ICAN(www.ican.or.jp) まにらブログ

人々の「ために」ではなく、人々と「ともに」。 人々と「ともに」悩み、「ともに」成長していく開発NGO、アイキャンのまにら事務所

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絶望的な関係

ゆきよ@まにら。

海外の人々と触れ合うツアーやワークキャンプは、私が学生の頃(十うん年前)よりずっと増えているようだ。とくにいわゆる「途上国」行きのものが多い。ICANのツアー・研修もそのひとつだ。参加者たちは、「現地」の人びとの温かいもてなしに触れ、子ども達のはじける笑顔に触れ、厳しい環境の中で生きるいのちのたくましさに感動する。

人々は言葉の障害がありながらも、気持ちを伝え合い、やさしさを分かち合うことができる。国境、文化、言葉を越えどんなに環境が違っても、人と人が心を通わせることのできる事実は、確かに素晴らしいと思う。

でも、日本人が飛行機に乗ってフィリピンにやってきて、その社会の最底辺で生きる人たちと出会い、関係を作るとき、そこに対等な友情は簡単に成立するだろうか。

大学生だったときインドで会った路上の子どもにお金を無心され、当惑したことをよく覚えている。少しばかりアルバイトをして貯めた「円」で海外旅行ができるいい身分の私と、路上で裸足で生きるために物乞いする子どもとの間にあるこの気の遠くなりそうな格差は何か。

一般的にフィリピン人が日本に来ようとしても、飛行機代を用意するのも大変だが、第一ビザを取得することが簡単にできない。ビザなしでお金さえあれば自由に各国に旅行できる日本人とは大違いだ。

ごみ山で毎日せっせと働く人々。私がバイト先でせっせと働いたのよりも、比べるのも申し訳ないほど、もっと切実でもっと悪環境でもっときつい労働だ。それでも毎日食べるのに精一杯の生活。その理由を、低学歴とか、高い失業率とか、フィリピンの腐敗政治とか、間違った経済政策とかなんとかに求める前に、現実に、地球上には人類が作り出した犯罪的な格差が存在している。その事実が私たちの目の前には横たわっていて、私もその中の当事者だ。この途方もない格差の「上部」にいる私たちは、「下部」にいる人たちの言葉をどれだけ理解できるだろうか。どれだけ気持ちを汲み取れるだろうか。そして私たちの言葉は、どのように彼らに伝わるのか。私たちと彼らの間には、絶望的な断絶がある。「フィリピンで見た現実を日本で伝えよう。」でも、果たして私たちはどれだけ彼らの忠実な代弁者となれるのか。絶対に代弁はできない。私たちが見ているものは、あくまで、私たちの立場で見た現実でしかない。

スタディツアーの数日間で実現できる、日本人参加者と現地の人々とのお互いの立場を超えた心のふれあいは、大きな喜びである。それははたから見ていても時に心が震えるほど感動的でさえある。しかしそこにどんな喜びがあっても、両者の間に横たわる絶望的な格差は全く縮まることなく存在する。ある意味で、その格差ゆえに両者は出会えたともいえるのだから。

スタディツアー参加者だけでなく、NGO日本人スタッフである私と、事業地の住民の人々との関係も同じである。住民と対等な立場で対話をすると言うのは簡単だが、それは本当の意味で実現可能なのか。お手伝いさんを雇いながらNGOで働く自己矛盾を抱えながら、私はどれだけ事業地の人々の現実に近づけるのか。

「すべての異性愛は一度絶望すべきである」と言ったフェミニストがいたが、そう、私たちは一度絶望すること、そこから始めなければならないのだと思う。温かい「友情」からコミットメントははじまる。でも、それだけでは何も変らない。本当に友情を交わしたいのならば、絶望的な関係にあることを見据えながら、私たちは協働しなければならない。絶望してあきらめてはもっと何も変らない。心を交わした彼らと私の間の悲しい暴力的な格差をなんとかするために、私も彼らももっと力をつけなければならないのだと思う。

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私もスタディーツアーに参加しましたし、現地の人のことを考えることが多々あります。スタディーツアーでは現地の人たちとの触れ合いがありましたが、何も分かっていないと思います。この文章を読んでみて、自分は本当にぜいたくな生活を送っていると感じます。とにかく、僕は今、目の前のことを精一杯頑張る。それが、人のためになるのかな。 削除

2006/8/21(月) 午後 11:26 [ かずひろ ] 返信する

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途上国では性能のいい家電や便利な加工食品などが先進国ほど出回っておらず、家事労働者の助けを借りずにフルタイムの仕事を続けるのは厳しいのも確かです。なぜ先進国で「家事労働者のいない生活」が成り立つのかを考えてみると、人権感覚や就業率の高さといったプラス面の一方、経済のグローバル化によって労働を途上国の人々に肩代わりさせているから(例えば途上国の工場で加工した食品を安く輸入できる)、という構造もあるのでは。 削除

2006/8/24(木) 午後 2:40 [ リサ ] 返信する

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【続き】結局は、そうした労働に「家事労働者」というリアルな形で接するのか、見えないようにさせられているのか、の違いなのかもしれません。やっぱりどこに住んでも格差はついてまわるのですが、求められるのは「現実を見据えながらも、それを変える希望を持ち続ける強さ」…なのでしょうか。 削除

2006/8/24(木) 午後 2:41 [ リサ ] 返信する

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