ICAN(www.ican.or.jp) まにらブログ

人々の「ために」ではなく、人々と「ともに」。 人々と「ともに」悩み、「ともに」成長していく開発NGO、アイキャンのまにら事務所

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ゆきよ@マニラ、でも今は広島。

 昨年、里子のひとりが引越しして、ICANの資源の限界を超える遠い場所に行ってしまった。やむなく、里子リストから外すことになり、その子への教育支援はストップされた。

 高校2年生になっていたその里子は、年のわりには大人びた少女で、去年の時点では、田舎に暮らす両親とは離れ、おばの家に同居させてもらいながら、町の学校に通っていた。しかし、おばがその子の素行に文句を言うようになり、田舎の両親も目の届くところでその子を育てる必要性を痛切に感じて、引き取ることにしたのだ。その子は、学校も休んで仲間と出歩くこともあり、母親は、このまま放っておくと、妊娠さえしてしまうのではないかと危惧していたという。

 里子たちの中には、親戚のもとで暮らしながら通学している子も少なからずいる。彼らは親と一緒でなくても、まじめに勉強に励んでいる。それなのに、その子には何が起こったのか。

 現地のスタッフの表現を使うと、一昨年、その子は一晩のうちに「百万長者」になったのだという。その子の里親である「支援者」が、現地にやってきてその子に「おこづかい」を渡したらしい。その額面は日本人にとっては、決して大金ではないだろうが、フィリピンの10代前半の子どもが手にすると、それは「百万」になった。その子は誇らしそうに、現地スタッフに銀行通帳を見せびらかしたという。携帯電話もその日本人にもらった。だがその「おこづかい」は、数ヶ月たたないうちに、あっという間に消えた。その少女の遊び金になったらしい。彼女のお金が目当てのよくない仲間ができた。学校も休んで遊び歩くようになった。お金が底をついたときには、嘘をついて人からお金を借りるようになっていた。

 その子の変化の理由が、100%その日本人のせいだったとは思っていない。その日本人は素朴にその子をいつくしんで、何かできることをしたかったのだろう。でも、その温かい気持ちが、相手をだめにすることもある。善意の「おこづかい」が少女の価値観を壊してしまった事実は否めない。結果的に、彼女の生活、人生そのものを、大きく狂わせてしまった。

 支援者と被支援者が出会うとき、そこには、経済的格差や文化・価値観の違いが歴然と存在する。もちろん格差や違いを超えた気持ちの通い合いには普遍的なものもあって、だからこそ文化を超えた交流は素晴らしいのだが、私たちは、格差や違いを甘くみてはならない。構造的「暴力」と呼ばれるほど、現在の世界の経済格差は大きい。暴力をふるう側にいる私たちが、暴力をふるわれる側にいる人たちに接する時、相手の状況を熟知することもなく、また自らを厳しく省みることがなければ、善意が簡単に暴力にかわりうる。現地のことは現地の者が一番よく知っている。そのことを忘れて自分の価値観の中だけで考えた方法で、現地の状況を「助けてあげよう」とするとき、多くの場合、それはただの傲慢か自己満足にすぎない。

 だから、ICANでは支援者が個人的に事業地を訪問することを基本的に認めていない。スタディツアーや研修の適切な導きのもとで、支援者は事業地を訪問することができる。この方針のために、「ICANは人が人と会いたいと思うその気持ちを尊重しないのか」と言われて、悲しい思いをしたこともある。この人なら受け入れても構わないのではないかと思い、揺れることもある。しかし支援者ひとりひとりの個人対応ができる団体としての体力があるわけでもない。「南」の国に入り込んで事業をしている「北」の国の組織として、私たちは傲慢に陥らず、現地を守る責任を果たすために、この方針を掲げているのである。

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今週末に別の団体系のフィリピンの里子に会う予定だったので凄く勉強になりました。勿論現金渡すつもりなんてさらさら無かったけど。。。お土産すら吟味して選ばなければなりませんね。

2006/4/23(日) 午前 7:41 [ moy*yu*i ] 返信する

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まさに私が言いたかったことを、わかりやすく書いてくれました。こういう生の声や実情を伝えるのも私たちの役目ですね。うちのスタッフにも紹介しようと思います。ゆきよさん、ありがとう。 削除

2006/4/23(日) 午前 10:34 [ さな ] 返信する

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いつも、現場の様子をリアルに伝えているこのブログを気に入っています。今回の記事は、魚を与えるよりも、つり方を教えなさいっていう昔からの教えを、地でいくような記事で、とても考えさせられました。これからも頑張ってください。ICANの意思をこうして発信し続ける事は、活動報告という側面以上に、ICANが目指すところを支援者に正確に伝える効力があると思います。

2006/4/23(日) 午後 10:50 [ むる ] 返信する

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いろいろな人とたくさん話して、このことの重大さが 分かり始めました。今まで、私は現地のことを軽く考えていました。 今まで、書いてきたことがたくさんの人達に迷惑をかけてきた ことを痛感します。 いろいろな人達にその点についてお詫びします。 今後、ICANで活動するときはそのことを 頭に叩き込んで活動したいと思います。 ゆきよさん たくさんの忠告、ありがとうございます。 削除

2006/4/23(日) 午後 11:14 [ かずひろ ] 返信する

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