安積道也 〜教会音楽家のひとりごと〜

ドイツで教会音楽家として働いていましたが、2008年に帰国しました。福岡で活動中です。

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コンサート終了 2




オルガンコンサートの前半を終え、休憩時間、控室で息を整える。すでに汗だく。しかし頭は次のバッハのホ短調にむかい、「結石」の恐怖などすっかり忘れていました。(受難の色の濃いホ短調演奏中に「石」が来たら、まさに受難よね!と、演奏会前には、いろいろ脅されていた・・・・「尿管結石1&2」参照)

 
 

後半は、バッハの超大作、前奏曲とフーガ ホ単調で始まります。

 
10年も前からずっと弾きたいと思っていた思い出の作品でもあり、オルガニストの登竜門でもあるこの作品。遂に対峙する時が来ました。今回のプログラムの要でもあり、このホ短調から前後に伸ばす形でプログラムを組んでいるので、ここでしくじる訳にはいきません。
トランペット管の調子が悪く、寸前で使用を断念し、バランスを異にしたままでの弾き始めには、さすがに息をのみましたが、始まってしまえば、後は流れに乗って、先に進むのみ。頭のなかのストーリーと作品の響きが交差して、めくるめく世界を行き来しながら、気がつくと、フーガまで終わっていました。

 途中で挿入したアンダンテも、大坪さんの見事な気の配り方と身のこなしで、まったくこちらのペースを乱すことなく、続けて演奏できました。あの難しい作品を、挟み込みとは思えないほどすんなりと、音楽的にはめてこんで下さったのはさすがです。

 
《バビロン川のほとりにて》、というバッハのコラール前奏曲は、レジストレーションに最も苦労したものでした。あれでよかったのか今でも分かりません。ただ、柔らかく、トリルのスピードに注意しながら歌うのみ。


・・・ちなみに、先日、この作品名を《ルビコン川のほとりにて・・・》と言い間違えた方がいらっしゃり・・・つぼにはまった・・・・


 
最後は「ふるさと」の旋律による即興演奏。
これは受けました。

バッハとブクステフーデの違いもはっきり分かってもらえたらしく、

 

「同じバロックでも違う感じになることもあるんですね」

 

と演奏家の責任を根本から問うような感想もいただきました。

 

またタンゴ風味では、西南の「クラシック系コンサート」で初めて聴衆をどよっと笑わせることに成功!! 赤とんぼ風味は、ふるさとと赤とんぼのメロディーを同時に演奏するものですが、これで涙を誘われた方が多かったようです。そして、フィナーレは、(アンケートによると)花火やパチンコ玉がいっぱい(?)という盛り上がりであったようで、私も、オルガンも、限界まで息を使って、鳴らしました。結果、オルガンのコンサートで初めて「ブラボー!」を頂き、気持ちよくアンコールを演奏できました。

 
 

なぜ、これほどまでに「ふるさと」の即興がうけたのか、と考えてみました。
きっと皆さんが、そのメロディーと歌詞をよくよく知っていることと、それぞれが人生の様々なシーンで「ふるさと」を聴いたり歌ったりしてきたからでしょう。だから、どんなに即興で変奏されていてもそのメロディーを追うこともできるし、そのギャップを楽しむこともできる。また、過去に歌った時のいろいろな思い出が喚起されて、そこに、ダイレクトに音楽の力が流れ込むのだと思います。だから感情と感覚に直接届いたのだと思います。

 
バッハのコラール前奏曲なども元になる賛美歌があります。
どの賛美歌も有名なものばかりです。バロック期の当時の町の人にとって、それらの賛美歌は、日曜日を始め、冠婚葬祭、人生の節々に歌い、歌われてきたものでした。みんなが同じように知っていて、誰もが声を合わせて歌うことが出来た、こういう共有文化財だったのです。


今日では、ある意味難解で勉強しなければ分からないバッハのカンタータや、オルガン作品も、当時の「賛美歌」という文化を共有する人たちにとっては、勉強する必要がないものだったのではないでしょうか。ちょうど、「ふるさと」をよく知る皆さんが、僕の即興を聴いたときのように、「さあ、次はどうしてくれるのかな?」ぐらいの気持ちで楽しんでいたのではないでしょうか。

バッハのカンタータやオルガン楽曲の詰め方、盛り上げ方は信じられないほどに緻密で大胆です。同じ時代にバッハの演奏を聴いていた人は、まさに音楽に癒やされ、音楽に泣き、音楽で笑い、音楽とともに人生を終えていったのでしょう。

 

改めて、当時の教会音楽の力強さを感じ、まさに音楽が生活に即してあったことを思ったのでありました。「共有文化財」の上に根差したバッハ音楽が、文化背景を異にした日本で、今後どのように受け入れられていくのか、私には興味があります。しかし、熱烈なバッハファンがいるところをみると、きっと突破口があるのでなないかと思います。

 
 
 

さて、コンサートも終了し、募金も20万円(!)ほど集まり(ありがとうございました。東北の震災支援のために学院が責任をもって寄付いたします)、

ポツリポツリと感想がもれきこえてきます。

 

伊万里の修道院長からは、

 

「神様のお守りもあり、伊万里行きのバスが3分遅れてくれたおかげで、全員乗ることが出来ました」との感謝の言葉。きっとバスの車中も盛り上がったのでしょう。

 

 コンサートのあと、興奮さめやらず、一緒に聴きに行った人に、夕食でフランス料理のフルコースをおごってしまった人。

 

 帰りの地下鉄で、だれともなく、ふるさとの鼻歌が聞こえた、とか。 

 
 

 

当の本人は、最後の拍手を受けながら、感無量のなか、実は焦っていました。

 
 

思った以上にうけてしまった。

 

来年は、何をしようかなぁ。

ハードルがあがってしまった・・・

 

閉じる コメント(4)

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本当に大盛況でした。
オルガンコンサートに大勢の方がいらしててびっくり!
また、その中に子供さんや赤ちゃんを連れている方がいたのに、全然気にならなくてびっくり!
ひとりふたり、途中で出て行かれる姿を見て初めて知ったくらいです。

“恋するうぐいす”のリコーダーが、どうして二階のあの場所なんだろうと不思議に思っていました。やはり訳があったのですね。

来年も期待しております!
楽しみです! 削除

2012/1/28(土) 午後 4:34 [ suzu ] 返信する

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あー、いいな〜。行かれなかったのにコンサート時間は頭の中オルガン音が鳴りっぱなし。この文面読んでまた鳴だした!来年は耳と身体中で響くといいな〜 削除

2012/1/29(日) 午後 1:20 [ さわ ] 返信する

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suzuさま>
ありがとうございます。来年も頑張ります。
またいろいろプログラムを工夫したいと思います。

2012/1/29(日) 午後 3:29 [ azuminus ] 返信する

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さわさま>
私も、しばらく頭のなかオルガンの音が鳴りっぱなしでした。
そろそろ消えてほしい・・
また頑張ります。

2012/1/29(日) 午後 3:30 [ azuminus ] 返信する

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