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Yahooブログにお題として「バレンタインデーに一言物申す」というのがあったので、私も一つ書いてみようと思つた。
忘れもしない小学3年生の放課後、同じクラスのYさんから話があるとの事で廊下へ。 2月12日だった。 廊下へ出た僕の前には先程のYさんが居て、周りを気にしながら小声で耳元でこう言った。 「明後日の日曜日、ヒマ?」 「べ、べつに、ヒマですけどぉ」 「そっ。じゃあ朝行くからチョコ持って」 「お、おう」とは言ったモノの内心あわあわして「なに?これ、ドッキリ?気があるとか?そういう感じ?えー!?うそー!?どうしよー!!好きな順位としては5位だぞ、Yなんてさーー!!」と踊り場で心踊る僕を横目にYさんは、じゃ、よろしくね!と言って颯爽と走り去っていった。 それからその日は、ずっと宙に浮いた状態で、夕方、漕いでいたペダルの軽さは、月へ帰るE.Tと同じ音色を奏でていたんじゃないかなと、布団でまぶたを閉じた時に、そう感じた。 2月13日 この日は土曜日で、授業は昼まで、Yさんはいつもと変わらない様子で、友達と楽しそうに笑い、ちえっ、気にしてるのはこっちサイドだけだな。と鉛筆をころころ転がしたり、前の席にいた恒川くんの頭に、気づかれないように、消しゴムのカスをたくさん乗せたりしていた。 つまらない先生の授業は、右から左へ、消しゴムのカスは、机から、頭へ、時間を無駄に使う名人か、おれは。と、最後は消しゴムごと頭に乗せてやった。 唐突に頭に消しゴムを乗せられた恒川くんは「え?なに?」と鳩が鉄砲くらった顔をして振り向いてきたけど、僕は「いや、すまん、なんか乗せたくて」と笑っておいた。恒川くんも笑ってた。カスだらけだとも知らずに、バカめ。 帰りの会が終わり、ランドセルを背負い、「じゃあねー」が飛び交う中、Yさんが近づいてきて「10時に行くから、待っててね」と僕に言った。正座して待ってます。と誓った。 なかなか寝付けれず、ウトウトした頃に朝。 2月14日、朝9時30分。 スポーツ刈りでのオシャレは限られている。前髪をあげるか否か、でしかない。大抵の男子はお母さんが使うケープみたいなスプレーで“ガッ”とあげるのだ。90度でいいではなくて、90度がいいのだ。 トラサルディーのトレーナーを着て、リーバイスのGパンを履いた。子供だってオシャレだ。 鏡を見て「今日のおれは素敵だ」などと、あっちからも、こっちからも、自分の顔を確認していたら、「ピンポーン」とそれはもう突然に、インターホンが鳴った。 ガチャリと扉を開け、顔を少しだけのぞかせた。 Yさんがそこにはいた。 「お、おはよう」と僕は言う、Yさんも「おはよ」と言った。 Yさんの手にあった赤と黒のチェックの紙袋に目がいったと同時、その紙袋が僕の前にぐいっと寄ってきた。 「はい、チョコレート。どーぞ」 「あ、ありがとう。」 照れ臭いし、恥ずかしいし、気の利いた言葉を考えてはみたものの頭の中はごちゃ混ぜにしたルービックキューブみたいになってて、心で泣いた。 その間にYさんはまたもや「じゃ、またねー」と言って颯爽と自転車で走り去ってしまい、残されたシャンプーの香りと、チョコレートと僕は、数秒、ボーッと何もない道路を眺めていた。 家に入り、焦らす僕と、落ち着こうとする僕で、部屋の机に置かれた、あの紙袋にそっと手をやった。 綺麗に包装されたチョコレートと、上手に折りたたまれた手紙があった。 ドキドキはピークだ。 今世紀最大のピークだ。 ま、、まずは、、そうだ。チョコレートだ! 手、手作りの、か、可能性も、 とニタニタする僕の前に出てきやがったのは、 チロルチョコの10個詰めだった。 OK、OK。なるほど、そういう計算だ。チョコと手紙なら、普通はまずチョコだ。好きなものを最後にとっておくのを見抜いてとのことだ。ふっ、策士め。 と、四の五の言いながら、ついに手紙に手を掛けた。 女子はナゼこんなに複雑に手紙を折るのだ!といった怒りも湧かない。 ドキドキはピークだ。 今世紀最大の2度目のピークだ。 手紙を広げる。 そこにはたった一行の言葉。 「全然、好きじゃないけど」 やんのか、こら。と思つて、窓の外に目をやつた。 チラチラと消しゴムのカスのような雪が降つていた。 「積もればいいのに」とボソっと言って、バタンと布団に倒れこんだ。 口にいれたチロルチョコが、甘くて、ちょっぴり苦かった。 おわり。です。 |

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