|
団長が…グレイルが死んだ…
アイクにそう告げられた時、私には理解が出来なかった。
理解できないままアイクにグレイルの横たわる場所へ連れてこられた。
いつものようにただ寝ているだけのグレイル。私の目にはそう映った。
しかし、いつもと寝ているグレイルとは違う。
腹部からおびただしく出血している…
これが致命傷になったのだろう。
それ以外の外傷は見られない。
そしてグレイルはピクリとも動いていない。
そんなグレイルの姿を見て、アイクの告げた言葉と…現実とに私は向き合うことが出来た。
…グレイルが死んだのだと…
私はアイクに一つのお願いをした。
せめて私にグレイルの体を綺麗にさせて欲しいと…
貫かれた腹部の血を拭くため、私はグレイルの上半身を脱がせる。
血によってグレイルの衣服と体とがくっ付こうとしていた。
それを私は丁寧に剥がしていく。
やがてグレイルの上半身と衣服とが分かれた。
私は濡らしたタオルでグレイルの鍛えられた上半身と、貫かれた傷跡を拭く。
拭いていきながら、私の脳裏には今までの思い出が蘇る。
初めてグレイルを見たあの時。
グレイルに師事してもらった時。
私の悩みを相談した時。
そして
エルナが居たのを知っていながら…私が彼に告白した時…
様々な思いが去来し私は気が付いたら、涙が零れていた。
私の愛しい人
その人はもう何も話さない
動くことも…ない
私はこれから彼の優しい眼差しがない世界で生きていけるのか。
突然不安になった。
私の眼からは更に涙が…
私はその不安を消す為、一つの案が浮かんだ。
でも、本当のところは違った。
不安を消すなんて、ただの言い訳。
私が以前からしたかったことを実行しようとした。
卑怯な言い訳を自分の味方にして…
私は動かないグレイルの顔に近づいていく。そして、私は友に許されない許しを乞うようにつぶやく。
「エルナ…ごめんね…」
私はグレイルと初めての、そしてお別れの唇を重ねた…
|