万円に負けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
諸々の手続きは吉野が責任を持ってやることに決まり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
結局、毎月一人２０００円を８ヶ月に渡り払うことになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は計算してみて｢こりゃ大変なことになったぞ｣と思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
これからの８ヶ月を思うと憂鬱になるが車を持つ楽しさが勝り、あえて考えないようにした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そのときは分からなかったけれど一郎たちはひげとらちゃんにうまく丸め込まれたのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それは自分たちが運転して初めて分かったことだが、そもそもこの車は廃車になる筈だったらしい。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ひげとらちゃんは廃車費用を免れたばかりか５万円が入ってくることになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
はっきり言えば一郎達はだまされたのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
吉野はそれをある程度分かっていたが車が欲しいばかりに、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
あえて目を瞑り一郎と田川をうまく載せたのだ。免許を持っているのは吉野一人だから、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
とうぜん吉野が中心で使うことになる。では一郎と田川は車をどう使えば元が取れると言うのだろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
免許を持たないことは致命傷だ。車の免許を取るための練習に使えばいい、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
と言うのも今一説得力にかける。車があれば何処へでも行けるのだ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
こうなれば吉野を中心にして車を乗り回せばいいじゃないか、と納得することにした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　桜のつぼみがまだ固い３月１５日快晴、吉野が車を運転して一郎の家にやってきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
田川にも見せてやろうと一郎も同乗して田川の家の玄関先に乗り付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
３人が所有する車になって初めて見たクラウンの雄姿は輝いて見えた。そう見えたのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢おっ、来たか、かっこいいじゃん。俺たちの車だぜ！｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
田川が目を輝かせて言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自分たちは自家用車持ちになったんだと思うと何とも言えない高揚感が３人を包んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
直ちに田川も乗り込み三人で初めてのドライブとしゃれ込んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
国道１４５号線を三崎方面に向かい、御用邸前から長者が崎を越え、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
子産石で山完を拾ってから立石の県営駐車場に到着した。擁壁の前は海、後は何もない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
相模湾は春霞がたなびき、遥か沖に大島が浮かんでいる、目を凝らすと噴煙が見える。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
風はまだ冷たかったが興奮している彼らは寒さを感じなかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢これから城ヶ島まで行こうぜ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
田川が言い出した。テンションが高くなった彼らは一路城ヶ島を目指して疾駆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ところが、彼らはドライブして騒いでいるうちに気が付いたのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「何か変だぞ」（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/62357971.html</link>
			<pubDate>Fri, 02 Oct 2009 13:46:52 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>大　学　時　代　そ　の　21(愛しのクラウン３)</title>
			<description>　　夏休み後半に戻る。一郎は忙しかった。忙しいと言っても遊びで忙しかったのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　昼間は海へ行ったり、夜の塾講師、日曜日は野球、覚えたてのマージャンの付き合い等があり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　なかなか体が空かない。このような状態で勉強など出来るわけが無かったし、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また勉強しようなんて考えはさらさら無かった。ある意味一郎は大学2年を満喫していた事になる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　だが何とかして夏休み中に小説を一本書き上げたかった。構想は練ってある。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　だが筆は少しも動かない。暑い部屋で悶々としていると、ひかなくても良い夏風邪をひいてしまった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一郎の意識の中に｢取り残さるのでは無いか、俺はこんなもんじゃないはずだ｣と&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　常に誰かに背中を押されているような気がして落ち着かなかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　うだるような残暑が町中を炎熱地獄にしていた。せみの声もどこか元気が無い。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　道路舗装のアスファルトも軟らかくなっているような、ある昼下がり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一級下の青木俊夫がまた忙しそうな話を持ってきた。色白の顔が汗でぬれている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　青木俊夫は一郎がかき集めた野球チームのキャッチャーを務めていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「一ちゃん、今度ハワイアンバンドを作ろうと思っているんだけれど参加してくれないか」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「メンバーは？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「島田書店の勝次と海辺旅館の敦也を知っているかい、俺の同級生。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　それと一ちゃんと同級の卓さん、それに2級下で俺んちのすぐそばの青木博、役場に勤めているべ？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「顔は見たことがあるやつばかりだな。ところで楽器はあるのか？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「勝次と敦也はサイドギター、勝次はギブソンのギターをもっている」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「スチールギターは？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「俺が弾く予定だ。８弦張りのスチールギターを買ったんだ。博はベースをやるって」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　それを聞いて一郎は訝しく思った。青木俊夫にそんな趣味が合ったことが不思議な気がする。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　彼はどう見てもそんなことをするとは想像もつかなかったからだ。背が高く動作もそれほど敏捷&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　とはい　えない。どこかボーっとしたところがあり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　スチールギターなど弾くとは思いも及ばなかった。&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　しかも8弦だとは！&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「お前いつからそんなことを始めたんだ？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「俺はもともとハワイアンが好きだった。聞いているうちに演奏がしたくなり、どうせやるならスチール&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ギターだと決めたんだ。だから大学のハワイアンクラブに入ったのさ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「へーえ、人は見かけによらないものだな」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「そんなこというなよ。それと来年の5月の音楽祭に参加したいのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　それでみんなと話し合って、一ちゃんにお願いしてリーダーになってもらおうってことになったんだ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「でも、俺ウクレレを弾くには弾くよ。だけどバンドで弾くには無理があると思うけど」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一郎は迷った。ウクレレは遊びで弾いているだけだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「心配要らない。ほかの連中も同じようなものさ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　時間はたっぷりあるから練習していればそのうち格好がつくって」&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　気楽なものだと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ところで、みんなは楽譜が読めるのか？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ほとんどだめだね。俺は少々読めるが後はからきしだ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「まあ、楽曲には一小節ごとにコードが附いているから何とかなるだろう」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一郎は話しを聞いているうちにだんだん興味がわいてきた。あまりぱっとしないメンバーだから&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一郎を入れれば少しは華にもなるし、注目度が違うと思ったのだろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　田川を誘ってみようと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「俺の友達に田川って言うやつがいるんだ。彼はウクレレを持っているし、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ハワイアンが好きでＬＰを何　枚か持っている、仲間に入れてもいいか？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ああ、いいとも、メンバーは多いほうがいい」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「アンプとベースはどうするんだ？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ああ、それかあ、個人で買わせるのは酷だからバンドで買わなければならない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　全部で7人だから会費で払おうと思っている」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ところで練習場所はあるのか？やたらなところではご近所からクレームが来るぞ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「その点は心配要らない。なぜなら俺んちに使っていない離れがあるんだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　周囲に家は無いから最適だと思う」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　青木俊夫の家は長柄地区の一番奥まったところ、戦時中高射砲陣地のあった二子山の麓付近、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　にある。大変静かなところだから音を絞っても隣近所には聞こえるだろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ましてバンドとして始めて間もないため、多分下手糞で聞くに堪えない、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　音の暴力に耐えられるだろうか心配だ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　田川に話すと、田川も夜は暇なので否やはなく即、参加すると言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　一週間後メンバーの顔合わせがあり、その3日後それぞれの楽器持参で青木俊夫の家の離れに&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　集合して音合わせをした。アンプが無いのでスチールギターをラジオに接続しアンプ&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　代わりに使い「アロハオエ」や｢タフワフワイ｣を演奏したが、スチールギターはまだ音を&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　追うだけで、その他の楽器もばらばら、演奏と言うにはおこがましいかぎりだった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　まだベースは無い。さらに1週間がたって練習場に行くと部屋の中にはヤマハのアンプと&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　大きな姿をしたベースがでんと置かれてあった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　なんでも当時はやりだした分割支払いで買ってきたと、俊夫が鼻の穴を膨らませて言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　三々五々集まってきたメンバーはその威容を見て興奮した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　いよいよ本格的に始動したのだと言う思いが高揚させたのだろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　話し合って練習は週2回にした。勝次と敦也と博は社会人のためそうそう無理が利かないし、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一郎も塾のアルバイトがあるのでいつでも良いとはいかないからだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　メンバーは集まって熱心に練習を繰り返した。一月もすると中学生の演奏ぐらいになっていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　だが、メンバーは大事なことを見過ごしていたのだ。（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/62322693.html</link>
			<pubDate>Fri, 25 Sep 2009 22:51:33 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>大　学　時　代　そ　の　20　（愛しのクラウン２）</title>
			<description>　ふと見上げると空の色が青さを増し澄み切ってきたようだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そう言えばこの２～３日の朝晩の冷え込みは確実に秋の訪れを告げている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この間までやかましく鳴いていたミンミンゼミの鳴き声に変わって法師ゼミが哀れを誘っている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
まもなく尽きる生の嘆きを訴えるように、あらん限りの声をはりあげているのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
夕方になってヒグラシが悲しげに鳴きだす頃になると、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
いやでも劣等生たちの面倒を見なければならなくなる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢よう、先生。ずいぶん日に焼けている割にはくたびれた顔をしているぜ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
夏休みに女の子をナンパしそこなってがっかりしてんだろう｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ドっと沸いた。勉強なぞ興味のなさそうな連中のくせに、こんな冗談にはすぐ反応する。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢余計なお世話だ！数学からはじめるぞ。20ページを開け。一学期のおさらいからだ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
生徒はぶつぶつ言いながら教科書を開く。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢因数分解が良くわからないからこつを教えてください｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
前田　玲子が立ち上がって言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢教科書をもう一回よおく読んでみろ。20ページから25ページだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その中に解き方がきちんと書いてある。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
よおし、今から20分間しっかり読んで気がついた点をノートにメモして置け｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「いくら読んでもだめだよ。チンプンカプンで無駄なんだけどな」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
三善がボソッと言ったので狭い教室がまたドッときた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢お前らなあ、因数分解がわからないと次の二次関数へ進めないんだぞ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だからしっかり理解しておかないと駄目なんだ。今日は徹底的にやろう。いいな｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
見ているとまじめに読んでいる者は少ない。文意を読み取る能力に欠けているのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
確かに三善の言うとおり無駄な行為にちがいない。峰岸徹の受け持ちのクラスは一段上のクラスだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
教え甲斐があるだろうな、と一郎は軽く嫉妬して溜め息をついた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それにしても彼らはいったい何しに塾へ通って来るのだろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
親にせっつかれて来ているのか、あるいは有り余る時間をつぶしに遊び感覚で来ているのだろうか。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
現代みたいにゲームがあるわけで無くテレビも全部の家庭に行き渡っていた時代でもない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
月謝は安いと言えないが、親は子供の将来を考え無理をして塾に通わせているのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
親の心子知らずとはこういうことなのかもしれない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
授業はおおむねこういった感じで、彼らは言ったことの半分も理解出来ないようだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
隙あらば冗談を言って囃し立てることばかりを考えている。一郎は自分の中学時代を思い出した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自分はいろいろ反抗もしたがこれほどひどくはなかったぞと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
彼らははなから高校までで、大学まで進学しようとは思っていない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
三善などは中学を出て就職するのだという。一郎と彼らの差はこの意識の違いなのであろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢先生、やっぱり無理だわ。ただ字が並んでいるだけでさっぱり分からねえ。しまいにゃ眠くならあ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「三善！、何言ってる、ただ字を読んでりゃ良いってもんではないぞ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
何が書いてあるのか理解しなけりゃ何にもならない。ほかの人は要点がまとめられたかな？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「正直に言って、ただ読んだだけじゃ私たちの頭では無理です。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
先生、どのように解いたらいいのか分かるように教えてしてください」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
鈴木　ゆかりがじっと見つめてくる。美人なのだが頭は良くない。ある日ヒゲトラちゃんは&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「おい、一郎、あの子のような子を“白痴美人”と言うのだろうな、イヒヒヒ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
いやらしく笑いながら耳打ちしてきたことがある。彼はあまり良い趣味を持っていないようだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そう言えばお琴、日本舞踊、謡いなどを習っている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
若い一郎達から見ればどう考えても変人以外の何者でもない。その男が自動車免許を取ったという。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
なんとなく納得できないと思う。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「よし分かった。今から因数分解の基礎を説明する、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
今まで習ったことを思い出しながら良く見ておくように。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
必要なところはしっかりメモすること。いいな」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は因数分解を解くに当たって覚えなければならない公式を黒板に書き、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その根拠を噛んで含めるように説明した。とにかく公式を丸暗記しろ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
後は応用問題を数こなすことだと言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その授業をした何日か後に数学の抜き打ち試験があったと言って&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
坂本功が答案用紙を持って見せにきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「先生のおかげで因数分解の問題は大部分正解だったよ、ほら見て見。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
あの講義が無かったら多分全滅だったかもしれない。ありがとう」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はその話を聞いて嬉しかった。役に立ってくれたのかと思うと胸が熱くなった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それにしてもほかの生徒は知らん振りだ。出来たのか出来なかったのか分からない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こうして一郎の大学２年は中学2年の劣等生たちとわいわい言いながら過ぎていった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(つづく)</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/62277515.html</link>
			<pubDate>Thu, 17 Sep 2009 00:20:35 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>大学時代その19（愛しのクラウン１）</title>
			<description>　大変長らくお休みして申し訳ございません。半年にもなるのですね。間隔をあけると次を&lt;br /&gt;
書く気になれないのです。いえ、私の怠惰の成せる技なのは重々承知しております。&lt;br /&gt;
以後気をつけて途切れることなく書き続けたいと思っております。お許しください。&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　昭和３８年、大学２年の夏休みは一郎にとって厳しい日々が待っていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もっとも自業自得なのであるが、７月いっぱい通学する羽目になってしまった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
原因は一年次のフランス語である。フランス語は選択科目だが必修科目だ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はフランス語よりスペイン語を履修したかった。ところがスペイン語は一クラスしかなく、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もたもたしていた一郎が履修希望を出した時には既に満杯だった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
仕方なくフランス語を選択したのはいいが英語さえ満足にマスターしていないものが、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
初めてフランス語を理解するのは無理があるのではないかと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
と言うのは言い訳に過ぎないのであるが、なんと一郎はフランス語を落としてしまった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
新しい言語だと言うことで初めは、フランス語の辞書まで買ってやる気満々だったのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それが前期を過ぎる頃からだんだん興味をなくし、予習も復習もせず、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
挙句の果てに授業をサボるようになる。その結果は見るまでもない、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
成績表には「不可」と書かれてあった。フランス語は前にも言ったが必修科目である、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
２年次に取り返さなければならない。取り返す方法は二通りあって、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ひとつは再度一年次のフランス語を履修すること、ひとつは夏休みに集中して履修することである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は後者を選択した。ために待ちに待った夏休みのさまざまな計画がすべて泡と消え、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
7月のはじめから終わりまで海水浴客とは反対に東京に向かって通学するはめになり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
随分つらい思いをすることになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　あのころの海水浴場は非常に混んだ。高度経済成長が進むにつれ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それまで余暇など省みず一生懸命に働いた人々に少しの余裕が生まれた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
が、まだこれといって楽しむ術のない人々は手っ取り早く余暇を満喫するために、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
各地の海水浴場を格好の標的としたのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その頃車などを持つ人は特権階級かかなり危ないことをしていたお金持ちしかいない、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だから日曜日ともなると、一般大衆は電車を利用して湘南の海水浴場に殺到した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その混雑振りは想像を絶する。砂浜は海の家に端から端まで占領され、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その海の家のことごとくが盛況だった。海水浴場はいわゆる｢芋を洗う｣状態で、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
本来美しい海の色が、人々にかき回されて泥水と化していた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
尾篭な話だが、あの頃大部分の家のトイレは水洗ではない。汲み取り式か、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
よしんば水洗としても下水処理場などなく、汚水は河川に垂れ流し，雑排水も垂れ流しである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
河川に運ばれた汚水はそのまま海水浴場に流れ込む。今考えるとなんとも不潔で、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
あの泥水の中を泳いでいたかと思うと恐ろしくなる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
近年は下水道が整備され当時とは見違える美しさ、清潔さを保っている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もっとも当時と比べ海水浴客が減少したせいでもあるが。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そんな訳でその年、前半の夏休みは散々だった。苦労した割には「良」しか貰えなかったが、考えてみれ&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ば当たり前のことで、よほどの成績を上げない限り｢優｣を与えてくれる筈もない。後半の夏休みは狂った&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ように海へ通った。だが海はすでに秋を迎えていて、土用波と海月が幅を利かせていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そこで威力を発揮したのが質屋で大枚3000円を出して買った、あのパラソルである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
下に茣蓙を敷き田川や明治大学へ行った吉野恒夫や近所の暇人（大学生）を見つけては、浜辺で甲羅干し&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
したり、混雑する浜辺でこれ見よがしに、覚えたてのマージャンで憂さを晴らしていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
何もわざわざ浜辺に行ってまでマージャンをすることはなかったが、若さの成せる見栄であり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
悪ぶって見せたい現われでもあった。海辺に住むものの特権の証である、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
全身が日に焼けて黒いのも誇らしかった。&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　その頃小林塾のヒゲトラちゃんが目出度く自動車運転免許をとったと聞いた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
とすれば次に欲しくなるのは車である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
中古だがクラウンの32年式か35年式の車を買ったから見てみろと、得意満面でその車を披露した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎も吉野も燦然と輝く、そう見えただけだが、その車を見てうらやましくなった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自家用車を持っている者はまだわずかな時代である。中古だろうとなんだろうと、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自家用車には違いないのだ。ところが後に、この車が一郎に良かれ悪しかれ係わってくることになる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/62259935.html</link>
			<pubDate>Sun, 13 Sep 2009 19:48:59 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>大　学　時　代　そ　の　１８　(早大文学６)</title>
			<description>　篠原はバターピーを三つ口に放り込み音を立てて噛んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢何かほかにおつまみ作りましょうか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
バーテンは口をはさみ時だと思ったのだろう、遠慮しながら言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そうだなあ、レーズンバターでもどうだす？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
篠原は一郎に聞いてくる。一郎はレーズンバターなるものがどんなものだか分からないので&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
曖昧な返事をする。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢じゃあ、マスター、それとあたりめを焼いてくれるかな。それからビールはもうよろし、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ハイボール二つたのんます。一郎はんもそれでええやろ？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ああ、いいですよ、それお願いします」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢かしこまりました｣と言ってバーテンが少し長めのコップにウイスキーを四分の一ほど入れ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
冷えた炭酸水で満たすと、サイダーのような泡がシュンシュンと音を立てる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
さすがに手際がいい、たちまち二つ作ると何回か使ったことがあるような、少しくたびれた&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
コースターの上に乗せて、篠原と一郎の目の前に置いた。篠原は思い出したように&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「どこまで話したかいな？ああ、極道の二代目に生まれたところでしたな。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
親父は大阪の場末のあまり広くないシマを守るために汲々としとりますねん」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は身の上話の始まりに身を硬くして聞き入る。目を合わせることが出来ない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢だから物心付いたときにはもう二代目で、子分たちがちゃやほやするものだからすっかり&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その気になっていたんやが、さすがに小学校に入ると自分が極道の息子であることを恥ずかしく&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
思うようになり、物静かで控えめでいようと決心しましたんですわ。ところが高学年になると、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
今まで仲良く遊んでいた連中はどこからか噂を聞いて潮が引くようにわてから離れていったのだす｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢寂しかったでしょうね｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢子供心にもその寂しさは身に沁みましたんですわ。その頃は自分の出自を恨み、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
親父を疎ましく思うようになり、だんだん無口な少年になっていきましたんや｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
篠原はハイボールを口に含んで、泡の感触を楽しむようにしてからごくりと飲み込んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はピースを咥え火をつける。正直どんな相槌を打ったらいいのか分からない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢中学時代は最悪だしたな。悪を引き連れほかの学校の生徒と喧嘩したり､暴れて授業を&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
妨害したり、やりたい放題や。心のどこかに、いずれ極道の二代目になるのやろと言う&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
意識があったからと違いますやろか。だが、高校生になってから、昔かたぎの親父のやり方&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
をみていて、どこか違うなと思うようになりましたんや｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢違うってどんなところですか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そうだすな、やっていることは暴力、脅し、かつあげ、暴力団そのものだす。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
あとはシマを守るためにほかの一家とのせめぎあい。内所は苦しかったみたいだした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そんな時、わての頭の中でひらめいたものがありましたんや。今自分がやっていることは&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
親父がやっていることと同じやないかいな、いずれわてが跡を継ぐんならこないな身過ぎは&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
やめないかん。これではいずれ持たないやろう、合法的な企業を立ち上げ基盤を作りをせなあかん｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
するめを焼く匂いが漂ってきた。ハイボールとするめでは取り合わせがおかしいが案外あうのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
マスターは焼きたてのするめを裂いて醤油をかけ、マヨネーズを添えると、目の前に置いた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎と篠原は同時に手を出し、まだ熱いするめを口に入れた。口の中に香ばしい香りがひろがる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
なかなかのおつまみである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢あっ、これうまいですね。なるほど、二代目を継ぐ前に何をしようと思ったのですか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢まず、今の自分の生活を改めないかん。いつまでも悪たれをやってないで、今は大学に進む&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ための準備をする時だと気が付いたんですわ。不思議に思うでしょうな、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
極道がなんで大学にいくんだと｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢私は先輩の世界は知りませんからコメントは出来ません。が、普通一般の人が聞いたらそう&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
思うかもしれませんね｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そう思って当然や。だけど合法的な企業を運営していく上には素人ではあきまへんやろ？&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
必要なのは法律と経済学だす。それを学ぼうと一念発起して悪たれを止め、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
真面目な高校生に戻り、真剣に勉強して、大学に行こうと決めたんですわ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢それはご立派です。大部分の学生は私のように将来の目的もなく大学に入ってきた学生が大半です。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
先輩のように確たる目的を持って大学に来る人はすごいと思います｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢ご立派なんていわれると照れるがな。だから高校の三年間は猛勉強だしたな。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
どこの大学にいこうか、東京の六大学ならどこでも入れればよいと思ったんだす。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
さすがに東大は考えませなんだすけど(笑)、どうしても早稲田じゃなきゃあかんと&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
言うことではなかったんや｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢それで政経ですか？すごいですね。並みの頭では不可能ですよ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そりゃそうや。簡単なものではなく現役では駄目で一年浪人したがな。六大学を受けるレベルに&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
達していなかったんや。そして翌年四校受けて、たまたま早稲田の政経にひっかったて言うわけや。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ほかの大学はどうだったって？お蔭様で全部ＯＫだした｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢私も同じです。現役では見事に全滅でした｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢さよか、あんさんも一緒だすか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
篠原は同類がいたぞというように嬉しそうに笑った。一郎は顔がほてってきたので少し&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
酔ったかなと思った。トイレに行こうと立ち上がると足元がぐらぐらした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
酒を飲むのは高校の卒業式前夜のあの醜態以来である。時計に目をやると８時をまわろうとしている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢篠原先輩、私そろそろ帰らないと逗子駅の最終バスに乗り遅れてしまいます。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
お先に失礼します、今日はご馳走様でした｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢なんや、もう帰るのかいな。そんなに早くバスがなくならはるんでっか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢もう少し余裕はありますが、電車の待ち合わせが悪いと品川駅で３０分も待たなければ&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ならなくなり、ある程度余裕をみておかないと、最終バスに乗り遅れるのです。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それに少々酔ってもいます。２時間も電車に揺られるのは辛いのです｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「わてはもう少し飲んでから帰ることにしまっさかいどうぞ帰りなはれ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
今日はあんさんと話が出来て楽しゅうおました。また飲みまひょう。ほなさいなら」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　一郎が次に篠原を目にしたのは大学のメイン道路をいつもの格好をして歩いている姿だった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
背を丸め前かがみで、つま先を開きかげんに歩いている。何故そんな格好を続けているのか&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
聞きそびれたが、篠原さんならそれなりの理由があるのだろうと思う。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この前御馳走になった御礼を言おうとしたが、さすがに大勢の学生たちの中で親しげな接触は&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
気が引ける。部室に行った時でも改めてお礼を言おう、言い訳しながら学食に入っていった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/60526385.html</link>
			<pubDate>Thu, 12 Mar 2009 22:47:00 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>大　学　時　代　そ　の　１　７　(早大文学４)</title>
			<description>一郎はお金の持ち合わせがないことに気づいておずおずしながら言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢篠原さん、俺、今日金を持っていないのですが・・・｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そんなこと気にせんで宜しい、わてが誘ったんや、まかしとくなはれ。それよか、東谷はん、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
今日こうしてあんさんと話す機会を持てたことに乾杯！！今後とも宜しゅう｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢乾杯！宜しくお願いします。ああ、それから、一郎でいいですよ、政経の先輩ですから｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
二人はお互いのコップを合わせてから、ビールに口をつける。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
篠原さんはさも美味そうに喉を鳴らして一杯目を飲み干し、二杯目を泡立てないように斜めにした&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
コップに注ぐと、半分ほど飲んで置いてある一郎のコップにも継ぎ足した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ビールはそれで空になったので篠原さんは立ち上がり、冷蔵庫の中から二本目を取り出してきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢ほな、これから一郎と呼ばさせてもらいまっさ。ところであんさんは政経だそうだすな、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
何学科や？へえ経済学科だすか、わてと同じですがな。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
授業で分からんところがあったら何でもいいから聞いとくれやす｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢有難うございます。実は学科を考えもせずに選択して苦しんでいるのです。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
授業はつまらないので聞く気にもなれないのですが、いまさら変更も出来ず、なるたけ出席だけは&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
しようと思っています｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その時エロールフリンばりの口ひげをつけたバーテンが掃除を終えてカウンターの中に入って&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
くると、一郎の顔を見ながら｢いらっしゃい｣と言った。真っ白なシャツに黒いベスト、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
髪はポマードできっちり七三に分け、隙の無い着こなしである。一郎は軽く会釈した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢おや、おつまみが出ていませんね。バターピーでも出しましょう｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
バーテンはカウンターの隅においてある大きなガラス瓶の入れ物から、バターピーを二つの小皿に&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
取り出した。ガラス瓶は駄菓子屋で見かける、横向きで手前の入り口にアルミの蓋がついた、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
あの飴など入れてある入れ物である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
バーテンは二人が親密に話し込んでいるのを見て遠慮したのか、それ以上は何も言わずコップを&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
磨きだした。一郎は出されたバターピーを二粒口に入れた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
塩辛い味に包まれたピーナッツをカリッと、音を立てて噛んだ。香ばしい香りが口中に広がる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢実はな、今日、はからずもあんさんと飲もうと思ったのは、批評会で提出されたあんさんの詩に&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
えらく感動しましたのや。確かにあんさんが言うとおり未熟ではあり、言いたかった事が言い足り&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ない嫌いはある。けど、人を恋する気持ちって，あてはまだ無いが、こないなもんだろうなと&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
想像すると、切ない思いが伝わってきましたんや｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「有難うございます。本当は恥ずかしかったので批評会に出そうか、それとも止めようか悩んだの&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ですが思い切って出してよかったと思っています」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢ところで、あんさんは恋したことがありまっか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢いえ、憧れに似た気持ちはありますが、果たしてそれが恋なのかどうか分かりません｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「そうですやろ、多分そうだろうと思いましたわ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「・・・・・」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢あんさんの詩の中には友達を思う気持ちがようでていましたんやが、友達の恋心に踏み入っては&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
おらぬのような気がしましたんや｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「どういうことでしょうか？」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は何を言われたのか分からずきょとんとした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「何を言いたいのかと言うと、多分友達は苦しい胸のうちをあんさんに分かってもらいたい、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
苦しい恋心を共有して欲しかった。いわば、友達はあんさんにＳＯＳを送っていたのにちがい&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ありまへん。だから見当違いの疑念に囚われたのではないかいなと、ふと思ったんですわ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢それは分かります。しかし、私が恋未経験なこととどういう関係があるのでしょうか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢あんさんは友達の恋心が本当は何も分かっちゃあいないのや。恋がどんなに辛いものか、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一緒になって思い悩まなければならないのに、あんさんは一歩も二歩も離れて見つめているのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そこが物足りない。恋を知らない、経験したことが無いからですわ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「・・・・・」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢こりゃ失礼、言わずもがなことを喋ってしまいましたわ、気を悪うせんでください。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
あんさんの友達が遠く離れていても空気は繋がっているから、彼女が吐いた息を吸っているんだと&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
思い込もうとする切ない気持ち、そして吸い込んだ息に葉山の海のにおいを嗅ぎ取ろうとする&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
いじらしい気持ちが切なく、わての心に沁みこんできましたんや｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「有難うございます。そうかも知れませんね。でもどうやって表せばよいのでしょう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
所詮友達とはいえ、彼は独立した心を持つ一人の人間です。その人の恋に踏み込むのはいかがな&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ものかと思うのです。むしろそっと見守ってやるのが友達ではないでしょうか」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は喋ったため、喉が渇いてビールをたて続けに飲んだ。自然にピッチが早くなり気が付くと&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
コップは空になっている。篠原は嬉しそうに、一郎のコップの上部４分の１を泡にしてビールを注ぐ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
篠原も急ピッチで飲んだのでバーテンは三本目のビールを開けて篠原のコップに注ぐ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は少し酔ってきたなと感じた。外の様子は分からないが、時計は６時半を指していたからまだ&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
明るいのだろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢その話はここまでにして、楽しく飲みましょう。わては嬉しいんや。あんさんみたいな人と&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
友達になれるなんて｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢恐縮です。ところで、篠原さんも何かお書きになるんですか？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢いや、わて自身は文学作品なんかよう書けしまへん。皆さんが持ち寄る作品を見せてもろうてる&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
だけですわ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「私は小説を書きたいと思っています。思っているだけでぜんぜん手をつけていませんが」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢それは楽しみだすな。出来たら一番に見せてくれませんか、あんさんがどないな作品を書くか&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
今から待ちどうしいがな｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
と言ってまたビールをごくんと音を立てて飲んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そうそう、初めて一緒に飲む人に自己紹介せなあきまへんでしたな｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
といって迫力のある目でじっと一郎を見つめ、居住まいを正し、おもむろに話し始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢わては不幸にも、大阪の極道の息子に生まれたんですわ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は｢ああ、やっぱりそうか｣、チンピラならここまで時代がかった格好はしないだろうと&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
思ったが、不思議に怖いとは感じなかった。　　（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/60398773.html</link>
			<pubDate>Mon, 02 Mar 2009 15:24:42 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
		</item>
		<item>
			<title>　大　学　時　代　そ　の　１６　(早大文学３)</title>
			<description>　批評会に集まったのは７人である。一郎は少し気落ちした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
が、大勢であれこれ言い合うのも真剣みが出ないからちょうどいい人数かもしれないと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
集まったメンバーの中には初めて見る人もいる。眼鏡をかけた近田女史、寅さん風の篠原さん、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
女子の作品を批判していた佐藤さん、入部の手続きをしてくれた川口さん、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
入部の日に座っていた山田さん、初めて見る顔が二人いた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一人は学生服に早大独特の座布団帽子、それもワセリンを塗っててかてかにした、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
見るからに臭そうな、腰に手ぬぐいでもぶら下げていれば昔幅を利かせたバンカラそのものだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
毛が濃いと見えて無精ひげが黒々と顔半分を占領している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
もう一人は黒のスーツをきりりと身に着け、髪はやや長めにカットした清楚な女性である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この部の世話役であるらしい川口さんが三日前に提出期限がきた作品を紹介する。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢おはようございます。今日は新人の東谷君の詩が１篇と山田君のエッセイ、それと谷川女子の&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
エッセイの３篇であります。では最初に東谷君の｢山完の恋｣から始めます。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
お手元に配ってありますコピーを今から１０分間で読んでください。では、始めっ！｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
川口さんが提出された全作品を人数分、ガリ版で刷ったらしい。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その当時コピー機などという便利な機械はまだ無いから、ガリ版で印刷するしかなかったのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はガリ版のインクの匂いが消えない印刷物、と言ってもたった一枚の藁半紙にコピーされた&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自分の作品を他人が読むように熟読した。改めて読み返すと欠点ばかりが見えて恥ずかしくなり、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
すべて回収したくなった。長く感じられる１０分が過ぎ、川口さんの｢終了｣の合図がかかる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎の胸はどきどきと音が聞こえるほど興奮して息苦しい。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
さしずめ、今の自分なら血圧が２００ぐらいに跳ね上がっているだろう。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢さあ、どなたか感想をお願いします｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
はいと言って手を上げたのはこの前近田女史の作品を批判していた佐藤さんである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢せっかく提出してくれたのにこんなこと言うのもなんだけど、このような作品には批評の仕様がない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
第一にいくら彼女を愛しているからと言って１００キロ以上離れているのに&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
＜同じ空気を吸っている＞などという表現は受け入れられない｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢それにさあ、物干し台から見た夜空の表現は陳腐だと思うよ。誰でも書けるもん｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
近田女史がタバコをふかしながら、かなりきついことを言う。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
続いて無精ひげのバンカラが追い討ちをかける。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢そもそも早大文学は散文を主体にしていると聞いている。詩は範疇外じゃないのかい？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢いや、そんなことはない。文学活動の一環として詩も立派な文学だし、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
過去にも何篇かの詩が載せられている。気にすることはないぜ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
川口さんが素早くフォローしてくれたが、一郎は耳が痛かった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自分でも気になっていたところを指摘されたのである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢もうひとつ、終わり方が物足りない。だからなんだったんだと言いたくなる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一方的に＜お盆に帰る＞はないだろう？一郎はどう思ったのか、今一書けてない気がする｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
佐藤さんが追い討ちをかけるように結論付ける。そのこともそのとおりだと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢なかなか厳しいご意見ですが、ほかに何かありますか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それまで黙って聞いていた寅さん風の篠原さんがおもむろに口を開いた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢皆さんは表現方法を批判ばかりしておますが、山完の一途な恋心をどないに感じましたのや。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
わしはえらく感じ入ったで、男はんが恋するちゅうのはこないにのたうつもんでっせ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それだけ真剣なものや。苦しさが伝わってきますわ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢篠原さんがおっしゃるとおり、私も感動しましたわ。女として、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
男の人から山完さんのように思われているのを知ったら、きっと嬉しいでしょうね｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
スーツ姿の清楚な女性、谷川さんがおずおず手を上げて言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
その頃になると部室の中はみんなのふかすタバコの煙が充満し、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
煙たいのであろう彼女は目を瞬かせている。それと察した川口さんが窓を開け放った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
すると雨もよいの風が入ってきて、空気はこんなに美味かったのかと皆が感じたようだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
時代はまだ禁煙と言う概念が無かった頃である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はそれ以降、彼女のことを考えて自分は終わるまで禁煙にしようと思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎は自分が書いた作品に感動してくれた篠原さんと黒スーツの谷川さんに、何と言っていいのか&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
分からない親近感を覚えた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢ほかに何かありませんか？無ければこの作品の作家である東谷君の意見および反論を聞きたいと&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
思います。相手が先輩でも気にすることはありませんよ｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢的確なご指摘、いちいち胸に凍みました。またこの作品を読んで感動してくださった&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
お二方に感謝します。有難うございました。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
この作品はご覧のとおり郡山と言う遠いところで勉学に励んでいる山完から来た手紙を&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
土台にしています。彼はさっちんという女の子に恋しています。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
読んでいるうちに止むに止まれぬ彼女への思いが伝わってきました。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そのあまり、あらぬ方向に向いて行く男の心の動きを表したものです。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
表現が拙いのは認めますが彼の思いを汲んで下されば幸いです｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢確かに、この作品の構成は書簡形式にしてある点斬新だと思う、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
しかも頭からずっと継続していて経過が流れていくから読みやすい。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
また、男同士の心のやり取りが手に取るように分かる。しかし表現にもう一工夫欲しかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一年生でもありますし、まだ未熟だと思う。この作者の今後の精進に期待する｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
川口さんが意見を纏める様にこう言うと、次の作品に移った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　厳しい批評会が終わったのは５時だったが６月の日は長い、まだ明るかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
部室を出るとき篠原さんが寄ってきて一郎に声を掛けてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢東谷はん、これからどこぞに予定がありまっか？良かったらお茶でもどないだす？｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢別に、家に帰るだけですから｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢どこまで帰らはるん？葉山？何処ですねん、遠いんでっか？&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
関西育ちなもんでよう分かりまへんのや、へえ、ここから２時間もかかるんでっか、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
そら遠うおますなあ。時間は取らせしまへん、一寸付き合うてえな。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
時間にはまだ早ようおますがいい店がありますのや｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
と言いながら高田馬場方面に歩き始めた。一郎は気が進まなかったが応援してくれた篠原さんの&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
誘いでは断るわけにはいくまいと、彼の後に付いて行った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
１０分ほど歩いてから大通りを一本入った裏道、そこは色々な飲み屋が軒を連ねている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
まだ時間が早いと見えてどの店も掃除をしている途中で、着物を着た姉さん被りの女性や&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
蝶ネクタイにベストをきちんと着たバーテンたちが立ち働き忙しく出入りしている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
すると篠原さんは、とあるスタンドバーの前で止まり、勝手知ったるところのようにドアーを&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
押して中に入っていった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢いらっしゃい、まだ掃除中・・・これは篠原様、今日はお早いお越しで｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
バーテンが振り向いて、闖入者が篠原さんと認めると少しおどけた調子で言った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
鼻の下にエロールフリンを真似たのだろう綺麗な八の字ひげを蓄えている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢友達を連れて来ましたんや、よろしおますやろうか｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
｢お相手は出来ませんがビールならそこの冷蔵庫から勝手に出して飲んでください。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
コップは洗って置いてあるでしょう｣&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「それでよろしいか？東谷はんはどないだす？ビールでよろしいか？よろしい、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ほなビールを飲ませてもらいまっさ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
篠原さんは冷蔵庫からビールを二本取り出して栓を抜くと一郎のコップになみなみと注ぎ、&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自分のコップにも注いだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
一郎はこんな明るいうちからビールを飲むのを経験したことが無いので少し怯んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/huku032002/58856728.html</link>
			<pubDate>Fri, 07 Nov 2008 21:34:33 +0900</pubDate>
			<category>練習用</category>
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