|
『悪魔の系譜』ラッセル
原題は『闇の王子 歴史における根源悪と神の力』。五巻本の最終巻であり、前四巻の集約版となっている。コンパクトにまとめられた『悪魔の文化史』ミノア(文庫クセジュ)よりさらに詳しく西欧悪魔史を知りたい人におすすめ。
意識に直接作用する超自然の人格的言語的存在を古代人が「神」と呼ばざるをえなかったのは、その作用が意識をもつ人間にとって不可避のものだという関係性の自覚であり、この世の不幸を神による試練ないし神としての善の欠如、人間自身の不信仰として理由付けたいからではなかった。しかし、それが完全にはできないとすれば、超自然の存在を「悪魔」と呼ばざるを得ない。神と悪魔の前後関係が逆転してもその内実に変わりはない。「悪魔」という当初有効だった解釈は中世異端審問、魔女狩りという大規模な組織的粛清に到り救いようのない泥濘に落ち込んだ。やがて革命によって、それを打ち破る近代社会が到来する。権力が世俗化し唯物論的幸福が、神=悪魔の二元論を打破するかたちで追求されるようになる。 これが西欧悪魔史の大筋の流れだが、しかし、悪魔とは、神とはいったい何だったのか?博学な著者にも目に見える、万人の目の前に出せる答えはあるわけではないだろう。ただ、本書で跡づけられた一貫した悪魔の表現史は、この存在を存在として忘れてはならない、この問題がはっきりとは表現されなくなった現代にもいまだ深刻な問題として解決していないことを訴えようとしているのではないか。 |
全体表示
[ リスト ]


