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Capter32 『禍の影』
「大丈夫か?いまどこにいるんだ!」
米森は安堵感と相反する焦燥感から少し興奮気味に携帯電話に向かって叫んだ。 「ごめん心配かけました。今、南飛鳥村の社の沢にいます。千里と悟くんも無事です。これから守部さんのお屋敷へ向かいます」 真弓の声は少し震えているようにも感じたが、なにより無事が嬉しかった。 「わかった。俺たちもすぐそっちへ向かう」 米森は淺黄に道案内を頼むと小走りに車に乗りこんだ。 山間の細い村道を古びた白いバンが疾走する。完全に制限速度オーバーだが取り締まる警官もいない。米森は焦る気持ちを抑え無言でハンドルを握っていた。
やがて、整然と造林された杉の林を抜け、古びた木造の守部家の門に吸い込まれるように停止した。玄関の脇で作業着姿の龍成が出迎える。あいさつも早々に2人は奥の客間に通された。 客間では千里、真弓、悟の3人が疲れた表情で、龍成の妹美雪に傷の手当てをしてもらっていた。そこに貴幸の姿はなかった。3人とも腕や脚に無数の擦り傷や切り傷があったが幸いどれも軽傷だった。
米森は黙って真弓に近づくとをいきなり強引に抱きしめる。 一瞬、時間が止まってしまった。 「いやあほんと死ぬかと思ったわ。だれの悪運が強いのかなんとか生きながらえたけどねェ〜」 千里の大きな声に、止まった時間が再び動き始めた。紅潮した真弓の表情が少し緩む。 「イリスはどうなったんですか」 悟が淺黄に訴えるように問いかける。 「イリスは自衛隊の攻撃で傷ついたけど、ガメラに助けられてどこかへ飛び去ったわ。まるでガメラはイリスをかばったみたい…」 「ガメラには綾奈さんの存在が判ったのかもしれないわね」 千里の言葉に悟は黙ってうなずく。 「ねえさん…」悟は唇をかみしめた。 「今朝のニュースで言ってたんだがイラクの遺跡から巨大な白い怪物が現れて米軍とテロリストを襲って壊滅させたらしい。その後、姿を消したそうだ」
龍成の言葉に全員顔を見合わせた。 「ジャイガー…」 「時は満ちたのかもしれない。綾奈さんの指示どおり十束の剣を探さないと。石上神宮へ行きましょう。そこにヒントがあるかも…。井氷鹿を動かす土蜘蛛の怨念を早く鎮めないと」 千里は勢いよく立ち上がったが、その瞬間 「あいたたたたたァ!」 よろめくと床の間に置いてあるブロンズの布袋像に向かって倒れ込んだ。 布袋の持った軍配がポッキリ折れる。 「あらららっ」 龍成があわてて千里を起こそうとすると勢いあまって、千里が掴んだ由緒ありそうな古い掛け軸を引きちぎってしまった。 客間にいた全員の緊張感がいっきに緩んで屋敷中に大きな笑い声が広がる。 しかし千里だけはただただ平謝りに龍成に許しを請うしかなかった。
「そうだこれを千里さんに渡すよう日高先生から預かってきた」 米森がバックから黒い亀甲石を取り出した。石は不気味に明滅している。 千里もデイパックから同型の白い石を取り出す。 二つの鎮め石は同調するように光を放つ。 「白霊珠と黒霊珠…とりあえずふたつそろったわね」 千里が静かにつぶやいた。 イリスとリガートの戦闘が繰り広げられた丘陵地帯にある湿地のひとつ、背丈ほども生育した葦に隠れて、D-05に引き裂かれたイリスの赤黒い肉塊が無数に散乱している。自衛隊の捜索は破壊されたリガートの回収に費やされてここはまだ手つかずで放置されていた。
夕刻からの雨がいっそう激しく地面を洗う。四散した肉片のうち、一際大きい塊の表面が突然蠢いたかと思うと、腐臭の漂う粘膜を破って中から一人の女がまるで亡霊のように這い出してきた。井氷鹿の表情は憎悪でいっそう醜くゆがんでいる。女はあたりに誰もいないことを注意深く確認すると、よろめきながら立ち上がり丘陵地帯の雑木の茂みの影に倒れ込むように姿を消した。粘液と雨に塗れた右手には血のように赤い亀甲形の石をしっかりと抱えていた……。 奈良の事件から数週間が経過し、東京ではあの惨事がまるでシアトリカルなフィクションだったかのように日常の変わらぬ風景が繰り返されている。南の天上には太陽と並んで超新星が冷たい光を放っていたが、それが無害だと知ると民衆の関心はしだいに遠のき日常の風景の一部として自然にとけ込んでいった。
ところが、禍はなんの予兆もなく突然やってきた。
12月下旬金曜の夕刻、週末の喧噪に包まれた池袋東口交差点、人の往来自体がまるで生き物のように不規則に流動している。信号が青に変わり人々が一斉に動き出したそのとき、何気なく上空を見上げた女性が甲高い悲鳴を上げる。通行人全員が一斉にその方向に視線を向けた。 夕焼け空をかき乱すように、雷鳴と電光を放ってサンシャイン60の上空に巨大な黒い雲が渦巻いていた。黒雲はだんだん大きくなるとその渦の中心から放たれた無数の針状の物体がサンシャイン60の屋上に突き刺さる。巨大なビルの上層部が轟音と共に崩落した。呆然と見上げる人々の目に、崩れたビルの頂上部に立つ巨大な白い怪物のシルエットが浮かび上がった。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ただいま台風真っ最中〜外は暴風雨が吹き荒れています
そんでもってジャイガーついに東京へ襲来
はてさていかなることに相成りますか こうご期待
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『ガメラ4』妄想の小部屋
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Capter31 『イリス侵攻す』
05:00近くイリスは妖星の冷たい光を浴びながらゆっくりと東に向かって行動を開始した。葛城山南麓行者谷の出現地点から御所市市街まで直線距離でおよそ7km 、ほんの十数分で到達する距離だ。
04:20に信太山の陸上自衛隊第37普通科連隊、今津の第10戦車大隊に緊急出動命令が発せられたが、イリスの御所市街侵入を阻止することは時間的にもまったく不可能だった。
御所市全域にはすでに避難命令が発令されていた。当局からは車両による避難の自粛が呼びかけられていたが、近畿道香芝ICにつながる国道24号線や165号線には車があふれ、通行の回復は絶望的となっていた。車を路側に乗り捨てて避難する者もあり、ますます状況は悪化していた。
米森と淺黄の乗った京南大の公用車も桜井市付近で渋滞に巻き込まれ身動きがとれない。気持ちだけが先走るがどうすることもできず、歯がゆい時間だけが刻々と過ぎていった。 イリスは御所市中心部を左に見ながら、斉明天皇陵付近をゆっくりと南飛鳥村方面へ向かって東進している。
第3及び第10戦車大隊の最新鋭10式戦車は近鉄飛鳥駅以南、壷阪山駅までの国道169号線中街道を防衛ラインとして集結を開始した。ただ第10戦車大隊は長野での蒼竜王との戦闘で著しく戦力を消耗していた。 明野の第5対戦車ヘリコプター隊所属のAH-64D攻撃ヘリ3機がイリスの侵攻をけん制するため中街道西方に展開している。早朝の電磁パルスの影響で、迎撃部隊の集結に思いの外時間を要していた。 イリスは蒼龍王と違い13年前の京都襲撃時、ガメラに倒された個体から採取された細胞組織等から国内外の戦略研究機関で詳細な生態メカニズムの検証が進められていた。イリスはガメラと同じく太古の人類が生み出した一種の生体兵器と思われ、ギャオスの遺伝子を元に人工的に合成され、また自らの意思を持たず融合した者の精神によってコントロールされることがすでに解明されていた。
その結果、防衛省制服組には、機密裏に開発された対巨大生物用の新兵器を運用することにより、相当量の打撃を与えることができ、あわよくば殲滅も可能であるという目論みがあった。 今、イリスの内部ではひとつになろうとする綾奈と井氷鹿の精神が激しく葛藤している。 イリスがどちらの意思を選ぶかで人類の運命が大きく変わる究極の選択だった。
イリスは古墳の散在する御所市南東の丘陵地帯をゆっくりと東へ移動している。魂を持たない虚ろな巨体は本能のまま生まれ封印された地、南飛鳥村柳星張の社へ向かっているように思えた。
11:50桜井市方面から、大型輸送ヘリCH-47に吊り下げられた3つ黒い物体がイリスに高速で近づいてきた。目標の上空に達すると3つの物体はそれぞれ切り離され、ホバリングしながらイリスの進行を阻止するかのように前方にゆっくりと着地した。 逆光で真っ黒に見えた物体は陸自迷彩色に塗装され、本体はいびつな楕円形の球体で、まるで生物のような逆関節の長細い脚と大小4基の重火器を備え、上部には不釣り合いに大きいミサイルポッド、左右に姿勢制御用のバーニアをそれぞれ2基装備していた。ミサイルポッドの側面には見慣れた陸上自衛隊の文字がはっきりと視認できる。 00(フタマル)式対特殊生物邀撃戦闘システム、通称リガート(REGULT)21世紀初頭、我が国における度重なる巨大生物の上陸被害に対し、これを未然に抑止するため防衛省特殊生物戦略研究室が開発した対巨大生物用局地戦闘兵器である。リガートは兵員の損耗を防ぐため、すべて移動指揮車から遠隔操縦されている無人機だった。
中央作戦司令室は12:00をもって目標が丘陵地帯から市街地に侵攻する前に勝負を決するよう前線に司令した。
イリスは3機のリガートを警戒するようすもなく立ち止まる気配もない。対敵距離が500mを切ると、リガートは油圧ポンプのモーターを起動する甲高い機械音とともにすばやく立ち上がった。バーニアからオレンジ色の炎が吹き出す。左右に展開した02号機、03号機そして正面の01号機のミサイルポッドから一斉にD-05フルメタル誘導弾が発射された。 標的はイリス胸部中央で明滅する発光部位、13年前ガメラがイリスを一撃で粉砕したときに攻撃を仕掛けた箇所である。自衛隊はそこがイリスの弱点であると見抜いていた。 そしてその内部では、いままさに綾奈と井氷鹿の精神が静かで過酷な戦いを繰り広げていたが、作戦本部はそれをしるよしもなかった。
イリスは本能の命令に従い身を翻すと、左右のテンタクランサーで2発の誘導弾をなぎ払った。残る1発は右脚を貫通し、多量の肉片が飛び散ったが、イリスはほとんどダメージ受けた様子をみせない。
リガートはイリスの進行を阻止すべく、両脚に集中攻撃を仕掛ける。貫通能力を強化した105mm特殊榴弾砲が容赦なくイリスの脚を標的にする。D-05が筋肉を容赦なくえぐる。近接戦闘に特化したリガートの攻撃フォーメーションで、精神を持たない虚ろなイリスの戦闘能力は確実に消耗していった。 03号機の発射した3発目のD-05がついに胸部中央に命中した。暗褐色の体液が四方に飛び散り、イリスの膝がガクっと崩れる。うねるテンタクランサーも音を立てて地上に投げ出され、胸部の発光がスイッチを切ったようにすべて消えた。
上空の攻撃ヘリや、中街道に展開する戦車大隊からも、とどめを指すかのように目標に向かって一斉に砲火が浴びせられる。 イリスの巨体はゆっくりと巨木が倒れるように丘陵地帯の緩やかな山腹に崩れ落ちた。 「12:30(ヒトフタサンマル)目標沈黙!」
中街道に展開する自衛隊員全員から一斉に歓喜の叫びが上がった。 リガートはイリスを囲むように停止した。攻撃ヘリが上空で旋回している。 だれもが勝利を確信したそのとき、遠距離から放たれた巨大な火の玉がリガート02号機を一撃で粉砕した。再起動する間もなく01号機、03号機次々とプラズマ火球の直撃で木っ端微塵に吹き飛ぶ。周辺は一瞬のうちに灼熱の業火に飲み込まれた。
やがて上空から2つの巨大な影が倒れたイリスをかばうように戦車群の正面に舞い降りた。大きな咆吼が丘陵地帯全域を震動させる。 ガメラがイリスを助けた。まったく予期せぬ状況に指揮系統が乱れ、陸自隊員全員がただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
やがて回復したのか、イリスの胸部が再び明滅を開始する。ゆっくりとその場に立ち上がるとテンタクランサーの皮膜を拡げ、上昇気流を利用して黒煙と炎が渦巻く上空へ舞い上がった。
2頭のガメラも中街道に展開する戦車群を睨みつけるとイリスを追って離陸し、またたく間に雲間に姿を消した。 米森と淺黄はやっとのことでたどりついた高松塚古墳付近から一部始終を目撃していた。しかし予想外の展開にまったく言葉もでない。いったいなにが起こったというのか…そのとき米森の携帯に真弓からコールが入った。
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ついにとんでも新兵器を登場させてしまいました〜
以前、某アニメに登場するロボットプラモをリサイクルしたものデッス
ロボット型兵器を怪獣小説に登場させるのは私的にはダウトなんですが
あまりリアリティにこだわって単調なのも面白くないと思うので
この際、ドサクサに紛れて運用開始しちゃいました…ダハハ
いかがでしょ
通称のまんま、もろマクロスのリガードそのものです〜
まあなんでもありの二次創作ですから
おもしろければOKということでご容赦を〜wwwデヘヘ
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Capter30 『マンティコア』
20XX年初冬、イラク北部モスル校外のニネヴェ遺跡付近では、米軍を中核とする国連地上軍主導によるイスラム過激派掃討作戦が展開されていた。
過激派は5日前ネビ・ヤゲルと呼ばれるAD3000年前後に築造された巨大な石の城門を爆破し、その遺跡の奥深くに立てこもって激しく抵抗していた。 これ以上理不尽な世界遺産の破壊を防ぎたい国連軍は積極的に攻勢をしかけることができず、戦況は膠着状態となっていた。 破壊された城門の奥にはまるで迷路のように紀元前に構築された石の建造物が連なり、掃討作戦をますます困難なものにしていた。稀有な世界遺産も過激派にとっては単なる弾よけの盾でしかなかった。 城門から800mほど奥まったところに過激派の主力が立てこもっている古代アッシリアの葬祭殿跡と思われる遺跡があり、その広場の中央に一際高いトーテムポール状の石柱が立っている。その柱の表面には古代アッシリアの幾何学文様が刻まれ、その先端には邪悪な異形の神の頭像が彫り込まれていた。内部が空洞になっているのか砂漠に砂嵐が吹き荒れると、笛のように共鳴して周囲に不吉な音色を響かせていた。
過激派のテロリストは迫り来る国連軍を阻止するため、その巨大な石柱の基盤に多量の爆薬をしかけている。両軍はその石柱を挟んで対峙し、いつ果てるともしれぬ泥沼の持久戦に突入していた。 その日は日没から砂嵐が吹き荒れ極端に視界が悪く、白昼に小規模な銃撃戦が数回発生したが、夜になるといかなる戦闘行動もまったく不可能な状況となっていた。日付が変わる時間を過ぎてようやく砂嵐は治まり、空一面に星の瞬きを観ることができた。
夜明け前、月光と星の光以外、なに一つ無い砂漠の闇をかき消すように突然天球全体がまぶしい光に覆われた。国連兵は全員、テロリストの狙撃目標になるのを回避するため反射的に岩影に待避する。テロリストたちは得体の知れない光を国連軍の照明弾と誤認し、何者かが石柱を爆破する導火線に点火してしまった。
乾いた爆裂音とともに石柱は木っ端微塵に砕け崩れ落ちる。あたり一面砂塵に覆われ両軍の兵士たちの視界を遮った。四散した砂塵は妖光を反射してキラキラと空中に漂っている。 砂塵が治まると同時に激しい戦闘が開始されるだろう。兵士たちには光の正体がなんであるかなど考える余裕もなかった。 両軍とも自動小銃やマシンガンを構え、視界が回復すればいつでも発砲できる態勢をとって身構えている。あたりは静寂に包まれ物音一つしない。 何分経過しただろうか。やがて地の底深くからわき上がってくるような鈍い地鳴りを敵味方全員が体感した。
大地の鳴動はだんだん激しさを増し、地表に近づいてくる。かろうじて自立している遺跡の一部も振動に耐えきれず倒壊する。国連軍の兵士たちには安全な砂漠地帯にある後方陣地へ即時撤退するよう命令が発せられた。
それを好機と見て過激派のテロリストが一斉に攻撃を開始する。 そのとき、突然広場の中央がすさまじい轟音とともに隆起爆裂し、空中に飛散した遺跡の破片が大量に地面に落下する。テロリストたちは空中に投げ出され、あるいは岩砕の下敷きとなり、瞬く間に戦力の大半を喪失、ほとんど壊滅状態となり、かろうじて死を免れた者も志気を失い蜘蛛の子を散らすように四散した。 ふたたび舞い上がった分厚い砂塵のベールで視界のほとんどが遮られる。数秒後、砂塵の向こう側から獣が獲物を狙うような低いうなり声が聞こえてきた。その瞬間、まるで大地が裂けるような驚天動地の咆吼がニネヴェの廃墟にこだました。いっきに砂塵が風圧で引き裂かれ四方に吹き飛ばされる。 砂塵の中から出現したのは、体高30m、頭部から尾の先まで150mとあろうかと思われる四つ足の巨大な獣だった。全身が砂漠の砂と同色で鈍く光っている。その背には不規則なシマ模様が連続し、展開すると差し渡し200mは下らないコウモリ状の皮膜翼が左右三対、頭部はネコ科の猛獣を想起させ、目は憎悪を漲らせたように赤く輝き、剣牙虎のように2本の長大な牙が口腔からのぞいている。背中には長い針状の鬣が首から腰まで林立し、尾は鈍色に節くれ立って、先端にはサソリのように鍵状の長く太い毒針が伸びていた。
「マ、マンティコア・・・!」 「ヤイゲル!!死の神」 恐怖で戦意を喪失し、逃げ惑うテロリストたちを前脚で叩きつぶしては次々とようしゃなく捕食していく。 その光景を難を逃れた米軍兵たちは後方の陣地からただ呆然と眺めていた。やがて支援のため待機していたNATOの機甲部隊が一斉に砲撃を開始した。 コンピューターで制御された劣化ウラン弾は正確に魔獣に着弾するもまったく効果は見られない。魔獣は気むづかしいとばかり一声咆吼すると、目が赤く輝き鬣が逆立ち始めた。 すると鬣が鋭い針状になり、まるで長槍のように機甲部隊に向かって放たれる。 毒針は正確に機甲部隊の陣地に突き刺さると同時に液化し、強酸性の液体をまき散らした。戦闘車両も兵士もその液体を浴びると瞬時に溶解し、数秒のうちに跡形もなく消滅してしまった。機甲部隊はほんの数分で壊滅した。精鋭ぞろいの米兵もなすすべもなく、生き残った者はテロリストと同様魔獣の強酸攻撃から逃れるため命からがら戦闘地域から離脱した。 数分後、ニネヴェの遺跡は静寂を取り戻した。夜明けは近い。魔獣はネビ・ヤゲルの城門近くで再度天に向かって大きく咆吼した。
やがて魔獣の直上の空に青白く輝く渦状の雲が現れた。雲は激しくうねり高速で回転しながらだんだん上空から降下してくる。魔獣の全身が赤い球状の光で覆われるとゆっくりと上昇し、渦の中心部に吸収されるように消えていった。数十分後渦状の雲も消滅し、東の地平線上と西南の空に二つの太陽がまぶしく輝いていた。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
珍しくサクサクとお話が進んでま〜す
ついに『魁白帝ジャイガー』登場
さすがに既存のジャイガーだとイメージが違いすぎるので
まったく違うキャラにしたんですが
ジャイガーの得意技毒針攻撃だけはパワーアップして継承しました
巷では新作『ガメラ4』の制作話が進んでいるとかいないとか…
とにもかくにも続編作るならトトの続きにはしないでほしいです〜
やっぱ世界観はG3部作の続きで…めっちゃ期待してマッス
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Chapter29 「井氷鹿(イヒカ)」
千里、真弓、悟の3人は狭く真っ暗な空洞の中で、お互いの身体を寄せ合ってかがみ込み、じっと崩落の治まるのを待った。ほんの数十秒が永遠の時間のように長い。
イリスの巨体が空洞を破壊し生き埋めになる恐怖感で3人とも身体が硬直し身じろぎもできない。さすがに貴幸だけは3人の安全を確保し、ここからどうやって脱出するか冷静に思考していた。 3人はだんだん振動が静まりイリスの脅威が弱まったことが理解できると、急に緊張から解放され力なくその場に座り込んでしまった。貴幸はすでに周囲を観察し状況を客観的に分析している。
悟は貴幸の静止を振り切って、またイリスの巣に戻ろうとした。しかし崩落が激しく巣に向かう回廊は完全に閉ざされている。 悟は、岩石に埋もれた回廊の前で拳を堅く握りしめ、真っ青な顔で感情の洪水をかろうじて抑制していた。 「悟くん君の姉さんは大丈夫だ。綾奈さんはいまイリスをコントロールしようと必死で戦っている。それが彼女の運命なんだよ。やがて事が終わるときっと君のところへ帰ってくるからそれまで我々は我々にできることを精一杯やるしかない。何の因果か成り行きでこのろくでもない世界を守る使命を託されたみたいだから…少なくとも君の姉さんはそう言っていたよ」 貴幸は悟の肩にそっと右手を乗せる。悟はだまって小さくうなずいた。 4人が行動を起こそうとしたそのとき、空間全体がボゥと鈍い蛍光色に輝き始めた。その光は徐々に強くなっていき壁面の状態や空間の広さを詳細に把握できるほどの明るさになった。 「そ、それはなに!」 中でも貴幸のサバイバルバックから一際まぶしい光が漏れだしている。 千里の指摘で、貴幸はバックの中から妖しい光の源を取りだした。 それは、長辺20cmあまりの楕円形の人工物で上面には亀甲文様、下面には獅子形の怪獣のレリーフが描かれていた。 「マンティコア…!?」 真弓がうめくようにつぶやいた。 「いや、正確にはマンティコアの王ヤイゲル(JIGER)…古代アッシリアの大魔獣、その姿は透き通るように白く3対6枚の翼を持ち、サソリのような毒針が無数に生えた節のある長い尾、そして3列に並ぶ鋭い牙を持つ人面獣身の怪物。際限ない食欲の持ち主で、その食欲は世界のすべてを食い尽くすと言われている。カルデア神話ではセラビムと呼ばれる稲妻の精だ。これがあの女の欲しがっていた白霊珠だよ。ヤイゲルのことをあの女は魁白帝と呼んでいた」 光は狭い空洞の中をまるで昼間のように明るく照らし出すが、不思議なことにまったく熱を感じない。心臓の鼓動のように短い周期でかすかに脈動しているようだった。 「JIGER…ジャイガーといえばたしか南太平洋のウェスター群島に紀元前の古代遺跡があったよね。たしか悪魔の笛とか…」
真弓が思い出したようにぽつりとつぶやく。 「たしかにウェスター群島は昔、広大な大陸の一部で辺りを睥睨する強大な帝国の首都だったが、闘いに明け暮れる崇神が創造神の怒りに触れ、西の果ての砂の世界に幽閉されたため帝国は滅び人民もろとも海に沈んだという伝説があるそうだ」 自分の妻は歴史学者、突っ込みを入れられないよう貴幸は自分の言葉を確かめるようにゆっくりと応えた。
「それはそうと、なんであなたがそんな物騒なモノを持ってるのよ」
千里が意外な方向から突っ込みをいれる。 「あの女の命令でイラクのニネヴェという遺跡で強奪した」 「強奪ってあんた!」 千里がたしなめるようにまた口を挟んだ。 「昨年、イラク北部に年代不明の謎の遺跡が発見されたニュースは知っているだろう。そこで発掘された遺物をイスラム過激派が資金源にしようと、調査隊を襲撃して略奪した。その情報を先月彼女が傍受して、私に奪回するよう命令した」 「あなた、いつの間にインディ・ジョーンズになったのよ」 千里がいつもの軽いジョークを飛ばしたつもりだが、だれも反応しない。千里はすべったバツの悪さからか軽いため息をついて微笑んだ。 「正直記憶はあいまいで、すべて悟くんのねえさんから聞かされたことだけどね。それよりこの光…井氷鹿の言ったとおり間もなく天の岩門が開きこの世にすべての禍が解き放たれる時が近づいてきたようだ」
「井氷鹿(イヒカ)?」 「そう朝倉美都の正体さ。彼女は仲間からそう呼ばれていた」 千里が代わって話し始めた。
「井氷鹿って神武天皇が忍坂に至る前、吉野に辿り着いたときに出会った光る井戸から出て来たといわれる国津神の名ね。吉野の山岳土着民国巣(くにす)らの祖だとも書かれている。国巣は今も吉野に国栖(くず)の地名で残っているわ。常陸国風土記では、国巣の別称を土蜘蛛としている。ということはやっぱり彼女は、土蜘蛛の末裔と思って間違いないでしょう。古事記によると、神武天皇は、大きな穴倉にいる数多くの土蜘蛛に豪勢な料理を振る舞い、このとき料理人に太刀を持たせ油断したとみるや合図とともに斬り付けて、土蜘蛛を滅ぼした。そのとき天皇軍は葛の網を作って、逃げる土蜘蛛を捉え皆殺しにしたとも…それでこの地を葛城というようになったと書かれているわ」
「ところで彼女にしっぽ生えてた?」 貴幸はだまって相手にしない。千里のジョークはまたまたすべって2人の失笑をかった。ほんの一瞬だが緊張感が緩む。真弓は千里のそんなところが好きだった。 白霊珠は絶え間なく冷たい光の明滅を繰り返している。
「それにしてもこの光、カミオカのスーパーKで観測したことのあるニュートリノの発光現象にそっくりだ」 悟がようやく冷静さを取り戻し話に加わった。 「たしかに、おそらくベテルギウスが超新星爆発を起こしたのだろう。もう時間の問題だったから…井氷鹿はこのときを待ち望んでいた。この洞窟の壁はおそらくニュートリノシャワーに反応し発光する物質が含まれているんだろう…たぶん白霊珠は人工的に精製されたその物質の塊じゃないかと思う」 「その物質って?」 「おそらくオリハルコンあるいは日緋色金(ヒヒイロカネ)」 3人はあまりにも唐突な貴幸の発言に言葉を失った。 「とにかく前を向いて進もう。ここにいたのではむざむざミイラになるのを待っているようなもんだ」 4人は同時に立ち上がった。空洞は鈍い光に包まれ筒状に限りなく続いているように見える。まるで井氷鹿が現れたと伝えられる光る井戸のように… ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
どうしたことか比較的ハイペースでお話が進んでいま〜す
![]() 今回のハイライトは未知の怪獣『魁白帝』の正体…
「聖獣戦記 白い影」をヒントに既存の『大魔獣ジャイガー』をモチーフにしました
でも容姿はぜんぜん違います
なんせマンティコアの頭領ですから〜
いろんな古事、伝承をごった煮にして自分なりにアレンジしてます
まったく根拠のないデタラメな世界観ですけど
あくまで二次創作エンターテイメントということでご容赦を〜
次はそろそろ怪獣出さないといけませんねwwwデヘヘ
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Chapter28 『ベテルギウス』
米森は、京都駅近くにあるビジネスホテルの狭いシングルベットに横たわっていた。
前夜の長距離移動と大學の爆破事件の事情聴取で夕刻まで拘束されたため、淺黄の進言に従い、完治していない身体を一夜ゆっくり休める選択をしたのだった。 事情聴取のおり、府警の刑事に日高教授や物理学教室のスタッフの安否を尋ねると、全員軽症だが大事をとって大學に隣接する付属病院に明日まで入院していると聞いていたので、淺黄と明日の朝病院を訪ねる約束をしてホテルのロビーで別れた。
疲労はピークに達していたが、なぜか午前0時を過ぎ日が改まっても目が冴えてなかなか寝付けない。頭の中を昼間の出来事が脈絡なくグルグルと駆け巡る。有毒ガスの後遺症がまだ残っているのか、脳内に霧が充満してるような虚ろな感覚でうまく整理がつかなかった。
つけっぱなしのTVでは米第7艦隊の最新鋭原子力空母が東シナ海で行方不明というニュースが流れている。これも一連の事件に深い関わりがあることなのだろうとおぼろげに思った。
昨日の出来事について、おおよそ真弓にメールしたが返信はなかった。真弓たちははたして大丈夫なのか、一抹の不安を覚える。 今日は午前中教授に面会のあと、真弓たちと合流するため淺黄とともに奈良へ向かう計画だった。 朝方、ようやく泥のような眠りに落ちた頃、突然のけたたましい喧噪に目覚めた。
カーテンの隙間から不自然に光が差し込んでいる。無造作にベット脇のデジタル時計を見ると、午前4時10分… いまは11月中旬、早朝のこんな時間帯に陽光が差し込むはずがない。 米森はベットから起き上がると黒い遮光カーテンを注意深くそっと左右にひいた。まぶしい光が一斉に部屋の中に差し込む。しかしその光には太陽光のような暖かさはなくまるで死んだ月の光のように冷たく鈍かった。 ドンドンドン!激しくドアをノックする音、米森が急いでドアを開けると淺黄がラフなTシャツ姿のまま部屋へ飛び込んできた。 「米森さんこれはいったい!?」 「おれにもさっぱり判らん。でもなにかとんでもないことが起こっているのは確かだ。とにかく日高先生のところへ行ってみよう。先生ならこの光の正体がなにかご存じかもしれん」 「判りました。すぐに準備します」 淺黄はすぐさま自分の部屋へとって返した。 米森も慌ただしく着替えると、階段でホテルのロビーへ降りる。 早朝だというのに沢山の人だかりがホテル前の通りにあふれ、不安そうに不吉な空を見上げていた。 数分後、淺黄も早足でロビーに降りてきた。二人は急いで地下の駐車場へ向かうと横浜でレンタルした白いマークXに乗り込む。しかし何度スターターボタンを押してもエンジンは始動しない。いったいなにが起こったのか。 車をあきらめ大通りに駆け上がると、すべての車が路上に立ち往生し、信号もまったく作動していない。見上げるとあたりのビルの窓には1つの灯りもついていない。状況を把握したくてもスマホさえ起動しない。 ただ事ではないことは、その場にいるだれもが容易に想像できた。 ホテルから京南大學附属病院までは約5km 「しかたない。淺黄さん走ろう」 二人は、死者の妖光を浴びながら、人波をかき分け七条通りを西へ走った。
時間の経過と共に、妖光が太陽光に稀釈されるにしたがい午前6時を過ぎた頃には、都市機能は徐々に回復していった。東から差し込む朝日とは別に南西の天上にもうひとつの不定形で赤白色に輝く大きな光源が浮かんでいた。
ちょうどその頃二人はようやく病院へたどりついたが、博士は現象が発生した直後、ほとんど強引に病院から退院していた。 事情を察すると、米森と淺黄はすぐ隣接する京南大學のキャンパスへ向かった。 日高教授は健常なスタッフを招集すると、破壊された研究室とは別の理学部研究棟でスーパーコンピューターを使ってすでに現象の詳細な解析に着手していた。
「つくばの案野くんに連絡はとれたか!フェルミ研究所の見解は?」 「カミオカが利用できないから、早急にCERNからデーターを送ってくれるよう手配してくれ!」 頭の包帯とギブスで固定した左腕が痛々しかったが、まったく志気は衰えていないように見える。むしろ待望していた世紀の天体ショーに興奮し陶酔しているようだ。顔面が少し紅潮しているようにも見える。スタッフ全員が極度の緊張状態にあることは、門外漢の二人にも十分理解できた。 「米森くんすまん。そのPCのデータをプリントアウトしてくれ」
米森が迫力に圧倒されて話しかけることができず、淺黄と部屋の隅で呆然と立っていると教授の方から声がかかった。 「ベテルギウスのスーパーノバは想定内だったが、よりによってカミオカが破壊されたときに起こるとは残念だ。おそらくいま北半球は未曾有のニュートリノシャワーにさらされているはず。我々が無事生きているということは、どうやらガンマ線バーストの直撃は免れたようだね。電磁パルスの影響は少なからずあったみたいだが…詳しくはCERNやフェルミのデータ取り寄せて解析しないとなんともいえん」 TVでは、どのチャンネルも今朝の不可解な事象について、天体専門家や評論家と名乗る人物たちがもっともらしく解説している。人類滅亡を声高に叫ぶ新興宗教家もインタビューを受けていた。しかし思いのほか早くインフラが回復したいま、政府からの情報統制もあるのかどのネットワークも危機感を大仰にあおるような報道は少ない。
そのとき、唐突に放送が中断され報道フロアから緊急速報が流れる。13年前に京都を襲撃した巨大生物が再び奈良葛城山中に出現したというのだ。米森は電撃に打たれたように身体全体が硬直するのを感じた。
「イ…イリス!」 淺黄の脳裏に13年前の悪夢が蘇る。 「淺黄さん、真弓たちが…葛城山へ行かないと。教授、恐れ入りますが車を貸して頂けませんか」 「米森くん、ちょっと待って、持って行ってほしいものがある。謎の核心はこれにあるのかもしれない。高来さんに渡してくれ」 教授は助手に指示すると資料保管庫から正方形の金属の箱を持ってこさせた。中には長辺20cmたらずの鮮やかな黒色をした楕円形の遺物が入っていた。規則正しく刻まれた文様からオレンジ色の不思議な光が明滅している。 「教授これは!」 「防衛省からあずかったもの、正確には君が太平洋のど真ん中から持ち帰ったあれだよ。わしのラボを吹っ飛ばしたけしからん山賊が奪っていったのはイミテーション、それらしい黒い漬け物石さね。キャツめまんまとだまされおった」 教授はニヤっといたずらっこのように微笑んだ。 「いろいろ調べてみたんだが、これは地球上ではまだ確認されていないレアメタルで組成されている合金の一種で、途方もない未知の特性が秘められているようだ。この光がいったい何を意味するのか。今朝方スーパーノバと同時に光り出したのだがさっぱり原理が判らん。ニュートリノの放出となにか関連性があるのかもしれない。この謎が解けるのは私のような物理屋じゃなく彼女のテリトリーだと思う。早く行きたまえ。車は裏に止めてある研究室用の公用車を使いなさい」 「ありがとうございます」 米森と淺黄は軽く頭をさげると、研究室から全速力で駆け出していった。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
今回は比較的早いでしょ〜デヘヘ
しかしこれからが問題です〜
いったいどんな展開になるのか書いてる本人にも判りません
軽〜い読み物です。期待しないでご愛読くださいませ〜
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