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客観的な事実や状況を解釈して、そこに対応策を見出すのは、人間がする仕事である。人間の観点と意志が客観的事実と結合して、事件、流れ、歴史を作る。状況と同じくらい重要なのが、その状況に対する解釈である。解釈は人間の価値観、世界観、人生観を反映している。
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は、開城工団の事態をどのように解釈しているのだろうか。恐らく、北朝鮮政権に弱点を捕まれたと思っているだろう。北朝鮮政権が、数回に渡って韓国人職員を抑留し、その中の一人を長期的に拘束しているのを、頭痛の種だと思うのは当然である。
しかし、一度、考え方を変えてみたらどうだろうか。開城工団が北朝鮮政権の弱点だという視点にである。北朝鮮政権は、開城工団に約4万人を就業させている。彼らは毎月、約60ドルの賃金を貰っているが、北朝鮮政権はこの賃金の相当部分を、押収してきた。金正日政権の巨大なドル箱である。北朝鮮の闇市場で、1ドルは約3,000ウォンであるが、これは労働者の月給とほぼ同額である。ドルを基準にしたら、4万人ではなく、数十万人が就職しているわけである。
金正日政権において開城工団は、金の羊であると同時に、頭痛の種でもある。開城工団を通じて、韓国の優秀な資本主義の風が入って来る。4万人が貰う賃金の分だけ、韓国に依存するようになるのである。
金正日は、去年、開城工団を閉鎖しようとしたが、経済担当だった金英逸(キムヨンイル)政務院総理が反対したという話も聞かれる。
このような状況分析に立脚して、韓国の李明博政府が次のような措置を取ったら、どうだろうか。
「北朝鮮当局に要求する。1週間以内に開城工団に勤務する韓国人たちの安全に関する、明確な対策を立てて欲しい。抑留中の韓国人を釈放して欲しい。もし納得に値する措置が取れないのなら、1週間が経過した翌日から、韓国人労働者の開城工団出入りを禁止する」
このようにして、ボール(決定権)を金正日に渡してしまうのである。金正日は悩むはずである。何種類かの代案を提示しながら、会議を繰り返すだろう。
第一に、韓国の要求を脅迫と受け止めて、拒絶する。そのようになったら、開城工団は半身不随になる。韓国側の損害は些細だが、北朝鮮側は深刻である。
第二に、金正日政権がまず先に、開城工団の閉鎖を通知する。韓国は腐った歯を抜くようなものだが、北朝鮮は主要ドル源を失うことを意味する。
第三に、韓国の要求に屈服して、安全保障の約束を受ける。これは、北朝鮮政権の悪癖を直す第一歩になるだろう。
第四に、金正日政権は韓国の要求に対する報復として、開城工団に勤務する韓国人を抑留する。これは明白な国際法違反なので、韓国だけではなく、国際社会に対する挑戦であり、事実上の戦争犯罪行為である。UN安保理の制裁をもたらすだろう。
李明博政府は、金正日政権と取引しようと考えはならない。力で対決する方法を研究しなければならない。取り引きをしたとしても、強い立場を確保した後にしなければならない。金正日が開城工団で韓国を圧迫したら、韓国も開城工団を武器に北朝鮮を圧迫してはじめて、ゲームになるのである。金正日を悩ませなければ、変化は起きない。
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