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ブッシュはイラクから撤兵できない。撤兵したら内戦が激化する。イランも入ってくる。クルドの分離
独立運動も激しくなる。どうにもならないからイラクに踏みとどまっている。彼は個人的にはすでに失敗 を認めているだろう。しかし、アメリカ国民に向かっては、仕方がないから、対テロ戦争は長期戦にな る、と覚悟を訴えている。その論法はアメリカ人の好きな二者択一の論理だ。すなわち、われわれはテロ に屈するか、テロと戦うか?対テロ戦争に協力するかしないか?彼のとってきた政治手法というものは、 このように二者択一を迫る恫喝的なやり方なのだ。 アメリカがアフガンを空爆してから五年がたった。自衛隊はインド洋でせっせと「海のガソリンスタン ド」の役割を果たしている。タリバーンもアルカイーダもまだ戦っている。NATOの軍隊がアフガン南部で 掃討作戦をやっているがとても兵力が足りない。それでつい最近NATOは関係国に兵力の増強を求めた。と ころがイラクやレバノンにも兵を出しているような国はそれだけの余裕がない。五年たってこんな状態だ とはブッシュは想像もしなかったのだろう。 こういう状態が長く続けばどうなるか?兵力の増強は限界だし、撤兵すれば逃げていた敵が入ってく る。引くに引けない状態になる。これはアフガンもイラクと同じだ。ブッシュは盛んに言っていた。これ は「文明の衝突」ではない、「中東の民主化」のためなのだと。実際はその逆のことが進行している。イ スラエルはアメリカにならって対テロ戦争をレバノンに仕掛けた。ところが、イスラエルを中東における アメリカの植民地ぐらいにしか思ってない中東の人々はいくら沈黙していてもイスラエルの行為を決して 容認しない。イスラエルはますます敵を結束させ民衆の支持を強めさせたに過ぎない。それはまた中東の 反米勢力を強化させたことでもあった。 パレスチナにおいて公正な選挙で勝利したハマスを承認せずにアメリカはじめ西側諸国は援助を停止し た。こうした意地悪をすることがアメリカ式の「民主主義」だとすれば、誰も中東の人々はアメリカを支 持したりしなくなる。私はかつて「ハマスの勝利」という記事で述べたが、過激派であろうとなかろうと 民衆の支持を得ているにはそれ相当の理由がある。アメリカは彼らと交渉するべきだろう。それが民主主 義のルールというものだろう。それともアメリカ式「民主主義」は自国の人々にしか通用しないのだろう か? たしかに無差別殺戮を行うテロは容認されてはならない。しかし、対テロ戦争が9・11と無関係の人々 を死に追いやった。その数は9・11の犠牲者の数どころではない。容疑だけで秘密収容所に拘留されてい るムスリムの人々の数も少なくない。彼らには裁判を受ける権利も与えられていない。われわれは9・11 以後にばかり眼を向けている。だが、これを長い中東の歴史の脈絡において眺めてみれば、テロを呼び込 んだのはソ連でありアメリカであった。アルカイーダのビンラディンはソ連のアフガン侵攻に抵抗するた めにサウジアラビアからやってきた義勇兵に過ぎなかった。やがてゲリラの指導者になり、ソ連撤退後は アメリカの中東における権益を奪還することを呼びかけてテロに走った。アメリカはホメイニの「イラン 革命」がイラクに「輸出」されることを恐れてサダム・フセインを援助した。イラク戦争のときにイラン と手を組んだクルドをフセインが弾圧するのを黙認した。フセインが大量の化学兵器を使ったことも黙認 した。それなのに今度はアメリカがイラクに侵攻した。ムスリムの人々はかつてのソ連やアメリカが持ち 込んだ武器をとって戦いだした。 むしろアメリカが世界に「テロ」というものを持ち込んだ。テロリストかそうではないか?この二者択 一を世界に持ち込んだのはアメリカだ。そしてなんでもなかった人々をテロリストの側に追いやってい る。「パンドラの箱」を開けたのはアメリカなのだ。 考えてもみよ!9・11の実行犯がはじめからテロリストであったかどうか?けっしてそうではない。あ れが実行されるまでにはたくさんの協力者が介在した。だから、無差別殺戮に走るテロの集団を孤立させ ることが重要なのであってそのためにはムスリムの協力が欠かせないのだ。ブッシュはムスリムの指導者 に頭を下げて協力を請わなければならない。ムスリムのテロを根絶したいのなら、それに反対している多 くのムスリムの指導者の助力を得るべきだ。ところがアメリカのやっている「対テロ戦争」はますます世 界にテロの危険を撒き散らしただけなのだ。
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