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テレビでクリントンと金正日が両側に側近たちを座らせながら、テーブルを間に挟んで、何かを話す場面を見た。金正日が満面に笑いを浮かべながら何かを喋っているようだったが、クリントンは無表情のまま金正日を眺めていた。肯定か否定か、同情か軽蔑か、全く分からない表情だった。しかし私は、クリントンの無表情さから、言葉では表現し難い不思議な感動を受けた。
クリントンが北朝鮮を突然訪問した目的は、北朝鮮に抑留されていた2人の女性記者の釈放のためだった。心の中で金正日を悪く思っていたとしても、2人の女性記者の釈放のためなら、最大限、金正日の機嫌を取るしかない。金正日が何か言って心の中では悪口が言いたくても、表面では笑いながら、共感の信号を送らなければならない。
しかし、クリントンは無表情だった。私がもし金正日だったら、かなり不愉快だっただろう。しかし、金正日は知ってか知らないでか、気持ち良く2人の女性記者を釈放してあげた。それでは、金正日はクリントンの無表情の意味が分からなかったのだろうか?とんでもない!彼は全てを知っていた。実は抑留中の2人の女性記者は、金正日にとっても重荷だった。大きな利用価値があると判断して141日間抑留したが、国際的な非難を受けただけだった。
これまで、日本人、アメリカ人、韓国人に関係なく、手当たり次第に拉致してきた北朝鮮が、今回は北朝鮮と中国の国境地帯で脱北者問題を取材していた際、少しだけ国境を越えた2人の女性記者を逮捕して、政治的に利用しようとした。しかし、2人の女性記者はアメリカ国籍を持っていたが、韓国系と中国系東洋人だった。このようにして、困り果ててしまった金正日は、適当な取り引きで2人の女性記者を解放する名分を捜していた。その名分が正に、クリントンの北朝鮮訪問だった。
北朝鮮は2人の女性記者に、クリントンが北朝鮮へ来たら釈放してあげると提案した。2人の女性記者は北朝鮮の提案をアメリカの家族たちに知らせた。すると2人の女性記者の家族たちが政府に嘆願書を出し、遂にクリントンが北朝鮮を突然訪問することになったのである。金正日はクリントンの北朝鮮訪問を、以前のジミー・カーターの北朝鮮訪問と同格にするという政治的効果を期待していたはずである。金日成に会ったジミー・カーターが、その大きな口を、更に大きく開けて笑った政治的効果をである。
しかし、クリントンは笑わなかった。考えてみたら、これは正にコメディである。個人的には、クリントンが金正日の計略を霧散にしようとしてわざと笑わなかったのではなく、他の理由で笑わなかったのだと思う。私がクリントンの無表情に感動した理由が、そこにある。クリントンの無表情から、私は彼が真剣に世界平和のために彼の残りの生涯を捧げようとしている努力を発見した。
クリントンはどうして笑わなかっただろうか?クリントンは再選を成し遂げた大統領で、アメリカを8年間に渡って統治した。その後も全世界の訪問招請を受けて、各国の政治の現実をその目で直接確認した人である。彼は北朝鮮をよく知っている。金正日がどんな人間なのかもよく知っている。彼が今回、北朝鮮を訪問して、金正日に会って笑わなかったのは、彼を無視したからではなく、何か大きな衝撃を受けたからである。
これは全面的に私の想像であるが、クリントンの鋭敏な魂は、北朝鮮に足を踏み入れた瞬間から、悪魔の顯示と地獄の冷気を体感したのではないだろうか。彼は地獄が死後の世界だと信じていたが、北朝鮮を直接訪問した時、地球の一角に実際に存在する地獄を見たのである。彼の顔は凍りつくしかなかった。これはクリントンほどの高揚された知性と感性を持つ純粋な魂なら感じることができる、衝撃だったことだろう。彼は悪霊に捕らわれた北朝鮮の独裁者が自分に何を語りかけても、彼の良心上、それに答えて、一緒に笑うことが出来なかったのである。彼の無表情は、彼が北朝鮮で見た地獄を意味する。
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