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東京の片隅で
鏡の中の女は 朝食の支度にかかる スカートのファスナーをあげるように まぶたをあげて 目はフライパンへ それから口へ それが毎朝の アルキメデスの
或る決めです
だけど 大蟻食いの 食欲色欲 梨の目つぶり 鏡は変 鏡破片だ 縦横斜めに罅われぬ 頭狂人 眼まぜ ごちゃまぜ 眼くじらのせり売り 被ってないのに 頭巾とあたま外体 |
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……誰だ 美沙?
苦の音咲くの 血と弾薬
いとましい憤死
消え行ったの! 那覇の名
昨日の市
男子はメガトンゴジラ
ラジコンと亀は
死んだ詩の雨の木
菜の花!
野立つ胃液
神父 縊死惑い
悔やんだ
土地の草 遠のく?
さみだれだ……
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うみ底のくらい場所で
放恣に伸ばす裸身は
子を産み
ただ死んでゆくはずだった
その摂理を平然と壊す男たちによって
いま烏賊は囚われ
甲板の上にある
しゅるしゅると
北風のように滑走する体
ぎらと光り
しずかに曇ってゆく眼の
悲哀と諦観
そして
まぶたを下ろすしゅんかん黒い言葉を吐き
しなやかな姿態を乗せた海流の安逸を語る
自分たちはお前たちより
ふるいふかい白亜紀からの記憶をもっていると
きゃしゃな脚をくねらせ墨書する
烏賊はやがて
純白の甲殻を形見とし
潔く供される
烏賊
その誇り高い清らかさが
その優美な柔軟性が
品位を見失った
万人に愛されるのだ
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