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午後9時23分。
職場で“落し物の携帯電話”を拾った。 それなりに人が出入りする場所なので、誰が落としていったのかはわからない。 今流行りのスマホではなく、白色の折りたたみ式携帯電話って状況から読み解くと、 30代以降と推測するのが自然か?いや、それは危険だ。 現在、日本の未解決事件の殆どが警察の初動捜査のマズさにあるのだ。思い込みは良くない。 「大丈夫、すぐ引き返してくるだろう」 そう気を取り直し、仕事に励むがイタズラに時間は過ぎていった。 午後、10時。 相変わらず「携帯、落としてませんでしたか?」という言葉は聞いていない。 この際、着信履歴の1番上の番号に電話してやろうかとも思ったが、冷静になれ、俺。もしかして、 この携帯の持ち主、正夫{仮名 )が長年隠れて浮気していたのが浮気相手、貴子(仮名)の旦那、義彦(仮名)にバレたのが昨日だとしたら、、着信履歴の1番上の人は危険だ。 わざわざ義彦に怒声をあげられる筋合いもない。 「気にしない、放っておけばいい」と、静岡県産茶葉100%使用の緑茶のペットボトルを口にした。 午後、10時32分。 その存在を忘れかけていた頃、白い携帯電話は踊った。 僕は驚いて言葉が出なかった。 着信音が“草競馬”だったのである。 アジャ・コングの本名が宍戸江利花だとわかった時の驚きに似ていた。 こ、こいつはワナだ。まだ物心つく前から“ミスターシービー頑張れ”と叫んでいた僕への挑戦状だ、額縁の裏の金庫に、隠したコルトを取り出す、俺の手が震えてるのは、何も怖いわけじゃないさ、と小声で唄うが、草競馬は鳴りやまない、あっ!そうだ、、京都牝馬Sでアスカトップレディの複勝を・・ぶつぶつ・ごにょごにょ・・ふがふふ・・・ 「はい、もしもし。はい、はい、携帯電話ですよね?お預かりしておりますよ。はい、お待ちしております」 他の従業員がフツーに電話に出て対応した。 10分後にフツーのおじさんが取りに来た。 「どうも、えへっ(笑)」と僕に会釈をして帰っていった。 もうちょっと運命に翻弄されてもいいんじゃないか。と思った。 ちえっ。という捨てゼリフが宙に舞った。 |

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