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君が住む街角を僕は歩いている。 誰もが雨を滴らせて歩いていた。 どこもかしこも水浸しだった。 道路を挟んだ向こう側に、雨の中に捨てられた子猫を抱いている少女たちが見えた。 みんなで囲んで、子猫を誰が持って帰るかを話し合っている様子だった。 少女たちは、しきりに「かわいそう」と言って、子猫の頭を撫でている。 だけど、僕の目には子猫がどうしても その少女たちの手を逃れようとしているみたいに見えてならなかった。 誰も誰一人として、誰かを背負って生きるなんてできないのだから。 少女に抱えられた子猫は、ずぶ濡れになった頭を激しく振って水を飛ばした。 びっくりした少女の手から放り投げられた子猫は、人混みの中を母猫を探すように泣きながら歩いてゆく。 子猫を追いかける少女たちは、何だか残酷に見えた。 そして、それを黙って見ている自分が一番汚く思えた。 張り詰めた心を、ほんの少しだけ許してしまったように泣いてしまうことが唯一の幸せのように感じるのが何だかおかしくて、溢れそうになる涙をこらえながら、誰とも話したくないと思った。 この雨のように、ただ、黙ってこんな気持ちの雨を降らしたいって思った。 そして、誰もが優しい雨の中を歩いてゆけたら。 そう思ったんだ。 |
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