|
” いやー こんちお日柄もよろしいようで
台風も通過してよーござんしたね〜
あっし 勘太郎と申しやす
あっし 諸国をさすらっておりやす しがない渡世ネコでござんすが
いえね お声をかけずに立ち去ろうかと思案いたしておりやしたが
あねごがあんまり気持ち良さそうに寝そべっておりやすもんで
そんないい話が聞けるんならと
ここで出会ったのも何かの縁というもんでござんしょう
ちーと 仁義を切らせていただこうかと思いやしてね・・・
袖すりあうも多生の縁と申しやすでしょう?
まー 猫には袖なんてえもんはありゃしないんですがね
尻尾が触れ合うほども近寄っちゃあいませんが
旦那の庭先で鼻付き合わした仲と思っておくんなせえ
えっ なんですって 鼻突き合わしちゃいねえって!?
お前の臭い鼻先の臭いなんか嗅ぎたくねえ っておっしゃいますかあ?
あねご〜 まだ仁義も切っちゃあいねえうちから
口が悪いのにも程かあるってもんですぜ〜
小耳にはさみましたところ なんですかい
旦那が円高の話をなすってらっしゃるご様子
こりゃ〜 聞き捨てならねえ えらいこっちゃ〜
と 不作法なのは承知で ちょいと話のお仲間に入れてもらおうかと・・・
おー 仲間に入れてくださる?
そりゃあ ありがてえ
いえね おいらみたいな渡世ネコともなりやすとね
世情を知っとかねえと食いぶちにはぐれちまうんでさあ
人さまの顔色をうかがって盗みを働くなんてぇことも
お恥ずかしいことですが ありましてね
景気がいいと人の財布の紐も緩み 気持ちも緩み
ちょっとばっかり失敬したところで
だれも追いかけちゃあ来ません
しかし景気が悪くなりゃあ 旦那〜
ここであったが百年目の親の敵のように
箒片手に追いかけてくるんですぜーーーー
おちおち小魚もくわえて逃げられねえ って按配でしてね
そんな風に人の気持ちを操作していやがるのが
景気ってやつでしてね・・・・
おいらには切実な問題ですぜイ
最近おいらも その景気ってやつのからくりが どーなっていやがるのか
知りてえと思っていたところなんでござんすよ
そう考えながら 楊枝くわえて
鼻歌交じりにぶらついてやしたら
お二人して景気の話をなすってらっしゃるじゃあござんせんか〜
いやー これを縁と呼ばずになんて呼ぶんでしょうね〜
ありがてえ ありがてえ
これもおいらの日頃の行いがいいもんで
おてんとうさんが引き合して下すったに違いねえ〜
あー すまねえ すまねえ 話の腰を折っちまいましたよね
どーぞ どーぞ おいらのことは気にせず
お話合いになってくださいまし
お二人の邪魔になんねえようにきっと静かにしてやすからね
へー 世界の果ての国の経済がどしゃ降りになったんですかい?
へー それが東の果ての日本国を不景気にさせていやがるのですかい?
へー 世の中狭くなったもんですね〜
しかし なんですねえ 貧乏長屋の話と大して違わねえなあ
いえね
昔 ハチベエっていうしみったれた野郎がおりやしてね
奴は大工で良く稼ぐんでやんすが ばくちが好きでね
稼いだ金全部勝負事に費やしちまうんでさあ
まあ 儲かることもたまにはあるんですがね
大概はすっちまうんでさあ
するってえと 親方んところへ行って
女房の具合が悪いから金工面してくれ〜 とか
子供が風邪ひいて医者にかかるから金工面してくれ〜 とかいってね
金を前がりするんでさあ
親方も最初は気の毒に思って金貸してくれたんですがね
いくら気のいい親方でも たんびたんびとあっちゃあ
おりゃおかしいぞ! と思いますでしょう 旦那〜
それでさんざハチの野郎に説教して
ばくちは絶ってしちゃあなんねえ!
って約束入れさせたんでさあ
しかしねえ 肌に染みついちまった 癖ってやつは
なまじっかじゃあ 直りませんぜイ
ハチの野郎しばらくは大人しくしてやがったんですがね
またしても大きな穴開けちまった!
今度はさすがに仏の統領もさじを投げちまった
女房も子供を抱えて内職増やさなくちゃなんねえ
仏の統領が金かしてくんなくなっちまったかtら
こんだあ 悪徳金融の暖簾をくぐり
借金の形に大工道具を売らなくなんねえ
道具がなきゃ大工仕事はできねえ
職を変えなきゃなんねえ
慣れた仕事じゃねえから
腰は痛くなるは 肩は凝るは
憂さ晴らしに 飲めねえ酒がぶ飲みして
酔っぱらって すっ転んで 足の骨折って
しばらく働けねえとさ・・・
まったく 馬鹿につける薬はないっていうけど ホントだねーーー
あー 申し訳ござらん しゃべりすぎました!
|
全体表示
[ リスト ]




