それぞれの「一握の砂」

自分自身の「一握の砂」(551首)の歌をつくってみませんか。

まぐまぐ!作業部屋

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「一握の砂」「悲しき玩具」と啄木の歌集を参考に歌づくりをしてきました。それを日刊のメルマガにして発行していました。現在は、「一握の砂以前」の歌に取り組んでいます。この書庫は、その作業部屋です。

まぐまぐ!「啄木の歌とともに」バックナンバー
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孤     境

2008/10/24
それぞれの「一握の砂」〜番外編

まぐまぐ!「啄木の歌とともに」
http://archive.mag2.com/0000133102/index.html

啄木

  あ  こ  が  れ


   孤     境

老樫(おいがし)の枯樹によりて
墓碣(はかいし)の丘邊に立てば、
人の聲遠くはなれて、
夕暗に我が世は浮ぶ。

想ひの羽いとすこやかに
おほ天の光を追へば、
新たなる生花被衣(いくはなかづき)
おのづから胸をつつみぬ。

苔の下やすけくねむる
故人(ふるびと)のやはらぎの如、
わが世こそ靈(たま)の聖なる
白靄の花のあけぼの。

いたみなき香りを吸へば
つぶら胸光と透(す)きぬ。
花びらに袖のふるれば、
愛の歌かすかに鳴りぬ。

ああ地に夜の荒(すさ)みて
黒霧の世を這ふ時し、
わが息は天(あめ)に通ひて、
幻の影に醉ふかな。

                   (甲辰一月十二日夜)

 神代の
 山の麓の小さなお寺
 今思えばそこがきっと父の母方の墓所
 中学生の時に母と姉二人と訪ねて行った
 父も列車に乗ったが出発前に降りた

 確か正月休みで
 列車は混んでいた
 父は混雑も人付き合いも
 嫌いな人だった
 きっと田舎も嫌いだったのだろう

 父の祖母と祖父は離婚していた
 そのあと昭和の大恐慌のあおりで
 祖父の事業も倒産
 そして祖父の自殺
 父はまだ学生だった

 商業高校を卒業した父は
 郷里の神代に戻っていた母親を頼った
 幾ばくかのまとまったお金を無心し
 海を渡って朝鮮へ行った
 父親のいない日本に用はなかった

 朝鮮で父は結婚した
 その頃のことはほとんど話を聞いたことがない
 ただ敗戦で朝鮮から引き揚げたときの話はよく聞いた
 父は腸チフスを患っていた
 おそらく死ぬ思いで引き揚げたのだろう

 引き揚げ先が母親の郷里の神代だった
 そこで私が生まれた
 昭和二十二年十二月
 裸で砂浜に立って笑っている姿や
 もっと小さい頃雲仙で母に抱かれている姿が写真に残っている

 ただ私が神代に居たのは物心がつく前のこと
 私に生まれた土地での記憶はほとんどない
 映画館の幟のはためきと
 風に乗って聴こえてくる音楽の記憶がかすかにあるが
 これは父か母に聞いたことによる疑似体験の記憶なのだろう

 父は八年前に八十五歳で亡くなった
 親戚付合いはほとんどしなかった
 無宗教で墓参りや宗教行事とは無縁だった
 敗戦を経験した父は思想に生きる道を選び
 労働運動に献身した

 長崎から福岡に引っ越して
 一時期祖母が一緒に暮らしたことがある
 私はまだ小学生だった
 そう長い期間ではなかったが
 その時が唯一父が母親にできた親孝行ではなかったか

 私もまた父と同じ道を歩んでいる
 思想的には落伍してしまったが
 家庭も持たず田舎の母親とも電話で時折話すだけ
 親不孝が親孝行だという屁理屈で
 親不孝を続けている

 そんな私が最近神代が気になりだした
 祖母は神代で眠るように死んだという
 母や姉たちと行った山の麓のあの小さなお寺
 もし尋ねて行ったら見つかるだろうか
 墓石のどれかに祖母の名前が
 [ 一郎 ]

2008/10/16

2008/10/16
それぞれの「一握の砂」〜番外編

まぐまぐ!「啄木の歌とともに」
http://archive.mag2.com/0000133102/index.html

啄木

  あ  こ  が  れ


   い の ち の 舟

大海中(おほわだなか)の詩の眞珠
浮藻(うきも)の底にさぐらむと、
風信草の花かをる
古巣の岸をとめて飛ぶ
海の燕の羽の如(ごと)、
いのちの小舟(こぶね)かろやかに、
愛の帆章(ほじるし)額(ぬか)に彫り、
鳴る青潮に乗り出でぬ。

遠海面(とほうなづら)に陽炎の
夕彩(ゆふあや)はゆる夢の城、
夏花雲と立つを見て、
そこに、秘めたる天(あめ)の路
ひらきもやする門あると、
貢(みつぎ)する珠、歌の珠、
のせつつ行けば波の穂と
よろこび深く胸を撼(ゆ)る。

悲哀(かなしみ)の世の黒潮に
はてなく浮かぶ椰子の實の
むなしき殻と人云へど、
岸こそ知らね、死の疾風(はやち)
い捲き起らぬうたの海、
光の窓に凭る神の
瑪瑙(めのう)の盞(さら)の覆(かへ)らざる
うまし小舟を我は漕ぐかな
                   (甲辰一月十二日夜)

 いま小舟は岸を離れたばかり
 小舟はどこへ行くのだろう
 こぎだした私にも分からない
 そこは海なのかそれとも湖
 それともまだ川なのか

 いやいや私がこいでいるのは
 遊園地の小さな池のボート
 見渡せるほどのすぐに戻ってこれる
 小さな池
 怖がりの私にはちょうどいい

 川には急流があるかもしれない
 果ての見えない湖は
 海にも似て強風が吹く
 海の怖さは言うまでもない
 大海にこぎ出す勇気はない

 勇気や自信を言う前に
 大海にこぎ出す力さえない
 湖や川さえこぎ出す力もない
 だから私には遊園地の池でいい
 とにかくこぎ出せばいい
 [ 一郎 ]

2008/10/12

2008/10/12
それぞれの「一握の砂」〜番外編

まぐまぐ!「啄木の歌とともに」
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啄木

  あ こ が れ


   荒   磯

行きかへり砂這ふ波(はみ)の
ほの白きけはひ追ひつつ、
日は落ちて、暗湧き寄する
あら磯の枯葉を踏めば、
(あめつちの愁ひか、あらぬ、)
雲の裾ながうなびきて、
老松の古葉(ふるば)音もなく、
仰ぎ見る幹からびたり。
海原を鶻(みさご)かすめて
その羽音波に碎けぬ。
うちまろび、大地に呼べば、
大水に足を浸して、
黝(くろ)ずめる空を望みて、
ささがにの小さき瞳と
魂更に胸にすくむよ。
秋路行く雲の疾影(とかげ)の
日を掩ひて地を射る如く、
ああ運命(さだめ)下りて鋭斧(とをの)と
胸の門割りし身なれば、
月負ふに瘠(や)せたるむくろ、
姿こそ濱蘆(はまあし)に似て、
うちそよぐ愁ひを砂の
冷たきに印し行くかな。
                   (癸卯十二月三日夜)

 あなたが
 荒海の向こうの
 大きな島へ渡ったのは
 なぜだったのでしょう
 そしてもうその島からも
 あなたは旅立ってしまいました
 
 あなたはたしか東京の人でした
 あなたがこだわっていたお店の外壁の蔦
 それは空襲で焼けてしまった東京の
 蔦でおおわれた小学校の校舎への
 郷愁だったのですね

 そしてその店の名
 東京から遠く離れた島で
 あなたは誰を待っていたのでしょう
 誰との再会を望んでいたのでしょう
 青春の日々を共に学んだ仲間でしょうか

 あなたの文章が好きでした
 雪割り草が好きで蔦にこだわるあなたが好きでした
 蛍という名前が好きでした
 きっと無口で不器用な人だったのではないでしょうか
 心ひそかに兄と慕った人でした

 そのあなたのあなたのブログが
 八月のある日から更新されなくなりました
 そして一ヶ月後
 あなたの友人からのメールが届きました
 あなたの突然の死を知らされました

 いろんなHPやブログを訪問しても
 コメントせずに素通りすることがほとんどです
 縁あってあなたのHPを訪れてからなぜか気になり
 あまり書き込みのない掲示板に居候することにしました
 掲示板の書き込みが多かったら居候はしませんでした

 あなたが亡くなって
 あなたのHPもなくなりました
 でもあなたのブログと掲示板はまだ生きています
 あなたとの縁をつないでおこうと居候していた掲示板
 いまも居候を続けています

 あなたの掲示板に花言葉を書いていました
 一年ほど経って
 新しい年が始めるのをきっかけに
 啄木の歌集「一握の砂」を読み始めました
 読んだ歌に私の歌を添えて掲示板に書き込むことにしました

 一日一首の掲示板の書き込みを続けて四ヶ月目
 毎日続けていく自信が出来たので
 それを日刊のメルマガにしました
 それが今これを書いているメルマガです
 あなたが亡くなったのはその年の八月のことです

 曲がりなりにも自分の言葉で
 自分の思うことをこうして綴っています
 そのきっかけの場になったのがあなたの掲示板でした
 あなたの掲示板を私物化していた私に
 あなたはなにも言いませんでした

 あなたが亡くなってから四年目の秋を迎えています
 私はまだあなたの掲示板に居候しています
 あなたの掲示板が削除されるまで
 まだまだ居候するつもりです
 もう誰も見ることのない掲示板かもしれませんが 
 [ 一郎 ]

2008/10/8

2008/10/8
それぞれの「一握の砂」〜番外編

まぐまぐ!「啄木の歌とともに」
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啄木

  あ こ が れ


   隠   沼

夕影しづかに番(つがひ)の白鷺下り、
槇(まき)の葉枯れたる樹下の隠沼(こもりぬ)にて、
あこがれ歌ふよ。ーー『その昔、よろこび、そは
朝明、光の揺監(ゆりご)に星と眠り、
悲しみ、汝こそとこしへ此處に朽ちて、
我が食み啣める泥土(ひづち)と融け沈みぬ。』ーー
愛の羽寄り添ひ、青瞳(せいどう)うるむ見れば、
築地(ついぢ)の草床、涙を我も垂れつ。

仰げば、夕空さびしき星めざめて、
しぬびの光よ、彩なき夢の如く、
ほそ糸ほのかに水底(みぞこ)に鎖ひける。
哀歡(あいくわん)かたみの輪廻(めぐり)は猶も堪へめ、
泥土(ひづち)に似る身ぞ。ああさは我が隠沼(こもりぬ)
かなしみ喰(は)み去る鳥さへえこそ來めや。
                   (癸卯十一月上旬)

 こもりぬ・・・・辞書を引く
 あった・・・『草などが生い茂った下に隠れた沼。』
 万葉集にその使用例も
 これまでもそうだった
 歌を読みながら何度も辞書を引いた

 あなたの歌を辿り
 いまあなたの詩を辿ろうとしている
 詩集はあなたの最初の夢
 歌集「一握の砂」があなたの最後の到達点だとすれば
 詩集「あこがれ」はあなたの出発点

 あなたの「一握の砂」の歌は
 私にも歌がつくれるかもしれないと思わせてくれた
 そしてあなたの歌とともに
 私のつたない歌づくりが始まった
 詩集「あこがれ」は「一握の砂」へ至る道

 難しい言葉を連ねた「あこがれ」の詩
 辞書を片手に難しい詩を読んでみよう
 それは「一握の砂」へとつづく道
 それはあなたの心に触れる旅
 あなたのことをもっと知りたい
 [ 一郎 ]

2008/10/5

2008/10/5
それぞれの「一握の砂」〜番外編

まぐまぐ!「啄木の歌とともに」
http://archive.mag2.com/0000133102/index.html


 あなたは闇の中に居た
 あなたは自信に満ちていた
 あなたの詩は闇を裂き
 あなたに光をもたらすと
 あなたは詩人として世に出るはずだと

 自分には才能がある
 自分の才能があれば
 自分は世に認められる
 自分が成功するのは
 自分の中では自明の理だった

 世の中がおかしい
 世の中を疑い
 世の中の人を恨む
 世の中を敵にし
 世の中に復讐する

 歌に生活を詠み
 歌で自分を見つめ
 歌を心の糧にし
 歌から学び
 歌で耐え抜いた

 人はあなたの傲慢に呆れ
 人はあなたの怠惰を嘆き
 人はあなたの歌をそれでも愛した
 人はあなたに人間らしさを見た
 人は永遠にあなたの名を心に刻んだ 
 [ 一郎 ]

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