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「私はトマトが嫌いなのよ」と、出来たてのパスタを頬張りながら彼女は言った。
「それは矛盾だよ」すかさず僕も反論する。 「なんでよ」彼女は不機嫌そうに眉間にシワを寄せた。 だって、今きみが食べているのがトマトソースのパスタじゃないか。 「トマトソースは、トマトじゃないの」 そういうものかと僕は首をかしげる。 何気なく彼女がテレビの電源をいれた。 お昼の情報番組が流れている。 フォークに絡みついたパスタを口に入れようとした彼女は、 口に入れる直前に手を止めて、またもや不機嫌そうに眉間にシワを寄せた。 僕も思わずテレビを見る。 スタイルのよい女性アナウンサーが「トマトは美容に1番いいですよ!皆さん、是非!」と素敵な笑顔で僕らに言った。 「ほら!言ってんじゃん!トマトはお肌にいいんだぞ!」と僕は言う。偶然は面白い。 彼女は僕を無視するように、おいしそうにパスタを食べている。 「聞いてるの?」と僕は言う。 「聞いてない」と彼女は言う。 「お肌・に・いい・ん・だよ!」一言ずつ丁寧に僕は言う。 うるさいなぁと合図するように、ジロリと睨まれ、 そのついでにテレビの電源を消して、僕に言った。 「トマトソースは、トマトなのよ」 と言い、 「早く食べて、冷めちゃうよ」 とも言った。 僕の目の前に、美味しそうなカルボナーラが、湯気を立てて待っていた。 「私はトマトも、トマトソースも嫌いなのよ」 口を尖らせるようにして、僕は彼女の真似をする。 時計を見る。 短針と長針が重なりあっていた。 おわり。 暇つぶしに、 ベリー・ベリー・ショート・ストーリーでした。 何かを創ったときに、いただける反応が僕は好き。 それが「全然、おもしろくない」という言葉でも。感謝。 ありがとうございました。 |
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2012年02月21日
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