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瞳は、金無く、居場所なく、歩き続けて海に着いた。
波荒く、風が冷たく、なんで来たのか分からなくなった。
それでも眺め続けたらしい。
すると「楽しくなってきた」と笑う。
ろれつも回らず、左手や右手が言うことをきかないが、彼女の言うことは理解できる。
なにが言いたいのかなんて
お互いわかってはいないようだし、考えようともしていないが、
そうだろうなと納得が行く。
「たつおがおったらわろたやろな」
「そう。ピーチクパーチク」
えらい古い言い回しやなと笑うと、
「インコの鳴き方なんて昔からずっとおんなじ」たつおは飼っていたセキセインコ。黄色い羽毛をなでる動画が流れ、たつおのにおいを嗅ぐ。臭いが好きだ。動物の臭い。
瞳は言う。「なに言ってたかなんて、ことばに出来ないし」言葉にしないし。「ピーチクパーチク笑うんや」
うにアクセントをつける浅草人の関西弁でも、理解できる。納得がゆく。
なにがわからなかったのかわからなくなるほど、わかる。
それはまずい。
そうだそうだと笑って
二人と一羽は、台風が来る前に別れた。
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