|
カール・マルクスの社会主義ユートピアを夢見た北朝鮮は、自らを完全無欠の天国と宣伝した時代があった。当然、売春は資本主義の間違った文化としてタブーの対象だったし、存在すら認めなかった。実際、2001年7月のUN人権社会審議で北朝鮮代表団は、「私たちの社会は売春を徹底的に撤廃したし、過去50年間に渡って売春は存在しなかった」と報告した。
それでは実際に北朝鮮社会には、売春は存在しないのだろうか?北朝鮮内部と関係がある対北朝鮮メディアと北朝鮮を脱出した多くの人々は、北朝鮮政府の説明とは異なり、北朝鮮内部で売春が盛んに行われていると口をそろえて言う。特に1990年代半ばの食糧難に喘いだ「苦難の行軍」時期を経験してから、沢山の北朝鮮女性たちが飢えに打ち勝つために、売春を始めたと確認されている。もちろん北朝鮮当局は売春を徹底的に弾圧しているが、慢性化した経済難は飢えた多くの女性たちを売春市場へと送り出している。
今年2月25日、韓国の対北朝鮮メディア<開かれた北朝鮮放送>は、北朝鮮女性の売春に関する特別企画を報道した。同放送によると、既に売春文化が北朝鮮住民の日常に深く浸透しているとのことだった。内部と接触をしている他の対北朝鮮メディアと北朝鮮を脱出した人々も、北朝鮮に売春文化が広く蔓延していると説明する。
このようになった理由として、北朝鮮の慢性的な経済難が主要原因として挙げられる。1990年代半ば以降、殺人的な食糧難を経験した北朝鮮女性たちは、生きる為に市場に出た。社会主義国家の最大恵沢と言える無償配給が完全にストップした為だった。しかし売る物さえない多くの北朝鮮女性たちは、仕方なく自分の体を売り始めた。そして、このような現象が北朝鮮内部の一つの文化として定着するようになった。2000年代半ば、政府の大々的な取り締まりで一時は影を潜めた売春は、2009年の貨幤改革の失敗以降、経済が急速に悪化したことを受けて、再び急増している。
それでは、北朝鮮の売春はどのように成り立っているのだろうか?.幾つかの形態があるが、最も一般的な形態は、「待機旅館」の営業である。北朝鮮の市場と鉄道の駅の周辺は、いつも人々で賑わっている。そしてその周辺には、遠方から来た商人や旅行客を相手にする安い宿泊施設が存在する。現地ではこれを普通「待機旅館」、あるいは「待機の家」と呼ぶ。<開かれた北朝鮮放送>のリュ・ヒョンス通信部長は、「北朝鮮政府が認めない無許可の宿泊施設と考えたら良い。ここでは売春が暗黙のうちに行われている」と説明した。北朝鮮の「待機旅館」の周辺では、40〜50代の女性の客引きたちが客を集める。
ここでは、女性を買おうとする男性たちと宿引きの間で、売春価格で言い争う姿を簡単に見付けることが出来る。価格は地域と女性の年齢によって違いがあるとのことである。しかし、ドルに換算すると約10ドル水準とのことである。これは、北朝鮮の少領級の将校の月給をドルに換算すると2ドル未満に過ぎないという事実に照らし合わせて見ると、かなりの高額である。普通、売春する女性、客引き、家主などの間で各々5:3:2の割合で分配されると言う。
もっと驚くべきなことは、このような「待機旅館」の売春営業に、10代の女子大生たちが加担しているという事実である。北朝鮮の無償供給教育体系が完全に崩壊したので、大学生たちは教材の購入と寮費を解決するためにお金が必要になった。大多数はこれに耐えられなくて落伍してしまうが、家計は苦しいが学業を続けたい10代の女子大生たちの中には、このような「待機旅館」の売春に跳びこむ場合が多いという。
また、別の対北朝鮮メディア<自由北朝鮮放送>の去年7月の報道によると、北朝鮮の大都市である咸鏡北道清津市にある鉄道駅の周辺にも、売春をするために上京して来た近隣都市の女子大生たちが多数存在するという。同メディアにニュースを伝えた内部通信員は、「他地域から上京して来た女子大生たちの中には、大学で賦課した各種資金と寮生活費を準備するために、売春行為をする場合が多い。これは清津市だけではなく、他の地域も同じ」と証言したとのことである。
「待機旅館」の営業が、宿引きと売春女性、部屋を提供する家主などで組織的に行われるのとは違い、初めから女性一人で売春をするケースもかなり多いとのことである。代表的な例として、北朝鮮の出張員を相手に宿所の前で行う売春を挙げる事が出来る。出張員とは、北朝鮮企業所の労働者の中で、遠方に出張する人を指す。このような出張員を狙って、多くの女性たちが宿所の前を行き来しながら客引きをする。適当な金額で妥協したら、女性たちは自分の家に彼らを連れて行って、売春を行う。この場合、組織的に「待機旅館」を営業するより、売春女性が得られる金が相対的に多くなるとのことである。
もちろん、北朝鮮政府は強力に売春を禁止している。北朝鮮憲法第293条と第294条は売春と性犯罪と不法行為と規定している。もし売春行為が政府に発覚したら、長期間の労働教化型に処されたり、運が悪ければ見せしめとして公開処刑にされたりするとのことである。しかし、既に北朝鮮の売春文化は根深く、到底根絶することができないレベルまで達しているとのことである。
<デイリーNK>の去年7月報道によると、新義州では毎週1回、売春根絶の為の公開裁判をしているが、一部の大型店の場合、政府保安員たちと共生関係が形成されているので、取り締まりが非常に難しいとのことである。
|