|
「かんぱ〜い!!」
キィンとグラスが歓声をあげる。
「ぷっふぁ〜。久々の酒はうまいなぁ〜!」
「まぁ、マカロフ様。もう飲んでしまわれたのですか?」
「カリルね〜さ〜ん!もういっぱ〜い!」
マカロフとステラが談笑している。それを横目で見ながら、
「全く・・・どうせまた酔いつぶれるんだから、あんなペースで飲んでると・・・」
マーシャがグラスに口を付けてちびちび飲む。
「まぁいいではないか、マーシャ殿。今日ぐらいは」
ケビンが笑いながら話す。
「ダメですよ!どうせまた”今日から”になるんですから!!」
マーシャの予感は的中することになったが、それはまた別の話。
そう。戦死されたご家族へのご挨拶まわりが済み、その打ち上げを
カリルとラルゴの店で行っている最中だった。
「わたしのおみせでもあるよ!!」
・・・そうでした・・・エイミの店でもありました・・・
「にしても将軍も太っ腹ですね。今日の代金全て将軍もちだなんて」
マーシャがケビンに何気に聞く。
「うむ。やはり将軍となると、下への気配りなどもしっかりとしておられる・・・。見習わねばな」
ケビンが感心している。と、
「なぁに話してんの〜。せっかくただなんだから〜、じゃんじゃん飲まなきゃソンだよ〜」
「・・・マカロフ・・・」
「・・・にいさん・・・早すぎ・・・」
真っ赤な顔をしたマカロフを見て力が抜ける二人。
「あらあら。マカロフ様ったら。ふふふ。」
そんなマカロフを見てもおしとやかに笑うステラ。マーシャが以前
からの疑問を投げてみる。
「ステラさん。こんな馬鹿兄貴の・ど・こ・が・いいんですか?」
どこがをえらく強調して聞く。ケビンも深く頷く。心なしか、
カウンターのラルゴとカリルも聞き耳を立てているような・・・
ステラは普段の笑顔のまま話す。
「え?それはもちろん・・・」
一同が生唾を飲み込む。
「カッコいいですからですわ」
ガシャーン
カウンターで作業をしていたカリルが皿を落として割る。
そして、マカロフとステラを除く全員の視線がステラに向けられる。そして全員の意見が皆の頭を過ぎる。
『ダメだ!男を見る眼がねぇ!!!!!』
「カリルね〜さ〜ん。もういっぱ〜い」
マカロフの声が店に響く・・・
それから・・・
「うぇっ・・・飲みすぎたかなぁ・・・?」
「飲みすぎよ!!」
店を出た外でマーシャがマカロフにキツク言う。
「まぁまぁ、良いではないか。マーシャ殿」
ケビンが穏便に解決しようとする。ステラもマカロフの右腕を肩に
担ぎながら言う。
「そうですわ。私がおりますし」
「だから!みんなしてこの馬鹿兄貴を甘やかしちゃダメだって!!」
絶叫するが、ケビンもステラもニコニコしている為、気が削がれていくマーシャ。
「それではここで解散とするか」
「はい。お疲れ様でしたわ」
「お疲れ様でした」
「うぇ・・・」
皆に挨拶を済ませたケビンは城に向かって歩き出す。
「あ、私も行きます!!」
マーシャが後を追いかけようとする。と、
「マーシャ・・・ちょっと・・・」
マカロフがフラフラの左手でマーシャを呼び止める。
「もう、なんなのよ!」
呼び止められてマーシャがぷんぷん怒りながら、マカロフの元に寄る。
「なに!」
「ちょっと・・・耳貸せ・・・」
「早くしてよ!!」
そう言って、耳をマカロフの口元に寄せる。そして、
「ああいう男はこっちからハッキリ言ってやんないと気付いてくれねぇぜ?」
「なっ!!」
顔を赤く茹で上がらせて、マーシャが後ろに仰け反る。
「私もそう思いますわ」
「なっ!!」
ステラもニコリとして言う。先ほどの話を聞いていたようだ。
「そ・・・そんなの・・・」
マーシャが体を震わせて言う。
「わかっているわよー!!!」
大声で叫びながら、ケビンの歩いて行った方角へと走り去る。
そして、その場に残された二人。
「それじゃ・・・」
「行きますか」
マカロフを気遣いながら歩いていく二人。
夜の暗闇の中、月明かりに照らされてゆっくり歩いていく二人。
「・・・」
「・・・」
会話もなく進む。が、不意にマカロフが口を開く。
「あの・・・さ」
「なんですか?」
ステラが聞いてくる。
「・・・」
無言のマカロフ。
「・・・どうかしましたか?」
無言のマカロフにステラは心配そうな声で尋ねる。
「さっきのさ・・・話だけど・・・」
「はい?」
マカロフはステラから右腕をはずし、ステラの正面に立って聞く。
「俺の何処がいいの・・・?」
「え?」
突然のマカロフの問いにステラは不意をつかれた。が、直ぐに答える。
「先ほども言いましたけどそれは・・・」
「カッコいいなんて嘘だ!!!」
マカロフが言い切る。ステラは目を大きく見開いてマカロフを見る。
「他にもカッコいい奴なんかいっぱいいるじゃん!ジョフレ将軍や
ケビン隊長とか!!それなのに・・・なんで”俺”なんだよ!!!」
マカロフは俯いている。
ステラはそんなマカロフを見つめて言う。
「嘘じゃありませんわ・・・。カッコいいと思いますわ」
そういい、一歩マカロフに近づく。
「・・・私はディアメル家の娘として、何処かへ嫁ぐ・・・それが
イヤで軍に入りました。でも、軍の生活はとても厳しかった・・・
もう、家に戻って決められた相手と結婚しようかとも思いました
・・・自分で嫌ったカゴに・・・自ら戻ろうとしたんですわ・・・」
更に一歩近づく。
「そんなとき、マカロフ様にお会いしましたわ。初めて見たとき、
なんて自由に生きている方なのだろうと、思いましたわ。そして、
その自由は、私が憧れた生き方なのですわ」
そして、マカロフの目の前に立ち両腕を広げる。
「そんな憧れた生き方をしているマカロフ様を・・・カッコいいと
思うのは変ですか・・・」
マカロフが顔を上げる。両腕を広げているステラは
・・・涙を流していた・・・
「・・・ご・・・ごめん・・・」
広げられた両腕のなかへと導かれるように進み、抱き合う二人。
「疑ってごめんよ・・・」
腕の中で謝るマカロフ。それを聞いたステラは、
「いいえ・・・ハッキリ申し上げなかった私がいけなかったんですわ・・・」
夜の優しい月明かりが最後の二人の心の壁を溶かしていくようだった・・・
|