安積道也 〜教会音楽家のひとりごと〜

ドイツで教会音楽家として働いていましたが、2008年に帰国しました。福岡で活動中です。

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なぜか空港の職員は、「音叉(おんさ)」に興味があるようだ。
行きも帰りも、手荷物検査で引っ掛かった。
 
きっとなにか怪しい「電波」でも出すものと思われたのかもしれない。
「ら」、しか出ないのに・・・
面白いので、今後も必ず筆箱に入れていこう。
 
そう、ドイツに行ってきました。
今回は、中11日で、なんと30件もの予定が入ってしまった。別個にゆっくり会った知人・友人・先生方は、総勢48人。そのほか、ドイツフランス合唱団(25人)、ギュンタースタール聖歌隊(20人)そして、ミサの後教会のみなさんと延々1時間にわたるお話・握手・抱擁タイムが入り、合計100人近くの人と会ってきました。
 
11日間全力疾走し、帰りの飛行機で体力回復を図ったのですが、機内で遊びまわっていた子どもについちょっかいを出して遊んであげたのが運のつきで、一晩中(?)つきまとわれ、殆ど眠れず。お昼の14時に福岡の自宅について、16時には、西南学院で仕事を開始し、自宅ではいまだにトランクが口を開けたままです。
 
 
この強行軍は、着いたフランクフルト空港で、すでに始まりました。
たまたまその日の夜の便で帰る日本の友達とおちあい、空港で駆けつけ一杯。ビールで乾杯。ドイツの現状や日本の原発云々についての話になると思いきや、ひたすら「婚活」の話に盛り上がり、お互いの傷をなめあって分かれ、幸先良いのか悪いのか・・・・
 
そのまま酔っぱらってワイマールまでひと眠り。ワイマールの劇場でオペラ合唱団副指揮者をしている友人ファビアンにあってきました。彼は、シュトゥットガルトで教会音楽家Aをおさめ、その後ワイマールで指揮科を修了し、そのまま地元の劇場で働いている非常に有能な男です。それこそ婚活はさておき、旧東ドイツを引きずるワイマールの現状をいろいろ聞いてきました。かつての文化の中心都市ではありますが、旧東ドイツの時期を経て、今に至ったその名残が、音楽文化の現状にどのように表れているか、うかがい知ることができました。
 


オペラ合唱団のリハーサル室。窓が無いのが不満だそうだ。
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彼のところに二泊して、ひとしきり観光し、仕事場を見せてもらい、二人で電車に揺られること30分。ナウンブルクへ。ナウンブルクには、バロック期に完成し、J.S.バッハが鑑定をした大オルガンが鎮座する聖ヴェンツェル教会があります。オルガンは、完成すると著名なオルガニストによって、その出来を鑑定してもらいます。バッハはオルガン即興家ならびに鑑定家としても当時有名でした。ヒルデブラントの大オルガンは、バッハが3日もかけて鑑定し、太鼓判を押した名器です。時代ごとの度重なる改善(改悪ともいう)で原型を失いつつあった楽器でしたが、最近オイレというオルガン工房が見事に修復を完成(すなわち、当時の状態を可能な限り復元)しました。
その由緒正しいオルガニストのポジションを、シュトゥットガルトの学友ダヴィットが3年前に勝ち取ったとのこと。かれは、今は母校シュトゥットガルトで即興の先生としても活躍しているらしく、そのうち間違いなくドイツを代表するオルガニストの一人になるでしょう。


聖ヴェンツェル教会のポジションは、春から秋にかけては多忙を極め、毎週二つ以上のコンサートがあったり、数え切れないほどのオルガン見学グループに演奏を聞かせたりと、教会も本人もまったく余裕がありません。しかし、冬季は、まったく暖房の効かない建築のゆえ、教会は一切締め切りだそうで、比較的ゆっくり時間を取って、われわれのためだけに鍵をあけてくれました。

バッハが触れたその鍵盤は黒く鈍く光り、ペタペタ撫でてているとうまくなった気分に(勝手に錯覚)。そして、音を鳴らしてみて、その迫力と美しさに圧倒されました。その後ダヴィッドは即興を含め3曲も演奏をしてくれて、われわれを歓迎してくれました。久しぶりに体が響きに包まれ、魂が響きに揺さぶられ、涙が流れ落ちる体験をしました。魂が響きに飢えていたことを思い出しました。
 


ヒルデブラントのオルガン。
イメージ 2


 


鍵盤をペタペタしてご満悦。
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「やっぱり、オルガンって好きだな」とか、「オルガンやっていて良かった」と思いつつ、気がつくと震えが止まらず歯の根が合わない。3週間前の大寒波(マイナス20度!)の寒気でいまだ教会が冷え切っていて、外(マイナス1度)より教会内のほうがよっぽど寒いので、冷凍庫の中で演奏するようなものでした。もし、冬季にコンサートをしたら、確かに死人が出そうです。こんな中、バッハの速いパッセージを軽々と弾ききるダヴィッドの指はいったいどうなっているんだろう。
 


ナウンブルクの駅にて、ファビアン(右)とダヴィッド(左)
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明日は日曜日。予定を急きょ変更して、その足でドレスデンへ。十字架教会とフラウエン教会のルター派の典礼をみるためです。どちらの教会のオルガニストも学生時代からの知り合いですが、時間がなかったので、今回は声をかけず、両教会で日曜の礼拝を掛け持ちして堪能してきました。
 


十字架教会内部
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十字架教会は、かつてハインリッヒ・シュッツがいたところです。その日歌いに来ていた合唱団も非常に素晴らしく、きちっとはめられた5度と3度がこれほど美しく豊かに広がって行くとは!と改めて感動しました。これをうちの学生さんに聞かせてあげたいものだ、と心から願いました。いや、そのうちここに、連れてきてやる、と目をぎらぎらさせて教会内をうろうろしながら夢想していたら、観光客から声をかけられ、いろいろ尋ねられてしまった。よっぽど態度がでかかったらしく、関係者と間違われた模様。
 

その後ライプチッヒへ。シュトゥットガルトの同級生で、6年間もの間、朝から晩まで一緒に喧嘩をしつつ勉強を重ね、もはや実の兄弟よりも近い感じの、人生の友アンゲリカになんと8年ぶりの再会。
ドイツに社交辞令は無いとかいう人もいるが、そんなことはない。ドイツ人も日本人と変わらず、このような久しぶりの再会では、普通「かわってないね〜、すぐわかったよ。相変わらずだね!」 から始めるものであるが、彼女は、駅で遠くからぼくをみつけ、駆け寄ってくるなり、

「道也!!あんたも老けたわね!あたしも歳くったわ!」

から始まり、その毒舌とマシンガントークは「相変わらず」。その後の話をまとめると、どうやら長年付き合っていた彼氏にふられ、目下婚活中で、でもどうしても納得のいく男が見つからず、早く家庭が持ちたいのに、年だけは取って行く・・・というくだりで、このような口火を切ったらしい。


・・こういう勝手な我がままなあたりも、変わっていない。本当にこいつ「歳くった」んだろうか。
 

しかしこのアンゲリカ、もっかライプチッヒのトマーナー(バッハのいた聖トーマス教会の少年聖歌隊のこと)のスカウトウーマン&年少クラスの発声指導を担当している、すなわちトマーナーの一番底を支えている重要かつ有能な女性。年間50もの小学校や幼稚園を訪れ、子どもたちに歌わせ、その中から「これは」と思った子どもの親に招待状を送りつけ、オーディションを受けさせる。3回の審査の後、トマーナーの寄宿舎への入寮を許可し、そして、自分で発声や曲を指導するということらしい。そして、その子たちは、数年間して実力をつけると、ビラー氏のもとで日曜日の礼拝などで歌うようになる、という訳だ。
 
すごいなあ、と思いつつも、「そんだけ毎日子ども相手に仕事してるくせに、自分の子どもはまだなんだねえ」といじってみたら、
 
「あんたこそ、その歳でこれだけのうのうとドイツに来れるんだから、ひまよね!」
 
とやり返された。
 

友達としては最高だが、パートナーとしてはなんとしても避けたいタイプである。
 

ところでドイツではすべての「道」に「名前」がついている。これがアンゲリカの住んでいる道の名前。こいつはうらやましい。(Straße=ストリートのこと)
 
イメージ 6


 
バッハがらみで、ぎりぎりの時間を利用して、一つ確認してきた。
モールテン(モールテン・シュルト‐イェンセンとの出会い:http://blogs.yahoo.co.jp/ichbinderweg/29371491.html  もしくは、福岡古楽音楽祭:http://www2.odn.ne.jp/~cco69970/index.html/  参照)がロ短調ミサ曲を振った時に、リハーサルでたびたび「一人の人間としてのバッハ」に言及し、その生活感あふれたバッハの証拠を、打ち上げでしゃべっていた。
 
トマス教会わきのバッハ像。


ごついかつらにいかめしい顔。
 
物々しいマントの内側のベストに注目すると、
 
・・・確かに二つ目のボタンが外れていた!!
 


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翌日、「あたしの人生のために祈ってね!」という熱い応援エール(?)を背にライプチッヒを出発し、南ドイツのバックナング(シュトゥットガルトから電車で25分)へ、新幹線で6時間。ドイツを一気に南下する。
 
旅は続く。
 

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おかえりなさい。
お疲れのところ楽しい旅行記をありがとうございます。まるで一緒に旅をしているかのように楽しく、また私も久しぶりに魂を揺すぶられるような演奏を聴いてみたい〜〜と共感しました。
こんなことを書いたら、なかなかヨーロッパに行けない私たち日本人にはみもふたもありませんが、あちらの音楽はやはり作られた現地の風景、建物、香り 音etc の中で聞いてこそ本当に理解、感動できるのだということを、あちらにいる時に感じました。それこそ魂の共鳴のような物を感じたことを懐かしく思い出しました。
旅のお疲れがでませんように。

2012/3/13(火) 午後 1:13 [ nor*s*k ] 返信する

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nor*s*kさま>
ありがとうございます。音楽の演奏も、「魂の共鳴」のレベルまで行ければ、きっと何人がどこの国でやっても、感動すると思います。何とか、そのレベルの響きを日本で出したいものだ、と願ています。

2012/3/13(火) 午後 2:17 [ azuminus ] 返信する

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おかえりなさい!お忙しい中、さっそく、ワクワクする旅行記をありがとうございます。
バッハの銅像の写真が気に入り、見入ってしまいました。これまではとにかく偉大立派すぎるぐらいにすごい人物なので、生活感を感じる隙がなかっただけに、ちょっと顔がほころびます(音叉の話も好きです)。
続きも楽しみです。その前に少しゆっくりなさってくださいね𧸠

2012/3/15(木) 午後 10:47 [ sar*72*oba ] 返信する

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sar*72*obaさま>ありがとうございます。
次回の旅行には、音叉と一緒にピッチパイプを持っていこうかと思ってます(笑)

2012/3/17(土) 午前 11:33 [ azuminus ] 返信する

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