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一人の男がしつらえられた部屋の暗闇の中、蝋燭に灯された火を頼りに本を繰っている。
本に集中しているその男は気がついたのだろうか?
その火がわずかに揺らめく。
そして、
「あら?こんなに暗いのに読書なんてしてるの?」
その蝋燭の火を揺らめかせた人物が、本を読んでる人物に話しかけた。
本を読んでる人物はその現れた人物に振り向き、
「おお、これはこれは。深遠でも神々しいほどの美しい光を放つ麗しの我が君ではありませんか!?
貴方には似つかわしくもないこのような薄暗い場所に何用なのですかな?
まさか、我輩をお探し頂いたとか?おお、もしそうだと致しましたらこの我輩に余りある光栄に存じますぞ」
「それじゃ…」
姿を現したその人物は踵を変えてその場から立ち去ろうとする。
「来られて直ぐに行かれてしまうとは、余りにもご無体な」
本を読んでた人物が慌てて立ち去ろうとした人物を引きとめようとする。
すると、立ち去ろうとした人物が人差し指を立てて、
「それじゃ、もう少し貴方と話してあげるから、その勿体つけた話し方はやめてもらえるかしら?」
慌てていた人物は顎鬚を擦りながら、
「ふむ…我輩の話し方はいささか受け入れられにくいようですな」
少し落ち込んだように話す。
人差し指を差し出した人物はニコリとしながら言う。
「そうね。少なくともこのクリミア城には誰一人としてその話し方が好きな人物はいないと私は思うわ」
引止めに成功した人物はその手厳しい意見に
「ふむ…」
短く嘆息してその答えとした。
人差し指を差し出していた人物は一枚の紙を取り出して、対面の人物に言う。
「ところで、この紙は一体なんなのかしら、ユリシーズ?」
名を告げられた人物…ユリシーズが答える。
「その紙はある人物の運命を救った、とても大事な紙ですな」
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