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Chapter27 『邪神覚醒』
千里の腕を掴んでいた大男が声も立てずその場に崩れ落ちる。
悟と真弓は拘束している男の手を振り払い渾身の力を込めて身体を突き離すとすばやく近くの岩陰の狭い空間へかがみ込んだ。千里も転がるように二人に続く。
闇夜を切り裂くように数発の銃声が交差する。美都の白い仮面が跳弾にはじかれて宙に舞った。
スナイパーは20m近く離れた朽ちた倒木の影から三人の男を正確に狙撃し戦闘力を奪った。美都は両手で顔を覆いながら残った一人の男の影に隠れるように八束之岩屋の闇の中へ消えていった。
一瞬の静寂ののち、倒木の後からふたつの人影が現れた。月光の下では表情は判らないが一人は狙撃銃を持った長身の男、もう一人は小柄な女性のようだ。二人は周辺に注意をはらいながらゆっくりと近づいてきた。
「ね、ねえさん!」 悟は岩陰から飛び出すと、足下も気にせず女に走り寄った。 綾奈は少し微笑むと無言で悟を抱きしめた。二人の目から涙が止めどなくあふれ出る。姉の感触は10年前と少しも変わっていなかった。 抱き合う姉弟の後で千里は呆然と立ちつくしていた。全身が小刻みに震えている。
瞬きもせず綾奈の横に立っている男をじっと見つめていた。 男はゆっくりと暗視ゴーグルをはずす。 「ずいぶんと遅いお帰りですね…」 千里はゆっくりとかみしめるようにつぶやいた。 「すまなかった。ずいぶん長い間悪い夢をみてたようだ。俺の子どもは無事…」 「元気に育ってる。今年中1、オヤジに似て生意気な娘よ」 二人の会話はそこで途絶え、黙ってじっと見つめ合っている。 真弓はそれぞれの思いがけない再会を見て、なぜか米森の笑顔が脳裏に浮かんだ。 「仁木と滝口の手当をたのむ。早くあの女を止めなくては大変なことになる」
貴幸は綾奈に目配せすると、千里の肩にポンっと軽く触れて八束之岩屋へ走り込んでいった。綾奈もあとからつづく。 残された三人は一瞬ためらったが悟は綾奈のあとを追い、千里と真弓は昏倒している黒い男たちを抱き起こした。帽子とサングラスを外すと二人とも貴幸の元部下で千里には見覚えのある顔だった。 貴幸と綾奈はまるで目的地が理解できているかのように暗黒の回廊を躊躇することなく全速で下っていった。悟も遅れないように二人のあとにつづく。
回廊の最深部、イリスの巣に到達するまでさほど時間はかからなかった。 回廊の出口に注意深く身を隠すと、綾奈は背負っているデイパックから複数のケミカルライトを取り出し矢継ぎ早に前方の岩棚へ投げ入れた。 青白い光で照らされ、湿った空洞の壁面が不規則に反射し、深淵の縁に立った二人の男女のシルエットが浮かび上がった。
「あなたはなぜ私の命令に抗うのですか。私の下部としての使命をお忘れになったのか。早く砂の国の白霊珠をお出しなさい。そうすればあなたの愚かな罪は許します」
ケミカルライトの青白い光に照らされて美都の義眼が妖しく輝いている。 「長年の重たい憑きものからようやく解放されて爽快な気分だよ。白霊珠はこっちの手にある。君は四神獣を覚醒させて、この世の終わりを演出するつもりかもしれないが、四霊御珠がそろうことはない。どうやら目論見が外れたようだな」 「あなたたちはなにも判っていない。天磐舟が解放されるのは時間の問題です。もうすぐ我々の同胞が現世に帰ってくる。私は劉朱鶏と一体となり、悪しき者どもに奪われた現世を取り戻す。はやく白霊珠をお渡しなさい。魁白帝、黒霊亀、蒼龍王、劉朱鶏…4柱の邪仙を依童とし4つの顕界をひとつにすること。それが私の使命…」 「それはもう夢物語なのよ。あなたは間違っている。私はイリスと融合してすべてが判った。異界の扉は決して開けてはいけないよ!」 綾奈の説得に美都にはまったく耳をかさない。 「掘田!目を覚ませ!その女から離れろ!」 貴幸は、美都をかばっている大男に叫んだ。男は呼びかけに反応することなく無表情で立ちはだかっている。 「あっ!早まるんじゃない!」 「待って!」 貴幸と綾奈の叫びが岩屋の壁に共鳴するが、静止もむなしくふたつの影が折り重なるように深い深淵に吸い込まれていく。 その直後、轟音とともに岩屋全体が大きく鳴動し、おびただしい落石が頭上に降り注いだ。貴幸は綾奈と悟をかばいつつ、壁面の小さなくぼみに二人を待避させる。
ゴゴゴゴゴッ!!! 深淵の底から先端が鋭く尖った4本の巨大な円筒上の物体が出現した。表面が赤黒く、粘液に覆われ鈍く光っている。テンタクランサーと呼ばれるイリス(劉朱鶏)の触手だ。 触手はそのままドームの天井に突き刺さる。 「高来さん、十束の剣をお願いします!悟元気で!」 綾奈は、そう叫ぶと深淵の縁から劉朱鶏に向かってダイブした。 「ねえさん!」 悟の悲痛な叫びは空洞の崩壊する轟音にさえぎられた。 イリスの胸部がフラッシュのようにまばゆい光を放つ。綾奈はその光に包まれ姿を消した。 悟は姉の後を追って劉朱鶏の光の中へ飛び込もうとする。 貴幸は体当たりでそれを静止すると大声で叫んだ。 「君のねえさんは大丈夫だ!それより早くここから待避するんだ!」 貴幸は拒む悟の腕を掴むと引きずるように回廊に走り込んだ。 二人は急勾配の回廊を這うように駆け上がる。回廊全体が鳴動しておびただしい落石が二人の行く手を阻む。 「貴幸さん、大丈夫!」 イリスの石像のある空洞で回廊を下ってきた千里と真弓と合流した。 「早くここから脱出しないとこのままでは、全員生き埋めになってしまう」 「もう入り口へはダメ、出られないわ」 「左側に狭いけど抜け道があるみたい。こっちに逃げましょう」 四人は転がり込むようにイリス像の足下にある狭い洞窟に飛び込んだ。 仁木と滝口の二人は朦朧とする意識の中で岩屋の入口近くの岸壁に死人のようにもたれかかっていた。二人とも現在の自分の置かれている状況が理解できず、ただ沈黙して横たわっている。
そのとき轟音と共に地面が激しく鳴動する。二人は慌てて身を起こすと、八束之岩屋の上方の山腹を突き破り、4本の巨大な触手が天を突くのを目撃した。 「うわァ〜!」悲痛な叫びが深い谷にこだまする。
二人は、ふらつく脚を引きずり本能的にその場から逃れようと試みたが、あえなく崩落してきたおびただしい岩砕の下敷きとなって土埃の中へ姿を消した。 イリスは葛城山の山腹からゆっくりと頭をもたげる。胸部が青白い光を放ち妖しく明滅している。13年前の京都襲撃時の個体より幾分赤黒く、体躯が一回り大きく感じられた。
イリスが触手を展開し、まさに飛び立とうとしたそのとき、突然全天空がまばゆい蛍光色の閃光に包まれた。明け方午前4時を回ったところだったが、まるで白昼のように見渡す限り詳細に視認できるほど明るい。 オリオン座ベテルギウスの超新星爆発……時は満ちた。
世界のすべてを灰燼に帰す最終戦争(アーマゲドン)がいま始まろうとしている。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
先日UPした短編集『怪獣文芸の逆襲』の中に井上伸一郎さんの「聖獣戦記 白い影」という作品があります
室町時代の有名な蒙古襲来のおり、日本を救ったのが二頭の聖獣で一頭が青龍、もう一頭が白虎、青龍がバルゴンで白虎がジャイガーなんですよねェ〜
「G3」のエピソードから玄武のガメラ、朱雀のイリス(ギャオス)を下敷きにしてイメージを膨らませてマッス。龍造寺家清という武将が青龍バルゴンを操り、対馬の小太郎が操るのが白虎ジャイガー、二頭の聖獣が蒙古軍を蹴散らします。神風は怪獣だったんですねェ〜読んでてワクワク萌えちゃいましたデッス
青龍がバルゴンなのはともかく、ジャイガーの白虎はちょいと無理があるかも〜ダハハ
やっぱ白虎はイメージ的にはネコ科の怪獣なんですけど…
![]() ジャイガーはどう見てもトリケラトプスとかサイとかのイメージですよねェ〜
でもネコタイプの怪獣というとちょっと思いつきませんですゥ
さてさてこの妄想プロット、最終的には白虎の怪獣「魁白帝」を登場させなければいけないんですがさてさてどうしたものか…
私の妄想では、勝手にひろうすさんの傑作オリジナル怪獣「古代獣王ディオガルス」をイメージしてるんですが、もっか思案中であります〜
こんなことでうまく大団円になるのかちょっと心配wwwデヘヘ
PS: 第25章「原子力空母消滅す!」をストーリー上の関連づけから若干リライトしました。また読んでみてくださいまし〜
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『ガメラ4』妄想の小部屋
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Chapter26 『蠱毒』
3人はほとんど同時に正気を取り戻した。後ろ手に縛られ背中合わせに座らされたまわりを4人の黒ずくめの男たちが囲んでいる。どうやら八束之岩屋の入口まで連れ出されたようだ。
周りはすっかり夜の闇に包まれていたが、狭い谷間に差し込む月光で薄ぼんやりと男たちの表情が見えた。 「長峰さんお久しぶりね」
抑揚のないマシンボイスのような女の声が男たちの後ろから聞こえてきた。 真弓はいったい誰の声なのか最初は分からなかったが、2人の男の間から現れた黒いコートを着た女のシルエットを見てすぐに記憶が蘇った。 「あ、朝倉さん…?」 「そうよ朝倉美都。もう13年ぶりになるかしら、京都以来ね」 千里と悟は黙って2人の会話を聞いていた。 「高来さん、あなたのこともよく存じています。守部文書からよくここまでたどりつきましたね。実は東京駅であなたの命を奪おうとしたのは私たちです。あなたは深く知りすぎた。もうご存じとは思いますが、私たち一族は古より土蜘蛛と呼ばれ蔑まれてきました。私たちの同士はこの世界では永遠に闇の中で生きながらえるしかなかったのです」 雲間から漏れた月光が美都の乳白色の仮面を鈍く光らせた。 「間もなく参宿四星が天を喰い天磐門が開かれる。もうすでに蒼龍王が償還された今、この世界を再び我々が統治するため再び劉朱鶏が蘇ります。あなたたちは先ほど八束之岩屋の奥ですでにご覧になりましたね」
「朝倉さん、なぜ今になってそんな愚かな殺戮を繰り返そうとするのよ。それはもう今となっては神話にしか記録されていない遠い昔の出来事でしょう。あなただって人間として生まれ、この世界で幸せに生きていく権利を持っている。現にあなたは日本政府のブレインとして、私たち以上にこの国のために尽くしていたんじゃないの」 「私たちもできればこのまま何事もなく生きたかった。しかしもうすぐ私たちの意思にかかわらず大きな禍がこの世界を覆い尽くす。蒼龍王と劉朱鶏そして黒霊亀と魁白帝、覚醒した四柱の戦神が果てしない闘争を繰り広げ、この世のものすべてが破壊され灰燼とかす。そしてそののち我々の手に新しく生まれ変わった無垢な世界が大いなる創造神より託されるのです」 「13年前の柳星張はあまりにも未成熟でした。私たち一族と融合し完全に覚醒する前に、比良坂綾奈の人間的な愚かな憎悪を吸収してしまったため、能力が覚醒しないままガメラと対峙してしまったのです。その結果あまりにもたわいなく倒されてしまった。社ノ沢でただひとりで生まれたのもあの子の不幸でした。でもあなたたちが先ほど岩屋の奥でご覧になった劉朱鶏は違います。真弓さんは覚えているでしょう。姫神島の洞窟で生まれたギャオスはすべて食い尽くされていた…もっとも強い1頭にしか生き残る権利はないの。そしてそのギャオスも劉朱鶏の糧でしかない。いま暗い地の底でゆいいつの神になるための儀式が静かに繰り返されているのです」
「蠱毒…!?」 千里は小さくうめくようにつぶやいた。 蠱毒(こどく)とは、古代において用いられた呪術で蠱道(こどう)、蠱術(こじゅつ)、巫蠱(ふこ)などとも呼ばれ、古くは古代中国、殷・周時代の甲骨文字から蠱毒の痕跡を読み取れる。百種の蠱を集め、互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。これを繰り返し最も強大な生命力を持った種を生み出すための呪法である。
「間もなく期は満ち、真の劉朱鶏が覚醒します。そして私と一体となり蒼龍王、黒霊亀、魁白帝を喰らい、ゆいいつの創造神としてこの世界に君臨するのです」
仮面に隠された美都の表情は弱い月の光の下では読み取れなかったが、無表情な声は心なしか小刻みに震えているように思えた。 「あなたたちには残念ですが彼らの糧になってもらいます。もうこれ以上邪魔をしてほしくないから…八束之岩屋の封印を解いたことであなたたちの役目は終りました」
黒づくめの男たちが3人の腕をとり強引に立たせようとしたそのとき、深い谷間に乾いた銃声がこだました…… ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
いつものことながら展開が遅くてなかなかお話が進まず恐縮です〜
そろそろクライマックスにならないといけないんですけど、なんせ思いつきで書いてるもので、自分にもどうなるのか判りませんwwwダハ
でも次回にはなんか急展開が訪れる予感…いましばらくお付き合いくださいませ〜
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Chapter25『原子力空母消滅す!』
同時刻、沖縄の東200海里の太平洋上、米第7艦隊機動部隊空母T.J.ホイットモアは15ノットでゆっくりと南西方向に航行している。“オペレーションアポカリプス”の作戦海域を哨戒後、物資補給のためフィリピンルソン島スービック基地へ向かっていた。
天候は概ね良好ではあったが、パラオ付近に発生した季節外れの低気圧のため海面はうねりが大きく、ホイットモアの巨体もゆっくりと前後にローリングを繰り返している。先の蒼龍王掃討作戦で帯同していた駆逐艦2隻は横須賀へ帰港し、ホイットモアは単独で行動していた。 太平洋に夕闇が迫る頃、CICの当直士官ラーズ少尉は予期せぬ状況に一瞬我が眼を疑った。なんの予兆もなく突然すべての電子機器がブラックアウトしたかと思うと、数秒後復旧したレーダー画像に巨大な雲状の影があろうことか艦直上に出現したのだ。
不定形な物体なのか不規則に形状を変化させながら概ね直径2kmの範囲に円盤状に集合していた。ラーズ少尉は我に戻ると直ちに艦長に報告した。
全艦に戦闘態勢を司令するけたたましいブザーが響く。
「第4戦速、面舵いっぱい、バイパーダッシュはただちに発艦準備!」 キャナルズ艦長の命令が下る。 ホイットモアの巨体は風上に向かって急速に方向転換していく。荒れる海面に白い航跡が大きな円を描く。 艦舷エレベーターから3機のラプター艦上攻撃機が飛行甲板へ次々とせり上がってくる。先の作戦の消耗で運用できる機体数は限られていた。ラプターはスチームカタパルトの蒸気と轟音を残して次々と薄暮の空に向かって発艦していった。 甲板クルーの頭上には信じられないような光景が広がっていた。晴天であったはずの上空に異様な黒い雲が渦巻き、中心部には青白い閃光がまるで意思を持つ生物のように不規則に明滅を繰り返している。海上は突風が吹き荒れホイットモアの巨体を大きく揺さぶる。閃光と共に発せられた幾筋もの雷撃がレーダードームで火花を散らした。
3機のラプターは渦巻きの中心に向かっていっせいにサイドワインダーを発射する。ミサイルは渦の中へ吸い込まれていった。しかしなんの反応起こらない。数秒後、渦巻きの中心部から幾筋ものレーザー光に似た黄色い光線が放出された。光線に接触したラプターはまるで日本刀で切断されたかのように真っ二つに切り裂かれると空中爆発を起こし粉々に飛散する。残った2機も同様に一瞬のうちにレーダーから機影が消滅した。
光線はそのまま直進し、ホイットモアの艦橋や飛行甲板を直撃する。切断されたレーダードームやC-WACSの残骸が四方に飛散する。甲板上はミサイルが誘爆を繰り返し、一瞬のうちに灼熱地獄とかした。ほんの数秒の間に史上最強の空母は完全に戦闘能力を喪失し沈黙した。
警報ブザーとともに総員退去命令が艦内にこだまする。超音波メスの直撃を受けた原子炉の隔壁が破壊され、放射能が艦内に拡散し非常に危険な状態となっていた。
そのとき、渦巻きの中心部から無数の黒い不吉な影がホイットモアの上空に舞い降りてきた。赤黒い翼で全天を覆うかのような鳥の姿を借りた悪鬼が舞い降り、飛行甲板に避難してきた乗組員たちを次々と餌食にしている。翼長は10mから20m、15年前太平洋上で忽然と姿を消したギャオスの大群がいま最新鋭の巨大空母を蹂躙している。その数はゆうに百頭を超え人肉では飽き足らず狂ったように共食いを始める個体もいた。 キャナルズ艦長たち士官は破壊された戦闘艦橋から脱出する間もなく、群がった数頭のギャオスにひと飲みにされてしまった。指揮系統を失い艦内に取り残されたクルーたちは放射能の恐怖でパニック状態のまま飛行甲板に駆け上がると、次々と待ち構えているギャオスになすすべもなく捕食されていった。
だれもが死を覚悟したそのとき、空一面が鮮やかなオレンジ色に染まったかと思うと、至近距離から発射されたと思われる巨大な火球がホイットモアの艦橋をギャオスもろとも吹き飛ばした。ものすごい破壊力だ。ギャオスは敵に気づくといっせいに飛び立とうとする。
今度は直上から連射された火球が次々とギャオスを粉砕していく。火球がかすめた飛行甲板の一部も粉々に吹き飛ぶ、低空を巨大な円盤状の物体がゆっくりと旋回している。 艦体が大きく左へ傾いたかと思うと左舷後方から巨大な黒い塊が飛行甲板へ這い上がってきた。眼前に現れた破壊神の憤怒の形相に生き残ったクルーたちは震撼し全身が硬直した。 「OH!it's GAMERA!」 上空を飛翔しているガメラとは別の個体だ。ガメラは2頭いる。 飛び立ったギャオスは甲板上に仁王立ちしたガメラにいっせいに超音波メスを発射する体勢をとった。そのとき飛行しているガメラが群れの中に突入する。一瞬ひるんだギャオスの群れに艦上のガメラがプラズマ火球を連射した。数十頭のギャオスがあっという間に火だるまとなって大海原に落下する。艦上のガメラは甲板に横たわった瀕死の個体をわしづかみにすると原型をとどめないほど引きちぎり踏みにじった。 ギャオスの断末魔の悲鳴が洋上に響く。飛行甲板がドロドロとした体液で赤褐色に染まる。それでも十数頭のしぶとく生き残ったギャオスは、上空のガメラの攻撃をかいくぐりながらワームホールの中へとかろうじて逃げ込み姿を消した。
艦上のガメラは、艦載機は邪魔だと言わんばかりに次々と海上へ蹴り落としながら、飛行甲板の中央部第3格納庫付近まで進むと鋭い爪で甲板を引き裂きめくり上げた。そして格納庫に駐機していた真っ黒なX48をわしづかみにすると粉々に噛み砕く。X48にはまだもう1基ネオニュートロンミサイルが搭載されていたが、ガメラは機体もろともそれを飲み込んでしまった。ガメラの目的はネオニュートロンだったのか…
上空のガメラも逃げ遅れた手負いのギャオスをまるで狩りを楽しむかのように次々と撃墜していく。数分後ギャオスの影は完全に上空から消滅した。
艦上のガメラは新しいエネルギーを吸収し満足したのか、大きく彷徨すると甲板の生存者には目もくれず、轟音を残して飛び立った。その後を上空のもう1頭が追尾する。2頭のガメラはあっという間に視界から雲間に消えていった。上空のワームホールは数発のプラズマ火球を受け拡散消滅し、漆黒の闇の中に吸収されていた。 一時の静寂が訪れた。見るも無惨な鉄塊となったホイットモアは、左舷に大きく傾きながらうねる海原を漂流している。やがて大爆発と共に巨大な艦影は太平洋上から消滅した。
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久々にガメラ大暴れ〜
土日とコタツムシだったので思いつくままの大活劇
さてさて日本本土を目指す2頭のガメラ、風雲急を告げる展開にこうご期待
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Chapter24 『黄泉の回廊』
入口は狭い縦長の岩の割れ目だったが、15mほど進むと、空間は徐々に広がり、足下はだんだんと傾斜のきつい下り坂になっていった。
両脇には朽ちた明らかに原初の神のごとき異様な石像が等間隔に並んでいる。不明瞭ではあるが縄文期の遮光器土偶に類似した複雑な文様で覆われ、充満する湿気で全身が水分を含み濃緑色の苔に覆われていた。 3人は無言で、ゆっくりと地の底へ下降していった。ほんの1分が永遠の時間のように感じる。徐々に天地が曖昧になり麻痺してくるような奇妙な感覚を覚えた。 「まるで黄泉比良坂を下ってるみたいね」 千里がぽつんとつぶやいた。悟はこの地の底に潜む者が自分のルーツとなにか関連があるのかと思うと言いようのない得体の知れない不安で心がかき乱された。 30分ほど歩いただろうか。やがて天井や壁一面が、石像と同様の奇怪な文様で覆われた広い空間に到達した。直径20mほどのドーム型で、明らかに人為的に構築されたモスクのように見える。天井は異常に高い。
壁面全体を覆う幾何学文様でも縄文文様でもない不思議なパターンは真弓が綾奈に託された金属棒のそれに酷似していた。
ここでもドーム壁面にそって、取り囲むように原初の怪物の彫像が規則正しく並んでいる。そして正面にはひときわ大きい異形の神像が壁面に深くうがかれていた。 「これは…イリス…」 LEDの青白い光に浮かび上がった神像のシルエットには3人とも見覚えがあった。 「悟君のお姉さんがイリスと呼んだギャオス変異体…守部文書には劉朱鶏と記されている南都の守護獣、やっぱ社ノ沢と八束之岩屋は旧世界と現代をつなぐワームホールなのかもしれないわね。かつてこの世界を支配していた者たちを守護するもの…」 千里は壁面と神像の狭い空間でフリークライミングのように身体を支えながら、3m近くある神像の頭部から獲物を狙う獣のような鋭い視線でゆっくりと観察していった。
「みっけ!たぶんこれだわ」 胸部にある苔に隠れた六角形のくぼみを千里は見逃さなかった。背中のデイパックから例の金属棒を取り出すとそのくぼみに注意深くゆっくりと差し込んでいく。金属棒は隙間無くぴったりと納まり神像と一体となった。 一瞬の沈黙のあと、ゴゴゴッと鈍い振動とともに3人の足下が突然陥没した。 「うわっ!」「キャーッ」 予想しなかった事態に3人はなすすべもなく、折り重なるように30°近い急傾斜の石畳を滑り落ちていく。まるで闇の怪物に飲み込まれるように… どのくらい時間が経過したのだろう。頬に落ちる水滴の冷たさで千里は目をさました。左手に持ったLEDライトはまだ点灯している。足下に倒れている悟と真弓を揺り起こすとあたりの様子をうかがった。相当な高低差を滑落したと思われるが、幸いなことに苔のクッションで3人とも怪我はなかった。
そこはとてつもなく広い空間で上方をライトで照らしても、ただ漆黒の闇が広がっているだけだ。後ろを振り返ると垂直に近い岩壁に3人が滑り落ちてきた石畳のトンネルがぽっかりと口を開けている。岸壁は円筒状に空間を囲んでいるようだが広すぎて全貌を把握できない。3人がいるのはトンネルの出口の狭い平場で20mくらい前方はまた絶壁になっているようだ。空間には湿った生臭く重い空気が充満している。 3人は足下を確かめながら、暗闇の底を確かめるため深淵の縁へ注意深く近寄っていった。千里は深淵の下方をライトで照らすと思わず反射的に後へ飛び退いた。悟も真弓も同様に氷水を浴びたかのように背筋が硬直した。
ライトが届く距離ぎりぎり、20mほど下方にまるで脳髄のような深い皺に覆われた無数の卵状の物体が林立している。高さ3mほどであろうか。一様に真ん中にまっすぐ伸びた溝のような亀裂が認められる。中にはその亀裂がぱっくり口を開け、有機質の暗褐色の粘液がこぼれだしているものもある。その影で頭足類のような8本の黄色い触手と鈍色の殻を持った不気味な生物が粘液に絡まりながら緩慢に蠢いている。その数は少なくとも10体は視認できた。3人はそれがいったい何者なのか即座に理解した。そしてもっと驚くことに深淵の底には数知れぬ同種の生物の骸がズタズタに引き裂かれて腐臭の海に醜く横たわっていた。彼らは仲間同士、果てしない死の闘争を繰り返していたのだ。最後の一体となるまで…
悟はゴクリと生唾を飲み込んだ。額を一筋の冷たい汗が流れる。真弓はじっと一点を凝視していた。千里はフリーズした2人の肩をたたいて、怪物に気づかれぬようトンネルの方へ後退しするよう即した。ゆっくりと後ずさりしながら、うしろへ振り返えろうとした瞬間、全身に電撃が走り3人とも気を失ってトンネルの壁面に寄りかかるように倒れ込んだ。
地面に転がったLEDライトに照らされて3人の男の長いいびつな影が壁面に映る。彼らは指先からかすかに青白い電光を放っている。 そしてその背後から黒いロングコートを着た仮面の女がゆっくりと近づいてきた。
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ごめんなさい
でも次回くらいにはなんか出てきそう…期待しないで待っててネ〜
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Chapter23 『仙人の谷』
又高尾張邑(たかをはりのむら)に、土蜘蛛(つちぐも)有り。其の為人(ひととなり)、身(たけ)短くして手足長し。侏儒(ひきひと)と相類(あいたぐ)へり。皇軍(みいくさ)、葛(かづら)の網を結(ゆ)ひて掩襲(おそ)ひ殺す。因(よ)りて号(な)を改め其の邑を葛城(かづらき)と曰(い)ふ。
──日本書紀・神武天皇即位前紀
3人は葛城山頂へ向かう登山道から外れた気をつけないと見落としてしまいそうな細いけもの道を、覆い被さった雑木や背丈ほどの笹を振り払いながらゆっくりと下っていった。
山の斜面は思ったより急角度で浮き石にときおり足を取られる。足下に気をつけると小枝で顔を突かれそうになる。なかなか思ったように進むことができず、ようやく行者谷への入り口と思われる小さな渓流に到着したときは午後2時を回っていた。 千里は疲れてはいなかったが、急斜面を折りきったところにある峡谷の大きな岩の影で軽い昼食を取ることを進言した。
あたりはうっそうと茂った雑木と切り立った岩壁に囲われ、陽光は届かず湿った空気に満ちている。悟は朝、忍坂のコンビニで買った菓子パンを食べながら奇妙な既視感を感じていた。
「真弓さん、この風景前に見た記憶があるんですけど…」
「そうね。私も悟くんと同じことを考えていたわ。南飛鳥村の社ノ沢にそっくり」 「土蜘蛛のテリトリーとして共通性があるのかもね。もともと穴居民族というのが定説だから…」 千里はデイパックから取り出した缶コーヒーを口にするとホッと一息ため息をついた。
「このあたりには役小角の伝説も残っているのよねェ〜」 千里が独り言のようにしゃべりはじめた。 役小角は若くして雲に乗って仙人と遊び、孔雀王呪経の呪法を修め、鬼神を自在に操った。近隣の国津神を酷使して大和国の金峯山と葛城山の間に石橋をかけようとしたところ、国津神のひとり葛城山の神である一言主が文武天皇に役小角の謀反を讒言した。小角は捕らえられ伊豆大島に流されたが、昼だけ伊豆におり、夜になると富士山に行って修行した。大宝元年正月に赦されて帰り、仙人になって天に飛び去った。道昭法師が新羅の国で五百の虎の請いを受けて法華経の講義をした時に、虎集の中に一人の人がいて質問してきた。法師は「誰か」と問うと「役の優婆塞」であると答えた。法師は高座から降りて探したがすでに姿が消えていた。一言主は、役小角の呪法で縛られて今になっても解けないでいるらしい…
「なんか社員をこき使うブラック企業の鬼社長みたいよねェ。でもさあその橋が異界をつなぐゲートだったら…それに孔雀明王は鳥なんだよね。金峯山には不思議な鳥と怪物を描いた絵図も残ってるし…」
千里はいつものようにコーヒーの空き缶を回しながらぽつりとささやいた。見上げると木々の間から快晴の青空が見えるが、峡谷の底は薄暗く湿った冷気が肌を刺す 休憩もそこそこに巨岩や倒木を迂回し、水苔が繁茂して滑りそうな足下に気を配りながら上流へ向かって一歩一歩ゆっくりと進んでいった。
2mほどの小さな滝を登り切ると目の前に突然苔むした石の鳥居が現れた。いまにも倒れそうに不自然に傾いている。その左側、切り立った岩壁の中腹にぽっかりと風穴が口を開けていた。
悟は湿った岩場で注意深く足場を探りながら風穴の入口にやっとの思いでたどり着いた。うしろから千里と真弓がつづく。 岩屋の天井にはまるで神域を結界で隔絶するかのように朽ちかけたしめ縄が張り巡らされている。足下には風化して判別のできない無数の石像が無造作に転がっていた。風穴の奥は思いのほか深く真っ暗でなにも見えない。ただ得体の知れない異様な霊気が満ちていた。
3人は一瞬躊躇したが、用意していたLEDのハンディライトを点灯すると悟を先頭にゆっくりと闇の中へ入っていった。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
なかなか佳境に入らなくてすんません
今回は「日本霊異記」をちょっこし拝借です〜
「土蜘蛛」と「クトゥルフ」と「役小角」そして「ウルトラQ」
これらのパーツと「ガメラ」…
そろそろ組み立てないといけませんネ こうご期待
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