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「ううっ…」
「ちくしょう…」
山の中にある街道に転がる大勢の野盗達。
それを成敗したのは、村人から依頼を受けていたグレイル傭兵団。
「お前等…大丈夫か…?」
野盗の頭領だと思われる人物が、みんなに声をかける。
「へい…」
「…なんとか大丈夫っす…」
あちらこちらから、野盗の仲間達の声が聞こえた。
腕を怪我した者、足を怪我した者、誰かに体を支えられてやっと立ち上がってきた者、様々だった。
「仕方ねぇ…引き上げるぞ…」
頭領の力ない言葉に従い、ぞろぞろと野盗は引き上げていく。
その敗者の背中を眺めつつ、ティアマトは言う。
「これで依頼は達成ね」
「そうっすね!」
ガトリーがティアマトに同調する。
シノンは、
「くぁあ…」
大あくびをしてそれを返事とした。
そんな中、ヨファが目をきらきらさせて言う。
「僕達グレイル傭兵団は正義の為に戦っているんですから、負けるはず無いですよ!」
その台詞を聞いたシノンは、ゴン!とヨファの頭を殴った。
「痛った〜」
殴られた頭を押さえて、ヨファが殴った相手…シノンを振り返る。
「何するん…」
非難の声をあげようとするヨファの襟首を掴み、
「ちょっと来い!」
強い語気でシノンはヨファを引きずっていく。
そんな二人を見送っていたティアマトは言う。
「それじゃ、私達は先に帰るとしようかしら」
「そうっすね」
ガトリーもその意見に同意して、二人はその場を後にした。
シノンがヨファに対して何をするかわかっている…というような顔をして。
シノンがヨファを引きずって連れてきたところは、先ほどの野盗の巣窟。
一人遅れながら引き換えしていた野盗の後をつけてこの場所にたどり着いたのだ。
うっそうとした茂みに隠れ、その巣窟を見ている。するとヨファが、
「あの〜…なんでこんなところに連れてきたんですか?」
全く意味がわからないと言った風にシノンに聞いてくる。
「いいから、黙ってみてろ」
シノンはヨファの問いに答えない。
ヨファしぶしぶ野盗達を見やった。
野盗達はおのおの怪我の治療の為に傷薬や薬草を使用している。
が突然、バタン!と、ある一人がその場に突然倒れる。
それを見ていた野盗達。その中の一人が声をかける。
「おい、ジェイス…大丈夫か?」
倒れた男の名前はジェイスと言うのだろう。
しかし、呼ばれたジェイスは倒れたまま、返事を返してこない。
一人の野盗がジェイスに近づき、体を揺さぶる。
「おい…なんの冗談だ?悪ふざけもいい加減にしろよ…」
しかし、揺さぶられるままに体が揺れるだけで、自ら動くことは無かった。
もう一人の野盗がジェイスに近づいて、ジェイスを調べた。そして、
「…ダメだ…死んでる…」
その一言をきっかけに、野盗達の悲しみがその場で爆発した…
その悲しみが溢れる中、
「帰るぞ」
シノンが突然帰るとヨファを促す。
「え!?」
既に野盗達には見えないように立ち上がり、去っていくシノンの後をヨファも追いかける。
そして暫く歩いた後、シノンが口を開く。
「どうだ?お前が言っていた”正義”とやらを最後まで見て…よ」
「…」
ヨファは何も言えなかった。目の前で人が死んだ。さっきまで悪人だと思って退治した人物が。
悪人だから何をしてもいと思っていた。退治するのは当たり前だと。
…いっそ殺してもよかったのだと…
でも、その悪人が死に、その人が死んだことで沢山の野盗が悲しむ姿を見て、
それでも良かったことなのか…ヨファにはわからなかった。
シノンは続ける。
「野盗っつうのは確かに悪いことだ。だからと言って、そいつ等に何をしても許されるわけじゃねぇ。
悪いことをしている相手を懲らしめる…それがイコール正義じゃねぇんだ。
正義なんてものはそいつの免罪符。耳障りと都合のいい言葉で飾っているだけだ」
と、シノンはヨファを見て言う。
「いいか?だから今後一切正義なんて口走るんじゃねえぞ?」
ヨファは黙ったまま、力強くうなずいた。
シノンはそんなヨファの頭をくしゃくしゃと撫でながら、二人は岐路へついた。
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