皆さんこんばんは。ニワカ俺ガイラー、略してニワガイラーのVSVWです。
相変わらず語源は秘密です。勘の良い人はすぐ分かってしまいそうですが。

12巻の考察が一段落したので、今回からは既刊全巻のトータル考察という形で進めていこうと思います。全巻が考察対象となったおかげで、付箋およびマーカーペンチェックの量が単純計算14倍!これちょっとマジで作業量パねぇっすw

のんびり継続していきますので、皆さま今後とも宜しくお願い致します☆
m(_ _)m



【注】 以下、原作本文引用箇所は

モノローグ/太字濃茶

比企谷八幡/太字濃青
雪ノ下雪乃/太字濃桃
由比ヶ浜結衣/太字濃橙
葉山隼人/太字淡緑
雪ノ下陽乃/太字淡紫
平塚静/太字淡橙


で色分け表記しています。

イメージ 1






★★★★★★★ ネタバレ注意! ★★★★★★★





今回は伏線張りまくりで作者の渡氏が回収する気があるのかないのかよく分からない、雪ノ下姉妹と葉山隼人の関係について考察していきます。

葉山は第一巻から登場していますが、雪乃との過去の因縁が本格的に描写されるようになったのは4巻の林間学校イベントからですね。
もっともその前に葉山がチェーンメール対策に初めて奉仕部を訪れた際【2巻】に、雪乃に対して「こんな時間に悪い。ちょっとお願いがあってさ」「ごめんな」とくだけた口調で話しかけ、

「能書きはいいわ」
快活に話すその男子に向かって、雪ノ下がぴしゃりと言った。心なしかいつもより若干刺々しい気がする。
「何か用があるからここへ来たのでしょう?葉山隼人君」
冷たい響きを滲ませた雪ノ下の声にも、そいつは、葉山隼人は笑顔を崩さない。


と辛辣な反応が返ってくるといった具合に雪乃と葉山の間に横たわる溝は示唆されており、当初の予定であった1巻完結のプロットから延長された時点で既に伏線は張られていた事が窺えます。

さて4巻以降の葉山は事あるごとに雪乃との確執(らしきもの)が描かれており、その様々な記述からいくつかの説が導き出されてきます。



1:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に相思相愛の恋愛感情がある(あった)
①:今もお互いに好きだが、相手には伝えていない
②:周囲には隠しているが、付き合っている
③:かつて付き合っていたが、今は別れている
❶:雪乃が葉山との関係を解消した
❷:葉山が雪乃との関係を解消した
④:かつて相愛ではあったが、付き合う事なく終焉した
❶:雪乃の葉山への感情が冷めた
❷:葉山の雪乃への感情が冷めた

2:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に一方通行の恋愛感情がある(あった)
①:雪乃が一方的に葉山の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている
②:葉山が一方的に雪乃の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている

3:雪ノ下家と葉山家の取り決めで雪乃と葉山は婚約関係にある

4:葉山隼人と雪ノ下陽乃の間に相思相愛の恋愛感情がある(あった)
①:今もお互いに好きだが、相手には伝えていない
②:周囲には隠しているが、付き合っている
③:かつて付き合っていたが、今は別れている
❶:葉山が陽乃との関係を解消した
❷:陽乃が葉山との関係を解消した
④:かつて相愛ではあったが、付き合う事なく終焉した
❶:葉山の陽乃への感情が冷めた
❷:陽乃の葉山への感情が冷めた

5:葉山隼人と雪ノ下陽乃の間に一方通行の恋愛感情がある(あった)
①:葉山が一方的に陽乃の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている
②:陽乃が一方的に葉山の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている

6:雪ノ下家と葉山家の取り決めで葉山と陽乃は婚約関係にある



比企谷八幡の恩師・平塚静は言いました【9巻】

「わからないか。ならもっと考えろ。計算しかできないなら計算しつくせ。全部の答えを出して消去法で一つずつ潰せ。残ったものが君の答えだ」

わかりました先生。仰せの通りに☆



と、いうわけで。
まず明らかに無いものから消していくことにしましょう。

1/②:周囲には隠しているが、雪乃と葉山は付き合っている
1/③/❷:相思相愛で雪乃と葉山は付き合っていたが、葉山が振って関係解消
1/④/❷:相思相愛だったが付き合う前に葉山が冷めて終焉
2/②/❷:葉山が雪乃に片想いしていたが今は冷めている
3:家庭の事情により雪乃と葉山が婚約関係にある
4:葉山と陽乃が相思相愛の項目全般
5/②/❶・❷:陽乃が葉山へ一方的に恋心を抱いている項目全般

まず『雪乃と葉山が付き合っている』は雪乃の葉山に対する日常的な態度で明確に否定されています。たとえ周囲に付き合っている事を隠すためだとしても、説得力のある態度ではありません。加えて、正月の雪ノ下家・葉山家の会合に端を発した「葉山と雪ノ下(雪乃)が付き合っている」という噂が校内で流れた際【10巻】に、二人がとった噂を否定する態度

みんなの注目が集まる中で、葉山は大岡を射竦めるように見た。
「誰がそんな無責任なこと言ったんだ?」
絞り出された声は鋭い

「一色さん……」
呼びかける雪ノ下の声音が冷たい。うっすらと極光のベールで包まれたような微笑の奥にあるのは極北の氷から削り出したように冴え冴えと澄んだ瞳。
「……そんなことあるわけないでしょう」

「こないだ出かけたときあるじゃん?それを誰かが見て、誤解してるみたい」
由比ヶ浜がいうと、雪ノ下は心底うんざりした様子で深いため息を吐いた。
「なるほど。下衆の勘繰りというやつね……」


にはあからさまな嫌悪感や怒りがにじみ出ていて、これまた付き合っている事実を隠すためにとぼけた態度とするには説得力に欠けます。

次に、『葉山の方から雪乃に対する感情が冷めて終焉を迎えた』という系譜も、二人のお互いへの態度を鑑みると考えにくい仮説であると言えるでしょう。

同じ根拠で、『雪乃と葉山の婚約関係』もまずあり得ません。そもそも、仮に雪ノ下家と葉山家の事情による(当人たちの意思に関係ない)婚約関係が成立する場合は、地元有数の建設会社である雪ノ下家とその顧問弁護士である葉山家という関係上、それぞれの家の後継者が当事者となるのが自然です。

雪乃が雪ノ下家の後継者として選ばれていないのは言わずもがな。
対して、葉山は進路志望のエピソード【10巻】において自ら

「それしか選びようがなかったものを選んでも、それを自分の選択とはいわないだろ」

と自嘲気味に語ったように、彼も陽乃同様に家庭の事情によりその将来が決められています。つまり、葉山家の後継者となる運命にあるのです。

そして、『葉山と陽乃が何らかの関係にある』という説においては、陽乃が葉山に(過去を含め)恋愛感情を抱いていた根拠は全く示されておらず、少なくとも葉山と陽乃の相思相愛および陽乃の方が葉山へ一方的な恋心を抱いているという選択肢はあり得ません。



とりあえず、ここまでの消去法進捗具合を確認してみます。



1:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に相思相愛の恋愛感情がある(あった)
①:今もお互いに好きだが、相手には伝えていない
②:周囲には隠しているが、付き合っている
③:かつて付き合っていたが、今は別れている
❶:雪乃が葉山との関係を解消した
❷:葉山が雪乃との関係を解消した
④:かつて相愛ではあったが、付き合う事なく終焉した
❶:雪乃の葉山への感情が冷めた
❷:葉山の雪乃への感情が冷めた

2:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に一方通行の恋愛感情がある(あった)
①:雪乃が一方的に葉山の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている
②:葉山が一方的に雪乃の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている

3:雪ノ下家と葉山家の取り決めで雪乃と葉山は婚約関係にある

4:葉山隼人と雪ノ下陽乃の間に相思相愛の恋愛感情がある(あった)
①:今もお互いに好きだが、相手には伝えていない
②:周囲には隠しているが、付き合っている
③:かつて付き合っていたが、今は別れている
❶:葉山が陽乃との関係を解消した
❷:陽乃が葉山との関係を解消した
④:かつて相愛ではあったが、付き合う事なく終焉した
❶:葉山の陽乃への感情が冷めた
❷:陽乃の葉山への感情が冷めた


5:葉山隼人と雪ノ下陽乃の間に一方通行の恋愛感情がある(あった)
①:葉山が一方的に陽乃の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている
②:陽乃が一方的に葉山の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている


6:雪ノ下家と葉山家の取り決めで葉山と陽乃は婚約関係にある



ざっと見、半減といったところでしょうか。

第2段階として、5/①の『葉山が一方的に陽乃の事を好き(だった)』は、❷の『今はもう冷めている』という前提において有力な説と言えます。

葉山が陽乃と顔を合わせるシーンにおいて、彼は決して良い表情をしていません

文化祭実行委員会に有志OGとして参加するという名目で妹・雪乃の前に現れた陽乃は、例によって天真爛漫な振る舞いで周囲を引っ掻き回します【6巻】。名ばかりの委員長と化していた相模南の劣等感を瞬時に見抜き、耳に心地よい甘言を弄して相模を持ち上げ、おだて、煽り、雪乃への挑発を誘発しました。そんな陽乃を一瞥して葉山はこう呟いています。

「やっぱりこうなるか……」
葉山が短く言う。すべてわかっていたような口ぶりが少し気になって無言のまま葉山を見る。説明を求めたつもりだったが、わざとなのか葉山はそれに触れない

八幡の中学時代の同級生・折本かおり(とその友人)に邂逅した陽乃は、面白半分に葉山を呼び出し初対面の女子二人に紹介します【8巻】

二人の姿が完全に見えなくなるのを見届けると、それまでずっと微笑を浮かべていた葉山がすっと冷めた表情になる。
そして、陽乃さんをちろっと睨んだ

「……どうしてこんな真似を?」
「だって面白そうだし」
陽乃さんは悪びれることもなく、ころころと笑った。それは無邪気と呼ぶには程遠く、あからさまな悪意が透けて見えた。
葉山は諌めるような咎めるようなため息を吐く。

「またそれか……」


さらに陽乃が去った後、葉山は彼女をこう評しています。

「あの人は興味がないものにはちょっかい出したりしないよ。……何もしないんだ。好きなものをかまいすぎて殺すか、嫌いなものを徹底的につぶすことしかしない」
忠告か、それとも警告か。葉山の言葉には確かに棘が仕込まれている


おそらく葉山隼人は幼少期から陽乃を姉のように慕ってきた過程で、(あくまで子供心ながらにではあるが)その気持ちが恋愛感情に発展していったのでしょう。しかし、何処かのタイミングで葉山はその気持ちが勘違いであったと自覚したのです。八幡が中学時代に告白した相手・折本かおりとその友人とのダブルデートの際、彼女らを遠目に見ながら八幡と葉山はこんな会話を交わしています【8巻】

「ああいうのがタイプだったのか?……意外だな」
「別に折本だけじゃない。全然違う、おとなしい子や、もっと騒がしい子が好……、タイプだったこともある」
「そういうのは好きなタイプとは言わないよ」
「……だいたい、昔そうだったから今もそうとは限らないだろ」
「……そうだな」

「結局……」
不意に葉山が口を開く。
けれど、その声は苦しそうで、言葉はそこで途切れてしまう。まだ何か続くのだろうかと、葉山の顔を見ると、葉山はそっと視線を外し、どこか、この店内ではない、もっとどこか遠くを見ていた

「結局、本当に人を好きになったことがないんだろうな」
返せる言葉を持たない俺に、葉山は自嘲するような微笑みを浮かべる。
「……君も、俺も
天を仰ぐように、そっと顔を上げる。葉山の横顔は懺悔でもしているかのようだ。
「だから勘違いしていたんだ」
小さな呟き声は空気に溶けて霧散した。
俺の知らない葉山隼人は泣きそうなくらい、哀しい顔をしていた


葉山は夏休みの林間学校【4巻】でバンガローに宿泊時、戸部が切り出したド定番の恋愛話に押されて好きな人のイニシャルを「……Y」と答えています。

これが雪ノ下Yukinoを指しているのは、作者の渡氏が余程の捻くれ者でない限りほぼ確定でしょう。

……八幡の捻くれモノローグの中の人だと思うと、ちょっと自信がなくなってきますがw

クラスのいわゆるカースト上位メンバーの由比ヶ浜Yuiや三浦YumikoもイニシャルはYですが、説得力はまるでありません。Yukinoshita陽乃に至っては前述した根拠で否定されている上に、イニシャルYを苗字から取るのは葉山が彼女のことを「陽乃さん」と呼んでいる事からも不自然です。

つまり、葉山隼人はかつて雪ノ下陽乃を好きだったが、それが勘違いであり本当に好きなのは雪乃だと気付いたのです。しかし雪乃に対する後ろめたさ罪悪感(後述)から、今更そんな自分の気持ちを伝えることは出来ないと苦悩している、というのが目下のところ有力です。

上記の根拠から5/①/❶が消え、付随して1/③および1/④が消えます。



1:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に相思相愛の恋愛感情がある(あった)
①:今もお互いに好きだが、相手には伝えていない
②:周囲には隠しているが、付き合っている
③:かつて付き合っていたが、今は別れている
❶:雪乃が葉山との関係を解消した
❷:葉山が雪乃との関係を解消した
④:かつて相愛ではあったが、付き合う事なく終焉した
❶:雪乃の葉山への感情が冷めた
❷:葉山の雪乃への感情が冷めた


2:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に一方通行の恋愛感情がある(あった)
①:雪乃が一方的に葉山の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている
②:葉山が一方的に雪乃の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている

3:雪ノ下家と葉山家の取り決めで雪乃と葉山は婚約関係にある

4:葉山隼人と雪ノ下陽乃の間に相思相愛の恋愛感情がある(あった)
①:今もお互いに好きだが、相手には伝えていない
②:周囲には隠しているが、付き合っている
③:かつて付き合っていたが、今は別れている
❶:葉山が陽乃との関係を解消した
❷:陽乃が葉山との関係を解消した
④:かつて相愛ではあったが、付き合う事なく終焉した
❶:葉山の陽乃への感情が冷めた
❷:陽乃の葉山への感情が冷めた


5:葉山隼人と雪ノ下陽乃の間に一方通行の恋愛感情がある(あった)
①:葉山が一方的に陽乃の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている
②:陽乃が一方的に葉山の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている


6:雪ノ下家と葉山家の取り決めで葉山と陽乃は婚約関係にある



さて、いよいよ雪ノ下雪乃の感情に根拠を置く消去法に入ります。

12巻を中心とした前回までの考察において、私個人は雪ノ下雪乃は比企谷八幡が好きであると結論付けているので(根拠は過去ブログ参照)、そうなるともう

1:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に相思相愛の恋愛感情がある

も、

2:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に一方通行の恋愛感情がある
①雪乃が一方的に葉山の事を好き

も、バッテン付けてはい終了☆ なわけですが、さすがにそんな雑なことやってると貴重な時間を割いてこんなニワガイラーの長文にお付き合いして下さってる皆様に申し訳がないので、それなりに根拠および作者・渡氏の巧妙なるトラップのかいくぐり方を提示させて頂こうと思います。

まず第一に、雪乃は幼少時代は葉山のことが好きであったのはほぼ間違いありません。

根拠となるのは、雪乃が大好きなディスティニーランドのキャラクター・パンダのパンさんです。物語に時折挟まれるパンさん絡みのエピソードにおいて、雪乃のこだわりは愛情にも見え、グッズへの興味は執着にも近いものがあります。
UFOキャッチャーでパンさんのぬいぐるみを八幡の“超ななめ下”な裏技で取ってもらった雪乃が、パンさんを好きになったきっかけを説明しているシーンがあります。【3巻】

「に、してもお前本当に好きなんだな、パンさん」
無駄なマニアぶりを見せつけられて、なんの気なしに口を突いて出た言葉だった。それを聞いて雪ノ下はふと遠い目をした。
「……ええ。小さい頃にもらったのよ」
「ぬいぐるみを?」
「いいえ。原作の原書よ」
(中略)
「……誕生日プレゼント、だったのよ。そのせいで一層愛着があるのかも知れないわ」


この原作本をプレゼントしたのは、葉山である可能性が大です。より正確に言うと、陽乃のアドバイスのもと葉山が雪乃に(あるいは陽乃と葉山二人からという形で)プレゼントしたのでしょう。

年明け早々に誕生日を迎える雪乃のためにプレゼントを買いに来た八幡と結衣は、親の挨拶周りに付き合わされる陽乃と葉山に遭遇【10巻】。どんなプレゼントを買ったのかと結衣に問いかける陽乃を横目に、八幡と葉山はこんな会話を交わしています。

「誕生日プレゼントか……」
そして、ちらと俺に目をやった。
「何買ったんだ?」
「ああ、まぁちょっとな」
「そうか」
特に追求されることもなく、すっと視線を逸らされてしまった。
(中略)
不意に、プレゼントのラッピングを見ていた陽乃さんが口を開いた。
「わたしも久しぶりに何かあげよっかなー」
そして、ちらと視線を動かす。
「ね、隼人」
「……そうだね」
葉山は軽く肩を竦めると視線を窓の外へとやった。その先にあるのは街灯り、ではないのだろう。
俺も硝子に映る葉山を見やり、ふと、昔、何を贈ったのだろうとそんなことばかり考えていた。


英語で綴られた原作の原書を、幼い雪乃と同い年の葉山が単独でプレゼントとして思い付くかどうかは微妙なところです。上記した陽乃と葉山のセリフから、年長者である陽乃のセンスが介入していた可能性は充分にあり得る話でしょう。しかし、少なくとも雪乃はそのプレゼントを姉から貰ったという意識でないのは明らかで、そのことを端的に表してる描写があります。

前述したUFOキャッチャーでパンさんのぬいぐるみを八幡(正確にはゲームコーナーのスタッフさん)に取って貰った雪乃の前に、偶然にも姉の陽乃が登場。八幡と陽乃の初対面のシーンです【3巻】

「あ、それ。パンダのパンさんじゃない?」
弾んだ声と一緒に、陽乃さんの手がぬいぐるみへと伸びた。
「わたし、これ好きなんだよねー!いいなーふわっふわだなぁ雪乃ちゃん羨まし」
触らないで
ぴりっと耳の奥が痺れるような強い声だった。特別大きな声というわけではない。ただそこにありありと込められた拒絶が痛々しいほどによく響いた。


さすがに物語序盤のこの段階では、まだ雪乃が八幡に特別な想いを抱いてる筈がないので「比企谷くんに取って貰った(いや取ったのはスタッフさんですけどね)パンさんに触らないで」という理由で陽乃が触ることを拒絶したわけではありません。雪乃が拒絶したのは、小さい頃の思い出(=葉山を好きだった)の象徴であるパンさんに、過去の軋轢から今は決して良くは思っていない姉の陽乃に触って欲しくないという理由からでしょう。今はもうその感情が冷めてしまい、葉山に対して苦々しく思うところもあるのは事実ですが、その思い出自体を否定する事はなく大切に思っている雪乃の気持ちが表れています。

ではなぜ雪乃は葉山への恋心が冷めてしまったのか。

理由は大きく分けてふたつあります。


ひとつは、前述したように幼少期の葉山は姉の陽乃が好きで、その気持ちは無邪気な子供らしく言動にも現れていたのでしょう。陽乃は陽乃でああいう性格なので、調子を合わせて仲睦まじく振る舞っていたのは容易に想像がつきます。

幼い雪乃の眼前で。

夏休みに花火を見に行った八幡と結衣は、父親の代理として地元の顔つなぎに会場に赴いていた陽乃と同席【5巻】。そこで二人を見て陽乃が呟いたセリフは重要な意味を持っています。

「もしデートだったんなら……雪乃ちゃんは、また選ばれないんだね」

この“また選ばれない”については『葉山から・母親から・父親から』と諸説ありますが、前置きとして「もしデートなら」とあるので、素直に恋愛対象としてと見るのが自然でしょう。つまり、過去に雪乃は恋愛対象として選ばれなかったのです。そして、それは葉山からに他ありません


もうひとつの理由は、周囲から孤立させられた自分を、葉山は目の前で見ていたにも関わらず助けてくれなかったことに起因するものです。

夏休みの林間学校にて【4巻】、小学生の世話を任された奉仕部の面々と葉山らカースト上位組は、グループから孤立させられている独りの少女・鶴見留美の行く末を案じて対策を協議します。平塚先生の「それで、君たちはどうしたい?」という問いかけに、葉山が教科書通りの方針を提案しました。

「俺は……できれば、可能な範囲でなんとかしてあげたいと思います」

この欺瞞に満ちた、自己満足とも言える言葉に反応したのは、他でもない雪乃です。

「あなたでは無理よ。そうだったでしょう?」

理由の説明を求めようもないほどに、確定した事実であるかのように断言した。
葉山は臓腑を焼かれたように苦しげな顔を一瞬覗かせる。
「そう、だったかもな。……でも、今は違う」
「どうかしらね」
葉山の答えに、肩を竦めるような仕草をして、雪ノ下は冷たくあしらった。


さらにこの林間学校の最後の夜、葉山は八幡にこうこぼしています。

「少し昔のことを思い出した。……昔、似たような光景を前に何もしなかったことを」

雪乃は幼少時代から際立つ容姿と家系の良さ、加えて成績優秀という隙の無さから周囲に白眼視され、謂れのない迫害を受けてきたことは八幡と初対面の頃すでに本人の口から語られています。その時、雪乃にとって最も近しい存在で一番頼りになり、そして何より想いを寄せていた葉山が助けてくれなかったことはトラウマといってもいい悲劇だったでしょう。

夏のある日、八幡は川崎早希と歩きながら雪ノ下雪乃をこう論じています。

雪ノ下はそもそも攻撃する気がない。ただ彼女の存在自体がある種の攻撃なのだ。優れた存在は眩しい。劣等感や嫉妬心を呼び起こす。それがために彼女の周囲には断絶が生まれ、悪意が向けられる。そして厄介なことにその悪意に対しては徹底的に立ち向かい、叩き潰すのが雪ノ下なのだ。
川崎の行動が予防線としての威嚇ならば、雪ノ下の行動は常に絶対の報復である。


自他共に認めるぼっち兼捻くれ者・比企谷八幡ですら舌を巻く、孤高かつ問答無用の闘争心、そして諦観。およそ年頃の少女が纏うには不相応な人格形成は、よりにもよって彼女の一番近しい存在であった実姉と幼馴染からの影響に起因していたのです。

葉山隼人も、それを自覚しています。故の後ろめたさ罪悪感が常に彼の中にあり、雪乃に対しては一定の距離を保っているのでしょう。かつて「雪乃ちゃん」と呼んでいたのが「雪ノ下さん」に変遷していったのは、その象徴とも言えます。



そんなわけで雪乃はかつて抱いていた葉山に対する恋心は冷めているというのが私の解釈であるのですが、その凍てついた心を次第に溶かしていったのが他ならぬ八幡です。ぼっちであり、人の心理を含めた物事の本質を見抜く術に長け、そして思考も似ているふたり。いつしか阿吽の呼吸で行動を起こし、目配せと表情だけで意思疎通ができるようになっていった異端児同士。のちに雪乃自ら「今まで生きてきた中で一番早く過ぎていった一年だったわ」と認める【12巻】、多忙で過酷そして充実した一年を過ごさせてくれたソウルメイトに出逢えた結果、彼女は辛辣に当たっていた葉山にすら優しくこう言えるようになっていったのです【10巻】

「ただ、気遣ってくれたことには感謝しているわ」
葉山の表情は驚きに満ちている。はっとした様子で雪ノ下をまじまじと見ていた。
「……君は少し変わったな」
「どうかしら。ただ、昔とはいろんなことが違うから」
そう言って、雪ノ下は由比ヶ浜の方へと視線をやって、それからちらりと俺を見る


由比ヶ浜結衣の、そして比企谷八幡の存在は確かに雪ノ下雪乃を変えていったのです。


ちなみに。


雪乃が八幡のことを好きだという根拠のひとつとして私が過去ブログの12巻考察⑦で挙げた、雪乃が無意識に八幡のことを目で追っているいくつかの描写ですが、これらには作者の渡氏による巧妙なトラップが仕込まれています。


★夏休みの林間学校において【4巻】、戸塚・葉山と共に炭火起こしの作業をしていた八幡のもとに結衣と雪乃が歩み寄ります。「八幡はほんと頑張ってたよ。ほんとにほんと」と言う戸塚に結衣は

「わかってるって。ヒッキー、変なとこ真面目だし」
由比ヶ浜がからから笑っていると、その後ろから雪ノ下が俺の顔を覗き込んできた。
「それに、見ればわかるわ。軍手で顔を拭うのはやめなさい。みっともないから」
雪ノ下はまるで見ていたかのように言う



★体育祭の目玉競技、男子の“棒倒し”にて、赤組の八幡は紅のハチマキを白い包帯で偽装して白組陣地深くへと紛れ込みます【6.5巻】。白組大将・葉山と因縁の対決を演じて勝利を収めますが、それを見ていたらしき運営委員長・相模の裁定で反則ノーゲームと相成りました。

「悪かったよ……。誰も見ていないと思ってたんだよ……」
「いや、結構見ているもんだよ?」
「そうね、あなたが包帯を取り出したときは何をするのかと思ったわ」
雪ノ下が呆れたため息を吐く。そうか、そこから目撃されてたんじゃ、こいつ俺の反則に気づくわな……。
「あ、ゆきのんも見てたんだ」
その問題のシーンは由比ヶ浜にも見られていたらしく、由比ヶ浜は雪ノ下へくるっと顔を向けると意外そうに言った
すると、雪ノ下はぱちぱちと数度目を瞬かせる
「……たまたまね」
小さな声で答えると、興味なさげにぷいっと顔を本に戻してしまった


★マラソン大会終了後、葉山の進路を聞き出すために無茶な走りをした結果怪我をした八幡が保健室へ入ると、そこには雪乃がいます【10巻】。怪我の治療をしながら、雪乃はおもむろに口を開き

葉山くんと走っていたようだけれど……、何か聞けたの?」


★バレンタインパーティの終盤、八幡が自分の荷物を置いてある席に向かうと、そこでは雪乃が紅茶を淹れています【11巻】

「あら、お疲れさま」
「別に疲れるようなことはしてないけどな」
答えながら俺が座ると、雪ノ下がすっと紙コップを差し出してきた。その瞳には俺をからかうような色がある。
「そう?そのわりにはちょこまかしてたようだけれど」
「ちょこまかって……」



雪乃が八幡を目で追っていた事が示唆されているこれらのシーンには、ある共通点があります。それは、その場に必ず葉山隼人がいるという点です。つまり、一見すると雪乃が目で追っていたのが八幡なのか葉山なのか、分かりにくくするミスリードが仕込まれているのです。

しかし注意深く読んでみれば、ひとつだけその共通点を崩す描写を見つけられます。それは体育祭の棒倒し競技にて、雪乃は八幡がポケットから包帯を取り出すところを見ている事です。
赤組の八幡が特殊技能ステルスヒッキーを駆使するには、紅のハチマキを白包帯で隠す(反則)技を両軍入り乱れている校庭中央付近でする必要があります。白軍大将・葉山が待ち構える陣地最奥部までは相当に距離があり、仮に雪乃が葉山を目で追っていたのであれば八幡の挙動は視界に入るはずがありません。よって、やはり雪乃が無意識に目で追う対象は比企谷八幡であって葉山隼人ではないという説が成り立つのです。



以上の根拠から、最後の消去法を行います。



1:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に相思相愛の恋愛感情がある(あった)
①:今もお互いに好きだが、相手には伝えていない

②:周囲には隠しているが、付き合っている
③:かつて付き合っていたが、今は別れている
❶:雪乃が葉山との関係を解消した
❷:葉山が雪乃との関係を解消した
④:かつて相愛ではあったが、付き合う事なく終焉した
❶:雪乃の葉山への感情が冷めた
❷:葉山の雪乃への感情が冷めた


2:雪ノ下雪乃と葉山隼人の間に一方通行の恋愛感情がある(あった)
①:雪乃が一方的に葉山の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている
②:葉山が一方的に雪乃の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている

3:雪ノ下家と葉山家の取り決めで雪乃と葉山は婚約関係にある

4:葉山隼人と雪ノ下陽乃の間に相思相愛の恋愛感情がある(あった)
①:今もお互いに好きだが、相手には伝えていない
②:周囲には隠しているが、付き合っている
③:かつて付き合っていたが、今は別れている
❶:葉山が陽乃との関係を解消した
❷:陽乃が葉山との関係を解消した
④:かつて相愛ではあったが、付き合う事なく終焉した
❶:葉山の陽乃への感情が冷めた
❷:陽乃の葉山への感情が冷めた


5:葉山隼人と雪ノ下陽乃の間に一方通行の恋愛感情がある(あった)
①:葉山が一方的に陽乃の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている
②:陽乃が一方的に葉山の事を好き(だった)
❶:今もその恋心を抱いている
❷:今はその感情は冷めている


6:雪ノ下家と葉山家の取り決めで葉山と陽乃は婚約関係にある



こうなります。

最後の6『雪ノ下家と葉山家の取り決めで葉山と陽乃は婚約関係にある』は前述した両家後継者同士として、本人たちの意思に関係なく取り決めがなされてる可能性は決して低くありません。

雪ノ下家は建設会社を経営しています。おそらくは公共事業も幅広く手がける、地元では最大手の部類に入る規模でしょう。建設業界は、かなりグレーな部分が多い世界です。その顧問弁護士ともなると、表に出せないような内部事情を相当な深度で把握していなければ法的なサポートをこなし切れません。つまり、雪ノ下家にとって葉山家は頼りになる右腕的存在であると同時に、なにか事が起きれば致命傷となりかねない諸刃の剣なのです。
加えて県議会議員も務める雪ノ下家としては、葉山家はどんなことをしてもこちら側に留めておかなければなりません。そこで古来から一蓮托生の常套手段として使われてきた、“政略結婚”が現実味を帯びてくるのです。

正月に葉山を従えた陽乃と出くわした八幡と結衣【10巻】。結衣が「挨拶回りって大変そうですね」と感心した声を上げると、陽乃は言いようのない諦観が含まれた声音でこう返しました。

「毎年のことだからもう慣れたわ。まぁ、時々面倒だなーとは思うけど。……案外生き残ってるのよね、そういう風習、というか、慣習が

葉山が雪乃への気持ちを封印している理由、三浦優美子を含めたほかの誰とも付き合おうとしない理由。そして陽乃に男の影が見当たらない理由は、このあたりが大きな影響を及ぼしていそうです。



まとめると、

幼少期 雪ノ下雪乃は葉山隼人が好きだった
葉山隼人は雪ノ下陽乃が好きだった

現在 雪ノ下雪乃は葉山隼人への気持ちは冷めている
葉山隼人は雪ノ下雪乃が好きだが、距離を置いている
葉山隼人と雪ノ下陽乃は、意に反した婚約関係にある


これが今回のメインテーマとなっている、三人の現状であると考察します。



意外にというか案の定というか、超・長文になってしまいました。最後までお付き合いありがとうございました。……って最後まで読んでくれた方なんているのだろうかと不安になるどうも俺です。しかしこの三人は本当にめんどくさい関係性ですね。その複雑さが、俺ガイルの物語に更なる深みを与えているのは確かですが。



それではまた次回☆

この記事に

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皆さんこんばんは。

先週末、親類のウェディングに参列してきました。幸せいっぱいの結婚式そして披露宴、黒い染みみたいな負のオーラを撒き散らす怨念にも似た妄執はどこにも見当たらず、「あぁよかった平塚先生ここにいないんだな」と安心する俺ガイルいや俺がいました。

さて、俺ガイルこと『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』原作ライトノベル最新12巻の考察もついに最終回。ハラハラドキドキのクライマックス〜クリフハンガーな終わり方をするラストシーンの考察、そして次巻以降の予想に入らせて頂きます。

イメージ 1






★★★★★★★ ネタバレ注意!★★★★★★★





【注】 以下、原作本文引用箇所は

モノローグ/太字濃茶

比企谷八幡/太字濃青
由比ヶ浜結衣/太字濃橙
一色いろは/太字濃緑
雪ノ下陽乃/太字淡紫
雪ノ下母/太字濃紫
平塚静/太字淡橙


で色分け表記しています。



雪乃がひとり生徒会のサポートを頑張っている一方で、今日もやることのない手持ち無沙汰な八幡と結衣。ここ数日のパターンを踏襲して一緒に帰ろうという流れになった二人の前に、切羽詰まった表情の生徒会長・一色いろはが現れます。

「ちょっとまずいことになりました」といういろはに連れられて向かった先は学校の応接室。そこに陣取っていたのは雪乃の、そして八幡ら奉仕部の天敵とも言える雪ノ下母(名前……名前教えておくれよ渡さん……)と、姉・陽乃でした。

八幡は即座に事の深刻さを察知します。これは嫌な予感などではなく、確信だと。案の定、母親は総武高校の保護者会代表という錦の御旗を振りかざし、いろはと雪乃が実現を目指していた卒業謝恩プロムの中止を迫ります。

雪乃が何を言おうと、いろはが食ってかかろうと、雪ノ下母は一歩も退きません。上っ面だけは温和で優しく気品が溢れる所作ですが、その言の葉は徹頭徹尾、言外に「あなた達は所詮子供。子供のやることは間違っている。おとなしく言うことを聞きなさい」と告げてきます。それはまさに幼子をあやす大人のそれ。八幡の直感が警鐘を鳴らします。この人は理詰めで戦ってはいけない相手なのだと。

聴いてるふりはするが聞く気はない。結論ありきで如何にすればそこまで相手を追い込めるか、如何にすれば相手が折れるか。反論を許し、激昂をも飲み込む。そうする事で相手が議論をした手を尽くした“気になって”鞘に収めればしめたもの。過程に興味はなく、結論にのみ拘る。相手を問答無用で丸呑みにする蛇のような狡猾さで、じわじわと絡め取っていきます。

八幡が機転を利かせ矛先を逸らし、その意図を汲んだ平塚先生によってとりあえずの時間稼ぎに成功。母は帰り際、雪乃にこう告げます

「あなたが頑張っているのはわかるわ。けれど、もう少し早く帰ってきなさいね。無理をする必要はないんだから」

頑張る雪乃を気遣って「無理をするな」と言うのではなく「無理をする必要はない」と言い放つ母親。それは言外に「頑張る必要などない」、ひいては「何もしなくていい」と娘に通告しているのです。
雪乃が自発的になにかを為そうとしたり望むことを言うたび、この母親は「自由にしていい」「気にしなくていい」と応えます。一見、娘の自主性を尊ぶかのような言動ですが、その実は「勝手なことをするな、余計なことを考えるな」という徹底的な抑圧でしかありません。

八幡が雪乃の姉・陽乃と初めて出会った時のことを思い出して下さい。
八幡のことを「彼氏?」と茶化し「ハメ外しちゃだめだぞ?」と雪乃にいたずらっぽく言う陽乃は、直後そっと妹に耳打ちしました。【3巻】

「一人暮らしのことだって、お母さんまだ怒ってるんだから」

母親はその優しい言葉とは裏腹に、娘たちに一切の自由を与えるつもりはないのです。



数日後。



帰路に就く八幡と結衣のふたり。スマホを見る結衣の足がぴたりと止まります。「……なんか、プロム、やばいみたい」グループラインに表示されていたのは、『学校側がプロム中止判断』という無情な一文。
八幡はすぐさま平塚先生に電話をかけます。



「プロムの件どうなってるんですか」
向こうが話すより先に言うと、ふーっと長い息の後、面倒そうな声が続いた。
「……後日、ちゃんと説明する。今はこっちでも対応中なんだ。落ち着いたところで……」
「いや、それ何日分のロスになるんですか。そんな待ってたら巻き返せなくなる」
「巻き返すも何もないだろ。それに、君はプロムを手伝う気でいるのか?」
「あ、ああ、いや……。後でまたやるとかなんとか言い出したら、超大変だから」
「……どうだろうな。それはないと思うが」
その声には確信がこもっていた。それを心中で即座に否定する。
詰められてもあれだけ強情張った一色いろはがそう簡単に諦めるものか。何より、雪ノ下雪乃がようやく口にした願いを、易々と手放したりするはずがない。させてたまるか




八幡への依存を克服するために自分の力で物事を成そうとした雪乃のアイデンティティはいま、余りにも非合理かつ非条理な圧力によって踏みにじられようとしています。雪乃が貫いてきた信念、八幡が一度は喪くし、そして取り戻した信念。それを問答無用に否定する、雪ノ下母の度を逸した傲慢さに八幡は憤りを露わにします。それを察した平塚先生は

「君に言わないわけにはいかんか。……中止の情報は雪ノ下の希望で君に伝えていない。これで察したまえ。そのうえで聞くが、それでもまだ君がプロムを手伝う理由があるか?」

平塚先生が放った「これで察したまえ」という言葉。それは比企谷八幡にある覚悟を問うています。それについては後述します。

「それでもまだ君がプロムを手伝う理由があるか?」と問われた八幡は理由を探します。ですが当たり障りのない、言い訳じみた言葉の連結に平塚先生は何の反応も示しません。考えに考え抜いて、“理由”と呼べるものが全て無くなった八幡。

あとは俺たちのことだけだ。共依存だからなんて最高にわかりやすい。頼られて俺の存在意義を確かめることができるなんて言いやすい。俺自身簡単に納得できる。だが、それは答えではない。共依存は仕組みだ。気持ちじゃない。言い訳にはなっても、理由にはなってくれない。
そこまで全部考えて、出し尽くして、絞り出して、心の中に残っているのは心残りだけだ。


クリスマスイベントの際、雪乃に拒絶され信念を喪い落ち込んでいた八幡に、厳しくも優しく手を差し伸べてくれた人は誰だったでしょう。



平塚静です。



東京湾をまたぐ橋の上で、彼女は路頭に迷う17歳の少年をこう諭しました。【9巻】

「わからないか。ならもっと考えろ。計算しかできないなら計算しつくせ。全部の答えを出して消去法で一つずつ潰せ。残ったものが君の答えだ。それが人の気持ちというものだよ」

そんな恩師の言葉を思い出したのでしょう。八幡はこれまで頑なに拒み続けてきた原始的感情の存在を、遂に無視できなくなります。勘違いであり、醜悪な自意識であり、理想の押し付け、期待と失望。浅ましくておぞましいものだと否定してきた、認めるわけにはいかないもの。



ーー人を“好き”になる。



比企谷八幡はまだ気付いていません。その「好きだ」という原始的感情が、全ての理屈を吹き飛ばし、なぎ倒し、正当化できる“究極的な理由”であることを。相手を思いやり、大切に想い、そして理解しようと思うことを。理解できるようになることを。


俺はわかりたいのだ。
完全に理解したいだなんて、ひどく独善的で、独裁的で、傲慢な願いだ。
けれど、もしも、もしもお互いがそう思えるのなら。
その醜い自己満足を押し付け合うことができて、その傲慢さを許容できる関係性が存在するのなら。


「俺は、本物が欲しい」



比企谷八幡が涙を流したあの日の嗚咽と慟哭。

その感情こそが、陽乃が嘲笑した“共依存”という概念をも粉々に打ち砕く信実なのです。



「……いつか、助けるって約束したから」



ロジックもリリックもかなぐり捨てた八幡が絞り出したこの言葉に、平塚先生は満足げな声それでいい。……時間を作る。すぐに来たまえ」と電話を切ります。彼の心の深淵に封印された感情が温かみをもって浮かび上がってくるのを察知して。

八幡は一雫の涙を流した結衣に背を向け、全力で走り出します。胸にある覚悟を秘めて。

もう一度引用します。

「……中止の情報は雪ノ下の希望で君に伝えていない。これで察したまえ

雪ノ下雪乃は八幡の助けを拒絶している。その結果、自らの存在意義を見失い更なる奈落へと堕ちていく運命をも受け入れながら。そんな雪乃を助けるからには、八幡は雪乃と決別する覚悟をもってそれに臨まなければなりません。雪乃にその存在を悟られることなく、目の前に立ちはだかる道理を無視したイレギュラーのみを排除する。その上で、八幡は雪乃の前から姿を消す。その後雪乃がプロムプロジェクトを成功させるとさせまいとに関わらず。

雪乃の自立を促す邪魔をせずに、助けるという約束を果たすにはこれしかありません。雪乃の意思に関係なく、八幡が自らの“理由”によってのみ衝き動かされる行動には正当性が生まれます。そしてその行動が雪乃に悟られることのないよう、彼女との接触を断つ。






永遠に







さて、13巻以降の展開予想です。
あくまで私個人の勝手な予想であることをご承知おきください。



本考察①の最後に触れましたが、八幡は雪ノ下“家”に穿つ楔を持っています。
比企谷八幡だけが持っていて、雪ノ下家にのみ威力を発する、それでいて強力な楔を。



総武高校入学式の日、比企谷八幡は雪ノ下家の所有するリムジンに轢かれています

折悪しく雪乃が同乗していたリムジンです。後々までそのことが影響し、雪乃に八幡と心を通わせることを躊躇わせ、結衣の八幡への気持ちを誘(いざな)った事故。ある意味、奉仕部三人の運命を決定付けた出来事でした。

地元の名士であり、県議会議員でもある父親。そして、そんな夫の立場を活用し社会的地位を高めていった母親。そんな雪ノ下家が、件の交通事故をどのような処理で和解に持ち込んだかはこれまで詳細には明らかになっていません。【3巻】における結衣への八幡のセリフ

「だいたい、お前に気を遣われるいわれがねぇんだよ。怪我したのだって相手の入ってた保険会社からちゃんと金貰ってるし、弁護士だの運転手だのが謝りに来たらしいし。だからそもそも発生する余地がねぇんだ。その同情も気遣いも」

にあるように、さすがに揉み消しを図ったわけではなく正式な事後処理をしたことはなんとなく窺えるのですが、対外的に印象が悪いので口止めを要求したくらいのことはあり得る話です。その辺りの事情がどうであれ、比企谷八幡は雪ノ下家にとってあまり歓迎すべき存在でないことは間違いありません



陽乃は、雪ノ下家が起こした事故の被害者が八幡であることを知っています。



母親は、雪ノ下家が起こした事故の被害者が八幡であることを知りません



正月に陽乃が偶然出会った八幡(と結衣)をエサに雪乃を呼び出した際【10巻】、母親は八幡と初めて顔を合わせました。「陽乃。お友達?」と尋ねる母親に陽乃は二人をこう紹介しています。


「そ。八幡ガハマちゃん


八幡の名字が比企谷であることを、陽乃は意図的に伏せています。陽乃は八幡との初対面の際、八幡が自己紹介した「比企谷です」ですぐピンときていたので【3巻】被害者の名前も含め事故の詳細について把握しているのは明白です。であれば、母親も同様であることは容易に想像がつきます。陽乃が普通に「比企谷くんと、由比ヶ浜さん」と母親に紹介するのを避けたのには、何かしらの理由があるはずです。そこにどんな目的があったかは分かりません。なんらかの対・母親の切り札に使える可能性を温存したのか、あるいは純粋に妹の雪乃が心を開いている相手の正体が露呈すると母親によって引き離されると危惧したのか、はたまた他の理由か。いずれにしても、以降現在に至るまで雪ノ下母が八幡の素性に気付いていないのは事実です。

つまり、比企谷八幡はあの冷静沈着で冷酷狡猾な雪ノ下母の牙城を崩せる唯一の存在なのです。

むろん、事故の被害を盾に地元の実力者で政治家でもある雪ノ下家を、ひとりの17歳少年が脅迫したりするのは無理があります。というか犯罪です。しかしその事実を相手に知らしめた上で、一介の高校生があるお願いをすることは決して無茶な話ではありません。



保護者会によるプロム中止の要請を、取り下げてくれと。



今回の保護者会(というより雪ノ下母)による学校への圧力とその結果は、プロジェクト初期の段階から学校および保護者会への通知と承認を経てきた生徒会側(いろは&雪乃)にとっては筋の通らない暴挙でしかありません。もっともらしい理由を羅列していますが理詰めの反論に耳を傾ける気は全くなく、頭ごなしに大人の勝手な都合を押し付け結論ありきで中止まで追い込んだのです。

そんな暴挙を牽制するには、こちらも筋の通らない力業で対抗するしかありません。
そう、かつて八幡らが体育祭運営委員会で採った『相互確証破壊』の概念です。

但し今回八幡がこの方法で要求するのはただひとつ、不条理な強制中止の撤回のみです。

いろはや雪乃ら生徒会側は然るべき手続きを踏んで内諾まで貰っていたのだから、いったんその状態まで話を戻す。これだけです。しかるのち、生徒会がプロジェクトを責任もって企画・運営していく。それにはもちろん保護者会側の懸案への対応も含まれます。いろはが、そして雪乃がひとつひとつの問題に対処して解決法を策定し、学校側も保護者会側も納得させ、その上で卒業生および在校生の期待に応えるプロムという名の謝恩会を遂行するのです。

それであれば、雪乃が望む“なにかを成し遂げ、存在意義を取り戻す”ことの邪魔にはなりません。雪乃は自信を取り戻し、「ちゃんと始める」ことができるようになるでしょう。



ですが、そのとき雪ノ下雪乃の側に比企谷八幡はいません



八幡は雪乃の望まない干渉を、雪乃への愛と誠意から敢えて行います。過剰な手助けをせず、道理を無視したイレギュラーのみを排除するという形で。しかし事後、万一その事実が露呈した場合に雪乃がそれをどう捉えるか。ともすれば芽生えた自立心が再び摘まれる恐れすらあり得るこの状態。であるならば、今回の達成感をきっかけに更なる自立心を雪乃が育んでいき、揺るがない自信を構築していけるようにする責任が八幡にはあります

加えて、八幡がこの“取引”を雪ノ下母に持ちかけた場合、母親は承諾する代わりに比企谷八幡が雪ノ下雪乃の前から姿を消すことを条件とするのは容易に想像がつきます。社会的立場のある雪ノ下家にとって、その存在が目障りでしかない男が娘の周辺にいることは許容できる筈がありません。

雪乃への愛を自覚した八幡にとって、それは耐え難い苦痛を伴うことです。

ですが八幡は躊躇することなく決断するでしょう。そう、これまでも雪乃を助ける為なら、自らが犠牲になることに一切逡巡することがなかったように。



これまで、結果としてぼっちになってきた比企谷八幡。
彼はここに至り、初めて自ら“ぼっち”になることを望むのです。

大切なもの、喪いたくないものから、自ら手を放して











……とまぁ思いつくままにキーボードを叩きましたが、これが現時点で私が予想している次巻以降の展開です。深読みし過ぎな面もあるやも知れません。いざ続刊してみたら全然まったく違ってて赤っ恥かく可能性も大いにあり得ます。


その時は指差して笑っていただければ光栄至極☆


さて、これにて全⑩回を数えた『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』原作ライトノベル最新12巻の考察を終えたいと思います。いやぁ我ながら延々だらだらとよく書き綴ったもんだと呆れるやら笑えるやら。今後は更新頻度をもうちょっと落ち着かせて、既刊全巻を多角的に考察していくスタイルで続けていこうかなと思っています。のんびりと続けていこうと思いますので、またお暇ができた時にでも覗いてみていただければ、そんなに嬉しいことはありません。

お付き合いいただいた皆様、手間暇かけてコメントしてくださった方々。
本当にありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。
m(_ _)m





P.S.

ちなみに今回の予想展開において、じゃあ八幡が雪乃の前から姿を消して由比ヶ浜結衣や一色いろはと付き合うなんて可能性があるかと言われたら、まぁ無いでしょうね。ていうかこの展開の上で他のヒロインと付き合ったら、道義的にどうよって話で俺なら八幡フクロやなw

……あ、でも川なんとかさんなら例外として認めてもいいかもしんない♪

個人的にはこの予想で八幡と雪乃が別々の道を歩んだとしても、最後の最後エピローグ的なところで将来またふたりがコンタクトすることを示唆してくれたら、それはそれで素晴らしいハッピーエンドだなとも思いますけどね。

“コンタクト”というのは、もちろん単にふたりが出逢うという意味だけではなく、心のコンタクトも含めてです。



それが比企谷八幡が求め、雪ノ下雪乃が望んだ【本物】であると私は信じます。

この記事に

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皆さん、こんばんは。無責任艦長・俺ガイラーです。

記憶がかなり曖昧なんですが、原作小説ではあの男の無責任な行動で大量の犠牲者出しまくってたと思うんですが、なんかアニメ版の絵柄見たらめっちゃ能天気な感じでその辺り深刻さはないのかなそれにしてはあんだけの艦艇が次々沈むのは如何なものかと、俺も負けず劣らず無責任な心配しかしていません☆



さて、俺ガイルこと『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』原作ライトノベル最新12巻の考察、今回で⑨回を数えます。よくもまぁこんな中身があるのか無いのかよく分からん考察を続けてるわと我ながらペシミスティックで非・現実的な思考をしてる私ですが、そんな自分をまったくもって嫌いじゃない今日このごろです。
とはいってもこの調子でいくと延々だらだらと続けてしまいそうなので、今回の⑨と次回の⑩で12巻単独の考察は一段落つけたいと思います。それ以降は1〜11巻も含めた既刊全巻を多角的に考察していく形でブログを継続していこうと構想中。ホラそこの貴方そんなうんざりした顔しないで、今後ともひとつ宜しくお願い致します。 m(_ _)m



【注】 以下、原作本文引用箇所は

モノローグ/太字濃茶

比企谷八幡/太字濃青
雪ノ下雪乃/太字濃桃
由比ヶ浜結衣/太字濃橙
一色いろは/太字濃緑
比企谷小町/太字淡桃
川崎紗希/太字淡青


で色分け表記していきます。ちなみに私がキャラ別にマーカーペンで色付けした配色と同一です。もちろんモノローグには(重要なワードに黄色マーカーする以外は)着色してませんが。

さらにご紹介するなら、今回引用のない他キャラの配色はこうなっています↓

雪ノ下陽乃/太字淡紫
雪ノ下母/太字濃紫
平塚静/太字淡橙
葉山隼人/太字淡緑


…なにどうでもいい?こりゃ失敬☆





★★★★★★★ ネタバレ注意!★★★★★★★





妹・小町の受験二日目も無事終了。打ち上げとばかりにご馳走しようとする八幡でしたが、小町は「お家帰って、家事とかしたーい!」と予想外のリクエスト。帰宅早々、掃除洗濯に夕食の準備と走り回ります。感心しきりの兄・八幡に対し小町は

折り目正しく正座して、膝の上にちょこっと手を乗せた
「なに、なになんなの」
背筋を伸ばして、まっすぐこちらを見つめる小町の姿に、思わず動揺してしまった。そのせいで膝の上で寝こけていたカマクラも何事かと起きて、ててっと俺から距離を取る。
狼狽する一人と一匹をよそに、小町は涼やかな笑みを浮かべていた。
「お兄ちゃん、ありがとう。お世話になりました」
そう言って、しずしずと三つ指ついてゆっくりとお辞儀した
それを見て思わず息がとまる。思考も止まっていた。小町の行動がまったくの予想外だったから、だけではなくて。その所作が普段の小町から想像できないくらい綺麗だったから、たぶん見惚れていたのだと思う。


12巻における、小町最大の見せ場です。彼女の真意は明白で、これまでの感謝と共に「もう小町の面倒は見なくていいから、お兄ちゃんはお兄ちゃんの幸せを見つけてほしい」と言っているのです。八幡が長らくぼっちだったことには、多少なりとも自分が一因となっているという憂いもあったのでしょう。

ちなみに小町はゴミいちゃんを幸せにしてくれるなら相手はこの際誰でもいい!的な究極的ブラコンでありまして、兄妹に雪乃を加えた組み合わせでも途中で忽然と消えるし、結衣と八幡を二人きりにする画策もフツーにやらかします。大抵の人がその攻撃性に怯む川崎沙希に対してすら「沙希さんがお兄ちゃんと結婚したら」などと、川なんとかさんが動揺しまくることをしれっと言ってのけてます。沙希の弟・大志が八幡をやたらと慕っている(沙希いわく「大志があんたのことばっか話すから……」)ので、そのあたりも小町的にはポイント高いのでしょうね。

ちなみにこの時の小町の所作は、雪乃を見守る八幡がその姿をオーバーラップさせる伏線にもなっています。八幡のお兄ちゃん気質がまたひとつ、後に陽乃によって暴露される共依存の根幹として形成されていったのです。



ちなみに比企谷小町、川崎大志ともに無事合格
合格発表エピソードでは心温まるシーンが綴られています。



イメージ 1



さて、小町合格の熱も冷めやらぬ同日放課後、八幡は生徒会長・一色いろはの「手伝って欲しい」という依頼(というより強要)に押し切られた形で生徒会室へ足を向けます。そこには雪乃から手伝いを頼まれたらしき結衣の姿もありました。
今回生徒会のプロムを手伝うにあたり、自己の存在意義を賭けた雪乃は並々ならぬ姿勢で臨んでおり、終始冷静かつ淡々と指示を出して物事を進めていきます。それがたとえ、結衣や八幡に対してでさえも。

ですが虚を突かれたのか、この八幡が生徒会室に現れた時に一瞬だけ雪乃は驚いた表情を見せます。

雪ノ下が最初に声かけるのは由比ヶ浜だろうから、由比ヶ浜がいても特に不思議はない。由比ヶ浜は俺が来ることを一色から聞いていたのだろう。おーと言いつつ、軽く手を振ってくる。
雪ノ下はと言えば、俺の姿を認めると、少し驚いたように目を見開いて疑問と戸惑いの混じった声音でぽつりと呟いた。
「比企谷くん……」

この時結依や八幡が召集されたのは、プロム紹介動画撮影の為に男女ペアでダンスを踊るキャストの人員確保が目的です。それもバックグラウンドで踊る、いわゆる“モブ”としてではなくメインキャストのペアとして。そのことがわかる雪乃の説明が以下の部分です。↓

「全体でダンスしている画を撮りましょうか。カメラで追うメインを戸部くんと一色さんでやってみてもらえる?」
「……それと、押さえでもう一パターン。由比ヶ浜さん、お願いしていいかしら。比企谷くんも」

(中略)
「えっと……、あたしたちでいいのかな」
「そうね、多少目立つ役どころだから他の人たちに頼むのは少し気がひけるの、お願いできると助かるわ」


結衣に手助けをお願いしたのは雪乃ですね。同じ日の昼休み、八幡らの教室を訪れて沙希と話をしている雪乃を遠巻きに見ていた結衣に、三浦が「あんた、いいの?」と気遣いの言葉を投げかけると「この後私も部室行くからだいじょぶ」と応えています。雪乃が生徒会に参加して以来、奉仕部の部活動は休止状態なのにです。雪乃に呼ばれていたのでしょう。

一方、八幡を召集したのはいろはです。動画撮影の説明を八幡にした際、雪乃はこう言ってます。

「それで、動画に出てくれる人が欲しくて、人選を一色さんにお願いしていたのだけれど……」

つまり、八幡の参加は雪乃にとって想定外でした。しかもメインキャストの一翼として結衣とともに踊る相手なのです。映像も(加工前のオリジナルを含めて)後々まで残るわけですから、雪乃としては心中穏やかではありません。指示を出す時には平静さを取り戻してますが、生徒会室に八幡が「……なんか一色に呼ばれてな。まぁ、手伝いに来たわ」と言いながら現れた時は、元々自立のために八幡に頼ることを避けようとしていたことも相まって戸惑いが表に出てしまったのでしょう。


さて、この一連のシーンではいろはの挙動にも注目です。どんな手伝いをして欲しいのか、ろくに説明をしないままに八幡を呼んでいたいろは。八幡と雪乃から冷たい視線を投げかけられた生徒会長は、ぺこぺこ頭を下げながら

「すいませんごめんなさい今回は割りとマジで反省してます違うんですちょっと別の話をしていたらそっちに意識が……

とまくしたてます。“別の話”というのはもちろん、「わたし、先輩の妹じゃないですからね」のあの件でしょう。八幡を想うがあまり我を忘れたあざとヒロイン、なかなかにお茶目なところを見せてくれますね。しかしいろは、今回は結構真剣に反省しています。

「いろんなことが順調だからっていうか、気づかないうちにいろんな事やってもらってるから、わたしちょっと油断してました。たぶんこれだけじゃなくて他にもやらかしてる気がします。このままの調子でやってると、ほんとに雪乃先輩に頼りきりになってそうです……」
ひどく沈んだ声音に悔恨が滲んでいる


さすがに気の毒になったのか、慰めの言葉をかける八幡。しかしいろはの表情は晴れないばかりか、きゅっと唇を引き結んでいます。「……ちょっとマジで気を引き締めますといういろはの声音には、静かな決意が見て取れるのでした。

いろはは雪乃の決意を目の当たりにして驚きに目を瞠り、雪乃がこれを機に自分に自信を取り戻し、“ちゃんと始める”ことを目指しているのを知っています。ここで雪乃が着々と物事を進めていき、自立心が育っていくのはいろはにとってあまり良いことではありません。なにより自らが発案して来年の卒業シーズン(再来年ではない)に向け実現を目指しているプロジェクトなので、自分が主導権を握って成功へと導きたいのです。

事実このやりとり以降のいろはは、細々したことでも自分から積極的に動き出します。嫌々ながらも戸部と踊ったり、踊ることに躊躇する八幡を鼓舞しに駆け寄ってきたり、手を叩いて周囲に号令をかけ仕切ったり。後日チェックが済んだ写真を受け取れば、すぐに自らパソコンを操作して特設サイト作成にかかります。これまでの『きゃるるんのほほん後はよろしくあっ葉山せんぱーい♪」ないろはとは別人のようです。クライマックスにおける雪ノ下母(頼むから公式に名前を発表して欲しい面倒くさいこの表記)との対峙における、相手に噛みつかんばかりの姿勢もそんな決意の現れでしょう。



そんなこんなで。



後日写真を確認した八幡と結依はお役御免。突然暇を持て余したふたりは数日前にも味わった“妙な間”が空いてしまいます。その時の気まずさに加え、かつて交わした約束も結局しっかりと果たしていない負い目から八幡は「……どっか寄ってくか?」と誘ってみることに。
マッ缶マニアな八幡、マッ缶デザインの自販機を見に行きたいと結衣に告げます。そう、小町に同じ水を向けたら無下に却下された、あのマッ缶ツアーです。すわ今回も相手に引かれて玉砕かと思いきや、結衣はうんとすぐに首肯して話が決まりました。その反応に驚く八幡。結衣の八幡に対する想いに気付かない、いや気付こうとしない哀しき性がそうさせています。

なのでマッ缶専用自販機で結衣の自撮りにツーショットで収まった際に「……その写真、送っといてくれ」と言ったはいいが、肝心の写真が白飛びしまくりーの犬耳付きーの犬鼻犬ヒゲもトッピングされーのといった加工されまくりの写真でも、苦笑するだけでオリジナルのデータが欲しいなどとは思いもしません。
結衣は結衣で、おそらく素の写真を八幡に渡すことは雪乃のディスティニーランド記念写真を見てしまった以上、後ろめたくてできないのでしょう。どこまでもすれ違う三人は、どこまでも“それぞれの役割”を演じてしまうのです。

将来の夢。有り体のことをお互いに挙げた後、結衣はふいと八幡に背中を向け

「……あと、お嫁さん、とかね」

と呟きます。窓から差し込む光がベールのように降り注ぐ場所で。

「それも、俺と大して変わんねぇな。……専業主夫、夢があるよなぁ」
「そういう言われ方すると全然夢がない……」
由比ヶ浜はかくっと肩を落として、呆れたようにふっと笑う。笑ってくれたのだと思う


結衣の言葉にはどんな意味があるのか。深い意味があるのかも知れないし、意味なんてまったく無いのかも知れない。八幡はそこに思考を巡らすことを本能的に避けています。その先にあるのは勘違い、そして喪失、のちに絶望、最後は孤独。嫌というほど味わってきた道。大事な存在になったからこそ、憎からず思うようになったからこそ喪いたくない。だから気付かない、気付きたくない。とぼけて、茶化して、なかったことに。そんな自分の真意を汲んだか汲まずか、優しい女の子・結衣は笑ってくれたのだ。八幡は漠然とそう悟って視線を落とします。眩しい微笑みを直視することが憚れて。



手作りの贈り物に

本当に、心が揺れる

のも同じ理由。真摯に、誠実に、相手のことを想って手間暇をかけたものに心揺れないわけがない。だがここでも八幡はブレーキをかけています。そう、結衣の「それでも……、ただのお礼だよ?」というあの言葉に甘えて





次回の考察ではクライマックスの雪ノ下母との対峙からラストシーン、そして次巻以降の展開予想を綴っていき、12巻考察のコンクルージョンとさせていただきたいと思います。

この記事に

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皆さん、こんばんは。ニワカ俺ガイラーのVSVWです。語源は内緒です。

考察⑥の前置きに書いたマッペ(マックスコーヒー・ペットボトル版)、実は半分以上残ったまま我が家の冷蔵庫に鎮座しています。あまりの甘さに誰も口をつけようとしません。そのうちシンクにジャーとポイしてアディオスエミーゴするディスティニーでしょう南無阿弥陀仏☆



★★★★★★★ ネタバレ注意!★★★★★★★



さて、俺ガイルこと『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』原作ライトノベル最新12巻の考察、今回で(比企谷)⑧幡でございます。あれいま俺的にすっげーポイント高い駄洒落言ったんちゃう?ちゃう?ちゃう。ハイそうですかフン☆

では気を取り直して、前回の考察⑦における八幡・雪乃・結衣の心情と信条をベースに12巻の解釈を進めて行きたいと思います。



【注】 以下、原作本文引用箇所は

モノローグ/太字濃茶

比企谷八幡/太字濃青
雪ノ下雪乃/太字濃桃
由比ヶ浜結衣/太字濃橙
川崎紗希/太字淡青

で色分け表記していきます。



11巻ラストから続く日の落ちた公園のシーンです。過ぎた日々を懐かしむように、二度と取り戻す事は叶わぬことのように振り返る三人。時に楽しそうに、時に寂しげに、そして時に隠し事に後ろめたさを感じながら。

やがて八幡の問いかけを発端に、雪乃は自分のことを話し始めます。

彼女がかつて望んでいた、将来の夢。それは考察①でも解説したように父の後を継いで政治家になることでした。しかしその道は、(娘たちの将来を含む)全てを意のままにコントロールする母親によって閉ざされてしまったのです。有無を言わさず後継者に陽乃を設定し、雪乃にその意思を話す機会さえ与えることなく“自由”という名の牢獄に幽閉した母親に。

しかし結依にその牢獄の鍵を解かれ、八幡に扉を開け放たれた雪乃は語り始めます。

「でも、ちゃんと言うべきだったんでしょうね。それが叶わないとしても……。たぶんきちんとした答えを出すのが怖くて、確かめることをしなかったの」
雪ノ下の声音には懐古が滲んでいる。あるいは、後悔と呼ぶべきなのかもしれない。どちらにしろ、取り返しのつかない過去のことだ。

この時点で、いや以前からずっと、そして今後においても、雪乃は自分の夢が叶わぬことを悟っています。それは終始過去形で語るその口調で明らかでしょう。
これまでと違うのは、ここから。

けれど、彼女の瞳はちゃんと前を向いている。
その視線の先にいるのは由比ヶ浜とそして俺だ

「だから、まずはそこから確かめる……。今度は自分の意思でちゃんと決めるわ。だれかに言われたからとかではなく、ちゃんと自分で考えて納得して、……諦めたい

ここで雪乃が言わんとしていることは二段階あり、その指し示す対象も違います。「まずはそこから確かめる」の部分が指すのは前述の父の仕事について。そして後半の「今度は自分の意思で〜」以降の部分は、八幡に対する自分の気持ちについて「自分で納得して諦めたい」と言っているのです。

雪乃は、八幡のことが好きです。ですが、八幡が自分のことを好きだとは思っていません。そこに踏み込むのは、八幡に振られる(また選ばれない)ことを意味します。ですがそれを恐れて馴れ合いの関係・虚偽の関係を続けることは雪乃自身、八幡を糾弾してまで否定したことです。加えて、八幡はその過ちを雪乃(と結依)の理解によって正し、かつて雪乃と唯一共有していた信念を取り戻しました。さらに言えばその結果、11巻ラストでの結衣からの『現状維持』提案を八幡が蹴り、今に至っていることも雪乃は重々承知しているのです。

――ならば、私もその信念に応えるべき。そう雪乃は決意したのでしょう。

「……私の依頼はひとつだけ。……あなたたちに、その最後を見届けてもらいたい。それだけでいいの」

つまり、雪乃は「まず中途半端に諦めのつかない状態になっている将来の夢について、はっきりと終わらせる。しかるのち今自分が抱えている問題(伝えることのできていない八幡への気持ち)にどう整理をつけるか、自分の意志で決める。誰かに言われたり(結衣の『現状維持』提案を含む)、依存してでもなく。自分の足できちんと立って、考えて、納得し、そして諦めたい」と言っているのです。そんな独り立ちする自分を見届けて欲しい、と。

そんな雪乃に、結衣は「ゆきのんの答えは、それ、なのかな……」と問いかけます。

結衣は、雪乃が八幡のことを好きなのを知っています。加えて雪乃が八幡が自分のことを好きだとは思っていないことも知ってます。その上で雪乃の意思表示を正確に理解し、彼女の八幡を諦める覚悟に「本当にそれでいいの?」と気遣っているのです。結衣は八幡のことが好きですが、同時に雪乃のことも大好きですからね。
なので雪乃が未練を絞り出すように「もしかしたら、違うのかもしれない……」と呟いた瞬間、思わず「だったらさ……」と言いかけます。「だったら、諦めずに頑張ってみたら?」と言いたかったのでしょう。ですが、続く言葉は口から出てきません。

言いかけたが、雪ノ下と目が合うと、由比ヶ浜は声を詰まらせた。後に続くはずだったろう言葉は消えていく。

雪乃を応援しその願いが成就することは、結衣のそれが叶わぬことと同義です。心優しい女の子だからこそ出た「だったらさ……」という言葉、“ずるい”女の子だからこそ声を詰まらせて出てこなかった言葉。どちらも由比ヶ浜結依らしい、本心からの言葉であり沈黙だと言えるでしょう。


「一度実家に戻って、きちんと一から話をしてくる」という雪乃に、八幡は「……それが答えでいいんだよな」と声をかけます。

八幡は、雪乃のことが好きです。が、その自覚はありません。ましてや、雪乃が自分のことを好きだなどとは想像もしてません。このシーンで八幡が理解したのは、雪乃が自分で選び自分で決め、自分で行動を起こすこと。たとえそれが、何であれ。

雪乃は応えます。

「どんなに時間が経っても、諦めきれていないから……、だから、たぶんこれは私の本音なんだと思う。……それは間違いでないと思うのだけれど」
言い終えて、雪ノ下はちらりと俺を窺うような視線を送ってきた

少々ややこしいですが、ここで雪乃が言う「諦めきれていない」は将来の夢ではありません。八幡への気持ちです。八幡が自分の方を向いてない(と雪乃は思い込んでる)こと、結衣が八幡のことを好きであること。そして何より、自分に自信がないこと。そんな理由で中途半端に身を引いていても、馴れ合いのような日々を送っていても、八幡への気持ちが燻り続けている。それにしっかり向き合って、自分なりに決着をつけたい。

重複している引用ですが、先ほど挙げた雪乃のこのセリフを思い出して下さい↓

「でも、ちゃんと言うべきだったんでしょうね。それが叶わないとしても……。たぶんきちんとした答えを出すのが怖くて、確かめることをしなかったの

これはもちろん将来の夢について述べているのですが、もうひとつの意味が重なっているのは明白です。それが何であるかは論を待たないでしょう。

いま私は自分なりに一生懸命考えて、本音をぶつけて、本心を晒している。でも、この段階で核心となる彼への気持ちを言うわけにはいかない。果たして彼に分かってもらえるのだろうか。

12巻冒頭の、雪乃の心情を綴った幕間にこうあります。

言わなければわからない。言ったとしても伝わらない
だから、その答えを口にするべきだ。
その選択を、きっと悔やむと知っていても。

八幡に向けた窺うような視線には、自分の言わんとすることが彼に伝わって欲しいという雪乃の切実なる想いが込められているのです。

「いいんじゃねぇの、やってみたら」
どこか自信がなさそうな眼差しに、軽く顎を引いてそう言った。すると、雪ノ下はほっと胸を撫で下ろす
「うん、わかった。……それも、答えだと思うから」
黙って雪ノ下の横顔を見つめていた由比ヶ浜はすっと視線を外し、足元に目を向けた。そして、確かめるように何度もゆっくり頷いた。
「ありがとう……」
静かに呟いて、雪ノ下は頭を下げる。

八幡は雪乃の決意を漠然と理解し、彼女が問題解決へ向け能動的に動くことを歓迎します。一方、結衣は雪乃の真意を完全に理解した上でその決断を受け入れました。他の誰よりも大切な二人に背中を押され、晴れ晴れとした表情で前だけを見据えて立ち上がる雪乃。

その足が向かう先は陽乃がいる自分のマンション、そして母親のいる実家です。



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さて、次なる章にて川崎沙希が登場します。それにしてもアニメ版での川なんとかさんの空気っぷりには製作側に言いたいことがいっぱいです。いや、私は既に申し上げた通り、つい最近、しかもアニメ版から入ったニワカですよ?それは否定しません。しかしそれですっかりハマって、原作とコミック版まで全チェックした者としては物申さずにはいられませんね、ええ。

夜のバイト(うわーいかがわしそうな響きw)エピソードやっといて、なんで大志の進路相談エピソードやらんのだ。サイゼに行く道すがらの八幡と沙希の会話とか、総武高校を選んだ動機を八幡にぶちまけられて沙希が焦るところとか、小町に「お兄ちゃんと沙希さんが結婚したら…」なんて言われて動揺しまくるところとか、動く画とあの声で拝みたかったよワタクシは。

何より文化祭での「愛してるぜ、川崎!」まるごとカットする暴挙に怒り新党いや心頭。そりゃ私はニワカですよ?アニメから入ったから、最初はそこまで愛すべきキャラであることにも気付かなかったのも事実です。でもこんな超ド定番のツンデレおねーさんを無駄にするなんてなんつー勿体無いことをうんたらかんたら。

……と、いうわけで。

このまま続けてると、このテーマ(というより愚痴)だけで考察《38》とかまでいってしまいそうなので自重します。もし三期やるならサキサキ活躍させてね製作委員会の皆様。

……なに原作にない活躍はさせられない?
やかましいなんとかしろ☆



さて。



小町と川崎大志の総武高校受験二日目。八幡は妹・京華を連れた沙希と邂逅、なんとなく一緒にお茶をすることになります。やたらとなついてくる京華にチョコクロワッサンを買い与える八幡を、沙希は遠慮がちに窘めます。

「あんまりさ、甘やかさないでよ」
「……い、いや、たまにはね?」
「たまにはっていうか、あんたいつもそうじゃん」
「いつもってことはないと思うけどな。……京華だけ特別、的な。あと小町」
「……自覚ないんだ

川崎沙希は夜のバイト(いや健全なバイトでしたよ?夜遅いってだけで)の一件を八幡ら奉仕部に解決してもらったおかげで、疎遠になっていた弟や妹との絆を取り戻しました。以降、彼女は八幡を意識しまくっています。目が合えば赤面、声をかけられれば飛び跳ねるように驚き、ちょっと強い口調で話されるとオドオドと不安げに。朝、思わず自分から「……おはよ」と挨拶してしまい、そのまま机に突っ伏して照れまくるなんて一幕もありました。やだなに可愛い過ぎるぜヤンキーサキサキ(別にヤンキーではない)。

【8巻】に興味深い描写があります。一色いろはの生徒会長選挙問題で、依頼を完遂するために会長選に立候補すると言い出した雪乃と結衣を止めるべく、小町が兄・八幡のサポートのために招集したメンバーに川崎姉弟の姿もありました(注:アニメでは弟の大志は登場しません。ここも不満でブツブツぶつぶつ…おっといかん考察《45》くらいまでいってしまう)。

「……あたしの意見なんていらないでしょ」
「俺には必要なんだよ」
「そ、そう……。じゃあ、別に、いいけど……」
「悪いな」
「いいよ。あんたはあの部活でやってるほうが……、合ってるし
「はぁ?なんで?」
「な、なんでもない。最近らしくなかったから思っただけ」

沙希が、普段から八幡のことを目で追っていることが分かるセリフです。加えて、八幡の世話焼き気質というかお兄ちゃん気質というか、甘やかし気質もこの時点で見抜いてますね。故に八幡から「お前が生徒会長にいいかもって思う奴、名前挙げてみてくれ」と言われた際、葉山をはじめ数人の名前を挙げた最後に「あと……、あんたとか」と付け足しています。

ついでに言うと一色に生徒会長をやる気にさせる説得材料としてツイッターを悪用した方法を考えついた八幡を睨みつけ、うまくいくかどうか置いといてさ、ばれたらあんた、やばいんじゃないの?」と真剣な表情で心配する姿もありました。


文化祭実行委員会に続き体育祭の運営委員会にも携わる八幡【6.5巻】

「委員会ね……。前もそんなのやってたけど、よくそんな面倒そうなことやるね
「そういう部活なんだよ」
「……それだけが理由?」
「あん?ほかにないだろ」
「そ……」
「それがどうかしたか?」
「いや、別に。あたしにはわかんないなってだけ」

なんていうシーンもありましたね。

今回出番が少ないながらにも核心をついた言葉を残した川崎沙希。そんな彼女の素朴な一言は12巻終盤において、陽乃の放った爆弾と共に八幡の頭蓋を揺さぶる一翼となってしまうのです。



次回も引き続き主要三人を軸にストーリーを考察していきます。

この記事に

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こんばんは。

毎度おなじみニワガイラーこと装甲騎兵ニワムズです。絶対死なない事が保証されてる主人公って究極のチートじゃん炎のさだめじゃん。そろそろ平塚先生以外も分かってくれそうな年代に差し掛かってきた気がしてるどうも俺です。

さてさて、俺ガイルこと『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』原作ライトノベル最新12巻の考察もいつの間にやら第⑦回。いつまでチンタラ書いてんだよとお叱りを受けそうですが、「叱られることは悪いことではないよ。誰かが君を見てくれている証だ」という平塚先生の言葉を胸に刻み、今日もだらだらとタイピングしていきたいと思います。

見ててね。この際誰でもいいから☆

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★★★★★★★ ネタバレ注意! ★★★★★★★





という訳でいよいよ主要三人の言動・心情の考察に入っていきたいと思います。それにしても本質を見抜くのが超難解な俺ガイル、一番の理由は語り部である比企谷八幡のモノローグによるミスリードです。なにしろこの男、アイデンティティが捻くれてる上にスプレマシーに根性曲がりでアルティメイタムな勘違い野郎です。どこの記憶喪失スパイだよ。

なので読み進める上でモノローグ内の真実と思い込みと勘違いを見抜く必要があります。いわゆる“Unreliable Narrator(信頼できない語り手)”というやつで、ミステリーでは禁じ手一歩手前の手法ですね。要するに八幡の口…というか思考を借りて、作者である渡航氏がウソつきまくってるんです。そんなんで犯人見破れなんてムチャ言うんじゃねえと小一時間(略 いやこれミステリーじゃないけどw

とにもかくにも、三人の思考を推察する上で鍵となるのは勿論それぞれの恋愛感情です。
考察②で言及した内容と被りますが、神視点(読者)の立場から私の考察を述べます。



《比企谷八幡》
雪ノ下雪乃が好き(だが、その自覚はない
雪ノ下雪乃が自分のことを好きだとは思っていない
由比ヶ浜結依が自分のことを好きだとも思っていない

《雪ノ下雪乃》
比企谷八幡が好き(自覚もしている)
比企谷八幡が自分のことを好きだとは思っていない
比企谷八幡は由比ヶ浜結依のことを好きだと思っている
由比ヶ浜結衣が比企谷八幡のことを好きなのを知っている
つまり比企谷八幡と由比ヶ浜結衣が相思相愛だと思っている

《由比ヶ浜結衣》
比企谷八幡が好き(もちろん自覚している)
比企谷八幡が自分のことを好きだとは思っていない
比企谷八幡は雪ノ下雪乃のことを好きだと勘付いている
雪ノ下雪乃が比企谷八幡のことを好きなのを知っている
つまり比企谷八幡と雪ノ下雪乃が相思相愛だと知っている



根拠となるのは各人の言動ですね。八幡は後述するとして

雪乃は考察⑥で羅列した、いろはの八幡へのあざとアピールに対する反応以外にも沢山あります。ふと目が合うなんてしょっちゅうですね。そのたび慌てて視線を逸らしたり俯いたり。頬を朱に染める事もあります。林間学校に体育祭やマラソン大会さらにはバレンタインなど、雪乃が無意識に八幡を目で追っていたことを示唆する描写もありました。
決定的なのはクリスマス前にディスティニーランドで八幡と二人きりで乗ったアトラクションの記念写真を(八幡にも気付かれぬよう)こっそり購入して隠し持っていたことでしょう。ライドに乗る直前、八幡に「苦手ならやめとけ」と言われても引き返すのを頑なに拒んだのも、最後に写真が撮られることを知ってた故にどうしても乗りたかった(写真が欲しかった)と推察できます。単なる依存の対象であれば、こういう原始的感情に促された行動に出るとは考えにくいですよね。



結衣に関しては言わずもがな。考察②でも触れましたが12巻ふたつめの幕間で結衣の「ゆきのんはヒッキーのことが好き」は確信から確証に変わりました。同幕間にて彼女はこうも綴ってます。
(※以降、原作からの引用は太字濃茶

ほんとはずっと昔から気づいてた。あたしが入り込めないところがどこかにあって、何度もその扉の前に立つけれど、それを邪魔しちゃいけない気がして、ただ隙間から覗いて聞き耳をたてることばかり。

この『隙間から覗いて聞き耳を立てる』ですぐ思い出されるのは、マラソン大会後の保健室【10巻】ですね。怪我の処置後に互いの顔がくっつきそうなほどの距離で固まった八幡と雪乃を、扉の向こうから見ていた結衣はどんな気持ちだったのか。いつものように軽口を叩き合い、互いの進路について語り合う声を聞いていた結衣はどんな表情だったのか。

それ以外にも符合するシーンがあることをご存知でしょうか。

文化祭終了後【6巻】、実行委員長の相模南をエンディングセレモニーに引っ張り出す為に敢えて悪役を演じた八幡が奉仕部部室に入ると、そこには雪乃がいます。彼女は「あら、ようこそ。校内一の嫌われ者さん」と茶化しますが、実は生徒でただひとり八幡のしたことの真意と意義を理解していて、その表情は穏やかで優しさに満ちています。そして八幡の“ある意味”を込めた「嘘ついてもいいぞ。知ってるものを知らないと言ってもいいんだ」との言葉に

「……嘘ではないわ。だって、あなたのことなんて知らなかったもの」
いつかのやりとりの焼き直しのように思えた。
けれど、違うのはここから先。
雪ノ下が顔を上げた。
俺を真正面に見据え、微笑んだ。
「……でも、今はあなたを知っている」


原作前半/アニメ1期屈指の名シーンです。半年近い期間をかけて、ようやくお互いの存在を“知った”ふたり。相互理解の欠片(かけら)を得て、距離が縮まった似た者同士。そんな心の会話を、魂の共鳴を、由比ヶ浜結衣は扉の向こうで聞いていたのです。

直後、部室の扉がとんとんとノックされます。入ってきたのは二人を後夜祭に誘う結衣。


違和感を感じませんか?


由比ヶ浜結衣は、奉仕部の部員です。彼女が部室の扉をノックして入ってきたのはクッキーの焼き方を請うた初登場時と、後日お礼を言いにきた時だけです。この時まだ結衣は奉仕部部員ではありませんでしたのでノックは当然です。しかし正式に入部して以降、彼女は部室に入る際にノックなどしていません。なのに、この文化祭後に八幡と雪乃が語り合ってる場に入る際にはノックしたのです。あたかも「今から私入るよ〜」と二人に知らせるかの如くに
(※原作における描写。アニメ版ではノックしていない)

空気を読むことに長けている結衣は、八幡と雪乃の間にある“なにか”をいち早く察知していたのです。そして、それは月日を重ねるごとに形を帯びていったのでしょう。
ふたりが最小限の意思疎通で相互理解を得るのを幾度となく見てきました。阿吽の呼吸で行動を起こすのを見たのも一度や二度ではありません。視線を交わし意味深にそれを逸らしたり、自分にはできないような本音のぶつかり合いをしたり憎まれ口を叩き合ったり。それらひとつひとつの出来事が二人の間を少しずつ縮めていたと焦り、胸を押し潰されそうな不安を抱えて日々を過ごしてきたのです。

雪乃の寝室で件の写真を見つけた時の、結衣の悲哀はいかほどのものだったのでしょう。



最後に、八幡です。



冒頭に書いたように、八幡のモノローグはトラップだらけです。トボけるゴマかす話を逸らすは当たり前。それでも八幡の捻くれモノローグを読み解いていくと、雪乃に対する時と(結衣を含む)それ以外の女性に対する時では明確に差異を見て取れます

第一に、女性キャラと接触あるいは極端に接近した(おちょくられたり、あざとアピールされたりも含む)場合の反応です。

雪乃以外とこういったシーンがあった際、八幡は激しく反応します。頬を赤らめ、動悸は高まり、心の中で絶叫したりもします。それは結衣だけでなく陽乃やいろは等、八幡が異性として意識していない対象においても同様です。しかしその直後、心理的ブレーキをかけてそれら全てを“勘違い”であると一蹴するのが彼なのです。文化祭で結衣に「待たないで、……こっちから行くの」と言われた際に『どくりと、心臓が跳ねた。内側から食い破りそうなくらいに痛い』とまで思っておきながら、修学旅行の新幹線で結衣が肩に手を置き密着してきた時には『ぞわりと寒気が走る。(中略)なんでこいつはこういう行動取るんだっつーの。そういう無邪気な行動がですね、多くの男子を勘違いさせ、結果、死地へと送り込むことになるんですよ?』という有り様です。
過去の恋愛(厳密には一方的な理想の押し付け)トラウマにより「自分の感情の高まりは勘違い、相手のアクションに深い意味はない」とラベリング。そうすることによって心の平穏を護り(対象の個人も含む)周囲から嗤われるリスクを排除し、傷つく脅威を遠ざける。誰も信じていない、誰も信じたくない。何より、自分の気持ちを信用していない。雪ノ下陽乃をして「理性の化け物」と評す、比企谷八幡という哀しきスタンドアローン人格がそこにあるのです。

一方で、雪乃と肉体的・心理的コンタクトがあった場合の反応は明らかに違います。まず他の女性に対する時のように、大袈裟に動揺したりしません。何より、その後自分を戒め心理的ブレーキをかけるというのが皆無です。雪乃のラーメンの濃厚スープを飲む喉の動きが艶かしくて思わず目を逸らすなんて男くさい反応もしたりしています。


第二に、八幡は事あるごとに雪乃に想いを馳せています。

川崎沙希と一緒に歩いてる時も。
平塚先生とラーメンを食べに行った時も。
カマクラ(猫)とサブレ(犬)の追いかけっこからすら、雪乃の姿を連想したり。
鶴見留美に雪乃を重ね、助けてやりたいと思った事もありました。
夏休み明け、新学期初登校時に延々と綴られるモノローグはその際たるものと言えます。

もちろん恋愛感情を吐露してではありませんが、ぼっちを自負していた八幡がこれだけ特定の人物(それも女性)について興味を持ち絆を感じ敬意を抱いてる事は特筆すべき事でしょう。


第三に、八幡は雪乃と葉山との関係性については嫉妬心を露わにしています。

雪乃と葉山が付き合ってるという噂が流れた時は、無責任な女子の井戸端会議が耳に入るたび、『首を竦めたくなるような不快感がぞわりと這い寄ってきた』
雪乃から雪ノ下家と葉山家の関係および過去の三人の事を説明された時、『なにかひどく胸の悪い想像をしてしまいそうだった』ので話を打ち切った。
昔雪乃が葉山にチョコをあげたことがあると陽乃が暴露した時も、三浦と一色を気遣って苦笑いをして頭を掻くが、『不思議なことに、いつのまにか拳は強く握り締められていて、髪を梳くのに難儀した。消化不良を起こしたように胃の奥でごりごりと何かが蠕動する不快感があった』


そして最も大きなポイントとして、八幡は雪乃を救うためなら自分が泥をかぶることに一切の躊躇も後悔もありません

文化祭実行委員において、自ら悪役を買って出てでも雪乃を助けました。それも二度。いや相模をエンディングセレモニーに引っ張り出したのも雪乃の為であり、それを含めると三度


加えて、雪乃の信念・存在意義を賭した覚悟に不用意に触れた葉山の言葉「誰かを助けるのは、誰かに助けられたいと願っているからじゃないのか」に八幡は逆上します。既に雪乃は八幡のやり方を否定して、ふたりの間には取り返しのつかない溝が横たわっているにもかかわらず。

もし仮に、比企谷八幡がそうであったとしても。
それ以外の人間もそうであるとは言わせてはならない。そんな紛い物みたいな感情で、俺も、彼女も今までやってきたわけじゃない。



八幡本人は雪乃への気持ちを自覚していません。
しかし雪ノ下雪乃に対峙する彼の言動と思考には、他の誰に対する時とも違う唯一無二の原始的感情がその冷めた胸中に燻っていると私は感じているのです。



12巻ラストにおける、窮地にある雪乃を助けんとする八幡の“理由”。

そんな普通に当たり前すぎる理由で、ロジックもリリックもない言葉で、陳腐極まる使い古された言い回しで、あいつを助けるなんて、本当に嫌でたまらない。

ここにきて比企谷八幡は、あらゆる理屈と合理的説明をかなぐり捨てた行動に出ます。
これまで八幡がその存在を認めることのなかった“あの感情”が心の深淵から浮かび上がりつつあるのを察知した平塚先生は、満足げに「すぐに来たまえ」と告げるのでした。





次回以降は今回述べた三人の感情考察を基に12巻のストーリーを紐解いていき、最終的には13巻以降の展開予想まで食い込んで行きたいと思います。

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