小笠原村議会議員 一木重夫の政治日記

第5回&10回マニフェスト大賞審査委員会特別賞・最優秀賞を受賞

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おが丸の観光客数
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〜世界遺産ブームが去って減少傾向〜
世界自然遺産の観光ブームは、4年で終わりを迎えました。
平成27年度のおが丸の観光客数は、世界自然遺産登録前の平成21年、22年とほぼ同じペースの観光客数です。
(今年8月の台風による影響はマイナス1000人位ですが、9月が例年よりも多くなっているので、それらの事情を考慮しても世界自然遺産登録前と同程度です)
平成17年に同じ世界遺産となった知床の事例を見ると、世界遺産ブームが終わった後、世界遺産登録前は年間約160万人だった観光客数は、現在では25%減の約120万人を推移しています。
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屋久島も近年は減少傾向です(世界遺産登録は1993年)
屋久島↓
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白神山地は大幅に減少しています(世界遺産登録は平成5年)。
白神山地↓
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小笠原諸島では世界自然遺産登録に合わせて宿やガイド業を開業し、設備投資をした観光事業者もあります。
そのため、今後知床、屋久島、白神山地のような流れで観光客数が減少しては、島の基幹産業である観光業は立ちゆかなくなる恐れがあります。
 
 
〜知の地域づくりが観光客を呼び込む〜
観光客の減少に歯止めをかけるためには、大きく2つの方法があると考えています。
1つ目の方法は、これまで以上に小笠原諸島の自然や文化の研究を振興して、その研究成果をマスコミに報道してもらうことです。
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つまり、小笠原諸島の自然がマスコミに取り上げられる数が多ければ、観光客数が増えるということが明らかになっています。
小笠原諸島の自然や文化の研究成果は、お金を払って掲載してもらうどんな広告宣伝媒体よりも誘客効果があります。
御蔵島でもイルカの調査研究機関が設立したことにより、イルカの情報発信力が高まって、マスコミ等で紹介される機会が増えたために、イルカの観光地として定着しました。
このような調査研究の振興という「知の地域づくり」が、観光客を呼び込むのです。
 
 
〜外国人旅行者を誘致する〜
2つ目の方法は、誘客のターゲットに欧米系の外国人を加えることです。
小笠原諸島の観光資源はイルカ、クジラ、ウミガメ、海鳥など、欧米系の外国人が好みます。
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小笠原諸島の自立的発展に向けた産業振興に関する調査報告書より(平成27年)↑

小笠原諸島を訪れる外国人の3/4が欧米系であることが2014年の調査で明らかになっています。
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小笠原諸島の自立的発展に向けた産業振興に関する調査報告書より(平成27年)↑

日本全体の訪日外国人に占める欧米系外国人の割合は16.7%(2013年)と比較しても、小笠原諸島がいかに欧米系外国人に好まれる観光地であることが伺えます。
日本政府の規制緩和等の力の入れようと円安も追い風となり、訪日外国人旅行者の数は右肩上がりです。
数年前まで年間に800万人だったのが、今年度は2倍以上の1900万人になる見込みです。
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訪日外国人旅行者は世界でまだ27位なので、今後、さらに増加する見込みです。
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おが丸のチケットや宿をインターネットで予約&クレジットカード決済できるようになれば、外国人旅行者は今後さらに小笠原に来島し易くなると思います。
また、欧米系の海外のメディアに小笠原の魅力を宣伝広告すれば、より多くの外国人旅行者が小笠原を訪れると思います。
さらに、海外から小笠原が国際観光地として認められれば、日本人旅行者へのさらなる誘客波及効果も見込むことができます。
 
 

〜日本人旅行者のマーケットは縮小傾向〜
一方、日本人旅行者の国内旅行のマーケットは年々減少しています。
その大きな原因は少子化による生産年齢層の減少です(みずほ総研)。

仮に実質GDPを年1%の成長と見込んだとしても、生産年齢層の減少の要因が大きいため、国内旅行者のマーケットは縮小する(日本政策投資銀行)↓
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みずほレポートのまとめ↓
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また、期待されていた60-69才のアクティブシニア層も2017年を境に減少傾向に転じます。
団塊世代のアクティブさが失われることで、シニア市場には限界があると指摘されています(日本政策投資銀行)。
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シニア層の旅行意欲は高いのですが、年金の支給額も年々減少傾向であり、実際にシニア層の旅行単価は2-4万円が中心で7万円以上かけられるシニア層はわずか6.7%に過ぎません。
一人当たりの旅行単価が約15万円の小笠原旅行は、一般的なシニア層には高嶺の花です。
また、小笠原の20代女性旅行者の再訪意欲は2.56ポイントに対して、60代女性旅行者は半分の1.34です。
しかし、金融資産の保有を通じて高齢者世帯の二極化が進んでおり、高い金融資産を持った高齢者をターゲットにすることは十分に可能だと思います。
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2015年 シニア層の国内宿泊旅行に関する意識調査↓
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これらの国内マーケットの減少やインターネット旅行代理店の台頭、個人手配の増加等の影響により、従来型の地方の旅行代理店の数は減少傾向にあります。
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しかし、関東地方以外の地方には、まだ潜在的な可能性を秘めている面もあります。
平成17年の小笠原の観光調査では、関東地方以外から訪れる観光客はわずか2割でした。
その後、世界自然遺産の登録で小笠原諸島の認知度が全国で高まり、小笠原村や観光協会が地方からの誘致を推進したこともあり、平成26年にはその割合が4割になりました。
沖縄北海道屋久島は関東地方以外の割合が6割なので、5-6割が小笠原の目標値になるかと思います。
今後、来年7月に就航予定の新おが丸の竹芝出港時刻が1時間遅くなって11時になり、久里浜寄港便が増えることになれば、これまで7泊8日で小笠原を訪れていた地方からの観光客が、5泊6日で小笠原を旅行できるようになります。
この利便性の向上を契機として、地方からの誘客をより推進することはできると思います。
 


〜壁になる通訳案内士制度〜
外国人旅行者誘致を推進するためには大きな壁があります。
小笠原村に地域限定の通訳案内士制度を創設しなければなりません。
通訳案内士は、
「報酬を受けて、外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する業を営もうとする者は観光庁長官の行う通訳案内士試験に合格し、都道府県知事の登録を受けなければなりません(通訳案内士法)」
とされています。
また、登録を受けないで報酬を得て通訳案内を業として行うと、50万円以下の罰金が科されます。
 
 
〜通訳案内士法違反で検挙される?〜
小笠原諸島には欧米系外国人を中心として年間に約200人が来島しており、観光協会の話だと、今年夏は昨年夏と比べて約1.5倍に増えています。
しかし、小笠原村内には通訳案内士の資格を持ったガイドさんがいるという話を聞いたことがありません。
観光庁に確認したところ下記のような指摘を受けました。
 
・外国語で自然や文化をガイドする場合は海でも山でも資格が必要。
・ホエールウォッチングに乗船した外国人に英語でガイドしても資格が必要。但し、乗船の際の注意や、「あちらにクジラが見えますね」程度の会話なら資格は必要ない。「昨日はクジラが3頭見えて・・・」という説明になると資格が必要。
・例えガイドが外国籍を持っていたとしても、欧米系の島民であっても、日本語以外の外国語を使ってガイドする場合は資格が必要。
・もし外国人を外国語でガイド中に事故に遭わせてしまったら、当然通訳案内士法違反で検挙されて罰則を受けることになる。
 
 
〜通訳案内士の資格がないと賠償保険金が出ないことも〜
日本エコツーリズム協会のエコツアー保険を引き受けているジェイアイ傷害火災保険株式会社に、資格を持っていないで外国人に怪我を負わせてしまい、法律上の賠償責任が発生した場合、賠償保険金が支給されるのか聞いてみました。

・傷害保険は、法律上の賠償責任やツアーの法令違反の有無に関わらず、旅行者自身に掛けている保険なので傷害保険金は支給される。
・賠償保険金はツアーが法令に違反している場合、賠償保険金が支払われない重過失に相当する可能性があるので、ケースバイケースになる。賠償保険金が支払われないケースもあるだろうし、法令違反をしていても事故との因果関係が軽微であれば賠償保険金が支払われるケースもある。
 
つまり、ツアーが法令に違反している場合、賠償保険金が支払われないケースも想定されるとのことです。
 
 
〜小笠原で地域限定通訳案内士創設のための法改正〜
このようなリスクを回避するために、外国人をガイドする場合は通訳案内士の資格を取得する事が求められます。
しかし、国土交通省の国家資格である通訳案内士試験は難関であり、平成26年度の英語の合格率は26.6%です。
そのため私は、以前から小笠原諸島振興開発特別措置法を管轄する国交省に、小笠原諸島限定の地域限定通訳案内士の制度を創設して欲しいと要望をしてきました。
地域限定通訳案内士は全国の通訳案内士よりも、ハードルが下がります。
その結果、1年前の特別措置法改正の時に、小笠原諸島の地域限定通訳案内士の制度が創設されました。
 
 

〜通訳案内士の講習会開催を!〜
平成26年度の国交省の小笠原直轄調査で、小笠原村における地域限定通訳案内士の具体案が示されています。
この具体案を参考にして、国交省支援の下に小笠原村が地域限定通訳案内士の講習会を開催し、より多くのガイドさんに地域限定通訳案内士の資格を取得してもらいたいと思っています。
ガイドさん自身のリスクマネージメントにもつながるし、外国人旅行者誘致のためのソフトインフラになると考えており、村長に地域限定通訳案内士の講習会実施を求めています。
 
 
 
〜あとがき〜
世界自然遺産ブームが終わり、観光客数が世界遺産登録前と同等になって危機感が募り、今こそ旅行者誘致に本腰を入れなければならないのではないかと思い、筆をとりました。
私の議員時代の仕事しか知らない村民にとっては、
「何で水産が専門の政治家が観光振興をしているのか?」
と思われるかもしれません。
 
私は小笠原ホェールウォッチング協会に勤務していたとき、エコツーリズム推進担当でした。
ガイド養成やルールづくりなどの他にも、観光振興に関わる調査研究もしていました。
日本観光研究学会に所属して学会発表をしたり、満足度やマーケティングに関する学術論文を書いたりもしていました。
また、全国を渡り歩いて観光振興のための実地調査をしてきました。
小笠原に移住してからの14年間で、沖縄(本島・石垣島・竹富島・渡嘉敷島)、屋久島、阿蘇、長崎県小値賀島、大山隠岐国立公園、白川郷、飛騨高山、糸魚川、南アルプス、軽井沢、裏磐梯、二戸、白神山地、ニセコ、知床、弟子屈等で、観光振興の取り組みについて詳しく調査をしてきました。
これらの調査で見聞きしたことを小笠原に持ち帰って、観光関係者と議論したり勉強会を開催したりしてより精査をし、小笠原のエコツーリズムと観光振興に活かしてきました。
 
小笠原諸島の観光振興は今、世界遺産ブーム後の過渡期を迎えています。
奄美・琉球列島が世界自然遺産と複合遺産を目指す中、離島観光地同士で同じパイの奪い合いが益々熾烈さを増してくると思います。
また、島内の宿泊業者、ガイド事業者も増えてきており、島内間の競争も激しくなっています。
「小笠原はもともとパイが小さいし、特定のファン・リピーターがいるから大丈夫」
とは言ってはいられない事態が、今もうすぐ目の前に来ていると思います。
私がこれまで各地方のエコツーリズム観光地を実地調査し、観光の研究者や事業者らと議論をして導き出した小笠原の観光振興のこの道筋が、少しでも多くの関係者の参考になれば幸いですし、政治家としてこの道筋を実現させたいと考えています。

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