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フクロムシ&コブクロムシ怪獣なんでも研究所
地震、噴火、核ミサイル いつ現れるのか プルガサリ…

書庫『ガメラ4』妄想の小部屋

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Capter64 『アーマゲドン』
 諏訪湖南岸に上陸した蒼龍王は、なにか目的でもあるかのように諏訪大社本宮の方向にゆっくりと移動を開始した。蒼龍王の眼は、緋巫女たちに天磐門の開放を阻止された怒りからか燃えるような真っ赤に変色している。

 蒼龍王の頭上を大きく旋回していたガメラが行く手を阻むように、蒼龍王のほぼ正面に立ちはだかると、すぐさまネオニュートロンをおびたプラズマ火球を数発放った。しかし蒼龍王もハドロンビームで応戦、再び発生したすさまじい衝撃波で近隣の構造物のほとんどが跡形もなく粉砕され、蒼龍王も大きくバランスを崩す。ガメラも後方へはじき飛ばされた。上空至近距離から状況を観察していた陸自の偵察ヘリも猛烈な爆風でコントロール不能となり失速、上川大橋の橋桁に激突、大きな炎が立ち上った。

   体制を立て直そうとした蒼龍王の背後から、音もなく飛来した劉朱鶏イリスの触手が蒼龍王の身体にからみつく。四本の触手に締め付けられ、さすが蒼龍王も身動きがとれない。しかし左腕にからんだ触手を強引に引き剥がし、鋭い牙で噛みちぎった。ちぎれた触手の先端から赤褐色の体液が噴水のように噴き出す。
 イリスは、残された3本のテンタクランサーを蒼龍王の堅固な表皮に突き立て徐々に切り剥がしていく。イリスの体温は吸収した核エネルギーの影響で急激に上昇し、臨界点に達するほど異常高温となっていた。すでに体の一部が溶解し、全身から水蒸気が立ち上っている。メルトダウン寸前なのは、明らかだったが、それでもなお攻撃の手を緩めようとはしない。蒼龍王もひるむことなく、イリスが絡みついたままじりじりと諏訪本宮へ近づいていく。

 本宮には出石姫の側近守矢轍齋が守る蛇神ソソウ神の祠がある。同時刻、轍齋は一心不乱にソソウ神の神像の前で加持祈祷を続けていた。
同化した朝倉達興の精神が蒼龍王を動かしているとすれば、轍齋は超自然の力を駆使して土蜘蛛の怨念を封じようとしているのかもしれない。
轍齋は突然意を決したかのようにソソウ神の神像を祭壇の神剣でまっぷたつに切り裂くと、体内に安置されていた神獣鏡を取り出し、天上に輝くベテルギウスの方向に両手で高くかざした。

 ガメラはゆっくりと立ち上がると蒼龍王に向かって突進し、正面から組み伏せようとする。ガメラの甲羅の中央にはGⅡのときと同じく、灼熱を帯びて赤く輝く何かシンボルのような紋様が鮮明に浮かび上がり、自爆の予兆を顕著に表していた。

   長く鋭い蒼龍王の尾のかぎ爪がイリスの背後を貫き、そのまま強引に引き離そうとする。しかしイリスの残った3本の触手は蒼龍王の首と左右の腕にしっかりと食い込み容易に離すことができない。イリスの発する高温で、密着した蒼龍王の全身からも水蒸気が立ち上り徐々に装甲が犯されていく。
 一方ガメラは蒼龍王の胸部にある三日月状の角の先端を右腕で掴み引き寄せると、左肘にある鋭いエルボークローで切り裂き、開いた傷口を左腕で深くえぐる。強靱な蒼龍王もダメージのため幾分動きが鈍ったように見えたが、まだ侵攻は止まらない。ガメラとイリスを引きずったまま上川沿いにじりじりと南下を続け、中央自動車道を分断、諏訪大社本宮の目前に迫っていた。

   千里、真弓、貴幸の3人は肉眼で状況を把握するため、陸自の装甲機動車で、中央道諏訪IC付近の闘争地点へ向かっていた。
「今何時?」
千里が運転している貴幸に聞いた。
「8時02分、限界点まであと16分」
「緋巫女と出石は誰よりもこの状況を理解し、何をすべきかが判っている。ということはガメラとイリスも…だからきっと彼らは現世を救い、蒼龍王を葬ってくれる。私たちにはもう見届けることしかできないけど、2人の意思と現世の守護神の力を信じるわ」

 蒼龍王の爪がガメラののど元に突き刺さる。そしてふところへ引き寄せると胸の三日月状の角がガメラの腹部へゆっくりとめり込み、おびただしい量の緑色の鮮血がボタボタと足下を染めていく。蒼龍王の体内から、無数の黒い群体生物がガメラの傷口から体内へ侵入しようと這い上がってくる。しかしガメラの体温があまりにも高温なため、体内に入り込もうとする前に次々と蒸発し消滅ていく。

 蒼龍王はガメラの頭部へ向けてハドロンビームを打ち込もうと大きく口を開ける。そのときイリスのテンタクランサーがまるでそれを阻止するかのように背後から蒼龍王の上顎を貫通する。しかし蒼龍王は少しもひるまず、それを粉々に噛み砕いた。       
 その隙にガメラは右腕で蒼龍王の下顎の突起物をつかむと力まかせに引きちぎる。蒼龍王は大きく咆吼し放ったハドロンビームがガメラの頭部をかすめ、ソソウ神の祠を直撃した。
すると祠の方向から何者かの未知なる力によって撃ち返された光束が蒼龍王の顔面を直撃する。自ら放った殺人光線の威力で蒼龍王の頭部の右半分が粉々に砕け散った。さすがの蒼龍王もガクンとガメラにもたれ掛かる。
千里たちの眼前で繰り広げられている凄惨な三つどもえの戦神の闘いはただ本能のまま、果てしなく続くかのように思われた。

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 諏訪湖上空では巨大な球状のワームホール“天磐門”がまるで意思を持つかのようにゆっくりと回転しながら成長を続けている。日の出の時刻はとっくに過ぎていたが天磐門の周辺は厚い灰色の雷雲が渦巻き、太陽の光はまったく遮られて地上に届かない。しかしなぜか超新星のオレンジ色の光は、磐舟から天磐門に向かって放たれているニュートリノの光束と混ざり合い、ワームホールの中心部に吸い込まれ、まるで天磐門に強大なエネルギーを供給しているかのように思えた。

  やがて天磐門の光が一段と強くなるにしたがい、空気の流れが天磐門中心部に向かって大きな渦巻となって、諏訪湖周辺の木々や工作物を徐々に吸い上げはじめた。湖面にも幾筋もの竜巻が発生する。千里たちも強烈な突風に危険を察知し、高速道路の堅牢な構造物の影へ避難した。乗ってきた装甲機動車が竜巻のひとつに飲みこまれてはるか上空へ消えていった。いよいよ限界点が近づいている。
「時間は?あと何分だ」
「限界点まで2分20秒!」
貴幸の問いに大きな声で千里が叫ぶ。
「もう時間がないわ!」

千里の悲痛な叫びが通じたかのように、ガメラが蒼龍王の首元に向かって至近距離からプラズマ火球を放った。火球は蒼龍王の下顎部を貫通する。さすがの蒼龍王もかなりなダメージを受け、そのまま崩れ落ちるようにガメラに覆い被さる。ガメラは蒼龍王に両腕の爪を突き立てると、腹部に角が刺さったまま、後脚からジェット噴射を開始した。ガメラの全身は溶鉱炉の溶鉄のように真っ赤に輝いている。
 同じくメルトダウン寸前のイリスも水蒸気に包まれながら、溶解寸前の残った触手を翼状に大きく拡げる。3体の巨獣はひとつの赤い塊となって地上からゆっくりと浮き上がった。そして天磐門の中心部へと姿を消していく。磐舟もまた諏訪湖から離水し、ゆっくりと天磐門に向かって上昇している。磐舟端部は大きく崩れ、すでに半分以下の大きさに収縮していた。

 そのとき千里たちの頭上を、駿河湾に展開中の米駆逐艦ズムウォルトが放った3基のトマホークが、甲高い飛行音を残して亜音速でかすめていく。核ミサイルは3頭の神獣を追って吸い込まれるように天磐門の中心部へ消えていった。

 3頭の神獣と3基の核ミサイルが天磐門に吸い込まれて数秒後、地表のものすべてがいままでに経験したことのない、朱く輝く強烈な光と磁気嵐に包まれた。激しい光の洪水に飲み込まれ、かろうじて原型をとどめていた磐舟の中央部も、膨大な光のかけらとなって分解し、ワームホールに吸収されていく。

   やがて、天磐門は急激に縮小を始め。周りの雷雲や竜巻を飲み込みながら、数分のちにはいままでの事象がまるで実態のない悪夢だったかのように、存在していた痕跡も残さず完全に消滅していた。
そこには天磐舟の姿もどこにもなく、数十カ所に渡って発生していた断層の裂け目からももうあの不吉な光の柱は立ち上っていない。地震活動も急速に沈静化していった。
 激しく流れていく雲の間から差し込む初冬の柔らかい朝日が、諏訪湖の湖面にきらきらと輝いている。
 
中央道の高架橋の上から3人は無言で諏訪湖を眺めていた。破壊しつくされた諏訪市中心部の惨状はあの出来事が紛れもない現実だったことを物語っている。
首都圏を含め復興には長い年月がかかることだろう。でもそこには希望がある。
   やがて磁気嵐も収まり通信も復旧した。貴幸の持ったトランシーバーから米森と悟が代わる代わる3人に呼びかける声が飛び込んできた。後ろで相変わらず棚橋大臣がなにやら大声でけたたましく叫んでいるのが聞こえる。
   千里と真弓は顔を見合わせ、心の底から安堵の笑みがこみ上げてきた。
貴幸はポケットからよれよれのタバコを取り出すと、ゆっくりと火をつける
 「また現世に災いが起こったら、きっとまたガメラが助けにきてくれるでしょうね」
 「そんなこともう2度とごめんだけどねェ」
  千里は貴幸のくわえているタバコを横取りし水たまりにポイと捨てると、両手を拡げ急速に拡がっていく青空といっしょに運ばれてきた新鮮な空気を胸一杯深く吸い込んだ。

エンドロール

夕刻、行方不明者の捜索をしていた長野県警の機動隊員が諏訪湖畔で意識を失って倒れている一人の女性を発見し救助した。女性の名は草薙浅黄、津波にのまれたと思われるが不思議なことにかすり傷ひとつおってはいなかった。
      

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 あとがき
2011年10月から書き始めて足かけ7年、2次創作妄想怪獣小説「ガメラ4」やっとこさ完結することができました。長い間お付き合いいただきどうもありがとうございました。
 小学2年生のとき「キングコング対ゴジラ」を映画館で観てから半世紀以上ずっと私なりの理想の怪獣映画を追い求めてきました。その答えに近い作品が、金子監督の平成ガメラ3部作でした。あの3作品には私が特撮怪獣映画に求める欲求のほとんどが満たされていました。
 ただ続編を暗示するかのような「ガメラ3邪神覚醒」のエンディングから、物語がいったいどう展開していったのか知りたくてしょうがありませんでした。林家しん平監督の「駕瞑羅4 真実」は私の田舎では観ることがかないませんでしたし、のちの「小さき勇者たち」は残念ながらかなり求めているものとは異なった作風の作品でした。

 そんなこんなで7年前に拙ブログで思いつくまま続編のプロットのようなものを書き始めました。そのきっかけはハニーボーンズ前田さんの創作怪獣「シアンキング」の存在です。もともとは丸山浩氏デザインのオリジナルキャラですが、そのリアルなかっこよさにほれぼれしました。この怪獣が敵キャラとして登場するガメラの続編をぜひ観てみたいと思いました。

書きながら次の展開を考えていたような状態で、文章の表現力やボキャブラリー不足もはなはだしく、整合性もとれていないとても小説などとは呼べない稚拙な文章ですが、なんとか結末までたどりつくことができたように思います。

 ただ、これはあくまでこんな怪獣映画(ガメラ作品)が観たいな〜という私の個人的な願望です。ファンの方それぞれ「ガメラ」という怪獣映画に対する思い入れの尺度やアングルが違うと思いますから、あくまでファンのひとりである私の妄想にすぎません。既存の作品、資料等から自分好みのパーツを集めて再度組み立てただけの2次創作の作文です。
 もし我慢強く最後まで読んでいただいた方がいらっしゃいましたら感想・ご意見などお聞かせいただけたら嬉しいです。

 7年の長きにわたりお付き合いいただきほんとうにありがとうございました。
次回は「ゴジラ」作品とか妄想してみたいかも〜ダハハ                      

インスピレーションやアイデアを頂いた映像作品・参考文献・ウェブサイト等…
「ガメラ・大怪獣空中戦」
「ガメラ2・レギオン襲来」
「ガメラ3・邪神覚醒」
「ガメラ・小さき勇者たち」
「ガメラ対大魔獣ジャイガー」
「ゴジラVSデストロイア」
「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」
「GODZILLA 2014」
「フリンジ」
「インターステラー」
「パシフィック・リム」
「マイティ・ソー/ダークワールド」
「ファイナルカウントダウン」
ウルトラQ「虹の卵」「ガラダマ」「鳥を見た」「ゴメスを倒せ!」
「ミラーマン・リフレックス」
「新世紀エヴァンゲリオン」
「超時空要塞マクロス」
「古事記・日本書紀・日本霊異記」
佐治芳彦「謎の竹内文書」
諸星大二郎「暗黒神話」「天孫降臨」
高橋克彦 「竜の柩」
H.P.ラヴクラフト「クトゥルフの呼び声」「ダゴン」「狂気の山脈にて」
「闇を彷徨うもの」「宮殿」
高橋御山人「邪神大神宮」
「Wikipedia」

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Capter63 『邪神復活』
 東の空がうっすらと白みはじめ、長い夜が終わろうとしている。
千里、真弓、貴幸の3人は、湖西の高台にある諏訪湖SEに設置された前線本部の救護用仮設テントで手当を受けていた。ここからは諏訪湖が一望できる。しかしいま眼前に見えるものは、かつてののどかな風情からは想像もできない凄惨な地獄絵図のような風景だった。
   重傷を負った櫛田は甲府市の医療センターへ救急ヘリで転送された。テントの内外では自衛隊やレスキュー隊の隊員たちがあわただしく行き交っている。ただこれから起ころうとしている戦慄の事実は千里たち以外知るよしもない。誰もがみなこの悪夢から一刻も早く解放されることを願っていた。

   上空に渦巻く巨大な黒雲からは絶えず雷鳴と閃光が発生し、その中心部には球状の漆黒の物体がいまにも空全体を飲み込むような勢いで刻々と成長していた。
   大地は数分おきに地鳴りとともに地震活動を繰り返し、そのたびテントに設置してある医療機器がビリビリと振動する。
「もう私たちにできることはなにもないわね」
千里がぽつりとつぶやく。
「浅黄さんや櫛田くん、特殊部隊の人たち…たくさんの大きな犠牲をはらったのになにひとつ好転していない。結局私たちは無駄な努力を重ねてただけなんだろうか…結果は判っていたのに…」
千里は湖の中央に浮かぶ巨大な磐舟を観ながら大きくため息をついた。
珍しく弱気になった千里の肩に、貴幸が後ろからかばうように無言で手をかける。
「そんなことは絶対にないし、最後まで悪あがきしようといったのは千里でしょ」
真弓もそう言いながらほんの少し微笑んだ。

「まだあきらめてはいけません。あなたたちの勇気ある行動は決して無駄ではありません。あとは私にまかせてください」
突然、心の中に直接訴えかけるように聞こえてきた声に3人はあたりを見回した。
「今の声は…綾奈さん…いや出石姫」
3人は磐舟から西の空へ向かって飛び立つ一筋の小さな光点を見たような気がした。

 奈良、葛城山中行者谷、劉朱鶏出現のあと残存する幼体が万が一にも再び蘇生することがないように、空自F-2のナパーム攻撃による徹底的な殲滅作戦が実施された。       
 葛城山東斜面1km四方にわたって爆撃の痛々しい傷跡が残り、以前の緑深い原生林は完全に滅失し、無残な岩肌を露出している。
現地には、監視のため信太山の第五普通科中隊が派遣されていたが、第5師団のほとんどの所属部隊は首都防衛戦に招集され、従事する隊員はごくわずかだった。
 
明け方、奈良盆地に暁の光が差しはじめた頃、なんの予兆もなく突然、山体が大きく鳴動し山腹から幾筋ものおびただしい土煙が噴き上がった。爆撃のためもろくなった行者谷の岩肌が次々と音をたてて崩落していく。そして、崩れた山腹からストロボを連射するように青白い強力な閃光が明滅したかと思うと、鋭く尖った四本の触手が山腹を突き破り、朝焼けと同色の朱く巨大な本体が出現した。
「こちら葛城山監視部隊、06:30行者谷八束の岩屋付近より再び劉朱鶏と同種と思われる巨大生物が出現。繰り返します葛城山行者谷より再び巨大生物出現!」
            
   劉朱鶏はゆっくりと頭を擡げると、長大な触手を翼状に変形させ大きく拡げる、朱色の巨体は超新星の光と朝焼けに照らされ妖しく輝いている。先に出現した個体よりさらに大きく身長はゆうに80mを超えているように思われた。
   全身の発光体の光が増すと、巨体はゆっくりと地上から離れた。監視部隊の隊員たちは皮膜翼により発生した強力な衝撃波に巻き込まれ、数名が数十メートル近く吹き飛ばされた。岩陰に待避し難を逃れた隊員たちは、東方から飛来した小さな光点が劉朱鶏の胸の発光体に吸収されるのを目撃した。それは人の形をしていたようにも見えた。

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   日本海、佐渡島北方200海里EEZ付近、中国の原潜“饕餮”は、海自の対潜哨戒機の索敵を避けるため深深度で身を潜め、すでにSLBMの発射準備を完了していた。予定された発射時間まで後約1時間、艦長陳元龍提督は人民解放軍生粋の軍人で表情一つ変えることなく、冷静に本国からの指令を待っていた。自分の命令ひとつで日本の一地方都市が消滅することなどまったく気にも止めてない様子だった。

   乗組員がSLBM発射の最終チェックに入ったそのとき、艦上方から急速に迫ってくる正体不明の巨大な物体をソナーが捕らえた。
衝突を避るため、饕餮は機関全開にして回避行動をとろうとするが間に合わない。                                  
 巨大な物体は艦橋後方、ミサイルのサイロ上に激突しそのまま覆い被さる。原潜は大きな衝撃を受け一瞬にして航行不能に陥る。そして接触した物体の重量で急速に沈降していく。
 劉朱鶏は触手先端のテンタクランサーで船体を貫き、原子炉およびミサイル格納庫の隔壁を一瞬のうちに破壊した。そして触手の先端から核エネルギーを吸収していく。
 饕餮の原子炉は停止、船体の亀裂から大量の海水が内部へ流れ込み、乗組員全員が脱出することもできず、阿鼻叫喚の生き地獄と化す。数分後船体は水圧に耐えきれず圧壊し、その残骸は深い海溝の底へと消えていった。

   暗黒の海溝の闇の中から禍々しい生物が再び浮上してくる。核エネルギーを吸収した劉朱鶏の全身がまるで発光器を持った深海生物のように妖しい光に包まれていた。

   その頃、山岸総理は中国首脳とホットラインでぎりぎりの交渉を行っていたが、中国首脳の姿勢は強行で総理の説得を受け入れる様子はなかった。総理はそれでもなお、語気を荒げながら核攻撃を中止するよう重ねて訴えていた。ところがなにか問題が起こったのか突然、中国側から一方的に会談が打ち切られた。総理が落胆のあまり執務室のソファに崩れるように深く座り込んだ矢先、CICから緊急の報告が入る。

「日本海哨戒中の海自P3-Cより報告、佐渡島北方200海里の海域で中国原潜が、劉朱鶏と思われる巨大生物の攻撃を受け沈没したもよう。海上に多数の漂流物を確認、生存者は不明、なお同海域に放射能汚染の兆候なし。劉朱鶏は海中から浮上すると南方に向かって当海域を離脱しました。繰り返します…」
   総理はなんとも複雑な表情を浮かべながら、葺石官房長官とともに危機管理センターのCICへ帰ってきた。
「棚橋大臣、状況はどうなっているんだ」
「それがまったく予想だにしない事態が勃発しまして、いま米軍の偵察衛星と現地の海自哨戒機からの情報を収集分析している最中です」
   その時、悟がCICに息を切らせながら走り込んできた。
「博士、ワームホールの限界点到達時間が算出できました。いまから46分後、午前8時18分。影響範囲は半径160kmと推定されます」
「半径160kmというと中部関東一円、首都圏を含めてすべてワームホールに吸い込まれてしまうということか!」
   棚橋大臣はヘタヘタとフロアに座り込んだ。

   そのとき再びCICにエマージェンシーアラームが鳴り響く。
「諏訪湖南部上川大橋東岸に蒼龍王上陸!ガメラ再び上空から攻撃を開始したもよう」
「空自偵察機より報告、北方より音速で南下する飛翔体を確認、中国原潜を撃沈した劉朱鶏と思われ急速に諏訪湖に接近中!」
千里たちの眼前で、現世の存亡をかけた戦神たちの最終闘争の火ぶたがきって落とされようとしていた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

なんとか強引にクライマックスまでお話が進みましたよ〜
あとはもう、ガメラシアンキング
そしてイリスの三つ巴の闘いの顛末を目撃するだけデッス
いよいよクライマックスみんなでガメラを応援しよう

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Capter62 『滅びのプロローグ』
  磐舟を浮遊させる電磁波の影響か、着水と同時に諏訪湖の湖面からおびただしい水煙が立ち上る。着水の衝撃により発生した高さ数メートルの津波が湖畔の民家や観光施設をことごとくのみ込んだ。ニュートリノシャワーによる岩塊自体の発光と湖底から立ち上がるオレンジ色の光が水煙に反射し、湖全体がこの世の物とは思えぬ荘厳で幻想的な光のベールに飲み込まれていく。
   その光の壁を突き抜けゆっくりと左回りに旋回しながら、満身創痍のグライダーは徐々に下降していく。磐舟から立ち上る熱気による乱気流で機体が安定せずたえず大きく振動し、その度機体がギシギシと悲鳴をあげる。
「なんとかあともうちょっとがんばってくれ!」
貴幸は心の中でなんども叫んでいた。

「こちらアメノシラトリ、タービュランスの影響で機体が安定しない。諏訪湖畔南西の諏訪湖スタジアム付近に強制着陸を試みる。けが人がいる、すぐに救急処置の手配をたのむ」
「こちら警備部隊移動指揮車。よくぞご無事で。すぐに救援を向かわせます」
湖畔の道路施設は磐舟着水による洪水に襲われ、数十カ所で寸断されていたが、住民の避難はすでに完了していたため、幸いなことに人的被害はほとんど報告されていなかった。 陸自の機甲師団は首都決戦で消耗し、ほとんど壊滅状態となっていたため、住民の避難誘導を目的に松本の第13普通科連隊が配備されていた。

   磐舟攻撃のイニシアティブはすでに防衛省から在日米軍へと移っていた。しかし米国も3隻の最新鋭原子力空母を喪失し、また岩国や横田の戦闘攻撃機群も空自と同じく先の首都決戦で損耗が激しく、攻撃体制の再構築を余儀なくされていた。
  それに中国からの無謀な核攻撃の布告に伴い、北陸地方の日本海沿岸へTHAADおよびPAC-3の警戒態勢の構築を最優先に取りかかっていた。
   しかしあまりにも時間がない。米国大統領も日本政府もホットラインで直接中国に自嘲を呼びかけたが中国の姿勢は強行で、米国および日本と紛争になるというリスクを冒してまで、自国の国力の誇示に固執しているようすだった。

「ミサイルを撃ってくるとしたら、おそらく日本海に展開する原潜からのSLBMでしょう。3日前大連から晋級原潜“饕餮(とうてつ)”が出航したという衛星からの情報をペンタゴンから入手しています」
官邸地下の危機管理センターでは、防衛省制服組の幹部と棚橋大臣が激しい議論を繰り広げていた。
「先の作戦ですでに埒棆譯垣鼻∈汗な檻伽匹DDHを喪失しております。現在稼働できるイージス艦は舞鶴の“ゆきなみ”と“はるか”そして第2潜水戦隊の潜水艦が3隻のみとなっております」
「それで日本海のEEZすべてを警戒することなどできんだろう。米軍に要請してイージス艦を回してもらう以外方法はない!」
「しかし日本近海に展開できる第7艦隊のイージス駆逐艦はいまのところ佐世保に停泊中の“タイコンデロガ”1隻のみと聞いております」
「それじゃ話にならん!もう時間がない。韓国とフィリピンにいる駐留米軍のイージス艦を出動させるよう大統領に直談判するしかない!」
「すでに東シナ海を哨戒中だった“ズムウォルト”が相模湾に向かって急行しているとのことです。EEZ到着は08:00」
「間に合うことを祈るばかりか…」

「あの学者の姐さんたちはどうなっとるんだ!成功したのかしなかったのかまだ報告はないのか!」
「少なくとも目標は諏訪湖に落下し、地殻変動が余談を許さない状態です。アメノシラトリが離脱したことは偵察隊が確認しておりますが、消息事態はいまのところ不明、地元からの報告を待たないとなんとも言えません」
「断層の亀裂は大きくなる一方じゃないか!きっと失敗したに違いない。彼女たちのことはどうでもいいから、ミサイルが飛んでくる前に目標を排除できるよう早急に作戦を立案したまえ」
「とは言われましても先に申し上げましたとおり…」
罵声とも恫喝とも思える棚橋大臣のヒステリックな発言に、統合幕僚長と作戦本部長はただ天井を見上げ、硬直したまましばらく動こうとはしなかった。
「棚橋くん、もう少し冷静に対処できんのかね」
さすがに温厚な山岸総理もいらだちを押さえきれず棚橋大臣をたしなめる。
「冷静にと言われましても…」
返す言葉がなく、今度は棚橋大臣自らが統合幕僚長たちと同じく硬直してしまった。

   諏訪湖周辺では、震度2から3程度の中規模な地震が絶えず頻発していた。巨大地震発生の兆候はそれだけにとどまらず、ますます危険度を増しているように思える。湖底の光は磐舟を包み、磐舟自体が発する鳴動もますます激しくなり端縁部の崩落が止まらない。その上、磐舟の直上に巨大な渦を巻く雷雲が形成され、短時間で急激に巨大化していくのが肉眼でもはっきりと認識できる。それは過去に何度か目撃されているワームホールに酷似しているが、その規模はかつてなかったほど巨大で無制限に成長を続け、直径はすでに諏訪湖を上回るほどになっている。
渦巻きの中心では強力な雷光がたえず明滅し、ときおり鋭い稲妻が磐舟を直撃し、崩壊を助長している。

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磐舟から発せられるニュートリノの光も上空の渦巻きにまるでエネルギーを供給しているかのように飲み込まれていく。
諏訪湖の湖面は荒れ狂ったように激しく沸騰し、おびただしい水蒸気が磐舟を包んで全貌を目視することができない。幸い電磁波だけは弱まっているため、数機の陸自偵察ヘリが遠巻きに磐舟周辺を旋回し、できるかぎりの情報収集を試みている。

「CIC聞こえますか?千里です。手短に状況を報告します」
「よかった先生無事だったのか!長峰さんは?」
感情を表に表さない山岸総理もこの瞬間表情をいくぶんゆるめ微笑んだように見えた。
「大丈夫です。数人の犠牲者と負傷者は出たのは残念ですが目的は概ね達成できました」
米森は官僚たちの背後で、気づかれないように小さくガッツポーズをした。

「羽々斬は喪失しましたが、磐舟をコントロールする心臓部と天磐門(あめのいわと)と呼ばれるワームホールを発生させる装置を破壊することができました。これで少なくとも異世界との恒久的な結合は阻止できたと思います。しかし天磐門の一時的な発生だけは阻止することができません。バランスが崩れたまま巨大ワームホールが発生すると逆にこちらから異世界に向かって物質とエネルギーが逆流する可能性があります。限界点到達までおそらくあと数時間かと…天磐門を閉じる方法は私には判りません。詳しくは日高教授の指示にしたがってください」

「それじゃかえって状況を悪くしただけじゃないのか!」
棚橋大臣がまた吠える。しかし振り返った総理の視線に射られて萎縮してしまった。
政府のヘリで招聘され、日高教授はすでに総理官邸に到着していた。

「高来さんたちの活躍で、いまワームホールは非常に不安定な状態だと思われます。巨大なワームホールを生成し安定化するだけの誘発物質が決定的に不足している。高来さんたちが破壊したからね。不安定なまま成長すると数時間のうちに自壊してしまうでしょう。ただ高来さんのおっしゃるとおり、こちらの世界と向こうの世界のエネルギーバランスが崩れたままワームホールが成長すると、互いの物質とエネルギーの均衡を図るため、影響範囲の物質のほとんどを向こうへ吸い取られてしまう。こちらの方の制御物質オリハルコンが無くなってしまったからね。質量は小さくてもオリハルコンに値する現存する物質のエネルギー量ははかりしれない。いったいどのくらい向こうへ流れ込めば均衡がとれるのか…水が高いところから低いところへ流れるのと同じ理屈ですよ。両方の器の水の量が同じになるまで流れ続ける。同量となったときはたして日本が存在しているのかどうか…」
「ミニマムサイズのブラックホールが諏訪湖上空の大気圏内に発生すると思って間違いない。相当やっかいな問題だが、防ぐにはひとつだけ方法がある。限界点に達する直前に、こちらから膨大なエネルギーを送り込んでやる。するとこちらの世界とあちらの世界のエネルギーの結合が分断され、ワームホールは即座に消滅すると思われます。乱暴な言い方をすると、洗面台の排水口に蓋をするのと同じ原理ですな」

「その蓋はいったいどこにあるというのかね先生!」
懲りない防衛大臣がまた口をはさむ。
「先ほどのやりとりを聞いていると、こちらから用意しなくてももうすぐ隣の国から飛んでくるそうじゃないかね。日本の消滅を防ぐんだから究極の核兵器の平和利用じゃな」
日高教授は皮肉をこめてつぶやいたつもりだったが、周りの緊迫した雰囲気を察してバツ悪そうに小さく咳き込んだ。
「しかしそれほど簡単な問題ではないよ。限界点に達する直前に打ち込まなければならないのと、その核出力は少なくとも50kt以上は必要だと思われる」
「中国のSLBMの威力はどれくらいなのかね」
棚橋大臣が唐突に防衛省の官僚に質問した。
「巨波2型で50から1000ktと推定されています」
「それじゃうまくいくと怪獣どもともども消滅させることができるかもしれんじゃないか」
なんとも直情的で安直な大臣の言動に官僚たちは呆れて閉口するしかなかった。
「成功すればおそらく核エネルギーと放射能はワームホールに100%吸収されて、こちらの世界に危害がおよぶことはないと思われるが、要はそのタイミングだよ。限界点直前でないと意味がない。いったん事象が始まってしまうと我々の力ではどうすることもできない。いま比良坂君とうちのスタッフが、影響範囲と限界点の予想時刻を大学のスパコンで算出している。ただそれが判明してもその時間にピンポイントで示された地点に着弾させ、確実に爆発させる能力が某国にあるかどうかは私の知るところではないがね」
この逼迫した状況の中でも日高教授はいたって冷静だった。

「外務大臣、もう一度中南海へホットラインを開いてくれ。私が直接主席に話す。いずれにせよ国土と国民を救うことのできる唯一の手立てだ。先生、正確な時間の算出をお願いします」
山岸総理は外務官僚と別室に向かうと、覚悟を決めたような表情で、用意されたホットラインの受話器を手にとった。

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ことここに至ってまだ物語をどう終焉に持って行ったらいいのか模索中です〜
おぼろげながらおおかたのあらすじは脳内に浮かんではいるのですが…
まあ、メインはやっぱガメラと蒼龍王の最終決戦であることは間違いないですけど〜
いきあたりばったりですから、先のChapterとつじつまが合わなくなったところは
思いつくまま随時さかのぼって修正しています〜
でもやっぱ整合性が悪いところはありますが、気にせず忘れてくださいませ〜
でもなんやかんやでエンディングが近づいている予感はしますでしょ
ほんじゃもうあともう一踏ん張りお付き合いくださいませ〜

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Capter61 『磐舟崩壊』
   千里と真弓はステップを覆う粘液質の藻類に足元をすくわれないようお互いの体を支えあいながら葬祭殿の地下、二枚の巨大な石板で作られた扉の前にたどりついた。
   ライトの光に照らされた扉の影から、スリムな人物ならどうにか横向きになって通りぬけることができるほどわずかな隙間が開いていることが視認できる。
   扉にもたれかかるように朽ちた旧帝国海軍の軍服を着た無残な骸が横たわっていたが、二人ともこの状況下ではなんのためらいもなく骸を排除すると隙間から石室の中へ進入した。

   諏訪湖が近づくにつれ2頭の巨獣の闘争はますます激しさを増し、磐舟を揺さぶり崩壊を加速させていた。ガメラに食いちぎられた蒼龍王の左肩は急速に再生し、戦闘力の低下はほとんど認められない。どうやらネオニュートロン火球の直撃を受けない限り、旺盛な細胞の再生機能が衰えることはないようだ。
 一方ガメラも先の2頭の個体に比べると運動能力、攻撃力とも数段上回っていることが見て取れる。GⅠは蒼龍王にほとんど一方的に圧倒され、GⅡも蒼龍王より若干戦闘能力の劣ると思われるジャイガーに苦戦した。防衛省の特殊巨大生物戦略局の分析では4体の神獣の中で蒼龍王が攻撃力、防御力とも傑出しており、ガメラの戦闘能力では蒼龍王に決定的なダメージを与えることができないと結論づけていた。
   しかし、いまの戦況はほとんど互角、勝敗の行方はまったく予想できない。2頭の巨獣はいったん距離をおくと、両雄とも攻撃を仕掛ける機会をうかがって長いにらみ合いを続けている。

   葬祭殿の中心は正方形の大きな石室になっていて、壁全体が八束の岩屋に酷似したグロテスクなレリーフで覆いつくされている。そしてすべてがニュートリノと反応してこの世の物とは思えない妖しい燐光を放っている。
「あれだわ!あれに羽々斬を!」
真弓が指さす石室の中央、4体の神獣に似せた石像に囲まれた祭壇に頂上が水平に切り取られている高さ1mほどの釣鐘状の岩座が確認できる。以前米森が黒霊珠を発見した祭壇に他ならない。
千里は羽々斬を真弓に預けると守部文書の記述どおり、蒼霊珠、白霊珠、朱霊珠、黒霊珠…四神獣の像の額部分にうがかれたくぼみにそれぞれの霊珠を納めると、羽々斬が復活したときより何倍にも増幅した四色の異なった光がそれぞれの像の眼から放たれ、岩座の頂上に収束した。すると祭壇の中心から羽々斬を納めるためのまばゆい光の鞘が出現した。
「これで準備完了。真弓羽々斬をちょうだい!」
真弓から羽々斬を受け取ったそのとき、黒い大きな影が真弓の体をはじき飛ばし、千里に正面から覆い被さった。
「そうはさせない。磐舟は我々土蜘蛛の一族のものだ。天磐門はおまえたち人間が開くことはできない。羽々斬は忌まわしい緋巫女と我が子出石姫の造反によって悠久の時間、我々の手の届かぬところに封印されていた。羽々斬を蘇らせることは緋巫女の末裔たる守部の一族しかできない。天の意思か図らずもおまえたち愚かな人間が蘇らせた。そしていま時は満ちた。いまこのとき、羽々斬の力によって大いなる天磐門が開き、現世は我々の元に返る」

 その漆黒の人の形をしたものは千里を押さえつけ 羽々斬をその手から奪いとろうとする。暗く濁った声のトーンから変わり果てた井氷鹿のなれの果てであることがかろうじて理解できた。
 「千里さん羽々斬をこちらへ!」
   千里は渾身の力をこめて井氷鹿の腕を振り払うと、声のした方向へ羽々斬を投げ捨てる。それを素早く拾い上げたのは、再び淺黃の体を依巫とした緋巫女だった。

 緋巫女は、羽々斬を振りかぶるとかつて井氷鹿であったものを真っ二つに切り裂く。黒い影はこの世の物とは思えぬ禍々しい声で彷徨するとまるで霧のように消滅した。しかし石室に敷き詰められた石畳の隙間から何体もの同類がわき上がってくる。井氷鹿の細胞は分裂、増殖を繰り返し、もはや人の心も持たぬ無数の怪物に変貌していた。
 緋巫女は羽々斬で怪物を次々となぎ倒す。しかしいったん消滅したかと思うと、石室の隙間から新たな怪物がムクムクと頭をもたげる。しかし緋巫女はまったく心を乱すことなく次々と怪物を切り捨ててゆく。  
「鞘に納めてはだめ!今このときを待っていた!いまなら大丈夫、羽々斬で神像と岩座を破壊して!」
   緋巫女はふたたび羽々斬を千里に投げ返した。井氷鹿の鋭い触手が防御する武器を失った緋巫女の体を無情にも貫く。
「淺黃さん!」
千里の眼前で緋巫女は寂しそうに微笑むと光のしずくのように四散し消滅した。
「うわァ〜っ!」
  千里は怒りと悲しみに身をまかせて神像と岩座に力一杯斬りつける。強固な岩石でできているはずの岩座も神像ももろい土のように土台から木っ端微塵に粉砕され、羽々斬の刃先も無数の光の破片となり砕け散った。
   細胞分裂した井氷鹿の分身もその破片の直撃を受けすべてかき消すように蒸発した。
  轟音とともに磐舟全体が崩れ始め、石室の天井からいくつもの大きな岩塊が落下してくる。千里は真弓を抱えると割れた石板の扉の隙間から脱出し、滑る階段を自分でも信じられないような早さで駆け上がった。

 「千里!どこにいる!」
   猛烈に立ち上る粉塵に遮られ視界がほとんど効かないが、階段の上方から聞き覚えのあるたくましい声が聞こえてきた。
千里の目から涙があふれる。
 「あなた!ここよ!!」
 
   貴幸は真弓を左肩に抱えると千里の手を握り、葬祭殿から数百メートル離れたところに着地しているグライダーに向かった。急激に浮力を失い失速していく磐舟の激しい振動で体が左右に揺さぶられる。その影響で蒼龍王の足元が大きく崩落し、不意を突かれ、甲羅状の岩塊に鋭い爪を立て転落はまぬがれたが、宙づりで身動きできない状態に陥った。一方ガメラもまた上空へ逃避するため飛行形態に変態しようとしていた。

   幸いなことにグライダーは無傷で、後席には止血の応急処置を施した櫛田が眠っている。千里は改めて貴幸を頼もしく思った。
「時間がない。いちかばちか少々揺れるが我慢してくれ!」
グライダーの機首から牽引用のアンカーが発射される。アンカーは眼前でまさに飛び立とうとしているガメラの甲羅の突端にかろうじて引っかかった。
ガメラの発進とともにガクンと大きな衝撃がグライダーを襲う。そのままガメラとともにいっきに上空へ急上昇すると、とてつもないGで千里は失神しそうになった。
   貴幸は高度と推進力が確保できるとアンカーをガメラから切断した。コントロールを回復したグライダーは、失速し降下していく磐舟の直上をゆっくりと旋回している。

 磐舟の周縁は止めどなく次々と崩壊を繰り返し、大きな岩塊が暗い闇の中へ雨のように落下していく。磐舟の進行方向には漆黒の闇の中に、巨大な裂け目から不気味な光の壁が林立するこの世のものとは思えない地獄絵のような情景が見える。光は諏訪湖の湖面に投影されますます照度が増しているようだ。
   グライダーの音声モニターから唐突に統合作戦本部中央司令室からの通信が流れてくる。どうやら磐舟から放出されている電磁波が弱まり通信が回復したようだ。
 「こちら高来貴幸、磐舟より脱出成功。生存者4名ただ重傷者がいる。近隣にどこか着陸できるところがないか指示をこう。なお磐舟は急激に高度が低下、このままではまもなく地表に落下すると思われる。ガメラは脱出、蒼龍王の存在は確認できない。以上」

 やがて、巨大な岩塊と化した天磐舟は分厚い水蒸気のベールを霧のように纏い、諏訪湖中央に崩れ落ちるように着水した。

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なんとかあと2,3章で大団円を迎えることができそうです
磐舟はついに諏訪湖へ墜落
ガメラと蒼龍王の闘いの結末は
千里たちの運命やいかに
風雲急を告げる次回に乞うご期待 

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Capter60 『ギンヌンガガップ』
「首都防衛群第3偵察隊より報告。横浜市いぶき野上空に静止していた巨大浮遊岩塊は23:50現在西北西に向かって微速で移動を開始。繰り返します。目標西北西に向かって移動を開始!」
 危機管理センターに再び緊張が走る。
 しかし超電磁波の影響で、電子機器が使用できず半径5km以内に近づくことさえままならないため、ほとんど状況がつかめず、棚橋大臣の悲鳴にも似たエキセントリックな怒号がただむなしくセンター内に響くだけであった。

「気象庁より緊急通報。糸魚川静岡構造線活断層群において巨大地震発生の兆候あり。 とくに牛伏寺断層、岡谷断層群、諏訪湖南岸断層の活動が急激に活発化しており、長野県中部地域においてM6から7の直下型地震が発生する確率が極めて高いため、岡谷市、塩尻市、諏訪市、下諏訪町、辰野町、松本市東部、茅野市西部および安曇野市南部に緊急避難命令が発令されました」

「海自偵察ヘリいぬわしより報告。岩塊中央部に巨大生物の存在を確認。形状から目標は蒼龍王と思われ、岩塊中央の人口構造物を攻撃している模様…」
「いぬわしより再度報告!岩塊上空にGⅢ飛来!蒼龍王と戦闘を開始!繰り返します
ガメラ、蒼龍王と戦闘を開始!」

 ガメラは蒼龍王の上空を大きく時計回りに旋回すると、ネオニュートロンを帯びた紫色に輝くプラズマ火球を立て続けに数発発射した。しかし蒼龍王もハドロンビームを放射、すべての火球は空中で大爆発を起こす。その爆風でコントロールを失ったガメラは磐舟の突端に激突した。
   蒼龍王は爆風に怯むことなく、倒れたガメラに覆い被さるように突進する。尾の先端にある鋭いトゲでガメラを貫こうと後ろ向きになった瞬間、ガメラが俊敏に身を起こすと、蒼龍王の背後から左肩口に食らいついた。鋭い牙がアーマー状の表皮に深く突き刺ささる。暗褐色の体液がガメラの頭部を禍々しい色に染める。ガメラが牙を突き立てたまま首を大きく振りきるとあたり一面おびただしい体液と肉片が飛び散った。

   千里と真弓はシャワーのように降り注ぐ蒼龍王の体液に染まりながら、葬祭殿の奥にある地下への階段にたどり着いた。不安定に揺れる磐舟の挙動に何度もよろめきながら階段を手探りで降りてゆく。葬祭殿の中心部に近づくほど千里の持った天羽々斬の光が輝度を増していく。空気の密度で磐舟の高度が徐々に下降しているのが判る。

「01:10浮遊岩塊現在山梨県甲武信ヶ岳付近にあり。徐々に高度を下げながら北西に毎時15kmで飛行継続中、このまま降下を続けると02:00頃長野県諏訪湖付近に落下の公算大」
「岩塊接近に伴い、糸魚川静岡構造線活断層群のひずみが徐々に大きくなっている旨、気象庁より報告あり。付近住民の避難誘導を迅速に行うよう関係各方面に通達」

 諏訪湖周辺では、夜半から山々の不気味な鳴動が反復し、諏訪湖の湖底中央部ではオレンジ色の光が肉眼でも確認できるほど鮮明に明滅している。
   高台に避難する住民の喧噪が闇につつまれた湖畔の町全域を包んでいる。
 避難命令を告げる官庁の広報車のアナウンスがあたりをいっそう騒々しくしていた。

 上空には雲一つなく、青白い満月に並んで超新星の赤紅色の光が不気味に輝き湖面にゆらゆらと二つの対照的な光跡を落としている。
 東南の空には漆黒の巨大な円盤状の磐舟が地平線を覆うように浮かび、その影がだんだん諏訪湖を飲み込むように迫ってくる。そしてその上方から2頭の巨獣が闘争を続ける壮絶な彷徨が風に乗ってかすかに耳に届く。それが避難する人々の不安と恐怖心をますます増幅させている。

   湖底の光は、磐舟が接近するにつれ湖面中央から南北に伸びる断層に沿ってしだいに帯状に拡大し、裂け目から立ち上るオレンジ色の光の壁も徐々に高さを増していく。地面がびりびりと小刻みに振動しているのが足下から伝わってくる。
 
   ただひとり、官邸の危機管理センターに帰還した米森は、モニターに映されたこの世の出来事とはとても思えない光景を凝視しながら、以前真弓から夢枕に聞かされた世界創造の遙か以前に存在していた地の果ての巨大で空虚な裂け目ギンヌンガガップの伝説を思い出していた。 

 ギンヌンガガップの北からはニヴルヘイムの激しい寒気が、南からはムスペルヘイムの耐え難い熱気が吹きつけている。世界の始まりの時において、寒気と熱気がギンヌンガガップで衝突した。熱気が霜に当たると、霜から垂れた滴が毒気となり、その毒気はユミルという巨人に変じた。ユミルは全ての霜の巨人たちの父となり、またのちに殺され彼の肉体によって世界が形作られることとなる。滴からは牝牛のアウズンブラも生まれ、ユミルはアウズンブラから流れ出る乳を飲んで生き延びた。アウズンブラは氷をなめ、そのなめた部分からブーリが生まれた。北欧神話の主神であるオーディンはブーリの孫にあたる。のちにオーディンらによってユミルが殺されたときに、ギンヌンガガップはユミルの血で満たされたという…

 突然危機管理センター内にけたたましく緊急ブザーが鳴り響く。
「中国外務省より緊急通信、中国政府は自国および世界秩序の脅威となる事象を完全排除するため、国連安全保障理事会へ通告し、まことに遺憾ながら、やむおえず明朝08:00をもって貴国領土内に存在する巨大物体に向け弾道ミサイルによる熱核攻撃を実施することとした。貴国政府はすみやかに国民の生命と財産の安全を確保されたい。繰り返す明朝08:00、我が国は貴国に対し熱核攻撃を実施する」

 危機管理センターの空気が一瞬のうちに凍りつき、いままでに経験したことのない戦慄と恐怖がその場にいる全員の身体を硬直させ、センター内を重圧で押しつぶすように沈黙が拡がっていく。米森は冷たい汗が一筋額を流れ落ちるのを感じた。

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ここにきて中二病オヤジの妄想全開デッス
もうなんでもありのカオス状態…
でもなんかクライマックスの雰囲気出てきたでしょ〜
それではイメージを盛り上げるため
大好きなTHERION[Ginnungagap]を聴いてみませゥ

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