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地球環境戦略研究機関(IGES)主催のシンポジウムに行ってきました。
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「地球温暖化に立ち向かうアジア太平洋の戦略」
http://www.iges.or.jp/jp/news/event/symposium2008/
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IPCC議長パチャウリ氏をはじめ、各研究領域の第一人者が一同に会する大規模なシンポジウムでした。
「日本の気候変動戦略」、「アジアの気候変動戦略」、「国連ESCAPの気候変動戦略」など
各地域の気候変動戦略について全体観を知ることが出来ました。
また国際的な気候変動対策の枠組みの中での森林の扱いについて知ることができ、勉強になりました。
ただパネリストによる積極的な論戦が見られず、各人の研究成果発表会になっていた点が残念でした。
以下、今日のシンポジウムで特に印象に残った事柄を書きます。
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あるセッションの発表後の質疑においてパネラーに対して1つ踏み込んだ質問がありました。それは、
「人口が多すぎることが多くの環境問題の原因の1つ。
人口管理のような事柄は『政策』として提言できないのか」
というコメントです。
「すごいことを聞くな…」とかなり驚いたのですが、同時に、
登壇者がどういう回答をするのか、非常に興味を持ちました。
パネリストの回答の大多数は、
「人口をどうするかという議論は研究者や研究機関の役割を越える。
それに人口を『管理する』というのは倫理的に許容されるものではないから、
そのような政策を提示することは無理だ」
というものでした。
中には語気を強めて
「人間そのものこそが最大の資源だ。それをどう有効に活用するかを考えるべきで、
人口を云々するような事を考えるべきではない。そもそも人口に関する政策というのは
極めてデリケートな問題で、口にすること自体もっと慎重になるべきだ」
と発言されるパネリストもいました。
確かに人口問題は倫理的問題、宗教的問題も絡んできてデリケートな問題だと感じます。
しかし人口爆発が環境問題の起源であることも事実で、
この点をタブー視してしまうことに抵抗がないわけではありません。
ともすると環境問題は、その克服によるコベネフィットばかりが強調されがちですが、
人口問題のように根源的な問題にも目を向ける必要があることを改めて考えさせられました。
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今日のシンポジウムではコーヒーブレイクの時間があり、
何人かの識者の方と交流させて頂く機会にも恵まれました。
その中で貨物輸送のモーダルシフトに関する議論の別の側面を知ることができました。
現在、国内貨物輸送はトラックによる輸送が多くの部分を占めますが、
CO2排出量の観点から鉄道などの大規模輸送システムに
輸送をシフトさせるべきだとの意見が少なからず提示されています。
しかし鉄道サイドでは「対応する余力がない」との意見が大勢を占めているとのこと。
東京や大阪などの大都市圏では過密な旅客輸送ダイヤが構築されており、
貨物輸送に割り当てる分はない、というのが鉄道サイドの見解だというのです。
さらに言うと、
鉄道による貨物輸送の稼働率は現在80%で、まだ20%程度の余力があるらしいのですが、
現状で貨物輸送全体に占める鉄道の割合はわずかに4%。
仮に貨物輸送の稼働率を100%にしたとしても、貨物輸送全体に占める鉄道の割合は5%になるだけ。
「モーダルシフトって意味あるの?」と言われかねない数字ですが、それが現状だというのです。
ブログ主はまったくの不勉強で、
「モーダルシフトは運輸部門でそれなりにウェイトの高い施策」だと勝手に考えていたのですが、
早計過ぎたかもしれません。
ある精密機械メーカの方ともお話する機会を得たのですが、
「ウチでもモーダルシフト(トラックから鉄道や船舶へ)には取り組んでいる。
しかし実際にシフトできたのは全ロジスティクスのうち0.1%だけ。
まあそんなもんだよなぁ、というのが現場の感想」
との事でした。
モーダルシフトに関する鉄道サイドの立場、実際にロジスティクスを担う担当者の感想という、
非常に貴重なお話を聞くことができ、モーダルシフトに対する考え方を広げることができました。
そういえば平成13年に策定された「新総合物流大綱」ではモーダルシフトに関して
「モーダルシフト化率(500km以上の長距離雑貨輸送における鉄道・内航海運分担率)を
平成22年までに50%超を達成すること」と定量的な目標が明記されていたのですが、
(コチラを参照 > http://www.mlit.go.jp/tetudo/kamotu/08_04.html)
平成17年に再度策定された「総合物流施策大綱(2005-2009)」では
モーダルシフトに関する記述は残ったものの、数値目標がなくなって定性的な記述があるのみです。
(コチラを参照 > http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/15/151227_.html)
鉄道輸送のポテンシャルをよくよく考えると無理だということが分かったということなのでしょうか。
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今日のシンポジウムでは識者による発表(十数件)もさることながら、
人口問題というデリケートな問題に対する議論を聞けたこと、
モーダルシフトに関する多様な見解を聞けたこと、
によって自分の考え方を見直す良い機会になりました。
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シンポジウムにおいてIGESの研究成果や最近のトピックをとりまとめたIGES白書も配布されていました。
研究プロジェクトに関して包括的にまとめてあり、温暖化周りのトレンドを押えるには格好の資料です。
時間をかけて、よく読み込みたいと思います。
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